2020年12月23日

●「マスク軽視が米の感染拡大の原因」(第5397号)

 12月20日のことです。エズラ・ボーゲル米ハーバード大学
名誉教授が亡くなったそうです。米国では、有数の知日派であり
1979年に刊行された『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は大
ベストセラーになったことで日本人にも幅広く知られています。
当時の日本人、かくいう私もそうですが、この本を読んで、内心
自信を深めたものです。
 エズラ・ボーゲル氏は、中国にも詳しく、中国に関する次の著
作もあります。
─────────────────────────────
        エズラ・ヴォーゲル著/益尾知佐子訳
            『現代中国の父/ケ小平』上
    エズラ・ヴォーゲル著/益尾知佐子・杉本孝訳
            『現代中国の父/ケ小平』下
                日本経済新聞出版社
─────────────────────────────
 日本経済新聞編集委員の大石格氏が、10年ほど前にボーゲル
氏に最近国際社会における中国の振る舞いが傲慢になっているの
ではないかと尋ねたところ、次のように答えたといいます。
─────────────────────────────
 いまの体制がいつひっくり返るかと心配で、彼らは夜もおちお
ち寝られないのだ。中国の外交姿勢が強硬になったのは、経済成
長でいい気になっているからではない。大国化すればするほど、
統治体制を維持するのが難しくなり、国内世論の動向に神経をと
がらせているからだ。        ──エズラ・ボーゲル氏
        2020年12月22日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 先日、『世界のニュースを日本人は何も知らない』(ワニブッ
クス「PLUS」新書)という本を書店で見つけて、購入しまし
た。パラパラっとめくって読んでみると面白かったからです。1
と2の2冊セットです。
 著者の谷本真由美氏は、元国連職員で、シラキュース大学大学
院にて国際関係論および情報管理学修士を取得しています。日本
イギリス、アメリカ、イタリアなどの世界各国での就労経験があ
り、現在はロンドンに滞在しています。
 この本の「2」で、コロナ禍に関係する「マスク論」がとても
面白いので、これについてご紹介します。
 アンソニー・ファウチという人をご存知でしょうか。米国政府
のコロナアドバイザーで、米国立アレルギー感染症研究所(NI
AID)の所長です。トランプ大統領の側近も務めていましたが
大統領がコロナに関してデタラメなことをいうと、直後にそれを
訂正する、あの特徴的人物です。
 そのアンソニー・ファウチ所長は、2020年3月、マスク着
用が感染防止になることを否定し、テレビやインターネットで、
「マスクを付けるな」といいまくっていたのです。そのため、米
国では当初マスクの着用は否定されていたのです。何しろ、米国
立アレルギー感染症研究所の所長がそういっていたのですから、
当然といえます。
 確かに、3月まで米国はそういっていたのです。それを4月に
大修正を図っています。4月2日の「AFP=時事」によると、
次のようにその修正を認めています。
─────────────────────────────
【AFP=時事】これまで「マスク不要」とのメッセージを自国
民に向けて発信してきた米国だが、この勧告を見直す動きが出始
めている。これは、新型コロナウイルスとの闘いで、より大きな
成功を収めている一部のアジア諸国を見習ってのことだ。
 その背景にあるのは、無症状感染者の多くが気付かずに感染を
広めてしまっている状況だ。一般的な外科手術用マスクを着用す
ることで、薄い障壁がもたらされ、拡散を低減する助けになる。
この効果は手作りの代替用マスクでも同じだ。
                  https://bit.ly/3rjoZ3e
─────────────────────────────
 コロナ対策の先頭に立つファウチ氏のような専門家が、「マス
ク不要論」を唱えていたのですから、米国人が当然のようにマス
クを着用するのに大きな遅れが出るのは当然です。これが感染を
世界一にしてしまった大きな原因のひとつです。これについて、
谷本真由美氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ところが日本や台湾、韓国では死者が少なく、感染者数も伸び
ていないことから、4月以降にアメリカは突然、手のひらを返し
たようにマスク着用の重要性を強調しはじめたのです。7月に入
ると、「店舗ではマスクを着用しなければならない」「交通機関
でも着用するように」と、一気にマスク重要論を唱えるようにな
るのですが、東アジアに比べれば、なんと遅い対応でしょうか。
 結果、感染が大爆発し、多くの人が亡くなりました。それでも
アメリカでは謝罪する人は大変少なく、諸外国のメディアもなぜ
かこの件にはほとんど異議を唱えていないのです。
                     ──谷本真由美著
      『世界のニュースを日本人は何も知らない2』より
            (ワニブックス「PLUS」新書)』
─────────────────────────────
 2020年7月上旬の時点で、公共の場で米国人がマスクを着
用している割合は約73%。これに対して日本は86%、シンガ
ポールは90%と大きな差があります。この73%も、61%の
アフリカ系、63%のヒスパニック系の着用が貢献したもので、
白人の着用率は41%に過ぎないのです。
 欧州はもっとひどいのです。英国人は36%、オセアニア州の
オーストラリアはたったの20%です。これらの国では「政府は
個人生活に介入するべきではない」と考える人が多く、マスク着
用率はどうしても低くなってしまうのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/141]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、マスク着用率95%で米国死者数は3分の1に
  ───────────────────────────
   米国では、2020年2月初旬に新型コロナウイルス感染
  症(CОVID−19)による初の死亡者が記録されて以来
  9月21日までの累計死者数は19万9213人と報告され
  ている。そんななか、米国ではマスクの着用について今でも
  論争の的となっており、米国居住者で“常に”公共の場でマ
  スクを着用しているのはわずか49%である。州レベルで見
  ると、バージニア州、フロリダ州、カリフォルニア州での着
  用率は60%超の状況である。このように人口全体でのマス
  ク着用率95%の達成および維持は高い閾値のように見える
  が、ニューヨーク州のように達成している地域もある。
   今回、社会的距離の確保やマスク着用などさまざまな生活
  規制がどのような効果を生み出すのかを検証するため、米国
  ・IHME/CОVID−19フォーキャスティングチーム
  の研究員らが独自のCОVID−19死亡数予測モデルを作
  成した。その結果、米国全土で2021年2月28日までに
  CОVID−19による累積死亡者数は、51万1373人
  (46万9578〜57万8347)にのぼると予測された
  のである。一方で、マスクの着用が普遍的となれば、202
  0年9月22日〜2021年2月末までの間に、12万95
  74(8万5284〜17万0867)の命を救うことがで
  きると研究者らは明らかにした。 https://bit.ly/3nGtCSM
  ───────────────────────────
アンソニー・ファウチ所長.jpg
アンソニー・ファウチ所長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする