2020年09月17日

●「米中衝突の結果中国はどうなるか」(EJ第5332号)

 ここまで見てきたように、米国による中国へのプレッシャーは
厳しくなる一方です。重要なポイントは、トランプ政権は、習近
平国家主席というよりも、中国共産党を問題視しており、誰が国
家主席になっても、中国共産党体制が続く限り、中国は変わらな
いと考えているようです。
 米国からのプレッシャーとコロナ禍の影響は、当然中国の経済
に色濃く出てきています。中国はコロナからいち早く立ち直った
とアナウンスしていますが、7月16日に発表された経済数字を
見ると、第2四半期の消費がマイナス3・1%、上半期の固定資
産投資がマイナス3・1%、輸出がマイナス3・2%──第3四
半期は、これに水害の影響が加わるので、さらにひどい数字にな
ることは確実です。
 しかし、この数字を専門家は誰も信用していません。そもそも
6月30日までの詳細な経済統計が7月16日に発表できるはず
がないのです。なぜなら、中国は国土が日本の26倍もあり、人
口も11倍大きいのです。そんな巨大な国の統計が2週間で出せ
るはずがないからです。
 これらの中国の経済統計数字について、嘉悦大学教授の高橋洋
一氏と、中国に詳しいジャーナリスト、近藤大介氏が次のように
話しています。2人の話には説得力があります。
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高橋:財務省にいた者として断言しますが、不可能ですよ。GD
 Pの統計のとり方は世界で決められていますが、中国はそのや
 り方をとっていません。どんな国だって、二週間でできるはず
 がない。
近藤:しかも、国家統計局は、残業もほとんどなく、土日はしっ
 かり休んでいるのですよ。
高橋:じゃあ、なおさら無理ですよ(笑)。そもそも中国は、旧
 ソ連とほぼ同じ統計部署組織を導入しています。本家の旧ソ連
 は70年近く経済統計をごまかしてきましたが、1991年の
 崩壊によって、それまでの経済統計がデタラメだったことが、
 判明しました。ソ連と同じ統計組織を導入して、正確な数字を
 出せるわけがない。社会主義国の統計が当てにならないのは、
 失業率統計をまともに公表していないことがあります。GDP
 と失業率の間には負の相関関係があり、GDPと失業率を観察
 すると、それぞれ統計値が信頼できるかどうかチェックできる
 のですが、社会主義国では正確な失業率統計がないから、経済
 統計を客観的に検証できません。4月に中国の証券会社が失業
率を分析したレポートを発表したら、中国政府からお仕置き〃
を喰らいましたね。
近藤:中国10大証券会社の一つである中泰証券のシンクタンク
 です。4月14日、コロナの感染拡大がもたらした景気悪化で
 も7千万人が失業し、実際の失業率は20・5%前後だとする
 レポートを発表しました。中国当局の公式統計では、調査に基
 づく3月の失業率は5・9%でしたから、かなりのギャップが
 あります。これが当局の逆鱗に触れ、中泰証券のシンクタンク
 はすぐに撤回、トップはクビになってしまいました。
            ── 『月刊Haneda』/10月秋桜号
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 上記で分かるように、中国の統計数字は、まったく信用できる
ものではないのです。とにかくこの国は、国際的ルールを守らず
国際法でも何でも、自国の都合の良いように変更して解釈してし
まうところがあります。米国の親中派は、そういう国を国際機関
に加えてしまったのです。豊かになれば、中国は必ず民主主義国
家になるというきわめて希望的観測に基づいて、国際機関入りを
推進してしまいます。しかし、これはとんでもない間違いだった
ことがわかってきています。
 その結果、国連はほとんど中国に乗っ取られつつあります。国
連には15の専門組織がありますが、そのうち、4つの専門機関
の長は、中国人が占めているのです。しかもこの4つのポストへ
の中国人の就任時期は、いずれも習近平氏が国家主席に就任した
2013年以降なのです。その他、国際機関のほとんどが中国に
よって占有されつつありますが、これについては、改めて、詳し
く述べることにします。
 ところで、中国共産党では「反米は仕事、生活はアメリカ」と
いうことがよくいわれるそうです。つまり、表では米国を批判し
ますが、それはあくまで中国共産党の仕事であって、本心では、
アメリカで暮らしたいと考えているのです。
 習近平主席の1人娘の習明択氏もハーバード大学卒業で、米国
にいるときが多いし、他の共産党幹部の多くの子弟が米国に留学
しています。それに、共産党の幹部の多くは、中国国民による暴
動を心の底から恐れていて、中国共産党が将来崩壊することも予
測し、米国をはじめとする西欧諸国に財産を移しているのです。
国を捨てて米国に逃げ出そうとしているわけです。
 米国はそういう中国共産党幹部個人をターゲットとし、制裁を
加えています。これは、米国に財産を保有している共産党幹部に
とっては、相当きつい制裁になります。
 最近の制裁対象者について、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 7月9日、米政府は、中国西部の新疆ウイグル自治区でのイス
ラム教徒に対する人権侵害にかかわったとして、高官である陳全
国書記、新疆公安局の王明山長官、共産党の同自治区幹部の朱海
侖、元公安幹部の霍留軍らを制裁の対象にしたと発表しました。
 この制裁措置により、4人のアメリカ国内の資産は凍結されま
す。さらに8月には、香港の林鄭月蛾行政長官や中国政府の高官
ら11人に対し、アメリカ国内の資産を凍結する制裁を科しまし
た。          ── 『月刊Haneda』/10月秋桜号
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         ──[『コロナ』後の世界の変貌/076]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平も恐れ震える・・・米の経済制裁から始まる「中国崩
  壊」のシナリオ
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   話は制裁される個人だけにとどまらない。彼のローンはも
  ともとHSBCが提供していたが、中国銀行(香港)に移され
  た。HSBCは国家安全維持法を導入した香港当局を支持す
  る姿勢を表明したが、一方で、米政府にも逆らえない。彼と
  の取引を続けていたら、HSBCは、米国に制裁されてしま
  う。そうなったら事実上、国際金融界から追放されたも同然
  になる。
   中国銀行は中国政府の機関のようなものなので、米政府の
  意向を無視できるが、HSBCはそうもいかず、中国と米国
  の間で股割き状態になってしまった。同じようなケースは、
  これから、頻発するだろう。金融機関だけでなくホテルや航
  空会社など、高官が利用しそうな企業は、いずれも「中国を
  とるか、米国をとるか」二者択一を迫られるのだ。
   クレジットカードや住宅ローンより強烈なのは、もちろん
  米国内にある資産凍結、それから米国への入国制限である。
  中国共産党幹部の多くが米国に不動産などの資産を保有して
  いるのは、よく知られている。これらの資産が凍結され、事
  実上米国に没収されたら、彼らは怒り狂うに決まっている。
   もともと米国の不動産を入手したのは、引退後、あるいは
  逃亡した後、米国で暮らすためだ。そのうえ、入国まで制限
  されたら彼らの人生設計は完全に狂ってしまう。
                  https://bit.ly/35zqOk0
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中国評論家/近藤大介氏.jpg
中国評論家/近藤大介氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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