2020年10月12日

●「SoCをめぐる世界レベルの競争」(EJ第5347号)

2020年3月の武漢市の出来事です。3月18日付の日本経
済新聞に次の記事が掲載されています。
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 世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの発生源となった中国
湖北省武漢市で、中国政府が封鎖措置の例外としている施設があ
る。国策半導体メーカーである紫光集団傘下の長江存儲科技(Y
MTC)の工場だ。市外から技術者が送り込まれ、製品の生産・
出荷を続ける。海外への技術依存から脱して最先端半導体を国産
化しようとする国家戦略が優先されている。
         ──2020年3月18日付、日本経済新聞
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 中国政府は、コロナ禍で1月23日から武漢市を封鎖していま
す。封鎖が解除されたのは3月25日のことですから、この記事
が掲載された時点では封鎖が解かれていないのです。しかし、こ
の半導体工場は特別扱いであり、YMTC工場への材料の搬入や
労働者の投入、完成品の省外への出荷などは、一定の条件の下で
認められていたのです。それほど中国の習近平政権にとって半導
体生産は、国家計画を進めるために不可欠なものなのです。
 この工場では、IoTに不可欠なフラッシュメモリーの国産化
を進めていますが、この分野は、米国、韓国、日本でほぼ独占し
ているので、中国政府は、2014年に半導体産業育成のために
1387億元(約2・1兆円)規模の巨大ファンドを設立し、こ
のYMTCに240億ドルを投入し、国産化を進めようとしてい
るのです。
 このYMTC製のフラッシュメモリー、正確にいうと、初の国
産による64層3次元NAND型フラッシュメモリーの最大の買
い手は、あのファーウェイです。しかし、それでもYMTCの技
術は、競合他社に1世代は遅れています。
 この半導体分野の世界の先頭ランナーは、ウァーウェイです。
しかし、それは半導体設計の分野であり、製造の分野では大きく
大きく遅れています。製造は、台湾のTCMCに頼らざるを得な
いのですが、ファーウェイが中国のトップランナーであることは
確かです。中国の半導体の自給率を足元の20%から、2025
年には70%まで高める──これが、中国のハイテク産業推進策
「中国製造2025」ですが、米国の禁輸策で足元を足元をすく
われつつあります。
 現在、半導体の競争の中心になっているのは、主としてスマホ
やタブレットに使われている「SoC」です。これについて少し
述べることにします。
 「SoC」とは何でしょうか。
 「SoC」は、「System on a chip」の略で、一つの基盤に次
のものをユニットとしてまとめたものです。先週2日のEJの添
付ファイルを参照してください。
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            @CPU
            AGPU
            BDSP
            CNPU
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 @は「CPU」(Central Processing Unit)です。
 スマホ向けのCPUは、ほぼ100%英ARM社製です。その
役割は、OSのなどの動作を担い、データの管理とユニットの管
理を行います。最近では、CPUは複数のコア(CPU)を持つ
ものが普通になっています。
 Aは「GPU」(Graphics Processing Unit)です。
 GPUの主な役割は、グラフィック関連のデータを扱います。
とくにゲームなどの3Dグラフィックス描写の計算処理は、CP
Uとは、比較にならない速度を発揮します。
 CPUとどこが違うかというと、GPUは複雑な計算は出来な
いが、簡単な繰り返し計算などは超高速で行います。スマホ向け
のGPUに関しては、米クアルコムの「アドレノ」、英ARMの
「マリ」など、多数あります。
 Bは「DSP」(Digital Signal Processor)です。
 DSPは一言でいうと、CPUより専門性を高めて効率化した
CPUがDSPです。米クアルコムの「ヘキサゴン680」とい
うDSPがあります。汎用的に使われるCPUに対しDSPでは
汎用性を犠牲にし画像や映像データ、各種センサーに通信処理な
ど本来CPUが行う仕事の一部のみ高効率に肩代わりすることが
できます。
 Cは「NPU」(Neural Network Unit)です。
 AI(人工知能)の処理、ニューラルネットワークに特化した
ユニットがNPUです。ファーウェイのスマートフォンに搭載さ
れているSoCの「Kirin (麒麟)シリーズ」では、ハイエンド
向けの900番台にNPUが搭載されています。AIによるシー
ン認識や画像処理などカメラ機能を中心に活用されています。
 SoCの主なメーカーと、それぞれのSoCブランド名を上げ
ておきます。
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                 SoCブランド名
    クアルコム(米国) ・・ スナップドラゴン
  メディアテック(台湾) ・・ ヘリオ
   ハイシリコン(中国) ・・ キリン
     サムスン(韓国) ・・ エクシノス
     アップル(米国) ・・ Aシリーズ
     シャオミ(中国) ・・ サージ
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 今やPCの時代ではなく、スマホやタブレットの時代です。5
G、6G。これらの技術を巡る競争が、米国と中国を中心に激し
く行われています。そこには、日本の影もないのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/091]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ5G対応のiPhoneはまだ登場しないのか?
  カギを握るモデムチップの存在
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   主要なスマートフォンメーカーが次々と5G対応スマート
  フォンを投入する中、唯一5G対応が進んでいないアップル
  の「iPhone」。その理由はモデムチップと、それを開発する
  メーカーとの関係が大きく影響しているのだが、5G対応の
  iPhoneが登場するのはいつになるのだろうか。
   国内でも5Gの商用サービスが始まったことから、スマー
  トフォンメーカー各社の5Gスマートフォンが次々と発売さ
  れている。5Gの商用サービスは海外で先行して展開してい
  ることから、主要な海外メーカー大手は既に幾つかの5Gス
  マートフォンを投入。国内でも既にサムスン電子が「ギャラ
  クシーS20」、ファーウェイが「ファーウェイメイト30
  プロ5G」を提供している他、日本に進出して日が浅いオッ
  ポやシャオミが、KDDI(au)やソフトバンクの5Gス
  マートフォンラインアップに顔をそろえるなど、5Gを機と
  して国内での足掛かりを強化しようとしている様子がうかが
  える。そして海外メーカーだけでなく、国内のメーカーも日
  本での商用サービス開始に照準を合わせて5Gスマートフォ
  ンの開発を進めてきたことから、各社が次々と5Gスマート
  フォンを投入してきているようだ。実際、シャープは、NT
  Tドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が商用サービスを
  開始するのに合わせて、5G対応スマートフォン「アクオス
  R5G」をいち早く発売しているし、ソニーモバイルコミュ
  ニケーションズの「エクスペリア1−U」も、KDDIから
  5月22日に発売された。    https://bit.ly/3nAeaYx
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CPUとSoC.jpg
CPUとSoC.





posted by 平野 浩 at 04:53| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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