2021年02月15日

●「なぜ、GAFA解体論が起きるか」(第5428号)

 話が色々な方向に飛んでいますが、GAFAによって代表され
るプラットフォーマーのひとつがデジタル通貨を発行することの
影響について考えています。そのためには、プラットフォーマー
がどういう事業者であり、それをどうとらえるかについて明確に
しておく必要があるので、様々な角度から考えています。
 リブラに対する規制の議論でも大きな焦点になっているのが、
プラットフォーマーによる個人データの扱いと、プライバシー保
護の問題です。これはきわめて難しい問題です。
 一見すると、プラットフォーマーが提供するサービスを、ユー
ザーが無料で利用するメリットに対して、プラットフォーマー側
は、それによって得られる個人データを利用し、広告収入などに
よって利益を上げる、ウインウインの関係を生み出すビジネスモ
デルのように見えます。
 これに対して、木内登英氏は、けっしてウインウインの関係で
はないとして、次のように述べています。
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 ユーザーには付加価値のあるデータを自ら作り出すという意味
で、生産活動を行う生産者という側面もある。しかし、ユーザー
が生産したデータヘの対価は、プラットフォーマーからは直接的
には受け取っていない。仮にユーザーが自ら作り出した個人デー
タを、他の企業に売っていれば、収入を得ることができる。それ
を諦めて、プラットフォーマ一に個人データを差し出していると
いう点で、実はユーザーには機会費用が発生しているのである。
 もう一つの対価、コストは、利用者が提供する個人データに関
わる様々なリスクだ。個人が提供したデータが、実際にどのよう
に使われるのかが必ずしも明らかでない。もし個人が特定される
状態でデータが外部に流出してしまえば、深刻なプライバシー侵
害の問題を引き起こしてしまうのである。
              ──木内登英著/東洋経済新報社
    『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
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 極端なことをいえば、プラットフォーマーは登録されている個
人データそのものを何らかの理由を付けて、他の企業に売ること
もできるし、外部の組織と情報を共有することもできます。あの
ケンブリッジ・アナリティカ社へのデータ流出事件がそれを示し
ています。とくにフェイスブックは、これまでに何度も個人デー
タの漏洩事件を起こしており、そういうプラットフォーマーがリ
ブラの発行によって、金融の情報まで握ることに深い懸念が示さ
れているのです。
 その場合、プラットフォーマーは、個人データの使い方に関す
る詳細な文書をユーザーに示して「同意」を求める方法を採用し
ています。しかし、そのような文章をていねいに読むユーザーは
少なく、プラットフォーマーとしては、それに付け込んで、個人
データの利用について、依然として、高い自由度を維持している
のが現状です。
 もうひとつプラットフォーマー側にも当初想定していなかった
追加的なコストが発生しつつあります。もともとプラットフォー
マーは、投稿の「場」を提供するだけで、ユーザーが投稿するコ
ンテンツの内容には一切関知しない方針だったのです。
 ところが、最近になって、コンテンツのチェックは、不可避に
なっています。世論を操作する目的の投稿や、フェイクニュース
明らかな選挙対策用コンテンツ、ヘイトスピーチなどの問題のあ
る投稿が増えてきたからです。コンテンツをいちいちチェックす
るには、相当の労働力の投入が必要であり、当初想定していない
追加的なコストがかかることになります。ツイッター社やフェイ
スブックが、トランプ前米大統領のツィートに対して警告したり
利用を永久に停止するなどの措置をとったのもこのような考え方
の一環であるといえます。
 本稿執筆時の2月13日付の日本経済新聞朝刊「ディープイン
サイト」に、この問題と関係のある次の記事が掲載されているの
で、ご紹介します。同趣旨のコンテンツは、2月3日付のEJ第
5241号でも取り上げています。
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 Deep Insight
 ◎GAFAルールでいいか/本社コメンテーター/村山恵一
 「父と娘の公園での一日」。米アップルが、1月に公開した約
10ページのレポートは、イラストつきの表紙こそ楽しげだが、
中身は重い。
 知らぬ間に個人データがやりとりされる一日を描き、アップル
製品でプライバシーを守ろうと呼びかける。近く導入する目玉の
機能「AAT」ももちろん紹介している。アプリで個人を追跡し
データを収集したいなら、事前に利用者の許可を受けよというも
のだ。
 このATTについて批判を集めたサイトがある。「商売が減速
する」「アップルの行為は間違い」。中小事業者が動画や音声で
登場し、導入阻止を叫ぶ。立ち上げたのは事業者たちだけではな
い。米フェイスブックだ。個人の興味や行動に即した広告がAT
Tによって制約される。低予算の事業者からターゲティング広告
という集客の手段を奪っていいのか。そう訴える。
         ──2021年2月13日付、日本経済新聞
                      添付フィル参照
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 GAFAには、解体論、分割論が出ています。とくにフェイス
ブックには、ライバルとして浮上してきた写真共有の「インスタ
グラム」や対話アプリの「ワッツアップ」を買収したことによる
ライバル不在の状況を作っていますが、これは反トラスト法に触
れるとして、その適用が検討されています。ライバル不在によっ
て、質の低い競争しか起こらず、それが消費者の利益を損ねてい
るという考え方です。これに関してザッカーバークCEOは絶対
反対を表明しています。   ──[デジタル社会論/029]

≪画像および関連情報≫
 ●GAFA解体論を間違って理解しないために知っておくべき
  “L字型”の基礎理論/富岡秀夫氏
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   2020年10月6日に、米国下院の反トラスト小委員会
  が、GAFAの分割も含む提言を盛り込んだ報告書を公表し
  たことは色々なニュースで取り上げられているとおりです。
  あくまでも議会の提言ですので、必ずしもこのままGAFA
  の分割が進められるわけではないのですが、このような巨大
  企業の分割は、競争政策の界隈では構造分離と呼ばれ、米国
  ではこれまで実際に行われてきています。例えば、1911
  年には、連邦最高裁の命令によりロックフェラー財閥の石油
  会社スタンダード・オイルが分割されました。また、電話発
  明者グラハム・ベルに源流を持つ通信会社AT&Tが、19
  84年にやはり競争法を巡る訴訟の結果分割されています。
  ちなみに、日本でも1999年にNTTの再編成が行われま
  したが、このAT&T分割がモデルになっています。
   このGAFA解体論についてのよくある誤解は「GAFA
  は巨大だから解体すべき」というものです。これは100%
  誤りというわけではないのですが、決して正しい理解ではあ
  りません。私は総務省で色々な仕事をしてきた中で、特に通
  信市場の競争政策というテーマに長く携わってきましたので
  その経験を踏まえ、構造分離に関する競争政策の基礎理論に
  ついて書いておきたいと思います。少し抽象的で難しい話か
  もしれませんが、なるべく分かりやすく書いてみます。
                  https://bit.ly/3rOaWC7
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「ディープ・インサイト/2021年2月13日」.jpg
「ディープ・インサイト/2021年2月13日」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする