2020年12月09日

●「政治資金規正法をめぐる政治闘争」(第5387号)


 政治資金規正法という法律は、検察の裁量、つまりさじ加減に
よって、会計責任者への逮捕にいたる重犯罪になる場合もあるし
単なる記載漏れとして罰金刑で済んでしまうこともあります。今
回の「桜を見る会」前夜祭の経費問題は、当の安倍首相(当時)
が国会の場で「経費補填は一切ない」と繰り返し答弁し、否定し
ていたにもかかわらず、実際は安倍事務所による補填金があった
ことが明らかになっています。
 しかし、安倍首相が本当にそのことを5年もの間、知らなかっ
たとは到底思えませんが、すべては秘書がやったこととして、秘
書が略式起訴されることになると思います。
 かつて東京地検特捜部で副部長を務めた、弁護士の若狭勝氏は
次のように述べています。
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 今年5月の告発を受けて捜査を進めてきたのなら、年末までに
処分がなされてもおかしくありません。ただ、政治資金規正法の
不実記載は、第一義的に会計責任者の責任が問われるため、具体
的な関与が立証されない限り、そこから先にたどり着くのは難し
い。また、政治家の責任を問うのなら公選法違反の方がやりやす
いですが、前総理やその秘書を処罰すれば現在の政権にも影響を
及ぼしかねません。正直なところ、いまの特捜部がそこまで腹を
括れるのか疑問が残ります。          ──若狭勝氏
                  https://bit.ly/3gn2uFi
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 同じ政治資金規正法の不実記載でも、検察が衆議院議員の小沢
一郎氏に対して行なったものは、安倍氏の場合と違い、小沢氏を
失脚寸前に追い込み、政治に大きな影響を与えた、いわば犯罪で
す。多くの人は忘れていると思うので、そこで何が行なわれたか
について、過去に私が記したEJの記事を元にして、簡単に振り
返ることにします。
 小沢一郎氏は、現在、立憲民主党の岩手3区を担当する政治家
として集金力は現在でも非常に高く、秘書も多く抱えています。
選挙は滅法強く、中選挙区時代の1969年から連続16回の当
選を重ねています。これまで誰一人としてこの選挙区において、
小沢氏に勝てていないのです。それに小沢氏は、日本全国の選挙
事情に通じていて、自分の選挙区以外の情報を多く持っていると
いわれています。そのため選挙になると、大勢の秘書が情報収集
のため、全国に散るといわれています。これまで自民党を下野さ
せた政治指導者は小沢氏以外いません。
 後に「陸山会事件」と呼ばれることになる事件のはじまりは、
小沢氏が秘書たちの住まいなどに使うため、世田谷区の土地の購
入を決断したことから始まります。その代金は4億円で、これは
小沢氏の自己資金です。これは証明できる資金です。
 2004年10月12日、小沢氏は、その土地の購入代金とし
て4億円を当時衆議院議員の石川知裕秘書に渡しています。陸山
会は、小沢氏から4億円を借り入れたかたちになっています。こ
れについては、2004年の陸山会の政治資金収支報告書に「借
入金」として記載されています。これは、私自身が「官報/平成
17年9月30日」(号外223号)で確認しています。
 10月28日、石川氏は、小沢氏から受け取った4億円をりそ
な銀行衆議院支店に定期預金にし、それを担保として同額の資金
を借り入れています。これについて小沢氏は融資申込書にサイン
しているので、承知していたことになります。そして10月29
日の午前10時に、土地の売主である東洋アレックスに対し、土
地売買代金が支払われています。しかし、この取引については、
政治資金収支報告書に記載されておらず、土地の登記が終了した
2005年の政治資金収支報告書に記載されたのです。
 小沢氏から借りた4億円の記載はありますが、りそな銀行から
の借り入れについての記載がないので、政治資金収支報告書上で
は、金の流れがわからなくなっています。そういう意味で、収支
報告書への記載漏れもあるし、土地の取引は2004年に済んで
いるのに2004年の収支報告書には記載されず、登記が完了し
た2005年に記載されるという記載の期ずれもあります。
 しかし、これは、政治資金収支報告書への事務的な記載ミスで
あり、修正すれば済む話です。悪質でも何でもないのです。とこ
ろが検察は、これに対して次のようなストーリーを組み立て、小
沢一郎氏を裁判にまで追い込んだのです。2012年5月3日の
EJ休日特集号の記事の一部を再現します。
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 多くの人は、陸山会事件──小沢裁判をおそらく次のようにと
らえていると思います。小沢氏は建設会社などからの違法献金で
得た資金など4億円を使い、世田谷の土地を購入し、収支報告書
には、秘書たちと共謀して、そのカネの流れや土地取得の時期な
どをズラして記載し、隠蔽しようとしたというものです。
 報道各社は、検察のリーク情報に基づき、小沢氏側に違法献金
をした建設会社は西松建設と水谷建設であると特定し、その資金
受け渡しの詳細──何月何日、どこそこのホテルで、石川元秘書
が紙袋入りの現金を受け取ったなどという報道をしたのです。
 陸山会公判──3元秘書の公判でそのほとんどが事実に基づか
ないものであることが判明したのですが、テレビや新聞で刷り込
まれたものは消えずに残っています。まして陸山会公判で登石裁
判長は、何の証拠もないのに推認で3元秘書に有罪判決を出した
ので、「小沢=悪人」の印象がさらに深められたのです。
 今にして思えば、司法・検察は、元秘書たちの陸山会公判では
多少無理をしても、どんな批判を浴びても、有罪判決を出してお
かないと困る事情があったのです。もはや小沢氏にとっては検察
だけでなく、裁判所も政敵なのです。
                  https://bit.ly/3otLobQ
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 ひどい話です。検察はメディアと一体となって、完全に小沢氏
を陥し入れようとしたのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/131]

≪画像および関連情報≫
 ●安倍氏「捜査に全面協力」 桜を見る会前夜祭
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   安倍晋三前首相は11月24日、東京地検特捜部が「桜を
  見る会」を巡り同氏の秘書らから任意で事情聴取したことに
  言及した。国会内で記者団に「捜査が行われていると承知し
  ている。事務所として全面的に協力していく」と述べた。
   自らの説明責任に関して「まだ途中の経過だから、今の段
  階で話すことは差し控えたい」とも語った。自身の後援会が
  開いた前夜祭で安倍氏側が費用の一部を負担したかの事実関
  係について明言を避けた。
   自民党の二階俊博幹事長は記者会見で「関係者から直接話
  を聞いていない」と触れるにとどめた。公明党の山口那津男
  代表は「説明責任を尽くす基本的立場は安倍氏側にある」と
  指摘した。
   加藤勝信官房長官は「政府として見守っていきたい」と話
  した。立憲民主党の枝野幸男代表は党会合で「安倍氏本人に
  国会で説明してもらわないといけない」と強調した。「菅義
  偉首相も安倍政権で番頭役の官房長官だった。責任は免れな
  い」と主張した。自民、立民両党の国会対策委員長は24日
  午後に会談した。立民は安倍氏の参考人招致を求めたが自民
  は拒否した。安倍前首相が主催した「桜を見る会」では、開
  催前日に後援会が開いた前夜祭で、安倍氏側が、5年間で計
  800万円超の費用を負担した可能性があることが分かって
  いる。会場となったホテルが安倍氏側が負担したことを示す
  経理書類を作成していた。 https://s.nikkei.com/2K2dTOS
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小沢一郎氏.jpg
小沢一郎氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする