2021年01月08日

●「なぜキャッシュレスが進まないか」(第5404号)

 「フリクションレス」という言葉があります。ストレスのない
状態です。面倒くさくないことです。お客側も店側もあまり手間
のかからないことです。
 たとえば、駅の売店で夕刊紙を買う場合を考えてみます。現金
で払おうとすると、小銭入れからコインを出して渡すと、店側は
そのコインを受け取らなければなりません。釣銭を出さなければ
ならない場合は、コロナの感染が拡大している昨今であり、買う
方も売る方もストレスがたまります。それでは、キャッシュレス
で払うとどうなるかです。
 クレジットカードで支払う場合はどうかというと、これはお客
側だけの操作で決済は完了するので、店側はレシートを渡すだけ
で済み、ストレスはかかりません。さらにお客側がスマホに金額
を入力し、店側がOCRリーダーなどで、非接触で「ピッ!」と
読み取ることができれば、お客側も店側もフリクションレスで決
済を完了できます。
 各国のキャッシュレス決済の状況はどうなっているのでしょう
か。キャッシュレス推進協議会による2015年〜16年のデー
タによると、日本は18%〜19%です。それにしても、韓国の
キャッシュレス化は他国を圧倒し96%です。
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            2015年   2016年
         韓国  89・1%  96・4%
       イギリス  54・9%  68・6%
         中国  63・9%  65・8%
    オーストラリア  51・0%  58・2%
        カナダ  55・4%  56・3%
     スウェーデン  48・6%  51・5%
       アメリカ  45・0%  46・0%
       フランス  39・1%  40・7%
        インド  38・4%  34・8%
         日本  18・4%  19・9%
        ドイツ  14・9%  15・6%
         ──キャッシュレス推進協議会/2019年
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 日本の場合、銀行口座はもちろんのこと、クレジットカードを
持っているのは当たり前であり、しかも現金をいつでもどこでも
おろせるATM網がコンビニを含め、全国津々浦々まで広がって
おり、現金が使い易い環境にあります。この利便性が、がかえっ
て現金中心の決済から脱却できないでいるのです。
 このフリクションレスについて既出の尾原和啓氏は、昨今流行
し、定着しているものは、すべてそれが条件になっているとして
次のように述べています。
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 グーグルは「知りたいことがすぐにわかる」から、アマゾンは
「ほしいものがすぐに手に入る」から、フェイスブックは「知り
たい人の近況がすぐにわかる」から、LINEは「話をしたい友
だちとすぐに連絡がとれる」から、ユーザーに広く受け入れられ
ました。スポティファイは「聞きたい音楽がすぐに聞ける」から
キンドルは「読みたい本がすぐに読める」から、実際に音楽を聞
いたり、電子書籍を買ったりする人が増えたのです。(中略)
 考えてみれば、インターネットも、情報同士がつながったこと
で、あらゆる情報へのアクセスがフリクションレスになったから
こそ、世の中に大きな変化をもたらしたのです。お金のやりとり
がフリクションレスになれば、それと同じか、それ以上のインパ
クトがあるはずです。      ──尾原和啓著/NHK出版
   『ネットビジネス進化論/何が「成功」をもたらすのか』
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 ジャック・ドーシー氏という米国の経営者がいます。この人は
ツイッターの創業者で元CEOとして有名ですが、現在はスクエ
アのCEOとして知られています。彼は、アップルの共同経営者
スティーブ・ジョブス氏や、テスラの共同経営者イーロン・マス
ク氏のように、先見性のある革新的な思想の持ち主として広く知
られています。
 ところで、「スクエア」とは何かご存知でしょうか。
 彼は、ある路上店舗で、気に入ったアート作品を見つけて、買
おうとしたのですが、クレジットカードが使えず、買えなかった
ことがあるのです。
 彼は、そのときの経験からアイフォーンかアイパッドさえ持っ
ていれば、それに小型のカードリーダーを接続することで、簡単
にクレジットカード決済ができるシステムを開発したのです。こ
れを「スクエア」といいます。これらの小型カードリーダーを含
むセットは5000円弱で購入できるので、どのような店舗でも
採用可能です。なお、スクエアは、クレジットカード決済だけで
なく、電子マネー決済も可能です。決済のイメージについては、
添付ファイルの写真を参照してください。
 このジャック・ドーシー氏について、尾原和啓氏は次のように
述べています。
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 ジャック・ドーシーには、現金の受け渡しは、売る人と買う人
の間でしかたなくやっている行為にすぎないので、その手間を除
いてあげれば、売る人と買う人の意識が一瞬でつながって「価値
の交換」がそこらじゅうで起きるはずだという思いがあります。
自分が好きでこだわっているものを、その価値がわかる人に届け
ることは、本来とても素敵なことです。支払いがフリクションレ
スになれば、「好き」と「好き」をもっと気軽にもっとたくさん
結びつけることができるので、そうした結びつきを豊かにするこ
とが、キャッシュレス化の本質的な意味だというわけです。
                ──尾原和啓著の前掲書より
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              ──[デジタル社会論/005]

≪画像および関連情報≫
 ●QRコードはもう古い、アリババやテンセントが進めるのは
  「顔認証決済」
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   2015年時点でキャッシュレス比率60%を誇る中国で
  はQRコード決済が常識になっていることは有名だ。日本で
  も多くのQRコード決済サービスが登場し、その普及率を各
  社が競っている状況であるが、中国はすでに次のステージへ
  進んでいるという。それが「顔認証決済」である。
   なぜアリババやテンセントは、顔認証決済の導入に力を入
  れているのだろうか。世界のキャッシュレスをけん引する中
  国の現状から、日本が見失いつつあるキャッシュレスの本質
  が見えてきた。中国の街中消費での決済手段がスマートフォ
  ン決済になっていることはすでによく知られている。アリペ
  イ(アリババグループのアリペイが運営)と、ウィーチャッ
  トペイ(テンセントが運営)の2つが主に使われ、QRコー
  ドを使って決済をすることから、俗に「QRコード決済」と
  呼ばれる。経済産業省の資料によると、日本のキャッシュレ
  ス比率は19・8%(2016年)であるのに対し、中国で
  は60%(2015年)となっている。このデータはやや古
  く、現在の大都市部では90%以上の決済がキャッシュレス
  になっている印象だ。紙幣や硬貨を目にすることが、極端に
  少なくなっている。中国の都市はQRコードだらけだ。スー
  パーやコンビニでは、買い物客がスマホにQRコードを表示
  し、これをレジでスキャンしてもらい決済をする。自動販売
  機にもQRコードをかざして飲み物を買う。地下鉄やバスに
  もQRコードで乗車する。    https://bit.ly/3pZJlNF
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スクエアのイメージ.jpg
スクエアのイメージ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする