2020年12月08日

●「政治資金規正法違反と検察の捜査」(第5386号)

 「政治資金規正法違反」で思い出すのは、小沢一郎氏にかけら
れた同名の容疑です。検察はこの容疑を軽く見たり、重く見たり
します。人によって、政党によって、恣意的に判断を変えている
ように見えます。小渕優子元経産相や安倍前首相のケースは軽く
見ており、小沢一郎氏のケースは重くみています。
 「桜を見る会」の前夜祭としての安倍晋三後援会主催の東京の
ホテルでの懇親会。そのパーティーに来る人は安倍前首相の選挙
区、山口4区の有権者がほとんどです。そのパーティー費用の会
費の補填金──それを政治資金収支報告書に記載していなかった
というのが今回の事件です。
 しかし、安倍晋三後援会は、選挙区の後援者に対して内閣総理
大臣主催の「桜を見る会」に出席しないかという“誘い”をして
います。これには証拠があります。「桜を見る会」には税金が使
われています。したがって、何らかのかたちで国に貢献した人が
一定の基準で選出され、出席するのが普通です。ところが安倍晋
三後援会の場合、とくに「地元に功績のあった人」を選出するの
ではなく、参加希望者を募っているのです。これは大問題です。
総理主催の行事を私物化しているからです。
 そして、その出席希望者に対して、その前夜において、東京の
一流ホテルでの後援会主催の懇親会に、会費5000円で出席を
募っています。ところが、実際の会費は、1人当たり1万1千円
であり、その差額の1人当たり6000円を安倍晋三後援会が負
担していたのです。この場合、そこに政治資金が使われているの
で、政治資金収支報告書に記載する義務があります。
 しかも、会費の差額分の補填は、有権者に対する利益供与に当
るので、公職選挙法の「買収」と認定されかねない問題です。後
援会はそれを十分認識していたからこそ、政治資金収支報告書に
記載しなかったのではないかと推定されます。
 しかし、東京地検特捜部は、今回の事件では公選法違反では立
件せず、政治資金規正法違反(不記載)で起訴しようとしていま
す。しかも、略式起訴しようとしているのは、政治資金規正法違
反をあえて軽い犯罪と見ているからです。これは、前首相に対す
る忖度以外のなにものでもありません。
 それでは、小沢一郎氏の場合は、どうだったでしょうか。
 2009年3月3日のことです。当時小沢一郎氏は、民主党の
代表として、天下取りの直前。当時の自民党の麻生政権には逆風
が吹いており、このまま、2009年8月30日の衆議院選挙を
迎えると、民主党の勝利は確実で、小沢一郎氏が総理大臣になっ
ていたはずです。そのとき、東京地検特捜部は、小沢氏の公設第
一秘書を政治資金規正法の虚偽記載で逮捕したのです。これは、
明らかな「小沢潰し」です。政治資金規正法違反を重大な犯罪と
みなしたケースです。
 この事件は、明らかに、小沢一郎氏が総理になるのを防ぐため
自民党と中枢官僚機構が組んで、無理を承知でやった荒業です。
そのとき、多くの国民は小沢一郎氏の総理就任を望んでいたので
す。「もはや自民党はダメ。一度政権を変える必要がある」とい
う声が高まっていたのです。私も小沢政権の誕生を望んでいた1
人であり、ちょうどそのとき、EJではテーマとして、「小沢一
郎論」を書いていたのです。
 結局、この公設第一秘書の逮捕によって、小沢一郎氏は代表を
降り、鳩山由紀夫氏が代表になって、8月30日の衆議院選挙で
民主党は政権を取り、自民党を下野に追い込んだのです。しかし
それでも検察は小沢潰しをあきらめなかったのです。
 2010年2月4日、公設第一秘書逮捕の約1年後のことです
が、東京地検特捜部は、小沢幹事長(当時)の資金管理団体「陸
山会」の土地購入を巡る事件で、同会の事務担当者だった石川知
裕衆議院議員、小沢幹事長の公設第一秘書の大久保隆規、同会事
務担当者池田光智の3人を「政治資金規正法違反(虚偽記載)」
で起訴したものの、小沢幹事長については不起訴としたのです。
 これをもって野党の自民党は、自分の資金管理団体の秘書が3
人も逮捕・起訴されたのだから、小沢氏の責任は重大であり、そ
の道義的責任を追及したのです。
 2010年2月5日付、EJ第2748号において、当時衆院
議員だった石川知裕氏の逮捕容疑について、次のように書いてい
ます。単なる政治資金収支報告書の記載未遂で、現職の衆議院議
員を逮捕したのですから、あまりにも乱暴な話です。
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 石川議員の逮捕容疑は「政治資金規正法違反(虚偽記載)」に
なっていますが、元検事で弁護士の郷原信郎氏によると、石川議
員の逮捕・拘置事実は次の通りです。
 「陸山会の2004年分の政治資金収支報告書の『収入金額』
を4億円過少に、『支出総額』を3億5200万円過少に記入し
た虚偽記入の事実」
 要するに収支が合っていないというだけのことです。郷原氏に
よると、政治資金規正法で政治家を逮捕するには、記載されるべ
きであったのに記載されていなかった収入・支出を特定するべき
であるのに、単に収支が合わないという理由だけで逮捕するのは
あまりにも乱暴であるというのです。
                  https://bit.ly/39IVAJt
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 公党のトップの秘書3人をいきなり逮捕し、その容疑は「政治
資金規正法違反(虚偽記載)」だというのです。無茶苦茶な話で
す。これに比べると、トップである前総理に報告せず、自分の判
断で、ホテルの飲食代と会費の差額を勝手に補填し、それを隠す
ために政治資金収支報告書へ記載をしなかった安倍事務所の秘書
の扱いについての検察の寛大なこと。そのうえ、秘書を略式起訴
の罰金刑にするというのです。あまりにも甘い。なぜ、公選法違
反でも捜査しないのでしょうか。これでは、検察はあまりにも前
首相に配慮し過ぎており、国民が検察を信頼しなくなります。そ
れでいいのでしょうか。検察は、完全に腰が引けています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/130]

≪画像および関連情報≫
 ●桜を見る会 前夜祭問題/安倍氏は説明責任を果たせ
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  【論説】安倍晋三前首相の後援会が都内の著名ホテルで支援
  者らを招いて開催した「桜を見る会」前夜祭の夕食会を巡り
  東京地検特捜部が任意で安倍氏の公設第1秘書らを事情聴取
  していたことが判明した。
   前夜祭に関しては弁護士や学者らが、ホテルへの支払総額
  と、参加した支援者らの会費との差額分を後援会側が補填し
  たなどとして公選法違反(寄付行為)や政治資金規正法違反
  の疑いで安倍氏らに対する告発状を出している。
   差額分の補填を巡り、安倍氏は国会で「事務所から費用の
  補填はない」などと繰り返し説明してきた。野党から裏付け
  となるホテルの明細書など示すよう求められても「明細書の
  発行は受けていない」とかわし続けてきた経緯がある。
   だが今回、明細書が存在し、安倍氏側による一部補填を示
  す内容と判明。特捜部は立件の可否を慎重に調べており、安
  倍氏への聴取も検討しているという。補填が事実なら、安倍
  氏は国会で虚偽の答弁を重ねてきたことになる。この疑惑を
  うやむやにしては国民の理解は得られない。前夜祭を巡って
  は、安倍氏の後援会が政権発足以降、2013年から19年
  にかけて都内ホテルに地元山口県の支援者らを招き、桜を見
  る会の前日に開催してきた。19年は約800人が参加し、
  会費は1人5千円だったとされる。
                  https://bit.ly/3mMXufB
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「桜を見る会」の安倍首相.jpg
「桜を見る会」の安倍首相

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする