2020年10月05日

●「華為技術が狙う海底ケーブル覇権」(EJ第5342号)

 近年の海底ケーブル市場には、次の3つの変化が起きていると
いわれます。
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        1.    投資主体の変化
        2.   敷設ルートの変化
        3.トラフィック流通の変化
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 第1の変化は「投資主体の変化」です。
 これまで海底ケーブルといえば、通信事業者が敷設・運営する
ものだったはずです。しかし、近年は、通信容量の需要家として
台頭してきたクラウド事業者や、コンテンツ・プロバイダーが、
自営ネットワークとして所有するようになってきています。
 第2の変化は「敷設ルートの変化」です。
 海底ケーブルは、自然災害による障害に対するレジリエンシー
(回復力)の向上に加えて、アジア、中東、アフリカといった新
興市場への対応の必要性の高まりを受けて、今までにない敷設ル
ートが開拓されつつあります。
 第3の変化は「トラフィック流通の変化」です。
 クラウド事業者は、世界中にデーターセンターを構築しつつあ
りますが、そのデーターセンターに合わせて海底ケーブルを敷設
する動きがあります。そして、世界に点在するデーターセンター
同士をつなぐ役割を果たそうというです。
 2015年1月21日午後のことです。ダボス会議で中国の李
克強首相は、講演のなかで次の宣言をしています。
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 一帯一路戦略の一環として、中国政府は、同国の通信関連企業
の海外進出を後押しする。        ──李克強中国首相
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 李克強首相の演説は、中国は通信分野において世界覇権を目指
すということを世界に宣言したに等しいといえます。中国が世界
覇権を目指すとしている通信分野とは次の3つです。
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 1.  携帯電話のネットワーク ・・  中国移動体通信
 2.通信衛星分野のネットワーク ・・ 中国衛星通信集団
 3.光海底ケーブルネットワーク ・・   華為海洋網絡
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 この光海底ケーブルネットワークを担っているのが「華為海洋
網絡(ファーウェイ・マリーン)」です。ファーウェイ・マリー
ンによる海底ケーブル網は、香港から東南アジア、インド、中東
を経由して、イタリアやフランスにまで、およんでいます。
 現在、世界の基軸通貨ドルは、米国が保有しているクローズド
な金融決済ネットワーク「SWIFT」が支えていますが、これ
は光ファイバー海底ケーブルによる専用の固定回線を通じて行わ
れています。「SWIFT」とは、過去40年間、国と国をつな
いできた送金システムのことです。
 ファーウェイ・マリーンが狙っているのも、現在敷設しつつあ
る海底ケーブル網による世界的な人民元決済ネットワークの構築
なのです。つまり、ファーウェイは、単にスマホの世界覇権を狙
っているだけでなく、金融決済システムの覇権をも握ろうとして
いるのです。国際政治学者、藤井厳喜氏は、これに関連して次の
ように述べています。
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 チャイナはアメリカから世界の覇権を略奪しようとしている。
そのためには、ハイテク分野における産業覇権を確立しなければ
ならない。その目的達成のために打ち出したのが「中国製造20
25」である。それのみならず、通信分野における覇権もアメリ
カから剥奪しようとして開始したのが、この世界的な通信ネット
ワークにおけるチャイナ企業の積極攻勢である。その中でもファ
ーウェイの海底ケーブル網敷設は、将来における人民元決済ネッ
トワークの基礎確立を狙ったものであり、特に重要である。
 将来的にはチャイナは、人民元を、ドルにとって代わる世界の
基軸通貨とする野望をもっている。これを物理的な決済ネットワ
ークとして支えるのが現在、ファーウェイが建設中の海底ケーブ
ル網なのである。         ──藤井厳喜著/徳間書店
    『米中最終決戦/アメリカは中国を世界から追放する』
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 ファーウェイ・マリーンは、既に90本の海底ケーブルを敷設
しています。本数だけから見れば、全本数378本の4分の1を
占めていますが、問題は長さです。世界約120万キロのうち、
ファーウェイ・マリーンは5万キロ程度ですから、世界で見ると
まだ大したことはないといえます。海底ケーブルでは、NECと
米サブコム、仏アルカテルの3社が海底ケーブルの90%を担っ
ているからです。
 恐いのは海底ケープルを使ったスパイ行為です。これについて
ネットでは次のことが指摘されています。
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 スパイ工作に使える可能性がある海底ケーブルをどんどん自社
で各地に敷設すればそれだけインフラを押さえることができる。
情報収集に使えなかったとしても、例えば、海底ケーブルを「遮
断してしまう」という力を手にすることができる。また彼らの通
信ケーブルをつなぐことができる通信機器を中国製に限定するこ
とだってできるだろう。そうなれば、地上にも自分たちのケーブ
ル網を広げることができる。「陸路と海路」という意味のある一
帯一路で、中国の「通信網」によるインフラ支配が拡大すること
を意味するのである。        https://bit.ly/3i3Xm8o
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 ところが、2019年6月、ファーウェイは大きな先手を打っ
たのです。ファーウェイは、ファーウェイ・マリンを手離すと発
表したのです。その真の意図は何でしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/086]

≪画像および関連情報≫
 ●海底・宇宙にも中国の野望/ハイテク対立
  米に根強い警戒感
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   貿易交渉をめぐり1月、「第1段階」の合意に正式署名し
  た米国と中国だが、産業政策やハイテク分野などで対立は続
  いている。台頭する中国への米国の警戒感は強く、米中の攻
  防は日本の競争力にも影響を及ぼす。
   太平洋や大西洋の海中深くに張り巡らされた高速大容量の
  光ケーブル。ビッグデータが大陸をまたいで行き交うデジタ
  ル社会を陰で支える“大動脈”の役割を担う。
   「需要がうなぎ上りに増え、供給がとても追いつかない」
  NECが北九州市に構える海底ケーブル工場はフル操業の状
  況が続き、担当者はうれしい悲鳴を上げる。グーグルなど、
  「GAFA」と呼ばれる米IT大手が、世界各地の拠点をつ
  なぐ自前のケーブル網構築を加速。NECにも、さばききれ
  ないほどの注文が舞い込んでいる。
   NECは海底ケーブルの分野で米欧の競合2社と世界シェ
  アを分け合ってきた。だが近年はこの業界秩序を突き崩すよ
  うに、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が台
  頭。大手3社を脅かすようになった。ファーウェイは陸上の
  光ファイバー網では既に「巨人的存在」(NEC担当者)だ
  が、その触手を海洋にも拡張。中国の巨大経済圏構想「一帯
  一路」の要衝であるパキスタン・グワダル港とアフリカのジ
  ブチをつなぐ案件などを次々と獲得してきた。
                  https://bit.ly/306oM7l
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ファーウェイ・マリーン.jpg
ファーウェイ・マリーン 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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