2020年12月24日

●「なぜ欧米人はマスクを敬遠するか」(第5398号)

 マスクの話を続けます。2020年4月の話です。英国の民放
ITVの「GMB」という番組で、マスク論争が行なわれたので
す。GMBというのは「グットモーニング・ブリティン」という
番組です。司会を務める保守系のコラムニストのピアーズ・モー
ガン氏は、リモートで繋がっている複数のトップクラスの専門家
たちとマスクについて論争を繰り広げたのです。
 モーガン氏は、かねがね英国政府の新型コロナ対策には不満を
もっており、とくにマスクについては、「なぜ、着けないのか」
について疑問を感じていたので、それについて専門家から意見を
引き出したのです。その結果、専門家たちの意見は、次のような
ものだったといいます。
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 ・イギリス国民は、マスクの使い方を知らないから、使わせ
  るべきではない。
 ・もし、マスクを強制したら、手洗いを怠ったり、外出自粛
  を守らなくなる。
 ・そもそもマスクにウイルス予防効果があるというエビデン
  スは存在しない。           ──谷本真由美著
      『世界のニュースを日本人は何も知らない2』より
            (ワニブックス「PLUS」新書)』
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 英国人がなぜこういう考え方をするのかというと、もともと英
国人にはマスクをつける習慣がないことと、英国政府がWHОの
ガイドラインにしたがっていたからです。当初、WHОのガイド
ラインでは「健康な人がマスクをしても感染を予防できる根拠は
ない」といっていたからです。
 ところが東アジアの諸国では、明らかにマスクを着用する人が
多く、その因果関係はともかく、コロナによる死者も少ないこと
から、6月頃から「他人に感染させないために、マスクの着用を
推奨する」というようにガイドラインを改めたのです。感染抑止
の司令塔であるWHОからして、このようにしっかりしていない
ので、世界中で混乱が起きているのです。
 日本では、夏に日差しの強い日に色めがねをかける人は多いも
のの、冬や夜でも色めがねを掛けている人は「ヤバイ人」という
イメージがあります。日本人にとっては、「目を隠す」ことは、
あまりよいイメージではないのです。
 ところが欧米人にとっては、目ではなく、口元を隠す人は「ヤ
バイ人」のイメージなのです。そういう意味で、口元を隠すマス
クについて、あまり良いイメージは持っていないのです。これに
関して谷本真由美氏は、次のように述べています。
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 そもそも、彼らはマスクに対して大変な抵抗があるのです。な
ぜかというと、イギリスをはじめ欧州では、「マスクをする人=
異常な病気にかかった人」というイメージがあるからです。「マ
スクは一風変わった東洋の習慣」どころか、「マスクをしている
人間は、はっきりいって頭がおかしい」という感じです。
 これまでも、空港や街中でマスクをつける日本人や中国人は、
一定数のイギリス人のあいだで笑いのネタにされていました。東
洋にはそういう習慣があると知っている人も多いのですが、それ
でも「マスクをすると表情が見えず、気色が悪い」ので、「科学
的ではない馬鹿げたことをする東洋人はやっばり未開地の人間だ
ね」というのが彼らの本音です。──谷本真由美著の前掲書より
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 もうひとつ、欧米人にとっては、マスクをすることは、口を隠
すことになるので、他人とコミュニケーションをとるうえで不都
合なのです。なぜかというと、欧米人が誰かとコミュニケーショ
ンをとるときは、声だけでなく、相手の口の動きを見て判断する
習慣があるからです。
 ここから何を学べるかというと、それは異文化環境でのコミュ
ニケーション方法の学習は、声という言語学習だけでは不完全だ
ということです。「コミュニケーション」とは、言語と非言語の
チャネルを合わせた多面的なものであり、非言語チャネルに対す
る感度をもっと上げないと、効果的なコミュニケーションは取れ
ないのです。
 英語がうまく話せれば、欧米人とコミュニケーションが取れる
かというとそうではなく、音声としての言語に加えて、口の動き
や表情の変化や手や身体の動作など、人間は、様々なところから
メッセージを発しているので、その全てを読み取ることによって
よりよいコミュニケーションが取れるのです。文化によって、ど
のチャネルからのメッセージを受け取るかが違います。
 これと同じことを谷本真由美氏は次のように述べています。谷
本氏は、現在ロンドンに在住しているので、つねにそのことは肌
身に感じているといいます。
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 なぜ、口元を隠すことがヤバい人の特徴か。
 それは他人と話すとき、英語圏の人々は相手の口元を見て、何
をしゃべっているか判断しているからです。もちろん、音として
入ってくる言葉で内容を理解していますが、口元を見てその人の
感情や心を読み取っているのです。ですから口を隠すということ
は「自分の本心を隠す」ということ。
 英語圏の人と話をしているとよくわかりますが、会話中に口元
を手で押さえる動作をすると、「何を言っているかよくわからな
いから、手をどけてくれ」と言われることがあります。幼稚園や
小学校でも子どもが口元を見せずに話すと先生にひどく怒られま
す。これは実際、息子の学校で授業を見ていて気がつきました。
また日本女性がよくやるように、笑う際に口元を手で隠す動作も
不気味に思われることがあります。
               ──谷本真由美著の前掲書より
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         ──[『コロナ』後の世界の変貌/142]

≪画像および関連情報≫
 ●欧米人がマスク嫌いだったのはなぜ?日本との「美意識」
  の違い/サンドラ・ヘェフェリン(コラムニスト
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   新型コロナに脅かされる生活がすっかり世界の「日常」と
  なってしまった今、欧米でもマスク姿の人は珍しくもなんと
  もありません。しかしつい何か月か前の「新型コロナ以前」
  の欧米社会を思い出してみると、欧米人のマスクというもの
  に対する「アレルギー」は相当なものでした。
   筆者は以前より、予防のためにマスクをすることがしばし
  ばあったのですが、マスクを着用している日に、仕事などで
  うっかりドイツ人に出くわしてしまうと、必ずといっていい
  ほど彼らからツッコミが入ったものです。「この間、会った
  時もマスクだったね。本当に君はマスクが好きなんだね」と
  皮肉を言われることもあれば、意味ありげに「君は本当に日
  本人なんだね」と言われたりと、とにかく「余計な一言」が
  多かったと記憶しております。また、何も言わなくても、け
  げんな顔をしてこちらを見る人もいました。
   日本国内にいるドイツ人でさえそうなのですから、ドイツ
  国内でのマスクに対する人々の拒否反応は、すごいものでし
  た。私自身、勇気がなくて、現地でマスクをして歩いたこと
  はありません。それもそのはず、新型コロナが現れる前のド
  イツでは、マスク姿というと、銀行強盗もしくは不審者とい
  うイメージでした。欧米人にとって「相手の顔が見えない」
  というのは、怖くて不気味なことだったのです。
                  https://bit.ly/2JhaYC2
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マスクをする欧米人.jpg
マスクをする欧米人
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする