2020年10月28日

●「十分あり得る中国による台湾侵攻」(EJ第5359号)

 世界の自由主義国陣営は、昨今の中国の覇権的行動に対処する
には、「何とか中国の経済を止める」ことに焦点を絞りつつあり
ます。ここまで経済面を中心に書いてきましたが、今日は、この
問題はひとまず置いて、最近の中国に関する気になる情報につい
て、考えてみることにします。
 10月13日のことです。習近平主席は、広東省海軍陸戦隊の
部隊を視察し、次のように「戦争に備えよ」と指示しています。
海軍陸戦隊とは、米軍でいうと海兵隊にあたります。上陸作戦に
投入される部隊で、台湾や沖縄県・尖閣諸島への作戦を念頭に編
成された部隊といわれています。
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 全身全霊で戦争に備え、高いレベルの警戒態勢を維持しなけれ
ばならない。                ──習近平主席
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 まるで戦争を煽っているような習近平主席の激しい言葉には、
理由があります。1日前の10月12日、米海軍と海上自衛隊が
南シナ海で、日米共同訓練を実施しているからです。この訓練に
は、海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦「かが」、護衛艦「い
かづち」、米海軍からは、イージス駆逐艦「ジョン・S・マケイ
ン」と補給艦「ティビカヌー」が参加しています。そして、習近
平主席の発言の次の日の14日、米駆逐艦「バリー」が、台湾海
峡を通過しています。まるで戦争前夜のようです。
 10月23日のことです。北京の人民大会堂で開かれた中国軍
の朝鮮戦争参戦70周年の記念大会での演説で、習主席は、突然
声を荒げて米国を罵倒し、ここでも人民を煽っています。
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 米国の脅迫、封鎖、圧迫は通用しない。勝手に行う覇権行動も
通用しない。朝鮮戦争でわれわれは、米軍の不敗神話を打ち破っ
たのである。米軍の運命はどん詰まりの死路である!
                      ──習近平主席
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 米国を名指ししての激しい言葉です。なぜ、ここまでいうので
しょうか。外事警察関係者は、中国共産党内の次の事情を明かし
ています。
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 習氏は必死だ。共産党内で「習降ろし(=クーデター)」が始
まっている。新型コロナウイルス対策は失敗、米国とは、全面対
決。世界が中国を敵視し始めた。すべて習氏の大失政だ。習氏は
終わりだ。それだけに怖い。追い詰められた習氏が暴走する危険
がある。    ──2020年10月26日発行「夕刊フジ」
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 さらに中国を刺激させる情報があります。ヨーロッパ最強とさ
れる英国海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」打撃群が南
シナ海で、「航行の自由」作戦を行う計画があるからです。これ
について、時事ドットコムは次のような伝えています。
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 【ロンドン時事】2020年7月14日付の英紙タイムズは軍
高官らの話として、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心
とする空母打撃群が来年初めに極東に派遣され、周辺海域に当面
の間とどまる計画が進められていると報じた。海洋でのプレゼン
スを強化する中国に対抗する狙いで、日本や米国との合同演習も
想定しているという。
 2017年就役のクイーン・エリザベスは全長約280メート
ル、排水量約6万5000トンと英海軍最大級の艦船。操艦要員
は700人で、航空要員を加えると乗員は1600人に達する。
極東派遣が初の本格航海となり、展開時には最新鋭ステルス戦闘
機F35B2個飛行隊を搭載し、45型駆逐艦なども随伴。飛行
隊は英空軍と米海兵隊の所属機で構成する可能性が高いという。
 軍高官はクイーン・エリザベスの極東派遣に当たり、F35を
保有する日本と米国に空軍戦力として打撃群への参加を要請する
案を策定。オーストラリアやカナダなど他の同盟国からも、潜水
艦提供などの支援を見込んでいる。  https://bit.ly/2TsSO1D
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 米情報当局関係者からの情報によると、英国は、この空母「ク
イーン・エリザベス」を台湾に寄港させる案を検討しているとい
われます。「台湾を守る」という決意を宣言するためです。EU
諸国も「中国は新型コロナウイルスの発生源で、全世界の経済を
最悪にした敵性国家」とみています。水面下で、もし中国が「台
湾に侵攻すれば国交断絶」と警戒しています。
 懸念されることは、米大統領選が早期に決着がつかず、政治空
白が生まれた場合、中国はその間隙を縫って、台湾を侵攻する危
険があることです。中国当局は人民に対し、密かに「台湾に親戚
友人、ビジネス関係を持つ者は申し出るように」という命令まで
出しています。このような台湾侵攻が起きると、尖閣諸島も同時
に侵攻される危険性があります。既に中国は、尖閣諸島を本気で
獲りにきており、事態はきわめて深刻です。
 尖閣諸島の問題は日本にとって難問ですが、今年の1月10日
に、米陸軍長官ライアン・マッカーシー氏は、「尖閣諸島の米軍
基地化」に言及しています。
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 米陸軍長官ライアン・マッカーシーは、1月10日、軍事関連
の情報をまとめたジェーン年鑑で有名な出版社HISマーキット
の記者アシュリー・ロックのインタビューの中で、2021年に
新たな基地を尖閣に作ることを検討していると答えた。新たに設
置される軍は、マルチドメインタスクフォース(MDTF)と呼
ばれるマルチドメイン作戦を支える軍隊で、その一部の兵士と武
器を尖閣諸島に置くことを検討していることを明らかにした。
                  https://bit.ly/37HXaKz
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         ──[『コロナ』後の世界の変貌/103]

≪画像および関連情報≫
 ●中国共産党の極端さ軽視できず、米国の衰退確信か
  ──中台「一触即発」
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   中国共産党は台湾への侵攻も辞さない姿勢を70年余り続
  けている。アナリストや当局者、投資家の間では、今後数年
  以内に中国が台湾に攻め入り、米国との戦争につながる可能
  性があるとの不安が広がりつつある。
   「大きな危機が近づいていると懸念を強めている」と米プ
  ロジェクト2049研究所のシニアディレクター、イアン・
  イーストン氏は言う。「全面的な侵略の試みとその後の超大
  国の戦争という結果を想定し得る。今後5ー10年は危険な
  時期になるだろう。こうした一触即発の状況は基本的に不安
  定だ」と指摘。同氏には中国による侵略の脅威と台湾の防衛
  力、米国のアジア戦略についての著書がある。
   ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によ
  れば、中国の軍事費は台湾の約25倍。核兵器は言うまでも
  なく、ミサイルや戦闘機、戦艦、兵士の数など通常戦力でも
  中国が明らかに有利だ。ただ台湾は何十年にもわたり中国の
  侵攻に備えており、中国が行動に移せば極めて大きなリスク
  に向き合う公算が大きいというのが現実だ。米国防総省や情
  報機関に助言してきたマイケル・ベックリー氏は2017年
  の論文で、「中国人民解放軍は台湾軍への対応で手一杯にな
  る」と分析。米国がその戦闘に加われば、中国の台湾侵攻は
  失敗すると予想した。      https://bit.ly/31Eg1T1
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英新鋭空母/クイーン・エリザベス.jpg
英新鋭空母/クイーン・エリザベス
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする