2020年09月24日

●「中国をどのようにして切り離すか」(EJ第5335号)

 米国と中国の対立はますます激しくなっています。その対立点
を探ってみることにします。米中経済戦争の対立点を整理すると
次の6項目になります。
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   @              貿易赤字の解消
   A             知的財産権の保護
   B         不正な産業補助などの廃止
   C         企業の財産権と活動の保証
   D  為替の最終的自由化と通貨切り下げの禁止
   E外国企業差別、投資制限撤廃と資本移動の自由
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
              『「新型コロナ恐慌」後の世界』
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 2020年1月15日のことです。まだコロナ禍が深刻化する
前、米国と中国は米中経済戦争において、「第1弾合意」に達し
ています。主な合意内容としては、中国側は2年間で2000億
ドル(約22兆円)の米国製品の輸入の拡大を行い、米国側は、
中国からの輸入消費財の関税を引き下げるという内容です。これ
により、上記の対立点の@「貿易赤字の解消」の一助になること
は確かです。また、Aの知的財産権についても合意に達したと伝
えられています。
 合意文書によると、その履行期限を2021年12月までとし
ており、そのプロセスにおいて、米国はその履行状況をチェック
し、もし、履行状況が悪ければ、米国はさらなる制裁を課すこと
になります。
 中国では、外資系の企業が単独で会社を設立することができな
いのです。必ず、中国企業との合弁会社をつくって起業すること
が求められます。しかも、中国の場合、海外への送金規制によっ
て、外国企業が中国国内で生み出した利益は、中国国内に投資す
るしかないのです。
 まだあります。外国企業は中国から撤退したり、会社を清算し
たくても、当局の許認可が必要であり、事実上できないのです。
したがって、撤退する場合は、会社の財産はすべて合弁会社に譲
り渡して撤退することになります。
 米国としては、この不合理さの是正を上記の対立点CとEで求
めたのですが、中国は2019年の全人代で「外国投資法」を成
立させ、2020年1月1日から施行させることによって、一応
法的には整備されたかたちになっています。しかし、中国の法律
は、ある法律でできるようになっても、別の法律でそれを制限で
きるようにしてあることが多く、結局肝心なところは絶対に譲ら
ないのです。法解釈も恣意的に運用できる余地を残しています。
 経済評論家の渡邊哲也氏は、「外商投資法」の問題点について
次のように述べています。
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 JETRO(日本貿易振興機構)も、「現在、地方政府が実務
上採用している「年間限度額」などの措置が引き続き適用される
のか、政治やマクロ経済の状況により発動される一時的な外貨管
理規制措置が今後も外資系企業にも適用されるのか、「外商投資
法」の規定に合わない実務上の規制がどうなるのか、留意が必要
だ」(「ビジネス短信」2019年1月31日付)としており、
実質的に送金や撤退は非常に困難であるという状況は変わってい
ない。中国としては、外資系企業の海外への資金移動を許してし
まえば、一気にキャピタルフライト(資本逃避)が起こる可能性
がある。そうなると外貨準備高は急速に減少し、人民元の暴落を
招きかねない。          ──渡邊哲也著/徳間書店
            『「新型コロナ恐慌後の世界」』より
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 中国のやり方は、表向きは自由化をつくろうが、実質的には規
制するというかたちで、これまでやってきています。人民元は、
2016年にIMFのSDR(特別引き出し権)の構成通貨に採
用され、国際通貨になったのですが、そのときの条件が人民元と
中国市場の自由化だったのです。しかし、まったく進んでいない
のです。そのため、対立点のDに上げられています。
 このDに加えて、米国から中国に突き付けた要求Bの「不正な
産業補助などの廃止」は、中国政府が国有企業に補助金を給付し
その莫大な資金力によって、商品を安価で大量生産して売り、世
界の市場を独占したり、外国企業を買収したりして、技術移転を
進めるなど、共産党の支配による計画経済そのものへの全否定で
あり、中国としては絶対に飲めない対立点です。
 したがって、絶対に譲れないBとDについては、他の点で合意
することによって、時間稼ぎをする方針で臨んでいるのは明らか
です。しかし、米国は、ここにきて本気になって中国をデカップ
リング(切り離し)しようとしています。それは、中国が「中国
製造2025」を発表したからです。
 それでは、どのようにしたら、中国をデカップリングすること
ができるでしょうか。それには基本的に次の2つがあります。
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    1.重要技術を中国には輸出しないようにする
    2.重要技術を中国には盗まれないようにする
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 これら2つのことを実現するために、米国は「国防権限法/
2019」を作り、2018年8月13日に成立させています。
そして、これに基づいて米国は、上記の「1」と「2」を実現す
る2つの法律を作っています。これがEJでは、何回も説明して
いる次の2つの法律です。
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         「1」:  ECRA
         「2」:FARRMA
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         ──[『コロナ』後の世界の変貌/079]

≪画像および関連情報≫
 ●米中新冷戦への警鐘─デカップリングの陥穽
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   2018年3月の米中貿易戦争の本格化以来、幾度かトッ
  プレベルでの改善のための調整、合意がなされ、米中関係が
  好転に向かうかに思われた時もあった。しかし、中国発の新
  型コロナウイルスのパンデミック(大流行)を正面からかぶ
  り、最大の被害国となった米国の感情的な反発、11月に控
  えた大統領選挙も重なり、この夏、米国の対中姿勢は一段と
  ヒートアップしている。ポンペオ米国務長官は、過去の対中
  関与政策に対して、「古いパラダイムは失敗した」と宣言し
  た。あわせて、テキサス・ヒューストンにある中国総領事館
  の閉鎖を決定した。これに対抗し、中国政府も四川省成都の
  米総領事館の閉鎖を決定した。こうして新冷戦の様相は次第
  に強まっている。
   1990年前後のソ連・東欧諸国の崩壊により冷戦構造が
  解体して以来、米国イニシアチブで市場、金融、製造業、ハ
  イテク産業などのグローバル化が進展し、経済・社会面での
  相互依存、カップリングの状況が急速に進んだ。金融・経済
  の国際化=多国籍化に加えて、原材料調達から製造・販売・
  商品に至るサプライチェーンの形成が、国際社会の主流とな
  った。1997年のアジア通貨危機、2007〜10年のサ
  ブプライムローンに端を発したリーマン・ショックと呼ばれ
  る世界金融危機などは、金融・経済面での国際的なカップリ
  ングの連動によって引き起こされたものであった。
                  https://bit.ly/35Plb1q
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経済評論家/渡邊哲也氏.jpg
経済評論家/渡邊哲也氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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