2020年10月09日

●/「CPUが今大きく変わりつつある」(EJ第5346号)

 藤井聡太氏が二冠を勝ち取った直後、ある記者から「将棋以外
のことで興味をもっていることはありますか」と聞かれ、藤井二
冠は「PCの組み立て」と答えています。実は、PCの組み立て
も、将棋に関係があるのです。それに組み立てているPCは単な
るPCではないのです。スペックについて記者が突っ込むと、藤
井氏は次のように答えています。
─────────────────────────────
 将棋ソフトですと、CPUのマルチスレッド性能がとても重要
であり、そのコア数が多ければその分、性能が上がります。「ラ
イゼン・スレッドリッパー3990X」です。将棋専用で使って
おり、ソフトは2つ持っています。     ──藤井聡太二冠
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 「ライゼン・スレッドリッパー3990X」というCPUは、
インテル社の競争相手である米国のAMD(アドバンス・マイク
ロ・デバイセス)の製品で、正確には次の名称です。マニア向き
製品であり、価格は約50万円です。
─────────────────────────────
  AMD
  Ryzen Threadripper 3990X 2.9GHz 64コア/128スレッド
─────────────────────────────
 将棋の指し手について、一般的なPCの場合、CPUが1秒間
に約200万手読むのに対し、このCPUでは30倍の6000
万手読めるのです。したがって、多くの局面を検討できるので、
プロの棋士には、これから必需品になる可能性があります。
 「64コア/128スレッド」について簡単に説明しておくこ
とにします。PCが出現して以来、かなり長い間にわたり、PC
のCPUは1個だったのです。しかし、CPUが2個付いている
PCが登場してから「コア」という言葉が登場します。「デュア
ル・コア」というようにです。この場合、「コア」というのは、
CPUが2個付いているCPUということになりますが、ややこ
しいので、2つのコアを有するCPUというように呼びます。
 藤井氏が購入したという「ライゼン・スレッドリッパー399
0X」は、64個のコアを有するCPUということになります。
コアの数によって次のよう名前がついています。こういう複数の
コアを持つことを「マルチコア」といいます。コアが64個も付
いているのは「デカ・コア」です。
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      コア2 ・・・・・ デュアル・コア
      コア4 ・・・・・ クアッド・コア
      コア6 ・・・・・  ヘキサ・コア
      コア8 ・・・・・  オクタ・コア
   コア10以上 ・・・・・   デカ・コア
─────────────────────────────
 それでは「スレッド」というのは何でしょうか。
 CPUに搭載されているコア1個当り同時にこなせる仕事の数
のことを「スレッド」といいます。CPUのメーカーは、CPU
1個で、その速度(クロック速度)を向上させることで、処理速
度を上げようとしたのですが、この方法では、大量の電気と熱の
発生に対応しなければならなかったのです。大量の電気を使って
速度を上げれは、大量の熱が発生します。
 その解決策の1つとして、クロック速度はほどほどにしておい
て、その分コア数を増やすことによって、同時に処理できる仕事
の数(スレッド)を増やし、結果として処理速度を上げようとし
たのです。この方法であれば、省電力で、速度を上げることこと
が可能になります。
 将棋の棋士のように、有効な指し手を見つけるためにあらゆる
可能性を探る職業では、64コア/128スレッドを有するコン
ピュータは大変役に立つというわけです。
 ここまでの話はPCのCPUの話ですが、スマホやタブレット
のCPUは別の世界です。ここは英国のARMが支配力を強めて
いることは昨日のEJで述べた通りです。このARMファミリー
のなかにアップルシリコンが入っています。アイフォーンやアイ
パットのCPUの設計のためです。CPUの製造は、台湾のTS
MCに委託していることは、既に述べています。
 しかし、アップルは、2006年からインテルと組み、それに
よって大きな利益を上げてきているのですが、6月22日にイン
テルと組んでいたアップルが、2年かけてインテルと別れると宣
言したのです。これは何を意味するのでしょうか。アップルには
新たな構想があるようです。本当は、ファーウェイもその路線を
狙ったのですが、米国による制裁対象にされ、頓挫せざるを得な
くなっています。
 これについて知るには「SoC/ソック」について知る必要が
あります。「SoC」の定義を次に示しておきます。
─────────────────────────────
 SoC(A system on a chip)は、シリコン半導体チップの上
に多くの半導体素子(トランジスタ)を集積して中央処理ユニッ
ト(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、メモリ
ーなど複数の機能群を載せ、「システム」として製品化した半導
体部品を指す言葉。プロセッサ(処理装置)という言い方では収
まらない複数の機能を集積した部品がSoCである。
                  https://bit.ly/36Bqulv ─────────────────────────────
 添付ファイルとして、SoCの図解を付けています。スマホは
PCと比べると、小型でバッテリーも制約があるので、このよう
な小さなユニットにまとめる必要があるのです。
 このユニットのなかには、「GPU」とか「DSP」とか「N
PU」というものがセットされています。これらは、何を意味し
ているのでしょうか。これらについての説明は、来週のEJで述
べることにします。これらは米中関係にも関係があります。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/090]

≪画像および関連情報≫
 ●通信産業の根深い「米中依存」、分断後の技術開発の行方
  ───────────────────────────
   現在、あらゆるテクノロジーを使った機器は、多数の国か
  ら生まれた知見の集約で生まれている。その最たるものは、
  スマートフォンだ。ハードウェアもソフトウェアも、そして
  前提となるネットワークまで、ひとつとして一国のエンジニ
  アだけでは成り立たない。アメリカと中国はそれらにおいて
  中核をなす存在であり、きわめて強く相互依存している。
   ファーウェイが米商務省産業安全保障局のエンティティリ
  ストに掲載され、実質的にファーウェイへの輸出が「禁止」
  されたことを受け、米中の依存関係がすぐに露出した。ソフ
  トウェアでは、米グーグルがファーウェイ製スマホに使われ
  ているOSアンドロイドのアップデートサービスを今後停止
  するという。ハードウェアにおいても、ファーウェイへパソ
  コンやデータサーバーのためのCPUを供給するインテルや
  OSを供給するマイクロソフトなどもサービス停止と報道さ
  れている。
   また、ファーウェイは自社製スマホ用半導体「キリン」シ
  リーズに英アーム社のプロセッサー技術を使っているが、ア
  ーム社は、ファーウェイへのライセンス供与を停止するとい
  う。ファーウェイはOSとプロセッサーという、中核の「部
  品」に大きな影響を受けたことになる。
                  https://bit.ly/34ylg7q
  ───────────────────────────

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SoC.j
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(3) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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