成長率について次のように述べています。
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新型コロナ感染拡大の影響で、2020年第一四半期(Q1)
マイナス6・8%(前年同期比、以下同じ)と大きく落ち込んだ
中国経済成長率は、Q2に市場の事前予想(2・5%前後)を上
回る3・2%を記録し、主要国の中で一足先にマイナス成長から
脱却した。中国国家統計局(NBS)によると、7月も工業生産
額が前年同月比4・8%増、生産供給面が引き続き回復し、市場
の需給状況が緩やかに改善、経済は全体として安定的に回復して
いるという。
中国メディアは「世界が中国経済の回復力に注目し、また世界
の人々を勇気づけている」と報じ、下期はさらに回復し、20年
の通年成長率は1〜3%になるとの予測も出てきた(恒生銀行8
月調査リポート、中国地元経済誌)。 https://bit.ly/31LV7RN ─────────────────────────────
この経済の急回復には疑問があります。6月中旬時点で生産水
準が80%以上回復した企業が全体の70%弱に過ぎないといい
ながら、工業生産や工業企業利潤などの回復があまりにも大き過
ぎるからです。しかし、EJはその詳細の記述は省略し、元財務
官僚の金森俊樹氏の次のレポートに譲ることにします。金森氏は
中国の経済報告のウソも指摘する論文も書いており、一緒に読む
ことができます。
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◎中国経済、新型コロナ不況脱却は真実か?──成長軌道復帰
論の考察/金森俊樹著 https://bit.ly/31LV7RN
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米中貿易戦争が始まって、中国としては、対米貿易黒字(米国
から見ると、対中貿易赤字)を大幅に減らすことを米国から求め
られています。それは必然的に外貨資産ドルの減少につながるの
です。そこにコロナ禍です。事実上のドル本位制の中国では、ド
ル資産が減ると、コロナ対策のために多量の人民元を刷れなくな
り、一層外貨が逃避する恐れがあります。しかも中国はコロナの
発生源であり、経済回復に遅れると、海外からの投資を呼び込め
なくなり、それがさらにドル資産が減少する原因となる恐れがあ
ります。そのため、どんな手段をとっても、経済の急回復を世界
に対して演じて見せる必要があるのです。
添付ファイルをご覧ください。これも産経新聞特別記者、田村
秀男氏の著書に出ていたものです。上のグラフ「A」は、「人民
元資金発行と人民銀行の外貨資産(%)」をあらわしています。
折れ線グラフは、人民元資金発行前年比増減(左目盛り)であり
塗りつぶしてあるグラフは、外貨資産(右目盛り)です。
外貨資産は、リーマンショック後の2008年以降、一貫して
減少しており、人民元の発行もそれにリンクして減少してきてい
ることが読み取れます。これについて、著者の田村秀男氏は、次
のように解説しています。
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リーマンショックの際には、ふんだんにある外貨(ドル)を裏
付けにして人民元を大量発行する大々的な金融緩和策を実施する
ことができたわけです。(中略)中国経済は勢いづいて、2ケタ
の高度成長軌道に乗り、リーマン・ショック後の世界経済を牽引
しました。
ところが、2014年頃からは、人民元発行高に対する外貨資
産比率が100%台を割り、最近では70%前後で推移していま
す。中国国内から香港経由による国外への資本逃避が急増してい
るため、以前のように外貨資産を増やせないのです。さらに現在
は、コロナ・ショックの影響により、主力外貨収入源である輸出
が急減しています。習近平政権にしても、財政・金融の拡大をし
たいのは山々でしょう。しかし、ドルの裏付けなしで人民元を大
量発行すれば、最悪の場合、悪性インフレに陥ってしまいます。
そうなると、共産党政権の存続そのものが危うくなるのです。
──田村秀男著/ワニブックス刊
『景気回復こそが国の守り脱中国、消費税減税で/日本再興』
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添付ファイルのグラフの「B」をご覧ください。棒グラフと折
れ線グラフが付いていますが、棒グラフは実質経済成長率(右目
盛り)です。6%台の成長が続いており、コロナでマイナス約7
%までダウンしましたが、6月には一挙に3・2%にプラスに転
じています。このプラス変化が疑わしいことは、前半のところで
述べいます。このような急激なプラス変化が短期間で起きること
は考えられないからです。
折れ線グラフは2種類あり、実線はセメント生産(左目盛り)
をあらわしています。中国の場合、GDPの約半分が固定資産投
資になっています。建物など、いわゆるウワモノへの投資です。
そのためには、セメントが不可欠ですが、セメントの生産は低迷
を続けており、2018年にはマイナスに転じ、少しブリ返して
はいるものの、GDPを大きく押し上げるほど、セメントは生産
されていません。
折れ線グラフの実線は、自動車生産(左目盛り)をあらわして
います。自動車生産は、2018年からマイナスに落ち込んでお
り、2ケタの減少です。田村秀男氏は、これについて次のように
述べています。
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このような状況のなか、6・1%という経済成長が果して可能
でしょうか。ありえません。セメント生産と自動車生産の動向を
踏まえれば、当時の中国経済は、実質マイナス成長に陥っていた
可能性がある、というのが私の見立てです。 ──田村秀男著/
ワニブックス刊の前掲書より
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──[『コロナ』後の世界の変貌/104]
≪画像および関連情報≫
●中国「経済統計」の水増し、矛盾の実態とは?
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2018年1月、内蒙古、天津が相次いで、経済統計に水
増しがあったことを明らかにした。内蒙古は16年の財政収
入の26・3%と総工業生産の40%にあたる各々530億
元、2900億元、天津はその濱海新区の16年公表GDP
1兆元強の30%以上が水増しだったとした。さらに、中央
政府が発表した17年経済実績や全人代での説明ぶりにも疑
問が出されている。
中国では以前から、中央政府が発表する全国GDPと各地
方政府が発表する地方GDP合計に大きな乖離があり、「数
据打架(ダージア)」、つまり「数字が喧嘩する」現象と呼
ばれてきた。地域をまたがる経済活動が重複計上されるとい
う技術的要因があるが、それだけではなく、地方政府による
「注水」と呼ばれる水増しが指摘されてきた。
https://bit.ly/31OqMCg
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中国関連グラフ/A/B