2020年10月07日

●「中国の半導体生産がピンチに陥る」(EJ第5344号)

 9月28日のことです。日本経済新聞の一面に、フィナンシャ
ル・タイムズの報道として、次の記事が掲載されたのです。
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 ◎米、SMIC向け輸出規制/FT報道
  中国半導体大手 事前許可制に
 【ワシントン=鳳山太成】米商務省が中国半導体受託生産の中
芯国際集成電路製造(SMIC)に米国企業などが特定製品を輸
出する場合に、事前に同省の許可を得るように求めていることが
26日わかった。英フィナンシャル・タイムズ(FT)など、複
数の欧米メディアが報じた。
      ──2020年9月28日付、日本経済新聞第1面
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 この記事に合わせて、同じ日の日本経済新聞の第3面には、次
のタイトルで詳細な解説記事を載せています。まさに大ニュース
の扱いです。
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 ◎中国、半導体生産に暗雲
  米、対SMIC輸出許可制に/ハイテク産業影響も
      ──2020年9月28日付、日本経済新聞第3面
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 これら2つの記事は、半導体の製造事情に詳しい人以外は理解
するのが困難であると思われます。このことが中国にとっていか
に大ダメージになるかについて解説します。
 EJでは何度も書いているように、華為技術(ファーウェイ)
の傘下には、海思半導体(ハイシリコン)という半導体製造メー
カーがあって、ファーウェイは、そこから最先端の半導体の提供
を受けています。半導体の製造メーカーには、次の2つのタイプ
があるのです。
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           @ ファブレス
           Aファウンドリ
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 @の「ファブレス」とは、文字通りファブ(工場)を持たない
半導体メーカーで、半導体を設計するのが専門です。これに対し
Aの「ファウンドリ」とは、実際に半導体デバイス(半導体チッ
プ)を生産する工場を持つメーカーのことです。ハイシリコンは
ファブレスであり、SMICはファウンドリです。
 半導体を作るには、半導体製造装置が不可欠です。その分野で
は、米国が圧倒的に強いのです。売上高で比較した2019年度
のベスト10を以下に示します。
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  1位:アプライド・マテリアルズ        米国
  2位:ASML              オランダ
  3位:東京エレクトロン            日本
  4位:ラムリサーチ              米国
  5位:ケーエルエー・テンコール        米国
  6位:アドバンテスト             日本
  7位:大日本スクリーン製造          日本
  8位:テラダイン               米国
  9位:日立テクノロジーズ           日本
 10位:ASMインターナショナル      オランダ
       ──VLSIリサーチ https://bit.ly/3mXdFYt ─────────────────────────────
 この分野では、オランダ2社を除くと、米国と日本が4社ずつ
を占めています。日本はこの分野では強いのです。ベスト10に
4社が入り、11位〜13位、15位も日本です。11位はニコ
ン、12位はKokusai Electric、 13位はダイフク、 14位に
中国のASM Pacific Technology 社が入って、 15位はキャノン
です。これによると、15位中実に8社が日本のメーカーです。
 最近日本はもはや先進国とはいえないとか、かつての栄光は今
はないとかいう評論家がいますが、日本はこういうあまり表に出
ない分野で優れた技術力を発揮しているのです。
 中国は、米国と仲が悪くなると、日本に接近してきますが、米
国とのビジネスが完全にダメになっても、日本が協力すれば、あ
る程度代替できるからです。逆に米国と日本がこういう技術分野
で組むと、習近平指導部が掲げるハイテク産業振興策「中国製造
2025」などは実現が困難になります。
 このようなあまり表に出ない世界が真似ができない日本の技術
の存在を知らしめたのが、韓国へのホワイト国外しです。フッ化
ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目の輸出について、韓
国をホワイト国から外したのです。これらは、半導体を製造する
ときに不可欠な物質で、これら3品目の日本の世界シェアは、フ
ッ化ポリイミドとレジストが約9割、フッ化水素が約7割です。
他に代替が効かないのです。韓国は自国製に取り組むといいます
が、短期間でそれを実現するには不可能です。
 シャープ、パナソニック、東芝など、無数の日本メーカーが凋
落したので、日本の製造業がダメになったと勘違いしている日本
人が多いですが、日本はとっくの昔に中身で勝負するメーカーに
変身しているのです。この分野で、米国と日本は圧倒的に強いの
です。米国のELの基準では、米国の原産技術や米国製部品が、
25%以上使われている製品は「米国製」としていますが、世界
のあらゆる製品において、日本製の部品が使われていない製品は
ないといっていいほど、日本の製品は強いのです。
 米国は、中国の出方によっては、この基準を10%まで強化す
るといっています。もしそういうことになると、世界各国の中国
向け機械や、電気、ハイテク製品については、ほとんどすべてが
輸出禁止になるはずです。そうなったら、ファーウェイの生産は
完全に止まることになります。中国は、SMICを頼りにしてお
り、それに賭けていたのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/088]

≪画像および関連情報≫
 ●米、中国の半導体大手SMIC向け輸出を一部制限との報道
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   米商務省は、技術が軍事活動に利用される懸念から、中国
  最大手の半導体ファウンドリー中芯国際集成電路製造(SM
  IC)に特定の製品を輸出する前に許可を得なければならな
  いとする書簡を米国内の企業に送付したと報じられている。
  中国のハイテク企業に対する米国の慎重な姿勢があらためて
  明確に示された。
   ニューヨーク・タイムズの9月26日付の記事によると、
  米商務省は書簡の中で、SMICへの輸出には「中華人民共
  和国の軍事的な最終用途に転用されるという容認できないリ
  スクが伴う可能性がある」としている。
   米国は、2019年、中国の通信大手、華為技術(ファー
  ウェイ)に製品を販売する米国企業に制限を課した。ファー
  ウェイの中国政府との関係が懸念され、同社製品が他の国や
  企業に対するスパイ行為に利用される恐れがあるとされた。
   また、中国企業の字節跳動(バイトダンス)傘下の動画ア
  プリ「ティックトック」は現在、アプリが収集するユーザー
  データが中国共産党政府に共有される恐れがあるとして、米
  国内で禁止される可能性に直面している。ファーウェイもバ
  イトダンスも、そうした懸念は根拠がないと主張している。
  SMICは中国で最も技術的に高度な半導体メーカーだが、
  業界をリードするチップメーカー各社と比べると遅れており
  最先端の用途に対応するチップを製造することはできないと
  NYTは報じている。      https://bit.ly/30fJv8Y
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SMIC.jpg
SMIC
 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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