グーグルマップ上から消滅した「新しいラボ」、武漢市江夏区に
あるはずの「中国科学院武漢病毒研究所」は、どのようにして設
立されたかについて、河添恵子氏の本も参考にして、そのいきさ
つについて調べてみることにします。
2004年1月のことです。あのSARS(重症急性呼吸器症
候群)が流行した翌年です。胡錦濤国家主席がフランスを訪問し
シラク大統領に会っています。このとき、「中仏予防・伝染病の
制御に関する協力」の枠組みが話し合われ、同じ年の10月にシ
ラク大統領が訪中して、中国とフランスの間で「中仏予防・伝染
病の制御に関する協力」の合意書に調印が行われています。
目的は、「BSL/4」に対応できるウイルスの研究所を作る
ことです。「BSL」とは、バイオ・セーフティー・レベルのこ
とで、BSLに対応できる防御レベル4の実験室を持つ研究所を
設立することです。リスク・グループには、4段階ありますが、
最高レベルの4段階とは、危険性の最も高い次のウイルスを扱え
る防御レベルを持つ実験室のことです。
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◎第4レベル/BSL4
・天然痘ウイルス ・ラッサウイルス
・エボラウイルス ・アレナウイルス
・マールブルグウイルス
https://bit.ly/3jZCK3g ─────────────────────────────
この中国武漢における「新しいラボ」にフランスがいかに力を
入れていたかは、ジャック・シラク大統領、ニコラ・サルコジ大
統領に加えて、外交官で、医師のベルナール・ジャン・クシュネ
ル氏の3氏が深くかかわっていることでも分かります。クシュネ
ル氏は、「国境なき医師団」や「世界の医療団」というNGO設
立者の1人であり、元国連高等職員も務め、サルコジ大統領政権
下のフィヨン内閣では、外務大臣も務めた大物です。
当然のことながら、「新しいラボ」の設立には、巨額の資金が
投じられていますが、その資金集めについて、河添恵子氏は次の
ように述べています。
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「新しいラボ」の資金集めの受け皿として、「フランス中国基
金会」が発足した。同基金会のフランス側メンバーには、ヘアカ
ラー商品で世界的に名を馳せるロレアルのジャンーポール・アゴ
ン会長兼CEO(最高責任者)、グッチ、サンローランなどグロ
ーバル・ラグジュアリーブランドを有するケリング・グループ他
ユダヤ社会の重鎮で、ディープステート(国際金融資本・ユダヤ
系左派)の一員とされるジャック・アタリ氏の名前もある。欧州
復興開発銀行の初代総裁で歴代フランス大統領のブレーンであり
「欧州のキッシンジャー」的存在の超大物だ。
在仏の識者から「マクロン大統領にエドゥアール・シャルル・
フィリップ氏(共和党)を首相候補に推薦したのはアタリ氏」と
聞いたが、そのフィリップ首相もメンバーである。同じく、メン
バーの、社会党のローラン・ファビュウス元首相(オランド大統
領時代の2012〜2016年の外務・国際開発大臣)は、アタ
リ氏とパリ十六区の高校で同級生という間柄にある。
──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
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2014年3月には、習近平国家主席が、フランスを訪問し、
フランス第2の都市、リヨンのメリュー生物化学研究センターを
見学しています。そして、2017年2月23日、フランスのベ
ルナール・カズヌーヴ首相が訪中し、「新しいラボ」の落成式で
テープカットを行っています。このとき、フランス国立保健医学
研究機構、認定委員会、外務省など、中仏の本プロジェクト関係
者ら100名以上が参加していのです。
フランスは、この中国の「新しいラボ」のために、大変な協力
をしているといえます。設立資金などは「フランス中国基金会」
を作り、フランスを上げて協力しています。
こういう大統領肝いりの肩入れに関して、中国側はどのように
対応したのでしょうか。この中国側のメンバーについて、河添恵
子氏は、次のように述べています。
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では、中国科学院をトップ人事とともに長年、牛耳ってきたの
が誰なのか?1999年以降、「鉄のグリップ」を維持しできた
のが江ファミリーで、具体的には(現在は90歳半ばの)江元主
席と長男の綿恒氏、というのが一つの説として長年、定着してい
る。「新しいラボ」の資金集めの受け皿である「フランス中国基
金会」の中国側のメンバーには、江ファミリーに近いアリババ元
CEO(最高責任者)のジャック・マー(馬雲)氏やテンセント
CEOのポニー・マー(馬化騰)氏、バイドゥ(百度)のロビン
・リー(李彦宏)氏などが関わっている。
──河添恵子著の前掲書より
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ところがです。これほど、フランス政府の全面的協力を得て設
立された武漢の「新しいラボ」、P4実験室は、設立されるや中
国側は手のひらを返す行動を取り始めたのです。いや、その設立
の過程において、フランスの要求する技術の導入に対して、中国
側が反対するなど、トラブルが続いたのです。
P4実験室は、原子力潜水艦に匹敵する高い気密性が要求され
るので、高い信頼性と技術力を持つフランスの専門企業15社が
世界最高レベルの技術力を提供する予定だったのです。しかし、
その過程において中国側と何回もトラブルが起こり、フランスの
技術供与を拒否し、結局、中国企業が大部分の建設を行うように
なってしまったのです。一体そこに何があったのでしょうか。
──[『コロナ』後の世界の変貌/044]
≪画像および関連情報≫
●武漢P4ラボ誕生の内幕/計画から締め出された仏と中国
の暴走=RFI
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フランスの全面的協力で建設した中国科学院武漢ウイルス
研究所のP4実験室(武漢P4ラボ)。中共ウイルス(新型
コロナウイルス)を漏えいした疑いが持たれ、世界の注目を
集めている。実験室の建設過程で、中国側がフランスを意図
に排除し協力関係を形骸化させたことが明らかになった。
仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル/R
FIは、4月17日、調査報道記事を掲載した。それによる
と、武漢P4ラボが、ランスの技術を導入して建設されたが
実験室の運営を支えるための技術者の養成や共同研究プログ
ラムが中国側の排除によって計画通りに進まず、中途半端な
形で終わってしまったと伝えた。
実験室は2015年1月に建設工事が完成し、18年1月
に稼働を開始。アジア初のP4実験室となり、科学研究と健
康の分野における中仏両国の協力関係のシンボルとみなされ
ていた。それによると、2003年に中国でSARSが発生
したことを受け、フランスでは中国の研究者らが危険ウイル
スを粗末に取り扱わないように、必要な設備や専門知識と技
術において中国のウイルス研究を支援すべきだという声が高
まっていた。
パリのサン・ルイ病院で研修医を勤めた陳竺氏(前中国科
学院副院長、現中国赤十字会会長)の斡旋で、2004年に
ジャック・シラク大統領(当時)が訪中の際、当時の胡錦濤
国家主席(2003年3月着任)と「新感染症の予防・制御
に関する協力合意」を締結した。こうして中国初のP4実験
室の建設計画が生まれた。 https://bit.ly/2Pibyi0
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シラク元仏大統領