2021年02月05日

●「リブラは11兆ドルの現金を吸収」(第5423号)

 世界には、銀行口座を持たない人が、途上国を中心に17億人
いるといわれます。17億人といえば、世界の人口の約30%に
あたりますが、そんなに多くの人が、銀行を利用できず、金融シ
ステムから疎外されています。フェイスブックは、リブラによっ
て、そういう人たちを救う金融包摂(ファイナンシャル・インク
ルージョン)を可能にすることを強調しています。
 ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)とは、貧困
や難民などに関わらず、誰もが取り残されることなく金融サービ
スへのアクセスができ、金融サービスの恩恵を受けられるように
することを意味します。
 銀行口座を持たない人のことを「アンバンクド」と呼んでいま
す。世界銀行の調査によると、こうした銀行口座を持たないアン
バンクドは新興国に集中していますが、そのうちの半分は、バン
グラデシュ、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ナイジェ
リア、パキスタンの7ヶ国のなかにいるといわれます。
 しかし、アンバンクドの3分の2(11億人)は、携帯電話を
持っているといわれます。しかし、携帯電話とインターネットへ
のアクセス手段の両方を持っている人は、世界のアンバンクドの
なかの25%程度に過ぎないのです。その比率は次のようになっ
ています。
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           ブラジル ・・・ 60%
          南アフリカ ・・・ 33%
             中国 ・・・ 25%
     バングラデシュその他 ・・・ 10%
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 このように見ると、アンバンクドのなかで、リブラのようにス
マホ上のアプリを駆使しての決済ができる人の割合は、けっして
高いないのです。したがって、フェイスブックが強調しているよ
うに、リブラによって金融包摂が一挙に進むということは、かな
り、オーバーな表現といえます。
 さて、金融包摂はともかくとして、そもそもリブラがなぜこれ
ほどの騒ぎになっているのでしょうか。
 それは、フェイスブックのユーザーが27億人を超えているか
らです。世界の人口を添付ファイルにしていますが、フェイスブ
ックのユーザーの27億人は、世界一の人口を誇る中国の倍近く
になるのです。2019年現在、中国の人口は14億3378万
人、インドは13億6641万人です。既にフェイスブックのユ
ーザーは国のレベルを超えているのです。
 このことから「もし、リブラの導入を許せば、金融全般をフェ
イスブックに支配される」ということがいわれます。これに対し
てフェイスブックは、このリブラ計画が、軌道に乗るまでの期間
については、指導的な役割を果すものの、その後は、リブラ協会
の他のメンバーと、同じ義務や権利を持つに過ぎないことを強調
しています。
 リブラを仕切るリブラ協会(リブラを「ディエム」に変更して
いるので「ディエム協会」になるかどうかは不明)とは、どうい
う役割りを果すのかについて、既出の木内登英氏は、次のように
述べています。ちなみに、リブラ協会には、フェイスブックの子
会社「カリブラ」が参加しています。
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 意思決定の透明性を高める観点から、リブラ協会にはガバナン
ス強化の仕組みやルールが導入されている。リブラ協会は自らを
非営利組織と位置付け、そこに1部組織として評議会と理事会を
設けている。
 評議会は、リブラ協会の各メンバーの代表によって構成され、
最高の権限を持つ。最も重要な決定には、3分の2を超える多数
の賛成が求められる。また評議会の議決権は、当初はリブラ協会
への出資額、つまり、リブラ投資トークンの持ち分、将来的には
リブラの持ち分に比例する。権限の集中を避けるために、創設メ
ンバー1組織あたりの議決権には、上限が設定される。
 理事会は、評議会を代表してリブラ協会を監督し、協会執行部
に運営上の助言を行う。理事会の構成メンバーは5〜19人とし
厳密な数は評議会が決定する。なお、リブラ・リザーブの運用か
ら得られる利益は、リブラ協会のメンバーにリブラ投資トークン
の持ち分に応じて配当として支払われる。この配当ルールは、事
前に設定し、リブラ協会が運用を監督する。
              ──木内登英著/東洋経済新報社
    『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
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 リブラが発行されると、それによって世界に流通する現金が代
替されると考えられます。世界の現金流通額は2017年の時点
で「31兆ドル」と推定されています。
 これに対して、フェイスブック関連アプリの利用者は27億人
ですが、これは2018年の世界の人口73億人の37%で、実
に3人に1人ということになります。彼らがもし一気にリブラを
使うようになれば、現金の利用は大幅に減少するはずです。
 もし、リブラが世界の現金発行額の37%程度を代替すると、
現金は11・5兆ドル、日本円で1240兆円が減少してしまう
ことになります。
 このように、現金がリブラに代替されると、その分、中央銀行
の利子所得は減少し、リブラ協会がそれに代って利益を得ること
になります。リブラ協会は、リブラの発行と引き換えに受け取る
代金を、主要法定通貨(ドル、ユーロ、英ポンド、円など)で構
成される銀行預金や短期国債などで保有することになります。こ
れが「リブラ・リザーブ」(準備金)です。当然、そこには、巨
額の運用収益が発生する可能性があります。リブラの利用が広が
ると、リブラ協会は、巨額の収益を手にすることになります。こ
のような計画が、現在、音を立てて進行しつつあります。
              ──[デジタル社会論/024]

≪画像および関連情報≫
 ●仮想通貨を巡る中国の深謀遠慮、「アリババがリブラ参入」
  騒動も
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   米フェイスブックの主導する仮想通貨・リブラは、まだ始
  まってもいないのに悪評が高い。各国の中央銀行は、金融政
  策への支障やマネーロンダリングの懸念を主張し、全面的に
  規制モードで進行中だ。そんな中、リブラに多大な関心を寄
  せる国がある。中国だ。
   「えっ、中国のアリババ集団がリブラをやるの?しかも日
  本で?」。今夏、仮想通貨関係者の間でひそかに注目を集め
  た“異変”があった。リブラとはもちろん、米フェイスブッ
  クが主導する仮想通貨の構想だ。発行主体はフェイスブック
  が加盟している非営利団体のリブラ協会(本部・スイス)。
  ブロックチェーン技術を使い、2020年前半の発行開始を
  目指している。
   リブラ協会は、構想のメンバーとなる企業・団体(協会加
  盟者)を公開している。現時点ではフェイスブック以外はマ
  スターカードやペイパル、ウーバー・テクノロジーズなど米
  国の企業・団体が中心だ。中国はおろか、日本を含むアジア
  の企業・団体はまだどこもメンバーとなってはいない。
   にもかかわらず、なぜ中国のハイテクガリバー、アリババ
  の名前が仮想通貨関係者の間で飛び出したのか。その理由は
  インターネットのドメイン登録にある。フェイスブックがリ
  ブラ構想を発表したのは6月18日。まさにその日、アリバ
  バ傘下のクラウド子会社、アリババ・クラウド・コンピュー
  ティング(阿里雲)の法人名義で、「libra」表記を含
  むドメイン登録が複数あったのだ。そのうち2件は、日本を
  示す「jp」の表記を含んでいた。https://bit.ly/3oJF3Jd
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「フェイスブック『人口』はすでに国家を超越」.jpg
「フェイスブック『人口』はすでに国家を超越」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする