2020年10月02日

●「ネットを支えている海底ケーブル」(EJ第5341号)

 現在の世の中で、インターネットを一切使わない人はどのくら
いいるでしょうか。少なくともスマホを使っている人はインター
ネットを常時使っていることになります。なぜなら、スマホでは
必要なときに自動的にインターネットに接続されるからです。ち
なみにスマホの普及率は2017年現在で60・9%、ガラケー
などを含めると、84・0%になります。普及率が60%を超え
るということは、少なくとも外を出歩く人は、必ず持っていると
いえます。
 そういう現代人に、「インターネットとはどういうネットワー
クですか」と聞くと、正確に答える人は少ないのです。合わせて
「インターネットは有線ですか、無線ですか」と聞くと、ほとん
どの人は、自信なさそうですが、「無線」と答えます。四六時中
インターネットを使っているのに、インターネットの実体を知ら
ないのです。インターネットの定義を以下に示します。
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 インターネットとは世界中のISP(インターネットサービス
プロバイダ)が相互接続している有線のネット―クである。
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 そう、インターネットは「有線のネットワーク」なのです。当
然、海は「海底ケーブル」を使います。現在、この海底ケーブル
をめぐっても火花が散るような米中対立が起きています。
 かつての英国は、第2次世界大戦が終わると、軍事覇権や製造
業の優位性をほとんど失ってしまいましたが、ロンドンの金融街
シティに関しては、旧植民地のタックスヘイブン利権を独占し、
自国通貨のポンドを維持し、繁栄を謳歌してきています。なぜ、
そんなことができたのでしょうか。
 それは、情報や通信の面において、英国がかつての大英帝国の
遺産を継承してきたからです。そういう金融面でのシティの優位
性を支えたのが実は海底ケーブルなのです。
 つまり、ロンドンのシティは、アフリカ大陸、ヨーロッパ大陸
北米大陸、南米大陸の4つの大陸から直接海底ケーブルラインが
集中している、安全で、確実なデータ通信に必要な固定回線のタ
ーミナルなのです。この回線を押さえておくと、4大陸の金融デ
ータをすべて押さえることができるのです。
 ここで、パナマ文書などでも有名な「タックスヘイブン」につ
いて知る必要があります。タックスヘイブンとは、一般的に「租
税回避地」と呼ばれています。
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 タックスヘイブンとは、国際金融取引を円滑に行うことを目的
に、法人税などが一部あるいは完全に免除される国や地域。租税
回避地とも呼ばれる。こうした地域に設立された多くの企業は、
現地に本社事務所がある例はまれで、ほとんどは連絡用の私書箱
があるぐらい。管理も専門の代行業者に任せる書類上の会社(ペ
ーパーカンパニー)が目立つ。企業情報は基本的に非開示で、誰
が代表者なのかわからないこともよくある。
                  https://bit.ly/3i8hu9G ─────────────────────────────
 英国は、旧植民地のタックスヘイブン利権を押さえることで、
第2次世界大戦後もシティを中心に繁栄を続けることができたの
です。何しろ、シティは海底ケーブルを押さえているので、いわ
ゆる裏金や秘密資金の流れも把握できます。これは、貴重な諜報
情報であり、情報秘密兵器といえます。
 国際政治学者の藤井厳喜氏は、シティとタックスヘイブンの現
状について、次のように述べています。
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 シティと英国旧植民地のタックスヘイブンは、よく言われるよ
うに「ハブ&スポーク」の関係で結ばれていた。しかもその海底
ケーブル・ネットワークを、NATOの枠組みを利用し、アメリ
カ海軍に防衛させてきたのである。シティでは、1日に10兆ド
ルの資金が移動すると言われているが、その資金の流れを手に取
るように把握していたのが英国金融界の中枢と諜報部であった。
(中略)
 ところが世界的なタックスヘイブン取り締まりが強化され、英
国の旧植民地タックスヘイブンは、ほぼ白旗を挙げて降参してし
まった。最後に残っているのは、英国王室属領の3島だが、その
将来も、その終焉も確実に見えてきた。2021年末までには、
3島ともタックスヘイブン特権を放棄しなければならないところ
まできている。          ──藤井厳喜著/徳間書店
    『米中最終決戦/アメリカは中国を世界から追放する』
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 一般的に国際通信というと、衛星通信で行なわれると考える人
が多いですが、現在は海底ケーブルで行なわれているのです。現
在、世界では378本の海底ケーブルが使われており、長さで見
ると、約120万キロのケーブルが世界中の海底に引かれている
のです。したがって、大陸間でデータをやり取りするさいは、ほ
とんどが衛星通信などではなく、光海底ケーブルによって行なわ
れているのです。もちろん世界中のインターネット通信は、海底
ケーブルが支えており、海底ケーブルを制するもの通信の覇権を
握るといっても過言ではないのです。
 光海底ケーブル通信システムは、深海8000メートルの水圧
に耐え、1万キロ以上の伝送が可能です。通信容量が非常に大き
く、遅延も少ないため、現在では、衛星通信に代わり国際通信の
99%を光海底ケーブルが担っています。これらの海底機器は、
深海で25年もの長期間にわたり、正常に稼働し続けることが絶
対条件になります。
 2015年1月のダボス会議の席上、中国の李克強首相は、会
場を埋め尽くした世界の要人の前で、中国の関連事業が、海底光
ファイバー敷設事業に参加することを明らかにしています。一帯
一路戦略の一環としてです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/085]

≪画像および関連情報≫
 ●海底ケーブル事業にも広がった米中覇権競争
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   韓国がインターネットを通じてやりとりする音声・データ
  の約98%は海の下に設置された光ケーブルを通じて大陸の
  間を移動する。1990年代から活発に成長した海底光ケー
  ブル産業は、5世代移動通信(5G)の普及などで、最近需
  要が急増した。リサーチ会社の「マーケット・アンド・マー
  ケット」によると、今年の市場規模は約130億ドル(約1
  兆4000億円)。日本・米国・フランス会社が先頭に立っ
  ている中で韓国・中国も頭角を現わしている。
   このような海底光ケーブル市場に米中葛藤の影響が広がっ
  ている。29日、日本経済新聞(日経)はチリ政府が一番目
  の海底光ケーブルプロジェクトを進めて事業の受注に出た日
  本と中国の中で日本が提案したルートを選択したと報じた。
  本来中国通信会社「ファーウェイ(華為技術)」が最も有力
  な事業者に選ばれたことがあり、「ファーウェイ打倒」を叫
  ぶ米国の影響が働いた結果だという見方がある。
   東京から始まってオーストラリアとニュージーランドを経
  由してチリに達する約1万3000キロメートルの光ケーブ
  ルを埋設する今回の作業は約600億円規模となっている。
  まだ事業者は決まっていないが、日本ルートが選択されたた
  め、今後日本企業が事業を受注する可能性が大きいと日経は
  伝えた。中国は上海からチリに直接入るルートを提案した。
  チリ政府は、コストや実用性から日本のルートが「最も薦め
  られるルート」と決定の理由を明らかにした。
                  https://bit.ly/332sOQd
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光海底ケーブル.jpg
 光海底ケーブル
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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