2020年12月02日

●「全ては菅/杉田共同の策略である」(第5382号)

 安倍前首相と菅前官房長官はまさに「一体」だったのです。安
倍政権を少しでも長く維持するという2人の目的は一致していた
からです。
 安倍首相は、2020年5月15日、ジャーナリスト・櫻井よ
しこ氏のネット番組に出演して、次のように、これまでの憤懣を
ブチまけています。
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 あり得ない。完全にイメージを作り上げている。何でそこまで
問題になるのかと考えていたが、こうなった以上はしっかりと言
いたい。私自身黒川氏と2人で会ったり、個人的な話をしたこと
も全くない。定年延長は検察庁も含めた法務省が人事案を持って
きて、我々が承認したということだ。    ──政界スキャン
              ──『選択』/2020年6月号
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 実は、安倍首相のいっていることは本当のことなのです。もち
ろん安倍首相は黒川弘務氏のことは知っていましたが、会って話
したことがないのは事実です。むしろ、黒川氏のライバルである
当時の林眞琴刑事局長を褒めているのです。
 というのは、2016年の共謀罪審議のさい、安倍首相は金田
勝年法相の要領をえない答弁にいらいらしていたのです。あまり
にもひどいので、答弁しようとする法相のうでを押さえて何回も
答弁を止めたことすらあるのです。そのとき、法相の窮地を救っ
たのは、刑事局長の林眞琴氏だったのです。恩義を感じた安倍首
相はこういったそうです。「あの林という刑事局長はなかなか優
秀だね」と。このことから見ても、安倍首相が黒川弘務氏を何が
何でも検事総長に望んだのでないことは確かです。
 しかし、黒川弘務氏は目立たない存在でしたが、陰で何回も自
民党の窮地を救っていたのです。官邸としては、林氏よりも、黒
川氏の方が使いやすかったのでしょう。それでは、誰がそう思っ
ていたのでしょうか。
 それはおそらく菅官房長官(当時)であったはずです。黒川氏
が何をしたかについては、「論座」の政治ジャーナリスト/星浩
氏の記事をご覧ください。
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 この問題には経緯がある。まず、黒川検事長の経歴から見てみ
よう。1983年、検事任官。法務省秘書課長などを経て、民主
党政権下の2011年に官房長。同政権で官房長官、法相などを
歴任した仙谷由人氏(故人)は、黒川氏が与野党の国会議員らへ
の根回しを進める「調整力」を評価していた。
 2012年に第2次安倍政権が発足した後も、黒川氏は官房長
を続投。アベノミクスの柱である外国人観光客受け入れのための
入国規制緩和で、関係省庁との調整や与党議員への根回しなどを
進めた。共謀罪法案と呼ばれた組織犯罪処罰法改正案の成立にも
奔走した。菅官房長官は黒川氏を高く評価。官房長を異例の5年
間も務めさせたうえ、16年には法務事務次官に抜擢した。こう
した経緯から、法務省内事情に詳しい自民党ベテラン議員は黒川
氏を「官邸の門番」と評する。黒川氏が官房長や事務次官として
森友学園をめぐる公文書改ざん事件を不起訴処分にするなど、検
察の事件捜査にも影響力を及ぼしたという指摘もあるが、確定的
な情報はない。           https://bit.ly/3lejheR
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 安倍首相は、検察庁法改正案について、櫻井よしこ氏のテレビ
でこういっています。「定年延長は検察庁も含めた法務省が人事
案を持ってきて、我々が承認したということだ」と。
 実はこれも事実なのです。検察庁法改正案を官邸に差し出した
のは現法務省事務次官の辻裕教氏です。もちろん官邸がそのよう
に仕向けたのです。その経過について、次の『選択』の記事をご
覧ください。
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 昨年11月中旬、まず辻氏が今年1月発令予定の黒川氏定年退
官と後任人事案を官邸に打診した。菅氏の腹心・杉田和博官房副
長官兼内閣人事局長は却下した。ただし杉田氏は「黒川は辞めさ
せるな」としか言わない。公安警察出身の杉田氏は、各省高官相
手でも常に隠しマイクを警戒している。決して証拠となる言質を
与えない。辻氏は付度した。「検察ナンバー2の黒川氏が残るな
ら、総長になるしかない。(今年夏退官予定の)稲田伸夫総長に
早く辞めてもらえという意味だな」。ところが稲田氏に宮邸の意
向を伝えても、「そうか」と言うばかりで進退を明言しないまま
ずるずる日が過ぎた。
 黒川氏の定年が近づき、杉田氏から「どうなってるんだ」と迫
られた辻氏はルビコン河を渡った。自分も総長候補として生き残
るには政権に従うしかない。黒川氏定年延長の閣議決定の禁じ手
考案したのは、人事制度に詳しい汁氏当人である。次官自ら内閣
人事局の圧力に付度して、「稲田追い落とし・黒川総長実現」を
先導した。黒川氏の処分を懲戒でなく、訓告で済ませたのも同様
だ。森友問題で財務省の佐川宣寿元国税庁長官が陥った落とし穴
に、辻氏もはまったのだ。  ──『選択』/2020年6月号
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 おそらくこうした経緯は、安倍首相本人は、杉田官房副長官か
ら、一応の事情説明は受けたものの、詳しくは聞いていないと思
うし、安倍首相としては、この問題に、それほどこだわっていな
かったのでしょう。むしろ、危機感を持っていたのは、菅官房長
官(当時)の方だったと思います。
 実際問題として、「桜を見る会」の前夜祭の費用負担の問題や
いわゆる河井夫妻の裁判は、一見すると、安倍氏サイドの問題で
あるものの、自民党本部からの1億5000万円の送金がバレて
いるので、菅政権としても無関係ではいられないのです。もし、
裁判で不当な結果が出れば、必ず検察審査会に持ち込まれ、政権
の足を引っ張ることがわかっているからです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/126]

≪画像および関連情報≫
 ●黒川辞任、首相の「寵臣贔屓」が招いた反発とリーク
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   東京高検の黒川弘務検事長が、産経新聞記者や朝日新聞社
  員と外出自粛期間中に賭け麻雀をしていたという週刊文春の
  報道を受けて、5月21日に辞任した。報道内容を認めたと
  いうことで、森雅子法務大臣は黒川氏を訓告処分にし、黒川
  氏は辞表を提出した。この事件の背後には、政権内部の主導
  権争い、検察や法務省内部の権力闘争、マスコミと権力の癒
  着など様々な問題があるだろう。
   SNS上では、芸能人など著名人が反対の声を上げ、「♯
  検察庁法改正案に抗議します」に賛同する人の数が900万
  人を超えたと言われている。この現象に対しては、自粛ムー
  ドでSNSの活用が拡大したからとか、自粛ストレスの解消
  のための八つ当たりだとかいう意見もあるが、あながちそれ
  だけではあるまい。
   この問題は、森友・加計問題、桜を見る会などの問題が曖
  昧に処理されてきたことの延長線上にあると、多くの人が位
  置づけたようである。しかし、少なくとも表面上は、SNS
  などは懸念するに及ばないという姿勢を政府与党は維持して
  きた。問題なのは、このようにSNSで対論が拡大すると、
  スキャンダルをリークしようとする者が増えることである。
  黒川氏が「接待麻雀の常習犯」だったとか、産経新聞社のハ
  イヤーを使ったとかいう話は、情報通報者がいないかぎり分
  からない話である。       https://bit.ly/2Jp9gOI
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金田法相の答弁を制止する安倍首相
金田法相の答弁を制止する安倍首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする