2020年09月10日

●「オーストラリア中国化を脱出する」(EJ第5327号)

 テレビでも報道されましたが、2020年9月9日付の日本経
済新聞に次の記事が出ています。
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◎中国が聴取/豪記者帰国/2人、別の豪女性拘束めぐり
 【ジャカルタ=地曳航也】オーストラリア外務貿易省は8日、
中国に駐在していた豪国籍記者2人が、同日に帰国したと発表し
た。豪メディアによると、中国当局は拘束している別の豪国籍女
性を巡り、事情聴取を求めて出国を禁じていたが、豪政府の支援
で帰国が許された。帰国したのは豪公共放送ABCと、豪紙フィ
ナンシャル・レビューの記者。それぞれ北京と上海に駐在してい
た。3日の深夜、中国当局の係官らが2人の自宅を訪問し「出国
は禁じられている」としたうえで、事情聴取を求めた。
 2人は、その後、豪の在外公館でそれぞれ保護された。両国政
府の交渉の末、中国当局の聴取を受けた後の帰国が許されたとい
う。2人は中国が別に拘束する女性司会者のチェン・レイ氏につ
いて質問を受けたという。
        ──2020年9月9日付、日本経済新聞より
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 現在、オーストラリアと中国の関係は、きわめて悪化していま
す。中国の国営放送局・中国環球電視網(CGTN)の司会者、
オーストラリア国籍を持つチェン・レイ氏は、8月に入って中国
当局に拘束され、その件で、中国に駐在していた豪国籍記者2人
が取り調べを受けたのです。
 オーストラリアの現政権は、スコット・モリソン政権であり、
反中国の姿勢を明確にしていますが、その以前の政権のときは中
国に取り込まれ、オーストラリアの中国化が進んでいました。
 中国は、カネ、移民、留学生、スパイ、サイバー・スパイ、盗
聴、ハニートラップなどのあらゆる手段で、オーストラリアの政
界、財界、マスコミを籠絡し、オーストラリアを紅く染め上げて
いたのです。オーストラリアはすんでのことで、中国の一部にな
りかけていたともいえます。日本においても中国のさまざまな工
作は着々と進んでいます。
 2018年に、この中国によるオーストラリアの食い荒らしの
黒い手口を暴いた本が発刊されています。当時は、親中国色の強
いターンブル政権の時代であり、内容が内容だけに、当然スムー
ズには発刊できなかったのです。
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   クライブ・ハミルトン著/山岡鉄秀監訳/奥山真司翻訳
    『目に見えぬ侵略/中国のオーストラリア支配計画』
                  2020年5月29日
                       飛鳥新社刊
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 この本は、あまりにも衝撃的な内容であるので、オーストラリ
アでは3回も出版禁止になっています。日本語版が発刊されたの
は、今年の5月29日のことです。
 クライブ・ハミルトン教授は、調査を始めるまで、オーストラ
リアでの中国の浸透工作には、懐疑的であったといいます。しか
し、ある事件をキッカケに調査をはじめて、その実態が見えてき
たのです。この本の翻訳者である地政学者の奥山真司氏は、それ
について、次のように述べています。
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 その事件とは、「ダスティヤリ事件」です。2016年8月、
「将来の労働党党首」との呼び声もあったサム・ダスティヤリ上
院委員が、中国人富豪との癒着問題で辞職します。彼は「南シナ
海での中国の活動は、中国の意思に任せるべき」と発言したり、
労働党の外交担当者が香港を訪問した際、民主活動家らと面会し
ないよう圧力をかけるなど、度を超えた親中姿勢に疑問の声が上
がっていました。(中略)
 そんな彼に政治献金をしていた1人が、黄向墨という中国人富
豪です。本国で不動産業などで財を成した彼は、2011年に、
オーストラリアへ移住したのち、複数の政治家や政党に献金し、
発言力を持つようになりました。
  ──奥山真司著「クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略』
   豪州を食い荒らした中国の黒い手口」/WiLL/8月号
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 ダスティアリ上院議員は、日本に関係することでも発言をして
います。2014年に中国が日本が領有権を主張する東シナ海上
空に防空識別圏を設定したことに対し、日本に対して「反対すべ
きではない」と発言しています。日本からいえば、余計なお世話
です。しかし、人民日報はこのことを評価し、「国際的な親中派
のなかの主要な人物」と賞賛しています。彼は、「議員バッジを
つけた中国のスパイ」といわれていたのです。
 第24代オーストラリア首相のポール・キーティング氏も中国
に買収された1人です。「オーストラリアは同盟国アメリカの従
属国ではないと明確に言うべきだ」と主張し、自分は現実主義者
であり、「中国の台頭には完全な正統性があり、アメリカの戦略
策定者たちに迎合して、それを否定することはできない」と発言
しています。このポール・キーティング元首相は、なぜ親中国か
について、次のようにいっています。
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 中国の台頭は止められない。経済の運命は北京が握っており、
中国の規模を考えれば、彼らがアジアを支配すべきだ。この歴史
の流れに乗ってしまうのが最良の選択である。
       ──ポール・キーティング元オーストラリア首相
                   WiLL/8月号より
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 日本でも媚中派の二階幹事長に主導された菅政権が誕生しよう
としています。オーストラリアで起きていることは、日本にも当
てはまることであり、厳重な警戒が必要です。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/071]

≪画像および関連情報≫
 ●【有為転変】第135回/中国にモノ言える豪州
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   オーストラリアのモリソン首相が、米国で、世界貿易機関
  (WTO)のルールでは中国はもはや「発展途上国」ではな
  く、「先進国」として重責を果たすよう求めたことが波紋を
  広げている。米トランプ大統領の主張に全面的に賛同した形
  だ。最大の貿易相手国への批判を遠慮してきたオーストラリ
  アが、国際舞台で踏み込んで発言したことにはやや驚いた。
   トランプ大統領は、モリソン首相が自身と同じく大番狂わ
  せで当選した経緯を重ね合わせ、「マルコム(ターンブル前
  首相)は好きだが、スコット(モリソン首相)とは非常に特
  別な関係を築けた」と、モリソン首相を絶賛して見せた。
   またモリソン首相は、シカゴで「中国は既に『新たな先進
  国』であり、貿易で透明性を高め、世界が直面する環境問題
  の責任を担う必要がある」などと述べた。トランプ大統領は
  その翌日、ニューヨークでの国連総会で、中国を批判し、W
  TOは大規模な改革が必要だとする演説を行った。モリソン
  首相と事前に調整したのだろう。さらに、ツイッターでも、
  「長年見過ごされてきた中国による世界貿易の搾取は終わり
  だ」と強調したほか、WTOの制度改革を米通商代表部に指
  示している。米国政府は2019年7月末時点でも、同じ内
  容の声明を発表し、90日以内に進展がなければ、米国は独
  自に優遇処置を取りやめると警告していた。10月末が期限
  ということになる。       https://bit.ly/3bEwxGl
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ダスティヤリ豪元上院議員.jpg
ダスティヤリ豪元上院議員
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする