2020年09月04日

●「トランプ政権高官5人の連続演説」(EJ第5323号)

 ヘッジファンド世界最大手ブリッジウォーター・アソシエイツ
の創業者で、著名投資家のレイ・ダリオ氏という人物がいます。
7月16日、このダリオ氏が自身のリンクトインに次の投稿をし
ています。リンクトインとは、世界最大級のビジネス特化型のS
NSです。その投稿の趣旨は次の通りです。
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 アメリカと中国は今、経済戦争の状態にあり、これは武力紛争
へと発展する可能性がある。第一次世界大戦や第二次世界大戦の
数年前の状況と現在の状況を比較して、米中間の経済的な緊張が
武力紛争にまでエスカレートする可能性がある。
        ──レイ・ダリオ氏/https://bit.ly/2EZTG9L
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 危ないのは、中国が南シナ海に建設した人工島です。ポンペオ
米国務長官は、7月13日に南シナ海の人工島について次の声明
を出しています。
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 南シナ海の大半の地域にまたがる中国の海洋権益に関する主張
は完全に違法である。世界は南シナ海の中国の「海洋帝国」とは
決して認めない。          ──ポンペオ米国務長官
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 8月26日になって、中国軍は弾道ミサイルを南シナ海に撃ち
込んでいます。明らかに米国への警告です。このとき、中国軍は
南シナ海だけでなく、東シナ海、黄海、渤海の4海域で軍事演習
を行っており、これは極めて異例のことです。
 しかも発射されたミサイルは、グアムの米軍基地に届くミサイ
ルで、「グアム・キラー」と呼ばれる中距離弾道ミサイル「東風
26B」と「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル「東風2
1B」です。明らかに米国への威嚇であり、「南シナ海に介入す
るな」という警告です。
 多くの人は、米国の中国への貿易や軍事へのプレッシャーは、
トランプ大統領が大統領選を有利にするためではないかと考えて
います。しかし、これはトランプ政権として相当考えて、計画的
に、プレッシャーをかけているのです。それは、必ずしも選挙目
当てでやっているわけではないのです。トランプ政権の高官が計
画的に中国に対して、メッセージを発信しているからです。
 トランプ政権は、2018年と2019年に、ペンス大副統領
が、中国向けの演説をそれぞれ行なっています。
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◎ペンス副大統領による中国向け演説
 第1回:2018年10月 4日/  ハドソン研究所
 第2回:2019年10月24日/ウイルソンセンター
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 もちろんペンス副大統領による上記の演説は、ペンス副大統領
が勝手にやったものではなく、トランプ大統領と関係者が集まっ
て、その内容をていねいにチェックした上で行なわれています。
これについて、福井県立大学教授、島田洋一氏は次のように述べ
ています。
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 約2年前、中国共産党を全面批判して世界に衝撃を与えた「ペ
ンス演説」(2018年10月4日)は、その前日に、トランプ
大統領がマイク・ペンス副大統領、ジョン・ボルトン大統領安保
担当補佐官、ニック・エアーズ副大統領補佐官の3人を集め、1
行1行チェックしたうえで、ゴーサインを出したものだ、とボル
トンが回顧録で述べています。 ──島田洋一福井県立大学教授
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
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 トランプ大統領は、2020年に関しては、6月から7月にか
けて、トランプ政権の高官4人の演説を次のように、行なってい
ます。これは明らかに計画的です。
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◎トランプ政権4人の高官による中国向け演説
 第1回:2020年6月24日
     ロバート・オブライエン大統領安保問題担当補佐官
 第2回:2020年7月 7日
     クリストファー・レイFBI長官
 第3回:2020年7月16日
     ウイリアム・バー司法長官
 第4回:2020年7月23日
     ポンペオ国務長官
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 このトランプ政権4人の高官による連続演説の目的は、なんで
しょうか。
 これは、とくに国務省内部のパンダハガー(親中国派)を一層
する狙いがあると思われます。これについて、島田洋一福井県立
大学教授は次のように述べています。
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 従来、トランプ政権としての包括的な中共非難演説は2018
年、2019年と続けてペンス副大統領が行ってきた。すなわち
ホワイトハウス主導であって、宥和派の牙城というべき国務省の
官僚機構においては、「自分たちはあずかり知らず」とやや距離
を置く風も見えた。
 今回は、国務長官が全体を取り仕切る格好を取っている。長官
の重要演説となれば、同省幹部らが原稿の作成、調整に深くかか
わり、結果に連帯責任を持つことになる(あくまで内容に反対な
ら辞任を求められる)。国務長官主導とすることで、同省内に多
いパンダハガー(親中派)官僚らの逃げ道を塞いだと言えるだろ
う。今後は懲罰を覚悟せずには実行をサボタージュできない。
            ──『月刊Haneda』 /10月秋桜号
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         ──[『コロナ』後の世界の変貌/067]

≪画像および関連情報≫
 ●「共産主義の中国 変えなければ」米国務長官の演説要旨
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   中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそう
  した政策を継続してはならない。戻ってはならない。自由世
  界はこの新たな圧政に勝利しなくてはならない。
   米国や他の自由主義諸国の政策は中国の後退する経済をよ
  みがえらせたが、中国政府はそれを助けた国際社会の手にか
  みついただけだった。中国に特別な経済待遇を与えたが、中
  国共産党は西側諸国の企業を受け入れる対価として人権侵害
  に口をつぐむよう強要しただけだった。
   中国は貴重な知的財産や貿易機密を盗んだ。米国からサプ
  ライチェーンを吸い取り、奴隷労働の要素を加えた。世界の
  主要航路は国際通商にとって安全でなくなった。ニクソン元
  大統領はかつて、中国共産党に世界を開いたことで「フラン
  ケンシュタインを作ってしまったのではないかと心配してい
  る」と語ったことがある。なんと先見の明があったことか。
   今日の中国は国内でより独裁主義的となり、海外ではより
  攻撃的に自由への敵意をむき出しにしている。トランプ大統
  領は言ってきた。「もうたくさんだ」と。対話は続ける。し
  かし最近の対話は違う。私は最近、ハワイでヤン・ジェチー
  中国共産党政治局員と会った。言葉ばかりで中国の態度を変
  える提案はない、相変わらずの内容だった。楊の約束は空っ
  ぽだった。彼は私が要求に屈すると考えていた。私は屈しな
  かった。トランプ大統領も屈しない。
               https://s.nikkei.com/2ET6aAn
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島田洋一福井県立大学教授.jpg
島田洋一福井県立大学教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする