2020年09月30日

●「法律でがんじがらめにされる中国」(EJ第5339号)

 重要なことなので、昨日のEJの最後の部分を繰り返します。
現在米商務省は、中国の華為技術(ファーウェイ)とその関連会
社68社をEL(エンティティリスト)に入れています。ELと
は、米商務省が管理する大量破壊兵器拡散懸念顧客や米国の安全
保障・外交政策上の利益に反する顧客などのリストです。つまり
ブラックリストです。ELに載せられるということは、ファーウ
ェイとその関連会社は、米国の安全保障にとってリスクのある対
象に認定されたことになります。
 米国企業は、ELに掲載された企業に対しては、技術や製品を
輸出できなくなります。ELの根拠法は「国際金融経済権限法」
(IEEPA)です。この法律は、大統領による国家非常事態宣
言の発出が前提になるのです。トランプ米大統領は、2019年
5月15日に、国家非常事態宣言の発出しています。
 その5日後の5月20日、グーグルはファーウェイがELに掲
載されたことによって、ファーウェイに対し、同社のスマホOS
「アンドロイド」の提供を停止することを宣言しています。スマ
ホOSは、アップルの「i0s」かグーグルの「アンドロイド」
の二者択一であり、アンドロイドの世界シェアは75%です。
 ファーウェイは、これに衝撃を受け、一年後に自社専用のOS
を構築しています。ファーウェイは、7年前からフィンランドに
研究センターを開設し、ノキアのOSのエンジニアを大金で引き
抜き、ファーウェイ専用OSの構築に備えていたのです。
 しかし、アンドロイドが使えないことになると、Gメールも、
ユーチューブも、グーグルマップも使えなくなるし、アンドロイ
ド上で動く「グーグル・プレイ」の250万件を超えるアプリも
利用できなくなります。ファーウェイ・スマホ専用OSを作って
も、意味がないのです。
 さらに大事なことがあります。EL掲載企業とは、共同研究や
共同開発もできなくなることです。これについて、経済評論家の
渡邊哲也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 さらに強烈なのは、人への技術移転も「みなし輸出」として禁
止されていることだ。そのため、ファーウェイ関連企業への技術
供与や共同研究開発などもできなくなる。たとえば、日本企業が
ファーウェイと共同開発をしていた場合、その技術にアメリカ原
産技術が含まれていると、これは「みなし輸出」として制裁対象
となるということだ。そのため、アメリカの半導体大手のクアル
コムや、スマートフォンのCPUの基礎デザインを行っているイ
ギリスのアームなどは、技術社員に対してファーウェイの社員と
の接触を禁じている。       ──渡邊哲也著/徳間書店
            『「新型コロナ恐慌後の世界」』より
─────────────────────────────
 9月28日のEJで、「国際金融経済権限法」(IEEPA)
の担当部署は商務省であると述べましたが、商務省は最初の段階
であり、問題が解決しないと、財務省、国家安全保障省の出番に
なります。そして、ことがここまで発展すると、その対象企業は
死刑判決に等しい通告をされることになります。
 現在、ファーウェイおよび関連企業は、ELに掲載されている
段階であるので、商務省の担当ですが、事態に変化がないと、担
当は商務省から財務省外国資産管理室(OFAC)にバトンタッ
チされ、「SDNリスト」に掲載され、金融制裁を受けることに
なります。いろいろな恐ろしいリストがたくさんあるのです。
 「SDNリスト」とは何でしょうか。実は、このリストには、
既に中国軍装備発展部が掲載されています。。
 もし、仮にファーウェイが「SDNリスト」入りすることにな
ると、ファーウェイは米国の銀行との取引が、すべて禁止されま
す。それだけではないのです。ファーウェイと取引する海外の金
融機関や企業も制裁の対象になり、米国の銀行と取引ができなく
なります。現在、米国は基軸通貨国であり、ドル決済ができなく
なるということは、海外と取引する企業は仕事ができなくなるこ
とに等しく、破綻する可能性が高くなります。これについて、渡
邊哲也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 (SDNリストに入れられる)と、ドル建ての国際送金もでき
なくなるため、ドル決済が不可能になり、破綻する可能性が高く
なる。実際、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジアが北朝鮮のマ
ネーロンダリングにかかわっていたことが発覚し、アメリカ政府
は2005年、アメリカ金融機関と同銀行との取引を禁止した。
それによりバンコ・デルタ・アジアはドル決済ができなくなって
破綻危機に追い込まれた。
 フランスの銀行BNPパリバも、イランやスーダンなどアメリ
カの金融制裁対象国と取引していたため、アメリカから1年間の
ドル決済禁止と約1兆円の罰金を食らっている。現在、世界じゅ
うの債権の6割がドル決済であるため、世界の金融機関にとって
ドル決済ができなくなることは死活問題なのだ。
           ──渡邊哲也著/徳間書店の前掲書より
─────────────────────────────
 米国は、本当に中国を追い詰めるつもりであれば、ファーウェ
イをSDNリストに入れればよいのです。しかし、米国はそこま
で中国を追い詰める気はないようです。なぜなら、中国企業と取
引している米国企業は多くあり、それをやると、米国企業もダメ
ージを受けることになるからです。もし、やれば連鎖倒産が起き
てしまう可能性が十分あります。
 このところトランプ大統領は、最近世界中で大流行のティック
トックやウェイボー(微博)の米国内での利用の廃止まで口にし
始めています。米国人の個人情報が中国に筒抜けになるというの
が表向きの理由です。しかし、これは情報の窃取という観点から
見ると理解できなくなります。トランプ大統領が問題にしている
のは、別の理由があり、ウラがあるのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/083]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平が大迷走・・!いよいよ追い詰められた「中国経済」
  のヤバい末路
  ───────────────────────────
   10月に開催される中国共産党中央委員会第五回全体会議
  (五中全会)で、第14次五か年計画(2021〜2015年)
  と2035年遠景目標提案が制定される。中国の中長期的経
  済の方向性を決めるこれら重要な政策について、おそらく、
  キーワードとなるのは「双循環」という概念だろう。
   だが、これは今年5月に初めて登場した新語で、具体的に
  どのようなものなのか漠然としすぎている。特に米国が中国
  の人権侵害問題や南シナ海の人工島建設にかかわる企業や官
  僚にたいして厳しい制裁を行い、中国がグローバル経済から
  デカップリングされつつある中で、この「双循環」が中国経
  済の起死回生を導くことができるのだろうか。
   そもそも双循環という言葉は今年5月14日、中央政治局
  常務委員会会議で提案され、その後、全人代(全国人民代表
  大会)と全国政協(全国政治協商会議)の両会で行われる分科
  会でも討論のテーマとなった。
   習近平総書記は全国政協の経済界委員会の場で国際情勢を
  分析しながら、国内需要を満足させることを立脚点にして形
  成した「国内大循環」を主体とした、国内・国際の二つの循
  環を新たな発展スキームとするという考えを「双循環」の定
  義として説明。7月30日の中央政治局会議でも同様の定義
  が再度強調された。       https://bit.ly/33Vm9X4
  ───────────────────────────

アンドロイドOS.jpg
アンドロイドOS
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする