2021年01月27日

●「なぜアプリ開発者を批判するのか」(第5416号)

 国産の接触確認アプリCOCOAは、リリース以来、不具合が
相次いでいます。今年に入ってからも何らかの不具合があったよ
うです。テレビでお馴染みの池袋の大谷クリニックの大谷義夫院
長は次のように述べています。
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 多いときは、2日に1回はCOCOAアプリの接触で来院され
る方がいた。それが年明けから1例だけ。何か不具合でもあった
のかなと推測はしていたけれど、通常診療に追われて、どうして
だろうなど考える時間はなかった。     ──大谷義夫院長
                  https://bit.ly/3qJ5Zdp
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 安倍前首相は、このアプリについて「政府主導で取り組む」と
いっていましたが、実際の開発体制で厚労省は、工程管理をお門
違いの人材サービス会社のパーソルホールディングスに丸投げし
同社はさらにパーソナルプロセス&テクノロジーに業務を委託、
さらにそれが2社に委託されているようです。
 しかも、これらの企業はアプリの工程管理を行っているだけで
実際の開発はボランティアの技術者が担っています。いい替える
と、たまたまボランティアで接触確認アプリを開発していたエン
ジニアグループのアプリをそのまま採用したかたちになっている
のです。そうでなければ、あれほどの短期間でアプリを構築する
ことは不可能です。したがって、ある程度のバグの発生は仕方が
ないと考えます。
 そういうこともあって、彼らはアプリをオープンソースソフト
ウェア(OSS)として開発していたのです。OSSとは、ソー
スコードの全てが公開されているソフトウェアのことです。ソー
スコードとはプログラミング言語によって記述されたプログラム
です。COCOAの元プログラムといわれる「Covid 19 Radar」
は、現在でもそのソースコードが公開されています。誰でもそれ
を使うことができるのです。
 多くの場合、ソースコードを公開するOSSの狙いは、そのア
プリを世界中のエンジニアの知見を借りて、さらに良いものにし
たいという点にあります。OSSであれば、誰もがその改良を行
なえるし、集合知を結集することができるからです。
 「Covid 19 Radar」をOSSにした狙いについて、メインの開
発者である廣瀬一海氏は、次のように述べています。
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 コードを公開した背景ですが、当時、シンガポールのアプリは
コードが公開されておらず、オープンソースにする計画も発表さ
れていませんでした。COVID−19の感染拡大が世界的な大
問題になっている中で、シンガポールと同様のコンタクトトレー
シングの仕組みを世界各地で取り入れるために私のコードを役立
ててほしいと考え、ある程度アプリが形になった段階でオープン
ソース化しました。エンジニアリソースや、コンピューティング
リソースが限られている地域や国家でも実装しやすいように、ラ
イトな設計にこだわっています。
 また、このプロジェクトのアプリは、日本以外の欧州や他国に
おけるユーザーのプライバシー保護のために、個人情報を極力取
得しないことを開発の軸にしています。
 でも、本当に、個人情報を取っていないかどうかは、コードを
公開して第三者が検証可能な状態にしないとわかりません。個人
の医療情報を扱うアプリの透明性を担保するためにも、オープン
ソース化は必要だと考えました。   https://bit.ly/3c5QsQF
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 しかし、リリース以来、不具合が続発していることもあってか
COCOAに関するネット上の批判は相当ひどいものだったので
す。「こんなに社会的責任が重い存在が不完全であることは許せ
ない」とか、「企業が開発していると思った」とか、「開発費を
無駄遣いしている」とか、事情を知らないとはいえ、事実と異な
る大量の非難が開発者たちに対して浴びせられたのです。
 かつて廣瀬氏自身が医療・介護用ソフトを制作していた経験か
ら、社会のためになると信じて、会社の仕事としてではなく、ボ
ランティアで確認アプリを開発したのに、ここまでいわれてしま
うと、モチベーションを維持できないでしょう。廣瀬氏も自身の
ツイッターで、次のように激白し、次のリリースで開発から離れ
委託会社などに託したい考えを示しているといわれます。
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  この件で、われわれのコミュニティは、メンタルと共に
  破綻した。
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 COCOAの仕組みをよく調べてみると、なかなかよいアプリ
であると思います。課題は、スマホにインストールする人が増え
ることと、陽性になった人が必ず登録することが必要です。
 著名なソフトウェア技術者である松本行弘氏は、COCOAへ
の批判について次のように述べています。
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 提案したいのは「生産的ではない、相手に対するリスペクトが
ない批判はカッコ悪い」という価値観を広めて回ることです。そ
うやって長い時間をかけてでも価値観をアップデートすることで
不幸な状況を減らしていけるのではないでしょうか。
 COCOAは新型コロナ感染流行を遅らせるための有効な手段
となるべく開発されたアプリです。それがOSSとして開発され
たことは素晴らしいことだったと思いますが、なにぶんみんなの
経験値が低かったので、いろいろな問題も発生しました。特に透
明性について課題があったと思います。その経験を糧にして、今
後政府とOSSのより良い関係が構築できればよいと思います。
また、ネットでの皮肉にさらされて傷つく人が少なくなることを
期待したいです。          https://nkbp.jp/2KNYBy6
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              ──[デジタル社会論/017]

≪画像および関連情報≫
 ●内閣副大臣が語る「コロナ接触確認アプリ“COCOA”」
  をめぐる4つの事実
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   「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」をリード
  する、内閣府副大臣の平将明氏はこのほど、接触確認アプリ
  COCOAに関する記者向けのグループインタビューを開い
  た。平副大臣のインタビューから、特に4つの項目に絞り、
  接触確認アプリの価値について考えてみよう。
  【その1】:接触確認アプリの導入は「6割」に達しなくて
  も価値は十分にある。「色々言われますが、私は意外と多く
  の方にインストールしていただけたと思っています」
   平副大臣は、インストール数の点についてそう答えた。7
  月31日午後5時の段階での、同アプリのダウンロード数は
  約996万件。「人口の6割」という言葉が先行していたの
  で、いかにも少ないように思われるが、実はそうでもない。
   現在広く普及しているLINEやペイペイなどのアプリが
  1000万ダウンロードに到達するには最低数ヶ月かかって
  おり、ペースはかなり早い。ヤフーの元社長で、現在は東京
  都副知事の宮坂学氏も、自身のツイッターアカウントで「C
  OCOAは健闘。40日で(1000万)到達は驚異的」と
  コメントしている。一方で、「数が少ない」という批判が出
  るのは、「人口の6割がインストールしないと、効果が出な
  い」という言説が広がったためだ。安倍総理の会見でも「6
  割」という数字が明示されていた。
                  https://bit.ly/2KJUymh
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大谷クリニック/大谷義夫院長.jpg
大谷クリニック/大谷義夫院長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする