2020年12月15日

●「第3波はピークアウト済みである」(第5391号)

 「人の移動は感染拡大の原因ではない」──菅首相はこのよう
に考えていますが、それが正しいとする分析も存在します。京都
大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授の「目玉焼き
モデル」です。
 宮沢孝幸准教授は、今回の感染者急増について、次のように明
言しています。
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 東京都の感染第3波は既にピークアウトしている。GoTo
 停止や飲食店の営業時間短縮要請に関係なく自然に減少して
 いる。               ──宮沢孝幸淳教授
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 これは驚くべき指摘です。既に「ピークアウトしている」とい
うことは心配しなくてもいいということなのでしょうか。宮沢准
教授は、さらに次のようにいっています。
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 感染者数の上昇は、最初は急激でもスピードは徐々に鈍化しま
す。実効再生産数Rtで見ると、全国レベルではすでに減少に転
じていて、北海道では現時点で感染のピークはすぎています。自
粛しないと感染拡大のスピードは落ちないというのは誤解です。
GoToトラベルを止めても、収束スピードはおそらく変化しま
せん。     ──宮沢孝幸淳教授 https://bit.ly/348YwLS
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 宮沢准教授は、「目玉焼きモデル」というユニークなモデルを
使って、その理由を説明しています。
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 5つの同心円を描き、真中をゾーン1、外側に向かってゾーン
2、3、4、5とします。各ゾーンは場所かつ状況です。ゾーン
1はどんちゃん騒ぎをする飲み屋など、ゾーン2は家庭内感染な
ど、ゾーン3は一般人エリアで、ゾーン4はかなり防衛している
人、ゾーン5は引きこもり。
 感染拡大の火が点くのはゾーン1でそれがゾーン2に飛び火し
ますが、ゾーン3以遠で鎮火します。いまはゾーン2の家庭内感
染が主戦場なので、ここに対策を打てばよい。火はゾーン3に入
ると徐々に消えていき、ゾーン4や5では全然広がりません。多
くの人が過剰なほど防衛している日本では、ゾーン3〜5がとて
も広く、1と2が狭いのです。
        ──宮沢孝幸淳教授 https://bit.ly/348YwLS
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 この説明を読んでもいまひとつピンとこないと思います。しか
し、7〜8月は、ゾーン1の接待を伴う飲食店──東京では新宿
歌舞伎町で感染が広がっていましたが、現在では、歌舞伎町での
クラスターの話はほとんど聞かなくなっています。目玉焼きモデ
ル風にいうと、燃え尽きて、もうこの場所では、どんちゃん騒ぎ
をしなければ、感染のクラスターが起きることはないと宮沢准教
授はいうのです。これは、大阪でも同じことがいえます。
 現在の主戦場は「家庭内感染」であるとし、外からウイルスを
持ち帰って、発症するケースが中心です。しかし、ゾーン3に入
ると、火は消えて行くとしています。
 それなら、最近の第3波のものとみられる感染者数の急増は、
どう説明するのでしょうか。これについては、推定ですが、次の
ように考えられます。
 現在、報道されている感染者は、PCR検査によって「陽性」
と判定された人の数です。これには、民間で実施しているPCR
検査での陽性者は含まれないのです。もともと国の実施している
PCR検査の対象者は何らかの症状のある人に限定しています。
 しかし、最近では、クラスターの疑いがある場合、無症状者に
も幅広くPCR検査を施すので、陽性者のなかに無症状者の割合
が多くなっています。問題は、この無症状の陽性者についての情
報がほとんどないことです。
 そこで、ネット上で、米国のケースを探ると、次のような情報
を発見したので、ご紹介します。2016年から2018年の2
年間の調査結果です。
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 他の一般的な感染症でも、無症状のまま感染を拡大させること
はありうる。だが、研究は重症患者に注目して行われることが普
通であるため、無症状者が関わるケースは見落とされがちだ。
 こうした見えない感染の実態を把握するための調査が、16年
秋から18年春にかけて米ニューヨーク市で行われていた。市内
の複数箇所の214人を対象に毎週、かぜの原因となる従来型の
コロナウイルスやインフルエンザウイルス等、18種類の呼吸器
系ウイルスの検査を実施した。1年半の調査の結果、陽性のケー
スのうち、なんと55%が無症状であり、ほとんどのウイルスに
おいて無症状感染の割合は70%を超えた。
                  https://bit.ly/3oRj1om
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 「陽性者の55%が無症状である」──これは、驚くべきデー
タです。さらに70%の人が、それらの無症状感染者からウイル
スを感染させられているという事実があります。これは、何を意
味するのでしょうか。
 例えば、大規模なクラスターが発生した場合を考えます。この
場合、濃厚接触者全員を検査しますが、そのうち、陽性と判定さ
れた人の約半分以上が、無症状であるということになります。
 問題は、これらの無症状感染者が、どのくらいの割合で、他の
人に感染させるかです。
 無症状感染者といってもいろいろです。数日後に症状の出る無
症状感染者もいれば、まったく症状の出ない人もいると考えられ
ます。この場合、後に症状の出る人の感染力は、菌が多いので、
強いと考えられる一方、症状の出ない人の感染力は、菌が少ない
ので、低いと考えて間違いないと思います。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/135]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナウイルスに感染しても無症状の人の特徴は?
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   ニュースなどでも連日新型コロナウイルス感染症の感染者
  の割合が報道されています。その中でも耳にするのが無症状
  という方。無症状というのは、PCR検査は陽性であったに
  もかかわらず、新型コロナウイルスに関する症状が全く出て
  いない方を指しています。
   新型コロナウイルスに感染しているが無症状である方の割
  合は、現在のところ分かっていません。その理由として、厚
  生労働省が5月以降無症状で新型コロナウイルスを保菌して
  いる方の割合の情報を報じなくなったことも理由としてあり
  ます。また、新型コロナウイルスに感染しているが無症状の
  ため検査を受けていない方もいらっしゃるため正確な値は不
  明としています。厚生労働省が報じている空港検疫の結果を
  見ると連日1日当たり1〜2人は無症状での感染者が報告さ
  れており、かなりの人数がいる可能性があります。
   さらに、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感
  染者のうち、4割ほどが無症状の感染者からうつされている
  としています。感染しても30〜50の方は症状が出ないと
  いうこともあるため、無症状で感染している方は多くいらっ
  しゃることが見込まれます。   https://bit.ly/2Lzo1iY
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宮沢孝幸准教授.jpg
宮沢孝幸准教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする