2020年09月28日

●「中国の切り離しを加速させる米国」(EJ第5337号)

 2018年8月13日成立の米国の「国防権限法/2019」
には、重要技術を中国には輸出しないようにする「ECRA」と
重要技術を中国には盗まれないようにする「FIRRMA/ファ
ーマ」があります。ECRAについては説明しましたので、FI
RRMAについて考えます。FIRRMAとは何でしょうか。
 FIRRMAとは、外国企業による対米投資をより厳格に審査
しようとするものです。これまでも、米国は米ハイテク企業に対
する投資や買収には、安全保障上の脅威として規制してきていま
すが、とくに中国を意識して、これをさらに厳格化しようとする
法律です。
 外国企業による米企業への投資は、CFIUS(対米外国投資
審査委員会)で審査されますが、その審査基準は厳格化され、審
査対象は拡大されています。新興技術や基盤的技術に対する投資
はもちろんのこと、米国人の個人データに関わる投資や、米軍や
政府施設の近隣の土地などへの投資も含まれます。
 FIRRMAの対象業種について、既出の渡邊哲也氏は、次の
ように述べています。
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 この法律(FIRRMA)の対象となるのは、「中国製造20
25」とかぶるほぼ全業種、さらに安全保障にかかわるインフラ
関連業種である。これらの業種に対する海外からの投資について
審査を厳しくしたというわけだ。たとえば、アメリカの武器輸出
禁止国からの投資は許可しない。アメリカの武器輸出禁止国とは
イランや中国のことだが、イランは現在、金融制裁を受けていて
資金があるはずもないので、必然的に対象は中国となる。
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
            『「新型コロナ恐慌後の世界」』より
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 こんな話があります。トランプ大統領が住んでいるニューヨー
クのトランプタワーのすぐ近くに、トランプタワーの警備を担当
する警察施設が入っているビルがあります。このビルを中国の海
航集団が買収したのです。買収計画は成立していましたが、20
18年に「国防権限法/2019」が成立し、FIRRMAが有
効になったので、CFIUS(対米外国投資審査委員会)は、海
航集団に対して、売買契約の無効と売却命令をいい渡し、このビ
ルは売却されています。
 このケースについては、FIRRMAが適用されることはわか
るのですが、たとえば、ファーウェイ製の通信機器を米国政府や
企業が採用することを禁ずるには、FIRRMAでは無理がある
のです。そういう場合は、トランプ大統領が大統領令に署名する
ことで対応してきたのですが、法律としての整合性を整えるため
ポンペオ国務長官は、「クリーンネットワーク構想」なるものを
発表しています。これについて「大紀元」では、次のように報道
しています。
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 米国のポンペオ国務長官は8月5日、国内通信事業における中
国当局の脅威を排除する取り組み「クリーン・ネットワーク」計
画を拡充すると発表した。
 長官は、米国民の個人情報や米企業の機密情報を盗んでいると
して、中国電子商取引大手のアリババ、ネット検索大手の百度、
IT大手の騰訊控股(テンセント)を名指しした。長官は5日、
「クリーン・ネットワークは、中国共産党などによる悪質な攻撃
・侵入から、米国民の個人情報と企業の最も重要な情報を保護す
るための包括的なプログラムである」と話した。
 「クリーン・ネットワーク」にはトランプ政権が今年4月に公
表した「5Gクリーン・パス」に基づき、次世代通信網(5G)
分野のほかに、クラウドサービス、スマートフォンアプリ、電気
通信事業者、海底ケーブルの分野を付け加えた。
 5Gクリーン・パスは、中国通信機器大手、華為技術(ファー
ウェイ)を5G網から排除するための政策構想だった。長官は発
言の中で、複数回にわたって中国IT技術が「信用できない」と
述べた。通信アプリ「微信(ウィーチャット)」など中国製アプ
リの使用を禁止にするほか、アリババや百度、テンセントなどの
企業が米国内で運営するクラウドベースも制限する。中国共産党
政権がクラウドサービスを通じて、米国民の個人情報や中共ウイ
ルス(新型コロナウイルス)のワクチン研究を含む米企業の貴重
な知的財産にアクセスするのを阻止するためだという。
                  https://bit.ly/3hQSEuK
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 この「クリーンネットワーク構想」は、2019年5月15日
にトランプ大統領が国家非常事態宣言を発出し、「情報通信技術
とサービスのサプライチェーンの保護に係る大統領令」にサイン
したことによって実現したのです。国家非常事態宣言が発出され
ると、これによって「国際緊急経済権限法(IEEPA)」が発
動され、関係機関はこれに基づく制裁措置の実施に一斉に動くこ
とになります。
 IEEPAを担当する役所は商務省です。IEEPAは、安全
保障、外交政策、経済に関する異例かつ重大な脅威に対し、非常
事態宣言後、金融制裁によって、その脅威に対抗することになり
ます。金融制裁の中身を具体的にいうと、攻撃を企む外国の組織
もしくは外国人の資産没収、外国為替取引、通貨および有価証券
の輸出入の規制・禁止です。そのため「安全保障の伝家の宝刀」
と呼ばれています。
 この大統領令に基づき、米商務省は、ファーウェイおよびその
関連会社68社をEL(エンティティリスト)に加えて、米国の
技術および製品の輸出を禁止しています。ELに記載されると、
それらの技術や製品を輸出することは、ほとんど不可能になると
いってよいのです。なお、このことについては、EJでは、既に
何回も取り上げております。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/081]

≪画像および関連情報≫
 ●コロナで加速、「脱中国」=国際供給網、米主導で再編
  ──緊急事態3カ月
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   世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスが引き金となり
  世界経済の中国への依存からの脱却を図る「脱中国化」の動
  きが加速している。主導するのは、中国の大国化に警戒を強
  めるトランプ米政権。国際的な原材料・部品の供給網(サプ
  ライチェーン)から、中核を担う中国の締め出しを狙い、日
  本など有志国を巻き込んだ再編を画策する。次世代技術や安
  全保障をめぐる覇権争いでは、中国通信機器最大手・華為技
  術(ファーウェイ)排除に向けた包囲網の構築が進められて
  いる。
   「中国と関係を完全に断ち切る」。コロナ禍で支持率低下
  に苦しむトランプ大統領は5月、感染拡大を中国の責任と糾
  弾し、経済関係断絶の可能性にまで踏み込んだ。同じ頃、米
  国務省が描く脱中国化構想が表面化。「経済繁栄ネットワー
  ク」と称する構想は、次世代通信規格(5G)から医療物資
  まで幅広い分野を網羅し、日本や韓国、オーストラリア、ニ
  ュージーランド、インド、ベトナムの参加を想定する。今秋
  の米大統領選に向けた思惑先行の面もあるが、「アジア太平
  洋以外への拡大」(米高官)も視野に入れた世界戦略だ。
   いち早く同調したのが日本で、安倍晋三首相はコロナ禍で
  供給不足に陥った医療物資や自動車部品を念頭に「一国への
  依存度の高い製品について生産の国内回帰を図る」と表明、
  国内生産を促す企業支援策を打ち出した。韓国も優遇税制な
  どで調達先の多元化を後押しする計画だ。
                  https://bit.ly/2HksPXn
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米中の深刻な対立.jpg
米中の深刻な対立
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする