2021年01月06日

●「意思のエコノミーで勝つグーグル」(第5402号)

 ヤフー(正確にいえば、ヤフージャパン)は、なぜ、グーグル
に敗れたのでしょうか。それは、サイトとページの差、人力とロ
ボットの差だけではなく、両社の間には、もっと根本的な差が存
在するのです。
 それは、マーケティングでいうところのエコノミーの違いに行
き着くのです。
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   1. アテンション・エコノミー/注目のエコノミー
   2.インテンション・エコノミー/意思のエコノミー
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 これについて、『インテンション・エコノミー』という著書の
訳者でもある栗原潔氏は、次のように述べています。
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 インテンション・エコノミーは、アテンション・エコノミーの
もじりです。アテンション・エコノミーとは顧客の関心(アテン
ション)が重要な財になっている経済です。顧客の関心を引くた
めに「ビッグデータ」を分析してターゲット広告したり、コンテ
ンツのパーソナライズをしているのが現在の中心的なものの売り
方です。先進的なようでいて、売り手が推測作業に基づいて顧客
の関心を惹こうとしているという点で、基本的なモデルは過去か
らあるマスメディアと同じです。
 そうではなくて、顧客の意図(こういう製品を買いたい/こう
いうコンテンツならいくら払ってもいい/こういう契約条件なら
サービス使ってもいい)を、売り手側にダイレクトに知らせて、
それに応えられる企業が顧客に売るというのが『インテンション
・エコノミー』の基本的考え方です。 https://bit.ly/2KQPCMo ─────────────────────────────
 つまり、こういうことです。ポータルサイトを目指すヤフーは
そのトップページに、アクセスしてくるユーザーにアピールする
ため、広告を注目を集めるところに置こうとします。それは当然
の行為です。しかし、この場合、広告にどのような工夫がこらさ
れていようとも、ユーザーの意思とは無関係です。これがアテン
ションの限界です。
 これに対してグーグルは、ユーザーが検索するとき、検索窓に
打ち込んだキーワードやフレーズ、すなわち「検索クエリ」に対
して広告を出します。これを「検索連動広告」といいます。例え
ば「フライパン」を買いたいと考えている人がいます。その人は
単に「フライパン」とか「フライパン通販」をキーワードにして
検索すると思います。そうすると、その結果として、あらゆるフ
ライパンが表示されます。
 試しに、「フライパン」をキーワードとして、複数回検索して
見てください。そして、表示されたフライパンの広告をいくつか
クリックすると、その後、他のキーワードで検索した場合も、検
索結果が表示されるページにフライパンの広告が多く表示される
ようになります。
 この場合、広告主は「フライパン」というキーワードを登録し
「フライパン」と検索したユーザーに対して、広告を出すように
設定しているのです。そうすれば、フライパンを求めている人に
対して、フライパンの広告をぶつけることができます。そこには
確実にユーザーの意思が働いています。これを「インテンション
・エコノミー(意思のエコノミー)」というのです。
 この検索連動広告は、広告主の裾野を確実に広げ、今までなら
経費の関係で、広告を出せなかった経営者でも広告を出せるよう
になったといえます。
 実はグーグルの検索連動広告は、さらに精度が高くなっている
のです。「精度が高い」ということは、真にユーザーに対して利
益を与えることを意味します。その点に関して、尾原和啓氏は次
のように述べています。
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 グーグルはインターネット広告界の巨人ですが、お金をもらっ
ているからといって、広告主の言いなりになっているわけではあ
りません。たとえば、広告主が高いお金を払って上位の枠に広告
を表示させようとしても、ユーザーがその広告をクリックしなけ
れば情報としての価値が低いと判断して、その広告を自動的に下
位に表示するようにしているのです。グーグルにとっては、広告
も検索結果と同じように、ユーザーのためになることが第一で、
上位に表示されるサイトは、ユーザーの「意思」にかなうもので
なくてはならないということです。──尾原和啓著/NHK出版
   『ネットビジネス進化論/何が「成功」をもたらすのか』
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 そして今やインターネットで情報を探そうという人にとって、
グーグルは欠かせない存在になっています。まさに純粋想起が、
「検索といえばグーグル」になっているからです。これによって
ヤフーとの勝負はこと検索に関しては決着がついています。なぜ
なら、2011年からヤフー・ジャパンは、グーグルの検索技術
を使っているからです。
 それでは、ヤフー・ジャパンは何をしているのでしょうか。ヤ
フー・ジャパンは、現在でもトップの集客力を持つポータルサイ
トとして、君臨しているからです。
 それは、ヤフー・ジャパンは、まさにネットの総合デパートを
目指したのです。「ヤフーニュース」にはじまって、「ヤフー乗
換案内」「ヤフー天気」「ヤフー映画」「ヤフーショッピング」
「ヤフオク」「ヤフーファイナンス」「ヤフー不動産」など、ま
さに、ネットの総合デパートになっているのです。これによって
ヤフーは、何かを探すという目的型の検索では、グーグルに譲っ
たものの、何かを漠然と探索する非目的型の検索では覇者となっ
ています。さらに、ここにきてヤフーは、重要な決断をしていま
す。2019年11月に、LINEと経営統合して、経営基盤を
さらに盤石なものにしているからです。
              ──[デジタル社会論/003]

≪画像および関連情報≫
 ●トヨタにも繋がるヤフーLINE統合が起こす衝撃
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   2019年11月に発表されたヤフーとLINEの経営統
  合。2社の経営統合によって、検索やSNS、ネット通販、
  金融などさまざまなインターネットサービスを一手に担う、
  利用者数1億人超の巨大グループが、生まれることになりま
  す。統合発表時に開催された共同記者会見では、共同CEО
  となる両社社長から「米中に次ぐ第三極を目指す」という大
  胆なビジョンが提示されました。
   しかし、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック
  アップル)と両社を傘下にもつ新生Zホールディングスを比
  較すれば、時価総額では前者は軒並み50兆円以上であるの
  に対して、後者は3兆円強と1桁違い、研究開発費では前者
  が2兆円前後に対して後者は3社合わせても200億円と2
  桁違い。研究開発費の違いが企業としての足腰の強さの違い
  を表しています。
   さらに、ヤフーとLINEがただ経営統合しただけなら確
  かに国内では強大な企業連合となりますが、海外では残念な
  がらLINEが大きなマーケットシェアを有しているタイ・
  台湾などでの強大な連合にとどまってしまう。やはり中国や
  インドにも攻め込むようなインパクトがなければ「第三極」
  と呼べるようなものにはならないのではないでしょうか。
                  https://bit.ly/34ZmeL2
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インテンション・エコノミー.jpg
インテンション・エコノミー
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする