2021年02月12日

●「無料ビジネスで利益を出す仕組み」(第5427号)

 今年に入ってから「クラブハウス」という新しいSNSが流行
しているのをご存知でしょうか。
 クラブハウスとは、米サンフランシスコのスタートアップ企業
アルファ・エクスプロレーションが2020年の春にスタートさ
せたサービスです。
 ところで、最近よく「スタートアップ企業」という言葉が使わ
れますが、どのような企業を指すのでしょうか。日本でいうとこ
ろのベンチャー企業とはどう違うのでしょうか。
 スタートアップ企業とベンチャー企業の違いは、ゴールの違い
にあります。ベンチャー企業は中長期的に課題に取り組み、世の
中の課題を解決しようとしますが、スタートアップは主に短期間
でのエグジット(EXIT)を目的にしています。なぜ、エグジット
かというと、新しい市場を作り出すために、短期間で急成長を狙
うからです。
 日本では、スタートアップは「比較的新しいビジネスで急成長
し、市場開拓フェーズにある企業や事業」という意味で使われま
す。スターアップを目指す起業家は、イノベーションを通じて、
人々の生活や社会を変えるために起業し、その組織は、ファウン
ダーを含め即戦力になる人間で構成されており、しっかりとした
ビジネスモデルもないなかで、模索しながら新しいビジネスモデ
ルを開発し、急激な成長を目指すのです。
 つまり、「非常に高い率で成長し続けるビジネス形態」であれ
ば、会社の規模や設立年数は関係なくスタートアップといえるの
です。そういう意味では、GAFAもスタートアップですが、こ
のレベルに達すると、プラットフォーマーといわれます。
 それはさておき、「クラブハウス」を一言でいうと、音声のS
NSです。というよりも、目下大流行の音声版のZOOMという
べきです。招待制を採用しているからです。「room」と呼ば
れるテーマごとの部屋で、音声だけの会話を楽しむというもので
す。1月24日の時点で世界で200万人のユーザーがいます。
このクラブハウスについて、2021年2月7日付、日本経済新
聞は次のように、報道しています。
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 雑談感覚で人とつながることができるのが特徴だが、新メディ
アとしての可能性を探ろうと著名人も使い始めた。テスラのマス
クCEOが登場した際は、roomに入れる約5000人分が瞬
時に埋まった。会話の後半には、米株式市場で起きた乱高下の一
因とされるスマホ証券「ロビンフッド」のCEOも現れ、米メデ
ィアが会話の内容をニュースとして取り上げる事態が起きた。
          ──2021年2月7日付、日本経済新聞
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 「フリーミアム」(freemium)という言葉があります。これは
GAFAによって代表されるプラットフォーマーの無料サービス
のことです。フリーミアムは、「フリー(無料)」と「プレミア
ム(割増)」を合わせた造語です。
 このプラットフォーマーの無料サービスが、なぜビジネスとし
て成り立つのかについて、木内登英氏は「補完財」というミクロ
経済学の基礎的な概念を使って説明できるといいます。
 「補完財」とは何でしょうか。
 「補完財」とは、相互に補完して効用を得る財のことです。代
表的な例として、パンとジャム、自動車とガソリン、コーヒーと
砂糖などが上げられます。例えば、パンの価格が下がると、当然
パンの需要は高まりますが、この場合、補完財であるジャムの需
要も、その価格が変化しなくても、高まることになります。
 この関係を基にして、木内登英氏は、プラットフォーマーの無
料サービスについて、次のように述べています。
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 プラットフォーマーが無料で提供する財・サービスが、他の財
・サービスヘの需要を高め、利益の増加をもたらすことから、無
料サービスを提供することが合理的な企業行動となるのである。
例えば、フェイスブックが仮にリブラ自体では儲けることはでき
なくても、SNSがリブラの補完財であり、リブラの利用拡大が
SNSのユーザー拡大に繋がり、ターゲット広告などによる収益
拡大をもたらすのであれば、フェイスブックは低コスト、あるい
は無料でリブラを提供することができる。
 フリーミアムという言葉が使われる場合には、単に無料のサー
ビスを提供することではなく、無料のサービスを提供した上で、
それにより、高機能化されたサービス、あるいはカスタマイズさ
れた付加価値の高いサービスを有料で提供することで、全体とし
て収益を得るというビジネスモデルを指すことの方が多い。
              ──木内登英著/東洋経済新報社
    『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
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 ネットビジネスには「5%ルール」というものがあります。全
体では95%が無料サービスの利用者であっても、5%の有料サ
ービス利用者がいればビジネスは成立するというルールです。木
内氏は、これに該当するものとしてアマゾンの有料会員制サービ
ス「アマゾンプライム」を上げています。
 年会費を払ってプライム会員になると、過剰なほどのサービス
が受けられます。なぜ、このようなサービスができるのかという
と、会員が多いことと、年会費が「前払い」であるからです。2
018年の時点で、米国における会員数は8500万人。米国の
人口が約3億2000万人ですので、米国では実に4人に1人が
プライム会員ということになります。アマゾンは、この制度を世
界16ヶ国で展開しており、2018年の時点で、プライム会員
が世界全体で1億人を超えています。
 米国内だけで考えても、年会費119ドルの会員が8500万
人いると、前受金は100億ドルを超えます。アマゾンはこの資
金を元手に新サービスの拡大やコンテンツの拡充に努めているの
です。           ──[デジタル社会論/028]

≪画像および関連情報≫
 ●フリーミアムとフリートライアル、どちらを選ぶべきか
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   フリーミアムは、無料での利用をベースに「機能」などに
  制限を設けるモデルとなります。ざっくり表現すると「ずっ
  と無料で使えるけど、この機能を使うなら課金してね」とい
  う価格形態です。全顧客の5%が有料ユーザーであれば、ビ
  ジネスとして成り立つと言われています。
   最近、フリーミアムで成功した企業といえば、ZOOMで
  しょう。ZOOMは、1on1であれば時間制限なく、快適
  なウェブ会議(もしくは飲み会)を無料で実現することがで
  きます。しかし、参加者が3名以上になると時間制限(40
  分)が設けられるため、ここで多くのユーザーが有料プラン
  へ移行することとなります(さすがに接続し直すのは面倒な
  ので)。
   フリーミアムはこのように、何に制限を設けるか、その線
  引きが重要となります。ZOOMのように「機能」に制限を
  設ける例もあれば、ドロップボックスのように「容量」に制
  限を設ける例もあります。ポイントとしては、ユーザーに最
  も価値を感じてもらえる機能を、有料プランとして提供する
  こと(無料プランで提供しないこと)でしょう。しかし、機
  能をあまりにも絞り過ぎると「何もできないじゃん!」と、
  かえってネガティブな印象を与え、結果的に離脱されてしま
  う可能性があります。      https://bit.ly/2LFq9Gn
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クラブハウス.jpg
クラブハウス
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする