2020年11月19日

●「7〜9月期/4半期ぶりのプラス」(第5374号)

 MMTの主唱者の1人、ステファニー・ケルトン教授は「MM
Tの正しさは日本経済の状態がそれを証明している」といってい
ます。藤井聡京都大学大学院教授の「新/経世済民新聞」のブロ
グに、「麻生大臣のMMT批判はまるで『喜劇』である」という
日本の『悲劇』」という一文があります。きわめて興味深い内容
であるので、少し長いですが、ご紹介することにします。
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 「主流派経済学者なら、GDPの2倍以上の債務残高があれば
金利が凄く高騰していい筈なのに実際はほぼゼロ、あるいはマイ
ナスの状況にある」―――この日本の現状を、主流派経済学では
全く説明できないが、MMTはまさにそうなることを予言し、そ
の予言を的中させ続けているのだ」というのが真実だからです。
 つまり日本は、いま別に、MMTの実験場にする気はないのか
もしれないけど、少なくとも、MMTの理論としての正しさを証
明する壮大な社会実験をやってしまっている、と言う状況にある
わけです。
 にも拘わらず、一国の財務大臣が「MMTの実験場にする気は
ない」なぞと、上から目線でエラソーに話すなんて―――こりゃ
もう、腹を抱えてひぃひぃ涙流しながら、笑い転げるような話な
わけで、そんな、滑稽極まりない恥ずかしい財務大臣&元総理大
臣が、麻生太郎氏、その人なのだ、という次第です。ホントに恥
ずかしい・・・。
 ですが、これはよくよく考えると、相当に深刻な『悲劇』(ト
ラジェリー)です。何と言っても、その下らない三流喜劇が演じ
られているのが、国会のど真ん中であり、政府のど真ん中だから
です。つまり日本の政治のど真ん中で、20年以上にわたって、
馬鹿馬鹿しい喜劇が繰り返されたお陰で、(ミッチェル教授が何
度も繰り返されたように)GDPが世界第2位から第3位にまで
凋落し、未だに成長出来ず仕舞いな国に転落し、しかも、過去5
年の間に消費増税を一度ならず2度までも繰り返してしまい、デ
フレ圧力をさらに超絶にかけることになり、国民の貧困と格差が
さらに拡大しているのですから――。日本人として溜息しか出な
い状況なわけですが、このおかしくも悲しい「悲喜劇」としての
日本政治は、まさに、ミッチェル教授から大変丁寧にご解説いた
だいたMMTによって、大きく変わろうとし始めている──そん
な雰囲気を、今回のシンポジウムを通して感じ取りました。
                  https://bit.ly/3kvxsvr
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 11月16日に内閣府は、2020年7月〜9月の国内総生産
(GDP)速報値を発表しています。これによると、物価変動の
影響を除いた季節調整値で、4〜6月期から5・0%、年率換算
で21・4%増えています。
 日本は、2019年10月に消費税の税率を8%〜10%に引
き上げており、3期連続のマイナス成長だったのですが、4期目
でやっとプラスに転じています。
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     2019年         前期比年率
       10月〜12月期    −1・8%
     2020年
        1月〜 3月期    −2・2%
        4月〜 6月期   −28・1%
        7月〜 9月期    21・4%
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 添付ファイルに、リーマンショックの2008年からコロナ禍
の2020年までの実質GDP成長率の推移のグラフを付けてい
ます。これによると、日本の場合は、2008年のリーマンショ
ック時の落ち込みの後、2011年に東日本大震災があり、20
14年と2019年にそれぞれ消費税の税率を上げています。ま
さにデフレ期の増税であり、こんなに短期間の間に5%もの増税
を行なえば、GDPが成長するはずがないのです。
 コロナ禍の前の2019年10月〜12月は、8%〜10%の
増税によるGDPの落ち込みがあり、それにコロナ禍が加わって
いるので、4〜6月期にマイナス28・1%の急激な落ち込みに
なったのです。
 専門家によると、日本のGDPは、1〜3月期と4〜6月期で
合計8・7%減っており、7〜9月期は、GOTOキャンペーン
などのあらゆる経済政策を集中させても、19年10〜12月期
と比べた回復率はまだ52%にとどまっています。これに対して
4〜6月期に早くもプラス成長に転じた中国は、7〜9月期と合
わせて、GDPが15%も増えているのです。
 問題は、第3波の感染拡大が懸念される10〜12月期の予測
についてです。これについて、2人の経済の専門家は次のように
予測しています。
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★野村総合研究所/木内登英氏
 10〜12月期の成長率は、前期比年率2〜3%と低水準にな
るだろう。
★大和証券/岩下真理氏
 12月には冬季賞与の減少を受けて、消費者の財布のひもが固
くなるだろう。
      ──2020年11月16日付、日本経済新聞夕刊
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 消費税は、明らかにGDPの成長の足を引っ張っています。そ
れでも財務省が消費税にこだわる理由は、所得税や法人税に比べ
て景気の動向に左右されにくく、安定的な財源であることがメリ
ットとしていますが、これは徴税する立場からの目線であり、徴
税される立場から見れば、景気が悪化して収入が減っても定率で
徴収されることを意味します。まして、それを社会保障の財源に
し、社会保障費が増えるごとに税率を上げられる仕組みになって
いるのです。   ──[『コロナ』後の世界の変貌/118]

≪画像および関連情報≫
 ●日本にとって「財政赤字拡大」よりヤバい事態
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   日本人は幾度も危機を経験してきた。ここ20〜30年だ
  けでも「バブル経済」の崩壊、原子力発電所のメルトダウン
  大型台風、世界金融危機があり、そして今、グローバルなパ
  ンデミック(感染症の大流行)が引き起こした経済危機に直
  面している。深刻な事態が起こるたびに、政策当局は財政政
  策(首相、財務相、国会議員による対応)と金融政策(中央
  銀行である日本銀行の対応)を組み合わせて対処してきた。
  今回もそうだが、日銀と政府が実質的に手を組み、強力なワ
  ンツーパンチを繰り出して経済を救おうとすることもある。
   1つ目のパンチは財政刺激策だ。景気をテコ入れするため
  に、政府が支出を増やすと約束するのである。今回のコロナ
  禍では大幅な支出増加が必要だ。現代の資本主義経済を動か
  すのは、基本的に売り上げだ。新型コロナウイルス感染症の
  流行によって売り上げはとくに打撃を受けている。海外から
  の観光客は激減し、国内の居住者は外出自粛でショッピング
  モールやレストラン、バーなどでお金を落とさなくなってい
  る。売り上げ不振とは、企業から顧客、そして利益が消えて
  いくことを意味する。      https://bit.ly/3kCd7Vx
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実質GDP成長率の推移
実質GDP成長率の推移

posted by 平野 浩 at 09:14| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする