2020年12月17日

●「政治家を起訴するのは難事である」(第5393号)

 この年末にきて、菅首相による突然のGoToキャンペーン全
国停止で大騒ぎになっています。そのせいか、「桜を見る会」の
前夜祭の経費負担問題、河井克行/案里夫妻の裁判、その河井捜
査によって判明した鶏卵生産大手のアキタフーズの裏金疑惑問題
は、ニュースの表面からは消えているものの、これからどんどん
姿を現してくると思います。
 15日のことですが、久しぶりに池袋ジュンク堂(丸善)に行
き、何冊か本を購入しました。そのなかの一冊が次の書籍です。
─────────────────────────────
                     村山治著
   『安倍・菅政権VS検察庁/暗闘のクロニクル』
                     文藝春秋
─────────────────────────────
 この本は、法務検察の裏側を克明に描いています。面白いので
一気に読みましたが、とくに安倍政権と黒川弘務氏が絡む検察庁
法改正案のいきさつが詳細に描かれています。これによって黒川
氏のイメージがかなり変わったような気がします。今年年末まで
のEJで使っていきたいと考えています。今年のEJは25日で
終了しますが、それまでの7回はフリーに書いていきます。
 12月2日(水)のことですが、ホテルニューオータニの16
階にある高級中華「大観苑」で、清和会(細田派)と麻生派によ
る安倍前首相の慰労会が開かれています。4人以上の宴会は自粛
せよと国民に指令を出しているのに、政治家はぜんぜんそんなこ
とを守っていないのです。その翌3日に、読売新聞夕刊一面に次
の記事が出たのです。何か関係があるのでしょうか。
─────────────────────────────
  ◎安倍前首相聴取を打診/東京地検「桜」前夜祭巡り
          ──12月3日付、読売新聞/夕刊
─────────────────────────────
 そもそも「桜」前夜祭がはじまったのは、安倍氏が首相に返り
咲いた2013年からです。2012年12月に民主党から政権
を奪取し、次の年の春からはじめているのです。2013年の前
夜祭は、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催されて
いますが、会費との不足分の83万円が、安倍氏の資金管理団体
「晋和会」の政治資金収支報告書に記載されています。しかし、
2014年からは、前夜祭の会費補填分の政治資金収支報告書へ
の記入はないのです。
 なぜ、やめたのでしょうか。
 これについて、「週刊文春」/12月17日号は次のように書
いています。
─────────────────────────────
 実は補填分の記載を止めた「14年」は大きな意味を持つ。小
渕優子経産相(当時)が後援者を観劇会に格安で招いたことが報
じられ、就任一ヶ月半で、閣僚辞任に追い込まれた年なのだ。桜
前夜祭は小渕観劇会と同じ構図と言える。
 「額こそ違うとはいえ、首相の不記載が表に出れば、国会炎上
は免れ得ない。実際に配川氏(安倍氏の公設第一秘書)らは「不
適切なイベント」と指摘されると考え、記載しないことにした」
などと供述していますが、特捜部も、不記載の動機を「小渕観劇
会」の二の舞いを避けるためだった」と見ています。(検察担当
者)問題が明るみに出たのは、昨年11ヶ月。かたや、安倍氏側
はオータニ幹部を事務所に呼ぶなど”口裏合わせ”に踏み切る。
年明けには刑事告訴もされたが、「桜捜査」は進まなかった。
        ──『週刊文春』/2020年12月17日号
─────────────────────────────
 こういう事情で補填分の計上を止めたのだとすると、ますます
秘書の独断で収支報告書への記載を止めるというのは、不自然で
あり、安倍前首相への報告があったものと考えられます。
 しかし、安倍陣営には、有力なヤメ検弁護士がおり、既に特捜
部との”談合”の結果、安倍事務所の公設第一秘書、配川博之氏
を政治資金規正法違反(不記載)の容疑で略式起訴することで話
がついているものと思われます。
 国会議員を立件しようとするには、金額など「起訴基準」のカ
ベは多く、強制捜査をしても起訴できないことが多いのです。仮
に業者から現金を受け取っていても、あっせん利得処罰法違反容
疑で政治家を罪に問うことは非常に難しいのです。その典型的な
ケースが「甘利事件」です。当時経済再生相の甘利明氏は、業者
から現金を受け取っていることが明白であるにもかかわらず、東
京地検特捜部は、甘利氏も秘書も不起訴(嫌疑不十分)とせざる
を得なかったのです。それは、検察の官邸への忖度でもなければ
当時法務省の官房長だった黒川氏が、不起訴に動いたわけでもな
かったのです。この甘利事件について、村山治氏の本では次のよ
うに書かれています。
─────────────────────────────
 甘利事件。2016年1月20日、「文春オンライン」は、経
済再生相の甘利明の地元事務所が、千葉県の建設会社の総務担当
者から、現金と飲食接待を合わせ総額1200万円の利益供与を
受けていた疑いがあると報じた。担当者は甘利や秘書とのやりと
りを隠し録音していた。甘利は自らと元公設第1秘書が計600
万円を受け取ったことを認め、28日、経済再生相を辞任した。
 市民団体などからあっせん利得処罰法違反や政治資金規正法違
反の疑いで、告発を受けた東京地検特捜部は4月8日、UR千葉
業務部や建設会社などをあっせん利得処罰法違反容疑で捜索。甘
利本人からも任意で事情聴取したが、甘利側がURに対して不正
な口利きをした事実は確認できなかったとして、5月31日、甘
利と関係した元秘書2人を不起訴(嫌疑不十分)とした。
                  ──村山治著/文藝春秋
       『安倍・菅政権VS検察庁/暗闘のクロニクル』
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/137]

≪画像および関連情報≫
 ●甘利氏不起訴 処罰できぬ法の限界だ
  ───────────────────────────
   甘利明前経済再生担当相をめぐる口利きと現金授受問題で
  東京地検特捜部が甘利氏と元秘書2人について立件を見送っ
  た。あっせん利得処罰法違反と政治資金規正法違反の容疑で
  告発されていたが、容疑不十分で不起訴とした。納得し難い
  結論だ。都市再生機構(UR)との補償交渉に絡み、甘利事
  務所は千葉県内の建設会社側から口利きの依頼を受け、元秘
  書はUR側に「甘利事務所の顔を立ててほしい」と公然と求
  め、10回以上面談を繰り返した。最終的に補償は上積みさ
  れ、約2億2000万円が支払われた。
   一方、甘利氏と元秘書は、計600万円の現金を受け取っ
  た。元秘書は1000万円以上の接待も受けた。有力政治家
  の威光を背景にした典型的な口利きの構図だ。あっせん利得
  処罰法を適用する場合、「権限に基づく影響力の行使」が要
  件になる。具体的には、甘利氏側が国会質問で取り上げるこ
  とをほのめかしてUR側に圧力を加えることなどが求められ
  るという。検察はそうした証拠はなかったとした。
   だが、検察の見解に対し、あっせん利得処罰法の適用を限
  定的に解釈しすぎているとの意見が専門家から出ている。高
  額の接待が不問に付されたことを含め、刑事処分の内容を疑
  問に思う人は少なくないだろう。不起訴処分に対して、告発
  していた市民団体代表らが検察審査会へ審査を申し立てた。
  市民の目から処分の妥当性を点検してほしい。
                  https://bit.ly/2WjklE5
  ───────────────────────────
甘利事件/説明責任.jpg
甘利事件/説明責任
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする