2020年08月03日

●「中国P4実験室とフランスの関係」(EJ第5300号)

 中国に詳しいノンフィクション作家である河添恵子氏によると
グーグルマップ上から消滅した「新しいラボ」、武漢市江夏区に
あるはずの「中国科学院武漢病毒研究所」は、どのようにして設
立されたかについて、河添恵子氏の本も参考にして、そのいきさ
つについて調べてみることにします。
 2004年1月のことです。あのSARS(重症急性呼吸器症
候群)が流行した翌年です。胡錦濤国家主席がフランスを訪問し
シラク大統領に会っています。このとき、「中仏予防・伝染病の
制御に関する協力」の枠組みが話し合われ、同じ年の10月にシ
ラク大統領が訪中して、中国とフランスの間で「中仏予防・伝染
病の制御に関する協力」の合意書に調印が行われています。
 目的は、「BSL/4」に対応できるウイルスの研究所を作る
ことです。「BSL」とは、バイオ・セーフティー・レベルのこ
とで、BSLに対応できる防御レベル4の実験室を持つ研究所を
設立することです。リスク・グループには、4段階ありますが、
最高レベルの4段階とは、危険性の最も高い次のウイルスを扱え
る防御レベルを持つ実験室のことです。
─────────────────────────────
   ◎第4レベル/BSL4
    ・天然痘ウイルス     ・ラッサウイルス
    ・エボラウイルス     ・アレナウイルス
    ・マールブルグウイルス
                  https://bit.ly/3jZCK3g ─────────────────────────────
 この中国武漢における「新しいラボ」にフランスがいかに力を
入れていたかは、ジャック・シラク大統領、ニコラ・サルコジ大
統領に加えて、外交官で、医師のベルナール・ジャン・クシュネ
ル氏の3氏が深くかかわっていることでも分かります。クシュネ
ル氏は、「国境なき医師団」や「世界の医療団」というNGO設
立者の1人であり、元国連高等職員も務め、サルコジ大統領政権
下のフィヨン内閣では、外務大臣も務めた大物です。
 当然のことながら、「新しいラボ」の設立には、巨額の資金が
投じられていますが、その資金集めについて、河添恵子氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 「新しいラボ」の資金集めの受け皿として、「フランス中国基
金会」が発足した。同基金会のフランス側メンバーには、ヘアカ
ラー商品で世界的に名を馳せるロレアルのジャンーポール・アゴ
ン会長兼CEO(最高責任者)、グッチ、サンローランなどグロ
ーバル・ラグジュアリーブランドを有するケリング・グループ他
ユダヤ社会の重鎮で、ディープステート(国際金融資本・ユダヤ
系左派)の一員とされるジャック・アタリ氏の名前もある。欧州
復興開発銀行の初代総裁で歴代フランス大統領のブレーンであり
「欧州のキッシンジャー」的存在の超大物だ。
 在仏の識者から「マクロン大統領にエドゥアール・シャルル・
フィリップ氏(共和党)を首相候補に推薦したのはアタリ氏」と
聞いたが、そのフィリップ首相もメンバーである。同じく、メン
バーの、社会党のローラン・ファビュウス元首相(オランド大統
領時代の2012〜2016年の外務・国際開発大臣)は、アタ
リ氏とパリ十六区の高校で同級生という間柄にある。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 2014年3月には、習近平国家主席が、フランスを訪問し、
フランス第2の都市、リヨンのメリュー生物化学研究センターを
見学しています。そして、2017年2月23日、フランスのベ
ルナール・カズヌーヴ首相が訪中し、「新しいラボ」の落成式で
テープカットを行っています。このとき、フランス国立保健医学
研究機構、認定委員会、外務省など、中仏の本プロジェクト関係
者ら100名以上が参加していのです。
 フランスは、この中国の「新しいラボ」のために、大変な協力
をしているといえます。設立資金などは「フランス中国基金会」
を作り、フランスを上げて協力しています。
 こういう大統領肝いりの肩入れに関して、中国側はどのように
対応したのでしょうか。この中国側のメンバーについて、河添恵
子氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 では、中国科学院をトップ人事とともに長年、牛耳ってきたの
が誰なのか?1999年以降、「鉄のグリップ」を維持しできた
のが江ファミリーで、具体的には(現在は90歳半ばの)江元主
席と長男の綿恒氏、というのが一つの説として長年、定着してい
る。「新しいラボ」の資金集めの受け皿である「フランス中国基
金会」の中国側のメンバーには、江ファミリーに近いアリババ元
CEO(最高責任者)のジャック・マー(馬雲)氏やテンセント
CEOのポニー・マー(馬化騰)氏、バイドゥ(百度)のロビン
・リー(李彦宏)氏などが関わっている。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 ところがです。これほど、フランス政府の全面的協力を得て設
立された武漢の「新しいラボ」、P4実験室は、設立されるや中
国側は手のひらを返す行動を取り始めたのです。いや、その設立
の過程において、フランスの要求する技術の導入に対して、中国
側が反対するなど、トラブルが続いたのです。
 P4実験室は、原子力潜水艦に匹敵する高い気密性が要求され
るので、高い信頼性と技術力を持つフランスの専門企業15社が
世界最高レベルの技術力を提供する予定だったのです。しかし、
その過程において中国側と何回もトラブルが起こり、フランスの
技術供与を拒否し、結局、中国企業が大部分の建設を行うように
なってしまったのです。一体そこに何があったのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/044]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢P4ラボ誕生の内幕/計画から締め出された仏と中国
  の暴走=RFI
  ───────────────────────────
   フランスの全面的協力で建設した中国科学院武漢ウイルス
  研究所のP4実験室(武漢P4ラボ)。中共ウイルス(新型
  コロナウイルス)を漏えいした疑いが持たれ、世界の注目を
  集めている。実験室の建設過程で、中国側がフランスを意図
  に排除し協力関係を形骸化させたことが明らかになった。
   仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル/R
  FIは、4月17日、調査報道記事を掲載した。それによる
  と、武漢P4ラボが、ランスの技術を導入して建設されたが
  実験室の運営を支えるための技術者の養成や共同研究プログ
  ラムが中国側の排除によって計画通りに進まず、中途半端な
  形で終わってしまったと伝えた。
   実験室は2015年1月に建設工事が完成し、18年1月
  に稼働を開始。アジア初のP4実験室となり、科学研究と健
  康の分野における中仏両国の協力関係のシンボルとみなされ
  ていた。それによると、2003年に中国でSARSが発生
  したことを受け、フランスでは中国の研究者らが危険ウイル
  スを粗末に取り扱わないように、必要な設備や専門知識と技
  術において中国のウイルス研究を支援すべきだという声が高
  まっていた。
   パリのサン・ルイ病院で研修医を勤めた陳竺氏(前中国科
  学院副院長、現中国赤十字会会長)の斡旋で、2004年に
  ジャック・シラク大統領(当時)が訪中の際、当時の胡錦濤
  国家主席(2003年3月着任)と「新感染症の予防・制御
  に関する協力合意」を締結した。こうして中国初のP4実験
  室の建設計画が生まれた。    https://bit.ly/2Pibyi0
  ───────────────────────────

シラク元仏大統領.jpg
シラク元仏大統領

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2020年08月04日

●「実験室の設立をめぐる中仏の対立」(EJ第5301号)

 どこの国にも中華街があります。フランスの中華街について、
河添恵子氏は、次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 パリにも中華街は複数ある。パリ三区のタンプル通り周辺──
古くからの温州系移民を中心に、皮革製品や貴金属や宝石を扱う
商店が集中する。パリ二十区のベルビル地区周辺──かつてマグ
レブ系(北アフリカ)などアフリカ系移民が多く住んでいた、が
70年代に温州系、カンボジア出身の潮州系華人、香港系が移住
した。その他、主要都市にもインドシナ系、中国系移民の集住す
る地区があり、フランス生まれの二世や三世もいる。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 中国があまり経済的に豊かでなかったときは、各国にある中華
街はその国にとって何のリスクもなかったのです。しかし、高度
経済成長を続けて豊かになった中国共産党政権は、世界中にいる
留学生を含む中国人に、国家のために、情報収集をさせるように
なっていったのです。最近ではそれを国民の義務にする「国家情
報法」という法律まで作って、情報収集を強制させるようになっ
ています。国民総スパイ化です。
 ましてフランスでは、シラク大統領の時代から中国にP4実験
室を作るプロジェクトを立ち上げて中国を支援しており、中国は
それを口実に、パスツール研究所やリヨンのメリュー生物化学研
究センターなどに超エリートを送り込み、フランスが世界に誇る
技術、バイオテクノロジー、ワクチン生産などについて学ばせよ
うとしていたのです。
 民主主義国家であれば、そういう技術者を受け入れることは普
通に行うことですが、そこには一定の厳格なルールというものが
あって、まして不正な手段で情報を窃取するようなことは絶対に
やってはならないことです。実はこのプロジェクトの実行に当っ
て、フランス当局としては、中国側とたびたび意見が対立してい
たのです。
 今年に入って、新型コロナウイルスの感染が広がると、中国の
P4実験室のフランスの関係者は、なるべくフランスに矛先が向
かないよう発言には相当気を遣っていたのです。ただでさえ、マ
クロン政権とトランプ政権とはも水と油であり、ギクシャクして
いたからです。
 ところが、今年の4月に入ると、米英メディアは、新型コロナ
ウイルスは、武漢のウイルス研究所から流出した可能性について
さかんに報道するようになったのです。ちょうどそのときです。
フランスのリュック・モンタニエ博士の次の発言が飛び出したの
は。これは、4月16日のフランスのサイト「どうして?ドクタ
ー」の音声インタビューでの発言です。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスは人工的なもので、武漢の研究所でつくら
れたのだろう。事故で流出したはず。
               ──リュック・モンタニエ博士
─────────────────────────────
 リュック・モンタニエ博士は何者でしょうか。
 モンタニエ博士は、1983年にノーベル生理学・医学賞を受
賞していますが、河添恵子氏によると、次のようにスゴイ人物な
のです。
─────────────────────────────
 ノーベル生理学・医学賞を受賞する以前から、モンタニエ博士
は、ラスカー医学賞(アメリカ財団)、シェーレ賞(スウェーデ
ン)、ガードナー賞(カナダ)、ファイサル王医学賞(サウジア
ラビア)、ハイネケン医学賞(オランダ王立アカデミー)、アス
トゥリアス皇太子医学賞(スペイン)、日本からは科学技術者
に贈られる「日本国際賞」を授与されたスゴい人物である。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 この発言のあった次の日、4月17日のことです。フランス国
際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)が、
次のような報道をしたのです。
─────────────────────────────
 「フランス国内には、中国武漢に『P4実験室』を造る計画の
妥当性を疑問視する声が以前から相次いでいた。おもな理由は、
中国当局がSARS後にフランス政府の援助で建てた幾つかのP
3実験室の用途の公表を拒否し続け、恐ろしいほど透明性に欠け
ていることだった。P4実験室もその二の舞になり『生物兵器庫
と化してしまうのではないか』との不安も高まっていた」「ただ
外務省、国防省と国防国家安全保障事務総局(首相府)の担当閣
僚や、細菌戟など生物兵器研究の専門家らは態度を保留した。政
治家は反対を退け計画を承認した」
 「アラン・メリユー氏は2008年にフランス側の代表として
中国側の陳竺氏とともに実行委員会の委員長に就任。計画は20
10年より本格的に始動した」  ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 この「中仏共同プロジェクト」は、シラク大統領とラファラン
首相が主導したもので、フランス議会の総意とは大きな隔たりが
あったにもかかわらず合意へと突っ走ったのです。医療機器関連
や製薬業からの強い要請を受け入れたのです。
 それでは、どういう点で中国と意見が一致しなかったのでしよ
うか。とにかく中国側は情報を公表するのを嫌がるのです。「B
SL/4」の実験室は、生物兵器庫の疑いが持たれるので、そこ
には強い透明性が求められるのですが、中国はそれを嫌がるので
す。自国の利益のために自国の法律を国際法に優先させる中国の
ことですから、そういうことは十分起こりうるのです。しかし、
フランスは後に引けなくなっていたのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/045]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢市「ウイルス研究所」に“中国とフランスの闇”は
  暴かれるのか?
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスをめぐる米中対立が激化するなか、欧
  州でも発生国・中国への不信感が強まっている。初動対応の
  失敗や隠蔽疑惑に加え、「マスク外交」を展開して自己正当
  化に利用しているのだ。こうしたなか、米国メディアが報じ
  た湖北省武漢市の「ウイルス研究所」設立に協力したとされ
  る、フランスの動向が注目されている。感染者約12万13
  00人、死者約2万2200人(25日、世界保健機関=W
  HO=調べ)という甚大な被害を受けた科学・文化大国は対
  中戦線に加わるのか。ノンフィクション作家、河添恵子氏の
  緊急寄稿第12弾。
   「われわれが知らないことが起きているのは明らかだ」フ
  ランスのエマニュエル・マクロン大統領は、4月中旬、英紙
  フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のインタビューでこう
  述べた。この表現には、同国ならではの「特別な事情」が含
  まれていそうだ。
   武漢には、「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」が
  2カ所(武昌区と江夏区)存在する。米国などは「新型コロ
  ナウイルスの発生源の可能性がある」として、フランスの全
  面的協力で完成した「P4実験室」が備わる研究所(通称、
  『新しいラボ』=江夏区)の査察を求めている。フランス大
  統領府は一応、「現時点で新型コロナウイルスの由来が『新
  しいラボ』であることを証明するものは何もない」との声明
  を発表している。        https://bit.ly/2XlpqwF
  ───────────────────────────

リュック・モンタリエ博士.jpg
リュック・モンタリエ博士
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2020年08月05日

●「フランスだけでなく米国も肩入れ」(EJ第5302号)

 新型コロナウイルスの感染がフランスにも広がると、フランス
のメディアは、一斉に中国の批判に転じたのです。フランスの右
派の代表的な雑誌『フィガロ』誌は、その2020年4月24日
号で「中国の大嘘」と題する特集を組んでいます。以下はその要
約です。河添恵子氏の本から引用します。
─────────────────────────────
 「武漢P4実験室はリヨンのP4実験室のコピーとして、メリ
ユー財団とパスツール研究所、その他15社ほどの金銭的支援に
より建設された」「完成した途端に、パリと北京の間の愛の炎は
途絶えた。新しいラボに派遣されるはずだった50人のフランス
人研究員は、そこに一歩足りとも足を踏み入れることが出来てい
ない」「それどころか、2016年以降、両国の感染症委員会の
会合すらない」「両国で締結した内容、フランス側の意図に反し
て『武漢P4実験室』は中国人の研究者で占められ、フランスの
科学者による制御を逃れている。   ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 ここで思い出すべきは、2018年に米当局者が当該研究所を
訪問後、米国務省に送っていた公電の内容です。武漢P4実験室
には管理上の弱点があり、必要な訓練を受けたスタッフも大幅に
不足しているというものです。これについては、7月31日付の
EJ第5299号に詳しく書いています。
 この武漢ウイルス研究所の建設の途中で、フランスは「P4実
験室」が備えなければならない高度の気密性や用途の透明性の公
表をめぐって中国側と深刻な争いがあり、結果としてラボに、十
分な安全性が確保されていない可能性があるのです。フランスは
一時は工事を中断することも考えたのですが、中断による経済的
損失に耐えられなかったといっています。
 これが本当であるとすると、新型コロナウイルスが武漢ウイル
ス研究所から流出したのではないかという疑いが強くなってきま
す。そうすると、リュック・モンタニエ博士の発言が気になりま
す。モンタニエ博士は、エイズウイルスのHIVウイルスの発見
者であり、その発言は重いものがあります。河添恵子氏の本には
博士のさらなる次の発言が紹介されています。
─────────────────────────────
 驚いた。そこには別のウイルスの配列が入っていたのだ。それ
は自然に混ざったものではない。大元はコウモリのウイルスだか
ら、それを組み替えたのだ。海鮮市場から出たというのは、美し
い伝説だ。そのような可能性はない、乏しい。最も合理的な仮説
は、誰かがエイズ(HIV)のワクチンを作りたかった、そのた
めにコロナウイルスを使ったと考えることだ。陰謀論ではない。
陰謀論とは、何かを隠す人のことだ。ウイルスは武漢の研究所か
ら逃げたものだろう。中国政府が知っていたのなら、彼らには責
任がある。中国は大きいので、間違いは起こるだろう。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 河添氏は、このモンタニエ博士の発言を、フランス政府組織で
通訳をしている今井佐緒里氏(欧州研究者・文筆家・編集者)の
抄訳として紹介していますが、その今井佐緒里氏がそのことにつ
いて述べたサイトを発見したので、ご紹介しておきます。
─────────────────────────────
                       今井佐緒里氏
 検証:ノーベル賞受賞の仏ウイルス学者「コロナは武漢研究所
の人工操作」発言をどうみるべきか。 https://bit.ly/2Xm3dyC
                   2020年4月22日
─────────────────────────────
 中国武漢のウイルス研究所については、河添恵子氏の本では触
れていないことにがあります。それは、2014年に米国のオバ
マ前大統領が、米国内でのウイルスに関する研究を禁止し、米国
立衛生研究所(NIH)で行われていたウイルスの研究をことも
あろうに中国の武漢ウイルス研究所に外部委託しているのです。
 これは、「日経バイオテク」に記事として出ているので、ご紹
介します。
─────────────────────────────
 武漢ウイルス研究所(武昌区)の付属施設(新しいラボ)が完
成する前年の2014年、米オバマ大統領は米国内でのウイルス
に関する研究を禁止する方針を打ち出した。米疾病対策センター
(CDC)で重大な事故が多発したためだ。そして米国立衛生研
究所(NIH)で実施されていたウイルスの研究を、武漢研究所
に外部委託することにした。同研究の外部委託を積極的に推し進
めたのが、NIH傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NI
AID)のアンソニー・ファウチ所長だ。また、NIHからのグ
ラントの直接の受取先となったのが、感染症研究で実績のある非
営利組織(NPO)で同研究のコーディネーターを務めたEHA
(EcoHeath Alliance)だった。   https://nkbp.jp/30kPp9e
─────────────────────────────
 ここで、「グラント」というのは、資金配分主体が一般の研究
者などを対象に、研究開発課題を募り、採択された課題に対して
研究資金を配分する米国の制度のことです。
 そのNIHのグラントとして、米国は2014年から2019
年までの5年間で310万ドル(約3億4100万円)が支出さ
れています。テーマは「コウモリ由来コロナウイルスの出現リス
クの解明」です。そのうち約60万ドル(約6600万円)が、
コウモリの遺伝子解析のための設備投資費用として中国にわたっ
ているのです。つまり、米国は、フランスが設立に肩入れしてい
る中国の新しいラボがまだ完成する前から、前倒しで、コウモリ
由来コロナウイルスの出現リスクなどの研究に相当の資金提供を
しているのです。こうなると、フランスのみならず、米国までが
この新しいラボに肩入れしていたことになります。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/046]

≪画像および関連情報≫
 ●新型ウイルスの「研究所流出」説、証拠はあるのか?
  ───────────────────────────
   アメリカ国務省の公電によると、在中アメリカ大使館の職
  員から、中国・武漢市にあるウイルス研究所のバイオセキュ
  リティーについて懸念の声があがっている。この研究所は、
  新型コロナウイルスのアウトブレイク(大流行)が最初に世
  界の注目を集めたのと同じ都市にある。
   ドナルド・トランプ大統領は、新型ウイルスがこの研究所
  から流出したものだという未確認情報について調査すると発
  言している。この説は果たして、現在のパンデミック(世界
  的流行)の理解に寄与するのだろうか?
   米紙ワシントン・ポストは、入手した外交公電をもとに、
  これについて報じている。それによると、2018年にアメ
  リカの科学専門の外交官がたびたび、中国の研究施設視察に
  繰り返し派遣されていた。その上で本国の政府へ、研究所の
  安全性に問題があるという警告を2件送っていた。記事によ
  ると、米外交官たちは武漢ウイルス研究所(WIV)の安全
  性と管理体制に脆弱性があり、支援が必要だと求めていた。
   また、この研究所が行っていたコウモリのコロナウイルス
  の研究が、重症急性呼吸器症候群(SARS)のようなパン
  デミックを起こしかねないと、視察した米当局者たちは懸念
  してたと、ワシントン・ポストは続けている。その上で同紙
  は、米政府内ではこの外交公電をもとに、WIVあるいは武
  漢市内の別の研究所が、今のパンデミックを起こしているウ
  イルスの発生源ではないか、という議論が加速していると報
  じた。             https://bbc.in/2EEVwg9
  ───────────────────────────

ノンフィクション作家/河添恵子氏.jpg
ノンフィクション作家/河添恵子氏
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2020年08月06日

●「世界最強米CDCはどうしたのか」(EJ第5303号)

 2020年5月3日のことです。ポンペオ米国務長官はABC
テレビの番組で、次のように発言しています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが中国湖北省武漢市にある中国科学院武漢
ウイルス研究所から拡散したとの疑惑について、多くの証拠があ
る。しかし、新型コロナウイルスは遺伝子操作されたり、人工的
に作られたりしたものではない。   ──ポンペオ米国務長官
─────────────────────────────
 これより前にトランプ米大統領も同趣旨のことを発言しており
ポンペオ国務長官は、大統領の発言のフォローをしたのです。こ
れを受けて、CNNは、5月4日、次の報道を行い、大統領と国
務長官の発言を否定しています。
─────────────────────────────
 “Intel shared among US allies indicates virus outbreak more likely came from market, not a Chinese lab”
 アメリカの同盟国(ファイブアイズ)は、ウイルスのアウトブ
レーク(爆発的流行)は、中国の研究室からではなく、市場(い
ちば)から来た可能性が高いという認識を共有した。
                  https://bit.ly/2PnXKCN ─────────────────────────────
 さらに、4月29日には、英国のBBCは、次の報道を行って
います。武漢ウイルス研究所への米国の関与を暴いたのです。
─────────────────────────────
 アメリカはコロナウイルス研究資金援助を中止した。このプロ
ジェクトは、これまで武漢ウイルス研究所と協力していた。
                  https://bit.ly/2PnXKCN ─────────────────────────────
 この報道は、トランプ政権がウイルスが流出したと批判する武
漢ウイルス研究所(新しいラボ/江夏区)に、オバマ政権時代か
ら、資金を出していることを暴いたものです。おそらくトランプ
大統領はそのことを知らなかったものと思われます。この米国の
関与について、中国分析の第一人者といわれる遠藤誉氏は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 イギリスのBBCは4月29日、「アメリカはコロナウイルス
研究資金援助を中止した。このプロジェクトはこれまで武漢ウイ
ルス研究所と協力していた」と報道している。
 BBCニュースによれば、ニューヨークにある「エコ・ヘルス
連盟」は過去20年間に渡り、25ヶ国とウイルスに関する共同
研究をしてきたが、2015年からは研究経費を「オバマ政権時
代の国際医療研究協力の一環」として位置づけ、アメリカ政府が
国立衛生研究所経由で370万ドルを支払ってきた。共同研究の
相手には、なんと武漢ウイルス研究所も含まれており、研究テー
マはこれもまた、なんと、「コロナウイルス」である。
 つまり、武漢ウイルス研究所のコロナウイルス研究に関する資
金の一部は、アメリカ政府から出ていたことになる。おまけに、
「アメリカとの共同研究」だ。ポンペオが「膨大な証拠がある」
と言うのも「むべなるかな」。あれだけオバマ政権の施策を批判
してきたトランプだが、これもまた、なんとトランプ政権になっ
てからもこの科研費を支払い続けており、最後の支払いは、20
19年7月となっている。      https://bit.ly/2PnXKCN
─────────────────────────────
 ここまでの話を総合すると、感染症対策には世界最強の評価の
ある米国CDC(疾病予防センター)を持つ米国の稚拙な対応が
目立ちます。米国は、今回の新型コロナウイルスの流出源とされ
る武漢ウイルス研究所(江夏区/現在グーグル・マップ上から消
滅)に、オバマ政権の時代から、「コロナウイルス」の研究のた
めに、この2019年7月まで、研究資金を援助していたことに
なるからです。
 2020年8月3日現在、米国における新型コロナウイルスの
感染者は471万3540人、死亡者は15万4402人で世界
一です。世界一のCDCを有しながら、米国は何をやっていたの
でしょうか。
 米国の初の感染者は、1月21日、武漢地域を訪れた35歳の
男性です。この男性は、帰国の機内で発症し、ワシントン州シア
トルに戻っています。
 ウイルスの米国上陸に、CDCは危機モード全開になり、局内
の「緊急オペレーションセンター」を稼働させています。そして
米国内の研究者・衛生関係者で作るインターネット網「赤い暁」
には、CDC情報が逐次報告されています。実に素早い対応であ
るといえます。
 CDCは、中国からの遺伝子配列情報を入手し、1月末には検
査キットの製作に入っています。そして、2月4日には、超スピ
ードで、FDA(食品医薬品局)の認可にこぎつけています。こ
の検査キットの空輸便がニューヨーク市に届いたのは、2月8日
の朝です。ここまでは、米国は世界のトップ集団にいたことは確
かです。なぜなら、ニューヨーク市で初の感染者が確認されたの
は、それから3週間後のことだからです。
 ところが、検査キットが届いた2月8日の夜に問題が起きたの
です。ニューヨーク市の衛生局から次の情報が入ったのです。
─────────────────────────────
   検査結果にブレがある。正確な結果が得られない。
             ──ニューヨーク市の衛生局
─────────────────────────────
 CDCは、大慌てで、修正作業に入っています。そこにホワイ
トハウスからさまざまな干渉が加わってCDCは大混乱に陥るの
です。トランプ大統領は、人の話を10分と聞けない人です。専
門家の発言の都合のよい部分をとらえ、次のようにいいはじめた
のです。「暖かくなれば、病原体は奇跡のように消える」と。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/047]

≪画像および関連情報≫
 ●CDCのある米国が新型コロナ検査で失態を演じた理由
  ───────────────────────────
   米国疾病予防管理センター(CDC)が、新型コロナウイ
  ルス感染症の検査体制の整備で大きな遅れを取っている。感
  染症対策で「お手本」とされることが多い世界的な保険機関
  は、なぜ初期対応を誤ったのか。
   米国疾病予防管理センター(CDC)は、世界的に有名な
  保健機関の1つだ。それだけに今回、CDCが新型コロナウ
  イルスの検査キットを全米各地へ配布するのにこれほどひど
  くしくじってしまったのは、一層不可解なことに感じる。他
  国が数百万件の検査を実施する一方で、CDCは本稿執筆時
  (3月5日)で1235人の患者しか検査できていない。感
  染症のエピデミック(局地的な流行)の早期対応では迅速さ
  が重要だ。今回のCDCの不手際が、米国国内のアウトブレ
  イクの追跡における損失につながることは確実だ。
   CDCは2月5日に新型コロナウイルスの検査キットの配
  布を開始した。だが、その後間もなく、検査キットの多くが
  試薬が汚染された結果、ネガティブコントロール(コロナウ
  イルスが存在しないときに陰性を示すと分かっている対照実
  験)で異常が見つかった。恐らく検査キットの開発に急いだ
  ことによる副次的影響だろう。ネガティブコントロールで失
  敗した研究機関は、検査のためにサンプルをCDCに送り返
  す必要があった。        https://bit.ly/30qOkgg
  ───────────────────────────

CDC/米疾病予防センター.jpg
CDC/米疾病予防センター
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2020年08月07日

●「米CDCはなぜ機能しなかったか」(EJ第5304号)

 米国CDC(疾病予防管理センター)といえば、「BSL4」
の実験室を持つ感染症に対する世界一の知見を有する研究センタ
ーとして有名ですが、新型コロナウイルス感染拡大という肝心か
なめなときに、世界のリーダーシップをとる活躍をしていないと
思います。昨日のEJに続き、なぜ、機能不全になったのかにつ
いての話を続けます。
 2020年8月6日付の新聞は、次の注目すべき記事を報道し
ています。
─────────────────────────────
◎米厚生長官が台湾訪問へ/断交後最高位/対中強硬姿勢の一環
 ・米厚生省は4日、アザール厚生長官が近く台湾を訪問すると
  発表した。米閣僚の台湾訪問は6年ぶりで、同省によると、
  1979年の台湾断交以来、最高位の閣僚の訪問になるとい
  う。台湾の外交部(外務省)によると、蔡英文総統との会談
  も予定されている。 ──2020年8月6日付、朝日新聞
◎米厚生長官、台湾訪問へ 総統と会談、関係強化
 ・【台北=中村裕】台湾の外交部(外務省)は5日、米国のア
  ザー厚生長官が近く台湾を訪問し、蔡英文総統と会談すると
  発表した。今後、数日以内に訪問するとし、歓迎の意を示し
  た。米国は1979年に台湾と断交して以降、最高位の高官
  の訪問としている。──2020年8月6日付日本経済新聞
─────────────────────────────
 日本の厚生労働大臣に当る米国の大臣は「保健福祉長官」。現
職はアレックス・アザー氏が務めています。しかし、このアザー
保健福祉長官の姿が久しくニュースから消えていたのです。それ
が、8月6日になって、アザー長官が突然台湾を訪問するという
ニュースが報道されたのです。これはこれで米中の対立がさらに
一段と激しくなるニュースですが、EJでは、今回は、それはさ
ておき、アレックス・アザー長官に注目します。
 現在、トランプ大統領の下で、タスクフォースを率いるのは、
マイク・ペンス副大統領。メディア担当は、ジェローム・アダム
ス公衆衛生局長であって、アザー保健福祉長官は公式会見には姿
を見せていない。米メディアは「トランプ大統領の怒りを買って
外された」と報道しましたが、これに対して、トランプ大統領は
ツイッターで、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 それは、フェイクニュースだ。彼は、大変立派な仕事をして
 いる。          ──ドナルド・トランプ大統領
─────────────────────────────
 情報によると、このアザー長官は、正義感で大統領に楯突くタ
イプの人物ではないのです。何とか大統領のお気に入りになりた
いと思っている。大統領に嫌われることを心から恐れている人物
の1人。日本にもそういう官僚はたくさんいます。
 そのため長官就任後は、CDCのロバート・レッドフィールド
所長や、「メディケア・メディケイド・サービシズセンター」の
シーマ・パーマ所長らと激しく衝突したといいます。素人の大統
領が要求する無理難題を押し通そうとしたからです。
 しかし、CDCは検査キットで大ミスを犯し、アザー長官は、
トランプ大統領に一喝を食っています。そしてトランプ大統領は
「暖かくなれば病原体は奇跡のように消えてなくなる」という独
自の主張をゴリ押しし、その主張に異を唱え、対策強化を主張す
るCDC幹部を片っ端から、罷免したのです。
 アザー長官は、1月末に、全米向けに「緊急事態宣言」を発出
していますが、これによって、検査キット、ワクチン審査の認可
のハードルが一緒に跳ね上がったのです。米保健行政の官僚主義
がそうさせたのです。それ以来、アザー長官は公式の場から姿を
消してしまったのです。保健福祉長官が先頭に立って、最も活躍
しなければならないときにそうなったのです。
 トランプ大統領の最大の失敗は、ルイジアナ州ニューオーリン
ズでの「マルディグラ(肥沃な火曜日)」と呼ばれる謝肉祭を2
月下旬に強行したことです。マルティグラは、全世界から数十万
人の規模の観光客の集まる「3密」の権化のようなイベントであ
り、当然世界最大級のクラスターが発生し、人口500万人未満
のニューオーリンズで、死者は1000人を超えたのです。
 このように、世界最高の医療産業・学界を擁する米国が、世界
最悪の新型コロナウイルス感染国になる──あってはならない話
です。それは、トランプ大統領が、自己の再選のため、無責任な
行動をしたことが原因であるといえます。
 トランプ政権になってから、コロナが起きる前から、保健・衛
生行政全般のトップに、いかがわしい人物が続々と起用されてい
ます。これに関する『選択』の記事をください。
─────────────────────────────
 2017年初頭のことだ。元凶は、保健福祉長官に起用された
トム・プライス元下院議員だ。医師出身で、下院では予算委員会
の委員長を務めるほどの大物にのしあがった。彼は、米下院で出
世する過程で、悪癖を身につけた。医療関係法案を提出し、成立
のめどが立った直後に、関連企業の株を買うというインサイダー
取引である。これを何度も繰り返した。
 医療業界にとっては最も操りやすいタイプだ。新政権誕生時に
保健福祉長官候補になった。上院の指名投票では、民主党から激
しい反発を招き、僅差でやっと就任。ところが、長官就任後は出
張に政府専用機をたびたび使って問題化した。最後は大統領自身
の怒りを買い事実上解任された。このプライス氏がCDC局長候
補に引っ張ってきたのが、地元ジョージア州のブレンダ・フィッ
ツ・ジェラルド氏である。彼女も医師だが、本職は「アンチエイ
ジング・クリニック」経営。その後、州政界に入って、「医療行
政のプロ」を看板に保健行政のトップにまで出世した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/048]

≪画像および関連情報≫
 ●世界最強の感染症対策機関を持つ米国が世界最大の感染国に
  なった理由
  ───────────────────────────
   世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスだが、1
  つ気になることがある。それは米疾病管理予防センター(C
  DC)という「世界最強の感染症対策機関」を持つ米国が、
  世界最大の感染国になっていることだ。
   4月20日現在、世界の感染者数は238万人を超え、う
  ち米国は74万人(死者4万人)以上で世界全体の3分の1
  近くを占めている。なぜこんなことになっているのかと言え
  ば、その責任の大半はトランプ大統領の失策と無能さにある
  と言っても過言ではない。
   今年1月末、中国の武漢で感染が拡大していた頃、ホワイ
  トハウスには新型コロナについて警鐘を鳴らす報告書が情報
  機関などから上っていた。ところがトランプ大統領はそれを
  軽視し、「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」
  などと、記者団に話していた。
   その結果、初動対応が大幅に遅れ、感染者が十分に把握で
  きず、感染経路の追跡や感染者の隔離などを徹底できずに、
  感染を拡大させてしまったのである。感染拡大のもう1つの
  主要因はウイルス検査の遅れだが、これもトランプ大統領の
  失策と無関係ではない。トランプ政権は世界保健機関(WH
  O)が各国に提供した検査キットを使用せず、米疾病管理予
  防センター(CDC)が独自に開発した検査キットを使うこ
  とを決定した。         https://bit.ly/2DH149K
  ───────────────────────────

アレックス・アザー米保健福祉長官.jpg
アレックス・アザー米保健福祉長官
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2020年08月11日

●「新型コロナは生物兵器の可能性大」(EJ第5305号)

 先日、書店に行ったら、偶然次の本を見つけました。角川新書
の新刊です。著者は、アンソニー・トゥー氏です。
─────────────────────────────
              アンソニー・トゥー著
    『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 アンソニー・トゥー(杜祖健)氏の名前については、河添恵子
氏の本を読んで知っており、7月22日のEJ第5294号でも
取り上げています。だから、目にとまったのであり、購入するこ
とができたのです。
 私はネットで本は購入せず、頻繁に書店に通うのは、そのため
です。思いがけない本の発見があるからです。ネットで本を買う
ときは、購入したい本が決まっているときのみです。ネットで、
役に立つと思われる本を偶然見つけるのは困難なことです。
 それはさておき、アンソニー・トゥー博士は、台湾大学理学部
を卒業後に渡米し、ノートルダム大学、スタンフォード大学、イ
エール大学で、生化学研究に従事し、コロラド州立大学教授に就
任しています。
 専門はヘビ毒などの毒物で、生物兵器についても造詣の深い人
です。日本で松本サリン事件、東京地下鉄サリン事件が起きたと
き、日本の警察に協力し、事件解明のきっかけを作っています。
これにより、2009年に旭日中綬章を受章しています。
 フランシス・ボイル・イリノイ大学教授は、2月の上旬にイン
ドの英字メディアに次の発言をしています。ボイル教授は、ジョ
ージ・ブッシュ(パパブッシュ)大統領が、1989年に署名し
た「生物兵器禁じ条約」の国内法を起草した人物です。
─────────────────────────────
    新型コロナウイルスは、攻撃的な生物兵器である
             ──フランシス・ボイル教授
─────────────────────────────
 アンソニー・トゥー博士は、ボイル教授の発言について、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 もし、武漢の研究所でウイルスを作っていたとしたら、やはり
攻撃用でしょう。流行っていないものを研究する必要はあります
か。(中略)中国政府は「生物兵器とはまったく関係がない、嘘
だ」と言いますが、自分から「作っています」なんて言うはずが
ないでしょう。           ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 このように、アンソニー・トゥー博士は、新型コロナウイルス
が生物兵器で作られた可能性を肯定していますが、それが何らか
のミスで外に流出したのではないかという見解をとっています。
その根拠として、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 最近になって中国政府は、真相を調べるため武漢へ陳薇少将を
派遣した。彼女は浙江大学を卒業後、フランスのモンペリエ大学
で博士号を取得した。その後、人民解放軍に入り、アフリカでエ
ボラウイルスの研究に従事した生物兵器のエキスパートである。
これについても、台湾では「新型コロナウイルスの影響を調べる
ためであれば、医学の専門家を送るべきなのに、生物兵器の専門
家を送るということは、病原はやはり武漢のウイルス研究所では
ないか」と報道している。さらに、一説によると、武漢のウイル
ス研究所のトップは江沢民派の人物だったが、習近平国家主席は
今回の新型コロナウイルスの責任を彼らに押し付けて罷免したの
ち、自分の派閥の人を入れた。その後、武漢からの新しい患者は
報告されていないようだ。
           ──アンソニー・トゥー著の前掲書より
─────────────────────────────
 もうひとつ、トゥー博士が注目しているのは、武漢のウイルス
研究所に所属する石正麗氏(現在の所属は不明)が、2003年
頃から米国や英国の学術雑誌に掲載している4編の論文です。石
正麗氏は、コウモリウイルスを人工的に改良していることを発表
しており、フランスや米国の化学者が「そのようなウイルスが、
もし研究所から漏れたりしたら、大惨事になる」という警告を出
していたのです。
 トゥー博士は、「なぜ、石正麗氏がそのような研究を行ったの
か」について、3つ(@珍しい研究をしたい、Aワクチンを作り
たい、B攻撃用の生物兵器を作りたい)を上げて、それぞれにつ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 @の可能性は、やはりあると思う。世の中には誰もやったこと
のない新しい研究をしたいという人は多く、化学者もまったく同
様だ。ただ単に、そのような意思で危険な研究をしたということ
も十分考えられる。Aも医学治療のためで、これは良いことであ
る。しかし、コウモリのウイルスは当時まだ研究中であり、流行
していたわけでない。病気が流行ってないのに、そのようなワク
チンを作ることは考え難い。
 Bの生物兵器の開発の可能性は、台湾側が考えているようだ。
それは、かつて台湾でも秘密裏にSARSウイルスを研究して、
それが漏れて研究員が一人感染する事態が起きたからだ。幸いに
も、この事件はすぐにコントロールされたので、大きな問題には
ならなかった。しかし、どの国でも同様の開発は考えられる。
           ──アンソニー・トゥー著の前掲書より
─────────────────────────────
 トゥー博士の本を読むと、台湾のメディアでは、新型コロナウ
イルスが生物兵器であるかどうかなどの報道が堂々と行われてい
るようです。しかし、日本では、そのような報道は皆無です。そ
の差は何なのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/049]

≪画像および関連情報≫
 ●「コロナの出どころは武漢研究所」の虚実
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの出どころについて、当初指摘されて
  いた武漢市の海鮮市場ではなく、同市のウイルス研究所が発
  信源ではないか。このウイルスの起源をめぐる攻防に集約さ
  れ、主に「情報戦」の様相を帯びている。「ポストコロナ」
  時代の米国と中国との覇権争いは、既に過熱気味だ。
   米国が新型コロナウイルスの起源だと主張する武漢ウイル
  ス研究所付属のP4と呼ばれる施設は、バイオセーフティー
  レベルが最高度の4であり、2018年に正式運用が始まっ
  た。このP4施設の建設には当初フランスの支援があったが
  同国は中国政府が情報の透明化に消極的であったり、一部安
  全保障の観点から「生物兵器への転用」懸念も指摘されたり
  したため協力に消極的になったと仏メディアは伝えている。
   特にこの研究所に勤務していた石正麗主任は、コロナなど
  多数の病原体を保有しているコウモリの研究で有名であり、
  この主任が研究所から流出したかどうかを知っているのでは
  ないかとされる。ただ、こうした中国の真実を知る可能性の
  ある人たちは、その後姿を見せていない。一方、中国は研究
  所起源説を全面否定している。また、ここにきて昨年10月
  に武漢で開催された各国の軍関係者の競技大会、「ワールド
  ミリタリーゲームズ」の際にウイルスが広まったのでは、と
  の見方も出ている。       https://bit.ly/2DDI6Rl
  ───────────────────────────

アンソニー・トゥー博士(杜祖健).jpg
 
アンソニー・トゥー博士(杜祖健)
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2020年08月12日

●「武漢研究所からのウイルス流出説」(EJ第5306号)

 現在、中国が世界中から非難を浴びています。新型コロナウイ
ルスの感染拡大のこともありますし、台湾に対する中国の姿勢や
チベット、東トルキスタンにおける民族浄化など、世界の非難を
浴びて当然のことを中国はやっています。
 しかし、日本のマスコミは、こういう中国の振る舞いについて
ほとんど報道しません。日本固有の領土である尖閣諸島において
中国の公船が、毎日のように傍若無人に振る舞っても、マスコミ
の報道は、たんたんと事実を伝えるのみです。一体どうなってい
るのでしょうか。
 それは、「日中記者交換協定」というものがあるからです。日
本と中国は、1964年4月19日に、「新聞記者交換会談メモ
修正に関する取り決め事項」と題する文書に調印しているからで
す。その結果、日本のマスコミは、次の3つを守らざるを得なく
なっています。
─────────────────────────────
     1.中国を敵視しない
     2.2つの中国をつくる陰謀に加わらない
     3.日中国交正常化を妨げない
─────────────────────────────
 こういう中国との取り決めがあることを多くの日本国民、とく
に若い人は知る由もないはずです。新聞でもテレビでも報道しな
いので、本を読まない若い世代では、中国が現在世界で何をして
いるのか知らないし、関心も薄いと思います。
 これについて、中国に詳しいノンフィクション作家の河添恵子
氏は、怒りをもって次のように述べています。
─────────────────────────────
 台湾はそもそも中国ではない。主権があり、総統も首長も立法
委員も国民による投票で選ばれ、軍隊を持ち、独自の教育システ
ムがあり(高学歴者の割合は世界最多とされる)、独自の経済シ
ステムも有する。人権に至っては「世界一と言って過言でないほ
どである。「日中国交正常化を妨げない」の原則にしても、南シ
ナ海や東シナ海で日中国交正常化を妨げる野蛮な行為を繰り返し
ているのは中共軍なのだ。
 世界各国が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流
行)で危機的状況にあるなかでも、人民解放軍が戦闘モード″
にあることも明らかだ。習近平国家主席はこれまでも「(台湾)
統一のために、武力行使も放棄しない」と公言してきた、が、東
部戦区(元南京軍区)は国家安全教育日の4月15日、公式アカ
ウント「人民前線」に「幻想を捨て、戦闘を準備せよ」とのメッ
セージを掲載した。東部戟区の任務は「台湾有事」「日本有事」
に備えることとされる。       ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスの感染が世界中で止まらないなか、トラン
プ米大統領は、「何としてもウイルスが流出した発生源を突き止
める」といっている。実際に米国では、口先だけでなく、本気で
リサーチしています。それに対して中国は防戦一辺倒になってい
る。そこで、河添恵子氏の本とアンソニー・トゥ博士の本を参照
に、発生源の問題を整理することにします。
 新型コロナウイルスが中国湖北省武漢市で発生したことは間違
いない事実です。中国側はこれについては認めています。問題は
武漢市のどこから発生したかです。これに対して中国側は、「海
鮮市場にいた動物から」としています。その動物とは、コウモリ
ではないかといわれています。
 その武漢市には、武昌区と江夏区にそれぞれウイルス研究所が
あります。このうち、江夏区の研究所である「中国科学院病毒研
究所」の方が新しい研究施設であり、バイオ・セーフティーレベ
ル4(BSL/4)の能力を持っているといわれます。
 この研究所について、アンソニー・トゥ博士は、自著で、次の
ように書いています。
─────────────────────────────
 この研究所は、2004年、伝染病について共同研究するため
にフランスが中国と結んだ協定によって設立された。はじめは、
この二国で建設が行われたが、途中から中国がフランスの参加を
拒絶し、最後の2年間は中国だけが建設に携わった。
                 ──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 このことは、8月3日のEJでも既に述べていますが、フラン
スは、BSL/4実験室にとって技術的に最も大切なところで、
中国側の意向で、建設に参加できなくなってしまったようです。
これが、2018年1月の米外交官の訪問によって、安全対策上
の危惧の念が表明される原因になっていると思われます。トゥー
博士によると、現地では「研究員が、市場で実験済みの動物を販
売している」という噂が立っていたといいます。
 また、トゥー博士によると、既出の石正麗氏は、この江夏区の
新しいラボ──中国科学院病毒研究所において、コウモリ由来の
コロナウイルスを猿に感染させ、それから血清を作る研究をして
いたと指摘しています。大変リスクのある実験であり、ここから
ウイルスが漏れたことも十分考えられるそうです。
 トゥー博士は、中国政府が3月10日に上海の復旦大学に対し
「新型コロナウイルスの発生源については、一切発表してはなら
ない」という通達を出しているといっています。おそらくこの通
達は、他の大学や研究所にも出されていると思われ、出所を何と
か隠蔽しようとしているものと思われます。
 そして、この江夏区の新しいラボが、今やグーグルマップから
消えていることを河添恵子氏は指摘しています。武昌区のラボは
残っています。「都合の悪いものは何でも徹底的に隠蔽する」の
が中国の方針のようです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/050]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナウイルス 「研究所から流出」説の真偽を追う
  ───────────────────────────
   中国・武漢市に世界トップレベルのウイルス研究所「中国
  科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」がある。この研究所が
  備える最新鋭の設備の1つが、BSL4(バイオセーフティ
  ーレベル4)実験室だ。実験室では、SARSやエボラ出血
  熱のような、感染力が強くて、危険なウイルスのコントロー
  ルも可能で、洪水の被害が及ばない場所に設置され、マグニ
  チュード7の揺れにも耐えうるという。
   しかしいま、この研究所から新型コロナウイルスが流出し
  たのではないかという疑惑が持ち上がっている。1月末、イ
  ンド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちが
  まとめた「新型コロナウイルスにエイズウイルスと不自然な
  類似点がある」とする論文が物議をかもした。さらにこの研
  究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられな
  い」とした。この論文は大バッシングののちに撤回されたが
  一部のネットユーザーの間で内容が拡散。「新型コロナウイ
  ルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研
  究所が人工的に合成したものでは」という憶測も飛び交い、
  不安が高まったのだ。さらに1月28日、ハーバード大学公
  衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は、自身
  のツイッターで、「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源で
  はない」と発信。たちまち、世界中のメディアで取り上げら
  れた。             https://bit.ly/3fM6w8F
  ───────────────────────────

中国科学院病毒研究所/武漢市江夏区.jpg
中国科学院病毒研究所/武漢市江夏区
 
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2020年08月13日

●「コロナにまつわる4人のリケジョ」(EJ第5307号)

 河添恵子氏は、今回の新型コロナウイルスに関して、中国の4
人の女性研究員(リケジョ)が絡んでいると、述べています。
─────────────────────────────
            1.黄燕玲
            2.武小華
            3.石正麗
            4.王延軼
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 第1は「黄燕玲」氏です。
 黄燕玲氏は中国科学院武漢病毒研究所(新しいラボ/江夏区)
の研究員です。2012年度、試験を免除されて修士研究員に昇
格した名簿の公示が2011年11月4日に行われましたが、そ
のなかに、黄燕玲氏の名前はあります。しかし、2019年のい
つの頃なのか、行方不明となっています。
 武漢病毒研究所のスクリーンショットには、「診断微生物学科
組」に、黄燕玲氏の氏名と顔写真が出ていましたが、現在は氏名
むはあるものの、顔写真とコンタクト先の電話番号は、すべて空
欄になっていたのです。この黄燕玲氏について、河添恵子氏の本
には、次のように書かれています。
─────────────────────────────
 研究所に送られできたウイルスの扱いを、彼女がミスって浴び
て亡くなり、その際に運び出した人、葬儀屋などから一気に武漢
ウイルスが広がった。絶対に彼女が感染0号だ!」との内容が、
(真偽は別として)噴出した。
 ここで動いたのが北京の「新京報新聞」だった。2月16日付
で記事が出たが、まさに「超特急の火消し工作」のような印象を
抱いた。2月15日の夜、武漢ウイルス研究所の石正麗研究員他
と記者が話をした。石正麗氏は「同研究所に黄燕玲という名前の
研究員が所属しているかを把握していない」とのことだ。石研究
員は「私が保証できるのは、研究生を含む内部の人間は誰一人と
してウイルスに感染していないこと。0号は絶対にいない、フェ
イクニュースだ」と語った」との内容だった。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 渦中の黄燕玲氏は、その後SNSを通じて「皆さんこんにちは
私は元気で暮らしています」というメッセージを出していますが
本当に本人が生存しているか疑わしい限り。中国政府がよくやる
手法です。
 第2は「武小華」氏です。
 この人は告発者のようです。2月頃の話です。武小華という博
士がウェイボ(微博)を通じて、次の告発を行ったのです。
─────────────────────────────
 武漢P4実験室では、自然界に存在せず変異から生まれない人
工的なウイルスを編集する実験を行っている。 ──武小華博士
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 武小華博士は、新型コロナウイルスを作り出したのは、武漢P
4実験室に所属する石生麗主任のグループであると特定していま
す。その特定の根拠として、2015年11月、米科学雑誌「ネ
イチュア・メディシン」に発表した石生麗主任ら15人による論
文がクーズアップされることになります。この武小華博士につい
て、河添恵子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 武小華博士が何者なのか、彼女が博士だとして論文が見当たら
ない、といった声も出ている。石正麗研究員の存在やその研究内
容を世界に知らせるための架空の人物を使っての“仕掛け”だっ
たのだろうか?石正麗研究員と同僚の周鵬研究員は、情報諜報ネ
ットワーク「ファイブ・アイズ」に「この2人を調査中」と名指
しされた。両氏は、オーストラリアに留学していた時期があり、
その間、誰と接触して何をしていたか、オーストラリア保安情報
機関(ASIO)は際どい証拠をつかんでいるのだろう。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 第3は「石正麗」氏です。
 石正麗氏については、これまでEJでも、何回も取り上げてい
ます。この人も現在、その所在は不明です。この人は世界から、
「バット・ウーマン」と呼ばれるほどコウモリのウイルスの専門
家として知られています。その所属は、武漢ウイルス研究所の学
術委員会主任、新発伝染病研究中心主任、新発病毒学科組組長と
いうさまざまな肩書を持っています。
 孫向文氏(漫画家、正体不明)は、石正麗氏について、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 石正麗主任が2015年に「ネイチュア・メディシン」で発表
した論文を見た、アメリカの北カロライナ州にある小さな医学研
究団体は、彼女がリードした研究チームと提携を結びました。そ
の際に見たのは、コウモリから抽出したコロナウイルスを人間の
細胞にあるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と融合する
実験に成功した、との内容が書かれた論文だったのです。
 これをアメリカのCDC(疾病管理予防センタ−)は、「自然
界に存在しないウイルスをつくるのは、モラル違反であり、中国
が生物兵器に転用しかねないリスクを推測した」としています。
同年にその医学チームは彼女との提携を解除しました。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 今回取り上げられなかった4の「王延軼」氏については、明日
のEJで述べることにします。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/051]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナの危険察知の“コウモリ女”の口を封じた17歳
  下“美人”上司
  ───────────────────────────
   中国湖北省の中国科学院武漢ウイルス研究所でコウモリ関
  連のコロナウイルス研究を統括してきた石正麗氏(1964
  年生まれ)について、オーストラリアのメディアが「中国当
  局に口止めされていた」と伝え、波紋を呼んでいる。そこに
  は“情実人事”で研究所トップに抜擢された30代女性も関
  与しており、石氏ら第一線研究者との確執が複雑に絡んでい
  る。オーストラリアのニュースサイト「news.com.au」 は5
  月3日、石氏と武漢ウイルス研究所をめぐる確執を詳細に記
  している。
   同サイトは、中国当局が12月30日、石氏の研究チーム
  に血液サンプルを分析するよう求めた▽分析の結果、石氏は
  新型コロナウイルスが人を殺すということを知った▽したが
  って石氏は、新型コロナウイルス感染により武漢で人が死ん
  でいたことを知る世界最初の科学者の1人ということになる
  ――と位置づけている。
   新型コロナウイルス感染拡大後、石正麗氏は中国人ジャー
  ナリストと接触。このジャーナリストは、同サイトの取材に
  「武漢ウイルス研究所は今年1月2日の段階で遺伝子配列と
  関連の実験を終えていた。だが口封じされた」との見方を示
  したという。実験の詳細は記されていない。
                  https://bit.ly/3ijLX51
  ───────────────────────────

石生麗武漢研究所研究員.jpg
石生麗武漢研究所研究員
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2020年08月14日

●「王延軼は共産党の『選民』である」(EJ第5308号

─────────────────────────────
            1.黄燕玲
            2.武小華
            3.石正麗
          ⇒ 4.王延軼 ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 第4は「王延軼」氏です。
 この人は、2018年後半から、新しいラボ、江夏区の中国科
学院武漢病毒(ウイルス)研究所と、武昌区の研究所の両方の所
長に抜擢され就任しています。正式には、中国共産党党委員会書
記・所長ということになります。年齢は37歳の若さです。なぜ
王延軼氏が武漢ウイルス研究所の所長になったのか。多くの実績
を持つ石生麗氏との関係についてはどうなっているのか、情報を
整理していきます。
 王延軼氏は、北京大学生命科学学院を卒業し、2006年に米
コロラド大学で修士号を獲得し、帰国して2010年、武漢大学
生命科学学院で博士号を取得しています。
 王延軼氏と、新しいラボ、江夏区のウイルス研究所の石正麗研
究員との関係について、河添恵子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 石正麗氏は学術委員会の主任、新発伝染病研究中心の主任、新
初病毒学科組の組長という立場であり、武漢ウイルス研究所の責
任者ではない。一方、30代の王延秩氏は超エリート街道を歩む
「選民」であることは間違いない。
 2020元旦、国家衛生委員会が武漢ウイルス研究所の王延秩
所長に電話し、流行に関連するすべての検査、実験データ、結果
結論を自己メディアやSNSで公開したり、官製メディアを含む
協力機関(技術サービス会社を含む)に開示したりしないように
と、特別な通知を伝達したとされる。実際、王延軼所長は、1月
2日に、「武漢ウイルス研究所」研究員すべてにこれらの内容を
伝達したことが、スクリーンショットで残されている。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 王延軼武漢ウイルス研究所長と石正麗研究員の関係については
8月6日のEJの≪画像および関連情報≫でご紹介したジャーナ
リストの西岡省二氏の一文が参考になります。
 西岡省二氏のレポートでは、オーストラリアのニュースサイト
「news.com.au」が、2つの重要情報を明らかにしています。
 1つは、王延軼武漢ウイルス研究所長が、1月2日に全研究員
に送ったメール「武漢の原因不明の肺炎に関連した情報の公開を
厳禁とする通知に関して」です。これについては、昨日のEJで
述べています。
 2つは、4月に石正麗氏がオンラインで講義を行い、次のよう
に述べたという情報です。
─────────────────────────────
 自分たちのチームは、1月14日、自分たちが特定したウイル
スが、ヒトに感染する可能性があることを確認した。
                       ──石正麗氏
─────────────────────────────
 この2つの情報から、中国当局が、今回の新型コロナウイルス
の発生源を特定されることを恐れて、早い時点で、研究所に対し
て、それについての口止めを行っていることがわかります。
 中国当局が「ヒト・ヒト感染する可能性」があることを発表し
たのは、1月20日になってからです。しかし、石生麗氏が発表
したのは14日であり、6日も早いのです。
 この4月末日に、インターネット上に石生麗氏が大量の秘密文
書を持って欧州に脱出し、フランスの米国大使館に亡命の申請を
したという情報が流れたのです。しかし、その後5月になって、
微信(ウィチャット)上に本人のメッセージで、その情報がデマ
であると表明していますが、以来、石生麗氏は行方不明です。
 そもそもオーストラリアのニュースサイトが、なぜ石生麗氏に
関心を持っているかというと、ファイブアイズが石生麗氏をマー
クしているからです。ファイブアイズとは、米国・英国・カナダ
・オーストラリア・ニュージーランド5ヶ国による諜報活動の協
定のことです。最近、日本にも加盟の要請があります。
 石生麗氏は、武漢の大学で生物学を学び、2000年には、フ
ランスのモンペリエ大学で、ウイルス学の博士号を取得していま
す。したがって、英語もフランス語も堪能です。2002年から
2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が大流行した後
の2006年に、オーストアリア連邦科学産業研究機構(CSI
RO)管轄下のオーストラリア疾病予防センター(ACDP)で
訪問学者としてコウモリを研究しており、オーストラリアでは、
よく知られた存在だったからです。
 続いて王延軼武漢ウイルス研究所長については、「若過ぎる」
として、次のような批判が出ています。
─────────────────────────────
 この人事に批判が集中している。本人の実力ではなく、15歳
年上の夫・舒紅兵武漢大学副学長の七光りをバックにしていると
いう声が根強いのだ。舒紅兵氏は1967年、重慶生まれ。免疫
学が専門で、2013年には武漢大学副学長、2014年には武
漢大学医学研究院長を兼任している。北京大学生命科学学院で特
任教授を務めていた2000〜2004年、教え子だった王延軼
氏と知り合った。インターネット上では「王延軼氏は舒紅兵氏の
4度目の結婚相手」と噂されている。こうした事情もあり、武漢
ウイルス研究所では不満が噴出し、規律が緩んでいたという。
                  https://bit.ly/3gMGGSW ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/052]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢ウイルス研究所の女性所長、突然の登場背景に米中
  衝突か/NWSポストセブン
  ───────────────────────────
   「新型コロナの発生源が武漢ウイルス研究所というのは、
  でっち上げだ」。ウイルスの発生源を巡って米中が火花を散
  らすなか、突如口を開いたのがその研究所所長である王延軼
  (ワンエンイー)氏だった。5月24日に中国・国営中央テ
  レビに登場し、強い口調と、若々しい見た目のギャップが注
  目を集めた。39歳の若さでトップに就く彼女の素性とは?
  『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)の著者で経
  済ジャーナリストの浦上早苗氏が語る。
   「彼女は北京大学卒で、2012年に同研究所に入った後
  3年で副所長になり、そのまた3年後に所長へ就任。エリー
  トには違いありませんが、同研究所は一地方機関にすぎず、
  彼女が就任した際もそこまで話題にはならなかった。
   ただし、今回のコロナ騒動で彼女に目が向けられ、経歴が
  明らかになる中で、14歳年上で武漢大学の副学長を務め研
  究者として名高い夫にも注目が集まっています。彼女が北京
  大学に入った頃、夫も北京大学大学院に特任教授として在籍
  しており、その時に教え子として知り合い結婚したとされて
  いる。そのことから彼女のスピード出世には、夫による裏の
  力が働いているのではという批判的な書き込みがネットで出
  回っています」中国で感染が拡大した2月には首都医科大学
  学長が彼女の夫にSNSで「彼女の研究レベルはまだ低い」
  「多くの研究者たちも彼女をリーダーとして認めていない」
  などと苦言を呈している。    https://bit.ly/3agdWiY
  ───────────────────────────

王延軼氏(武漢病毒研究所ウェブサイト).jpg
王延軼氏(武漢病毒研究所ウェブサイト)
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2020年08月17日

●「石生麗研究員の現在の消息を探る」(EJ第5309号)

 新型コロナウイルスの感染は世界中で終息の気配が見えない状
況が続いています。もし新型コロナウイルスが、何らかの事情で
武漢病毒(ウイルス)研究所から漏洩し、もし、それを中国政府
が隠蔽を図ったとすれば、それこそ、数千兆円規模の賠償請求と
国際的な批判が中国共産党政権に殺到することになります。その
カギを握る人物は石生麗氏といっても過言ではないでしょう。
 その石生麗氏の消息は、はっきりしていないのです。石生麗研
究員とその上司の王延軼武漢ウイルス研究所長の関係を探ると、
何かが見えてくると思います。このことについてフリー・ジャー
ナリストの山口敬之氏が、「月刊HANEDAセレクション」で
次のタイトルで書いているので、この記事を参考にして、真相に
迫って行きます。この記事は、「月刊HANEDA」7月号と8
月号の論稿が再構成されています。
─────────────────────────────
                       山口敬之著
  「武漢P4研究所の『蝙蝠女』石生麗だけが知っている」
          ──「月刊HANEDAセレクション」
─────────────────────────────
 石生麗氏は、いまどこにいるのでしょうか。今年に入ってから
の石生麗氏の発言の記録を追っていきます。
 最初の発信は、今年の2月です。新型コロナウイルスは、武漢
のウイルス研究所から流出し、武漢市民に感染したのではないか
という噂が出始めた頃です。
─────────────────────────────
◎ウイルスの発生源が自身の研究所でないことを命に賭けて約束
 する。悪意のあるメディアの噂を信じて拡散する人たちには、
 その臭い口を閉じるよう忠告する。
            ──上記、山口敬之著のレポートより
─────────────────────────────
 この文字による発信は、石生麗氏のものではないという分析も
あります。石生麗氏を知る内外の研究者は、寡黙で学究肌の石氏
が、「臭い口を閉じるよう忠告する」というような下品な表現を
使うとは考えられないという反論です。
 この発言後の4月末には、ネット上に例の亡命説が出てくるの
です。この真偽ははっきりしませんが、亡命先であるとされるフ
ランスの米国大使館が沈黙を守っているので、デマであることに
なっています。
 しかし、この情報の発信源は、トランプ政権発足時にホワイト
ハウスで首席戦略官兼上級顧問を務めた対中強硬派のスティーブ
・バノン氏であったといわれており、単なるデマではないという
見方もあります。
 5月2日、中国共産党の国際情報誌「環境時報」は、石生麗氏
の友人とのやり取りとして、次の文章を公表しています。
─────────────────────────────
 「私と私の家族はみな元気です。いかに多くの困難があろうと
亡命などしない」
 「我々は何も間違ったことはしていない。我々の心のなかには
科学に対する揺るぎない信念がある」
            ──上記、山口敬之著のレポートより
─────────────────────────────
 中国の対応もおかしいのです。武漢ウイルス研究所のコロナウ
イルスの研究を仕切っていていた石生麗研究員が疑われているの
ですから、何もやましいことがないなら、石生麗研究員自身が武
漢ウイルス研究所で記者会見を開き、ウイルスの研究所からの流
出を明確に否定すれば済むことです。それをしないということは
それができない中国側の事情があると思われます。
 ここまでのEJの記述については、興味のある方は、本テーマ
の6月4日のEJ第5260号から6月9日のEJ第5263号
の4本の記事を読み直していただきたいと思います。とくに6月
8日のEJによると、2019年12月10日の武漢ウイルス研
究所周辺は、人影もなく静まり返っていたといいます。
─────────────────────────────
     ◎2020年6月4日/EJ第5260号
       「ウイルスは武漢研究所からの流出」
             https://bit.ly/31Kh42Y
     ◎2020年6月8日/EJ第5262号
       「19年12月10日のある出来事」
             https://bit.ly/3kMLBpI
─────────────────────────────
 2019年12月10日の武漢ウイルス研究所周辺の異常な静
まりの原因は何だったのでしょうか。以前にこの技術院を訪問し
たことのある人の話によると、技術院の敷地内は乗用車や業者の
トラックが頻繁に出入りし、技術院のなかは、白衣の研究者が多
く行き来する活気に満ちた場所だったといいます。ところが、そ
の日は技術院のなかにはほとんど人はおらず、その後の武漢の市
中案内でも、いつもなら必ず目にするはずの市民はほとんどいな
かったというのです。
 これについて、米共和党のトム・コットン上院議員は、武漢ウ
イルス研究所でそのとき何かトラブルが起き、研究所周辺には人
が立ち入りできないよう規制されていたのではないかと発言して
います。つまり、新型コロナウイルスの感染確認は、中国当局の
いう12月31日ではなく、12月10日以前だったのではない
かと疑いが出てきたのです。
 5月25日のことです。それまで消息不明であった石生麗氏が
国営テレビのインタビューに登場したのです。テレビに本人が登
場したのです。そのときのテロップには、「石生麗/武漢ウイル
ス研究所研究員」と明記されていたのです。ということは、石生
麗氏は、少なくとも5月25日時点では、武漢ウイルス研究院の
研究員として在籍しているようです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/053]

≪画像および関連情報≫
 ●謎深まるコロナウイルス感染源/中国内の報道から検証
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスをめぐり、トランプ米大統領らは、中
  国湖北省武漢市にある武漢ウイルス研究所からの流出説を唱
  えている。一方、中国側は猛反発し、米中対立の火種となっ
  ている。真相≠ヘ、今後の調査に待たれるが、中国ウオッ
  チャーの龍氏がこれまでの報道などをまとめ、検証した。
  (編集部)
   中国では早い段階から、武漢にある国や地元政府の研究所
  と、新型ウイルスとの関係を議論してきた。一部専門家も、
  武漢発のウイルスが人災であり、天災ではないと追究し、政
  府の抑圧と対峙(たいじ)してきた。疑いの目は武漢にある
  二つのウイルスと関係がある施設に向けられた。武漢ウイル
  ス研究所と武漢疾病対策センター(CDC、以下センター)
  だ。今回のウイルスを研究していた武漢ウイルス研究所から
  漏れたのではないかとささやかれた。センターからウイルス
  が広まったのではないかともいわれた。もちろん、現時点で
  は確認されていない。感染公表後、武漢政府は素早く「武漢
  華南海鮮卸売市場」(以下、海鮮市場)を封鎖し、ここが新
  型コロナの発生源だ、と世界に印象づけた。一方、中国のウ
  イルス専門家や一部マスコミは、それは真実を隠した、中国
  政府のカモフラージュだと主張した。中国華南理工大学生物
  科学与工程学院教授の肖波涛氏は、今回のウイルスが「市場
  以外」のところから流出した可能性があると指摘する。
                  https://bit.ly/3gYUSIW
  ───────────────────────────

石正麗研究員.jpg

石正麗研究員
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2020年08月18日

●「コロナ中国主犯説を裏付ける証拠」(EJ第5310号)

 米国では、新型コロナウイルスの発生源は武漢ウイルス研究所
から漏洩したものであることを確信していますが、生物兵器説は
明確に否定しています。メリーランド州にあるクロム・バイオセ
ーフティ・バイオセキュリティ・コンサルティングの創始者であ
るティム・トレパン所長は、新型コロナウイルスが生物兵器でな
い理由を次のように説明しています。
─────────────────────────────
 生物兵器として危険な病原体を培養するとしたら、作る方は前
もって、ワクチンや抗毒剤を大量に準備しないといけないが、い
まのところそういう存在は出てきていない。
                 ──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 ということは、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から
間違って漏洩したものであるという説には説得力が出てきます。
しかし、米国当局は中国が主張する新型コロナに気が付いたのは
2019年12月30日ではないとしています。
 これに対して当の石生麗研究員は、「最初に原因不明の検体に
触れたのは2019年12月30日であり、1月12日にWHO
にすべての情報を提供している」といっていますが、感染の拡大
はもっと早くからはじまっていたと米国当局は分析しています。
断片的な情報をていねいに積み上げると、感染が起きたのは2ヶ
月以上早くなるのです。これについて、山口敬之氏は、そのタイ
ムラインを次のように整理しています。
─────────────────────────────
 これまで、中国当局が武漢ウイルスの危険性を把握したのは、
早くても昨年末とされてきた。武漢の眼科医・李文亮氏が未知の
肺炎の蔓延を告発する動画を公開したのが、12月30日だった
からだ。ところが最新の情報を読み上げると、タイムラインは、
2ヶ月以上早まる。
・昨年10月上旬に武漢P4研究所でウイルス漏洩事故(ないし
 事件)があり、
・当該エリアは繰り返し封鎖され、
・石正麗のチームが市内で流行している疫病の分析を進め、
・12月までに武漢ウイルスの正体を突き止め当局に報告した。
 とすれば、断片情報の全てが矛盾なく像を結ぶ。
 しかも、「最初のヒト/ヒト感染が12月下旬とすると、武漢
地域での感染爆発のスピードがあまりに早すぎる」というこれま
での疫学上な疑問も、10月段階でウイルス蔓延が始まっていた
とすれば合点がいく。            ──山口敬之著
   「武漢P4研究所の『蝙蝠女』石生麗だけが知っている」
           ──「月刊HANEDAセレクション」
─────────────────────────────
 アンソニー・トゥー氏の本では、中国政府が各大学や研究所に
新型コロナウイルスの発生源に関するレポートは一切発表しては
ならないという通達を出していたという事実や、4月17日に中
国政府が、武漢の死者数の訂正を行っていることが、次のように
指摘されています。
─────────────────────────────
 さらに不思議なのは、4月17日に中国が出した武漢の死者数
の訂正だ。それまでは武漢での死亡数を2579人と報じていた
が、急にその数を約1・5倍の3869人としたのである。さら
に、「実際はその10倍から100倍の人が死んでいるのではな
いか」というのがアメリカの見立てだ。中国は一貫して研究室か
らの流出も生物兵器の製造も、堂々と否定している。たしかに、
傍証はあれど中国は絶対にその可能性を認めないだろう。しかし
私の意見として、確信を持って言えることは、今世界中でこれほ
どまでに多くの犠牲者が出た原因の大部分は、中国の発表が遅す
ぎたことにある、ということである。──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 5月中旬のことです。トランプ米大統領は、WHOのテドロス
事務局長に書簡のなかで、「武漢では12月上旬か、それ以前か
ら感染爆発がはじまっていた」と断定しています。国際社会でそ
ういう声が高くなると、中国の報道官はムキになって、「証拠を
示せ」と反論します。これについて、山口敬之氏は、欧米の研究
機関からの次の情報を伝えています。
─────────────────────────────
 6月に入ると、欧米の複数の研究機開から、感染の開始時期を
昨年8月と推定する報告書が出た。
 たとえばアメリカのハーバード大学医学大学院は、
・衛星画像の分析などから、武漢市内の主だった病院駐車場の利
 用率が、昨年8月に急増、
・同じ時期「咳」や「下痢」といった、武漢ウイルスによって引
 き起こされる諸症状に関するインターネット検索が、武漢地域
 で急増、と発表したのである。
 この報道について、中国外務省の華春瑩報道官は、「交通量と
いう表面的な観察に基づき結論を出すとは、信じがたいほど、ば
かげている」と不快感を露わにした。
            ──山口敬之著の前掲のレポートより
─────────────────────────────
 2019年10月から12月31日までの間に、中国の武漢で
は、何かが起きていたことは確かです。武漢には、2つのウイル
ス研究所があり、江夏区の新しい研究所は、バイオセーフティレ
ベル4の実験室を有しています。
 しかもそこには、石生麗研究員という中国が世界に誇るコロナ
ウイルスの権威が研究者が所属しているのです。したがって、新
型コロナウイルスがその研究所から漏れる可能性は限りなく高い
といえます。だから、世界が中国主犯説を疑っているのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/054]

≪画像および関連情報≫
 ●中国武漢の死者数を大幅に訂正/新型コロナウイルス
  ───────────────────────────
   中国で新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻だった湖
  北省武漢市の当局は、これまでの統計に漏れがあったなどと
  して、死者の数を2500人余りから3869人へと大幅に
  訂正しました。武漢市の対策本部が4月17日発表したとこ
  ろによりますと、情報の正確性を確保するため、市内の医療
  機関や住民組織、それに火葬施設などの記録を調べ直した結
  果、新型コロナウイルスに感染して死亡した人の数はこれま
  で発表していた2579人から1290人増えて、3869
  人だったということです。また感染者の数も、これまでの5
  万8人から325人増えて、5万333人に訂正するとして
  います。
   これに続いて、中国の保健当局も、全土の感染者は8万2
  692人、死亡した人は4632人と訂正しました。武漢市
  当局は訂正の理由について、感染拡大の初期に患者が急増し
  て医療施設が不足し、病院で治療を受けられずに自宅で死亡
  した人がいたことや、病院の担当者が多忙だったことから統
  計に漏れがあったためなどとしています。ただ医療崩壊が起
  きた武漢では、感染が確認されないまま亡くなった人もいた
  とみられ、こうした死者の数は今回の訂正にも含まれていな
  い可能性があります。
   中国で感染拡大が最も深刻だった武漢では、4月3日以降
  新たな感染者が確認されず、8日には1月から行われていた
  都市の封鎖を2か月半ぶりに解除しましたが、実際の感染者
  や死者の数は、発表より多いのではないかという指摘が出て
  いました。           https://bit.ly/3iEYJez
  ───────────────────────────

中国外務省/華春瑩報道官.jpg
中国外務省/華春瑩報道官
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2020年08月19日

●「王延秩と石生麗はどういう関係か」(EJ第5311号)

 新型コロナウイルス流出のカギを握る人物といわれる石生麗研
究員──所在不明が伝えられていましたが、5月25日、国営テ
レビのインタビューに登場したのです。本来、これは世界中が注
目する大ニュースのはずです。
 しかし、本稿執筆時にネットを検索してもこのインタビューに
関する記事は皆無です。明らかに何らかの方法で削除されている
ものと考えられます。そういう意味で、山口敬之氏の記事は貴重
なレポートになります。石生麗氏は次のように答えています。
─────────────────────────────
  私の研究が新型コロナウイルスの起源になった事実はない
                    ──石生麗研究員
                      ──山口敬之著
   「武漢P4研究所の『蝙蝠女』石生麗だけが知っている」
           ──「月刊HANEDAセレクション」
─────────────────────────────
 きわめてすっきりしない表現です。なにしろ、トランプ米大統
領が武漢の研究所からウイルスが流出した証拠を掴んだと発言し
た後のキーパーソンの発言としては、きわめて曖昧な表現です。
山口敬之氏は発言について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 満を持して強い言葉で決然と疑惑を全否定すると思われていた
だけに、石生麗の発言は弱すぎた。その後のインタビューの度重
なる質問に対しても、石生麗は歯に衣着せたような言い方に終始
したのである。         ──山口敬之著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここで強調しておくと、石生麗氏は、コロナ研究者としては、
世界が認めている研究者てあるということです。16年に及ぶ彼
女のコウモリの研究は、ウイルスの治療薬開発にも生かされてい
ます。日米がコロナウイルスの治療薬としてその効果を認めたと
いう「レムデシビル」も、石生麗氏の遺伝子情報が開発の重要な
足がかりとなったといいます。レムデシビルとはギリアド・サイ
エンシズというアメリカの製薬会社が作っている薬です。
 日本や米国では、石生麗研究員ほどの世界レベルの実績がある
と、武漢ウイルス研究所の所長に任命してもおかしくはないです
が、中国では、学問的業績よりも、あくまで中国共産党を守ると
いう大命題があるので、彼女を所長にはできないのでしょう。そ
ういうわけで、2018年頃から、武漢ウイルス研究所の所長に
なったのが、王延軼氏という人物です。王延軼氏の正式な職名は
「党委員会書記兼中国科学院武漢病毒研究所(武昌区/江夏区)
所長」となります。若いのに大変な出世です。
 この王延軼所長と石生麗研究員の関係について、山口敬之氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 2018年に32歳の若さで所長に就任した王延秩は、コロナ
研究の世界的権威で17歳も年上の石正麗の「上司」となった。
研究者として中国内外にネットワークを持つ石正麗と、中国国内
で高位の政治的後ろ盾をもつ王延秩の間には、いろいろな捻れが
生じていたはずである。
 こうした事実を知れば、「私の研究が新型コロナウイルスの起
源となった事実はない」という石正麗の表現に、含みを感じる人
は少なくないだろう。石正麗が明確に否定したのは、自分に掛け
られた嫌疑だけであって、研究所全体への疑惑を否定したわけで
はない、とも受け取れるのである。──山口敬之著の前掲書より
─────────────────────────────
 王延秩所長の出世について、中国では、王所長の夫が、中国の
科学技術研究の総本山ともいうべき、中国科学院を牛耳る学閥の
武漢地域の幹部であることによるものとされています。これに対
して、河添恵子氏は、これとはぜんぜん違う説を立てています。
─────────────────────────────
 王所長の夫は、15歳年上で武漢大学副学長、武漢大学医学研
究院長も兼任している。識者の一部は「夫の威光で彼女が所長の
ポジションに就いた」と解説しているが、果してそうだろうか。
 それよりは、一部で噂される「王岐山国家副主席の隠し子」説
の方が、私にはより合点がいく。王岐山国家主席は、2018年
6月から中国赤十字会の名誉会長に就いている。ちなみに、会長
は、江沢民元国家主席と長男・綿恒氏に近く、リヨンのメリユー
家とも長年、深い関係にあると考えられる陳竺氏だが、「新しい
ラボ」が王岐山(一派)の牙城になりつつある、ということなの
か?赤十字会と聞けば日本人は「美しいイメージ」を抱くだろう
が腐敗の温床。誰も献金したがらない“黒い会”であることも補
足しておく。
 「バットウーマン」の石正麗主任をはじめ「選民」以外の研究
者は、所詮、中国共産党の軍拡──生物化学兵器、毒素兵器の開
発に利用されるク“頭脳コマ≠ノ過ぎず、いざとなったら「捨て
られる存在」なのかもしれない。   ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 王延秩所長は、石生麗研究員がインタビューに応じた5月25
日の前日の24日、中国中央電視台(CCTV)のインタビュー
に応じ、次の趣旨の発言をしています。
─────────────────────────────
 武漢研究所から新型コロナウイルスが漏洩したとの見方がある
が、でっちあげである。研究所が、初めて新型コロナウイルスを
扱ったのは、2019年12月30日であり、12月30日以降
に、原因不明の肺炎の臨床サンプルの検査を進め、全く未知の新
たなウイルスが含まれることを発見した。それ以前には、扱った
ことも、研究したことも、保存したこともない。
            ──河添恵子著/WACの前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/055]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢のバットウーマン、ウイルス流出を否定 続く情報戦
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスが中国・武漢の研究所から拡散したと
  する米国の主張に対し、真相を知る立場にあると見られてい
  た同研究所研究員が25日、中国国営メディアに登場しウイ
  ルス流出の可能性を否定した。米国を含む国際協力の舞台だ
  った研究所は、激しい情報戦の渦の中にある。
   中国国営の中国国際テレビ(CGTN)のインタビューに
  応じたのは、コウモリを宿主とするウイルス研究が専門の石
  正麗研究員。フランスの大学で博士号を取り、米国の微生物
  学アカデミーの会員にも選ばれている。コウモリを求めて雲
  南省の洞窟などに通う姿から、「バットウーマン」とも呼ば
  れる著名研究者だ。
   石氏は新型コロナウイルスについて、昨年12月30日に
  原因不明の肺炎患者の検体として初めて研究所に持ち込まれ
  たとし、「遺伝子配列を調べ、我々が知っているどのウイル
  スとも違う未知のものだとわかった」と説明。それ以前に新
  型ウイルスの存在は知らなかったとの立場を強調した。
   石氏は「伝染病の研究は透明性を持ち、国際的に協力して
  いかなくてはいけないものだ」と強調。新型ウイルスの起源
  をめぐり米中が対立する現状について、石氏は「政治と科学
  が混ざり、科学が政治化されている。全世界の科学者が望ん
  でいない状況だ」と述べた。   https://bit.ly/31VvHAw
  ───────────────────────────

王延軼武漢研究所所長.jpg
王延軼武漢研究所所長 
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2020年08月20日

●「武漢ウイルスの新しい発生源判明」(EJ第5312号)

 昨日のEJで述べたように、「新型コロナウイルスは武漢ウイ
ルス研究所から漏洩したのではないか」という疑いに対して、5
月25日、渦中の石生麗研究員が、国営テレビの中国中央電視台
(CCTV)のインタビューに応じたのです。これは、世界中が
注目した大ニュースです。
 その前日の5月24日、中国科学院武漢ウイルス研究所所長の
王延秩氏が、中国中央電視台(CGTN)のインタビューに応じ
ています。この問題に関心のある人は、誰でも両方見たいと思う
はずです。ところが、石生麗研究員のインタビューは、現在ネッ
トからすべて消去されているのに対して、24日の王延秩所長の
インタビューは簡単に見つかったのです。これは、中国政府の考
え方として、石生麗研究員のインタビューは見て欲しくないが、
王延秩所長のインタビューは、多くの人に見て欲しいと思ってい
る証拠です。そこで石生麗研究員のインタビューは削除し、王延
秩所長のそれは、各国向けに、動画を提供しているようです。中
国とはそういうことをする国です。
 王延秩所長のインタビューをご案内します。中国語のやりとり
ですが、日本語のテロップが出るので、内容は理解できます。時
間は7分27秒ですが、ぜひご覧ください。王延秩所長がいかに
切れ者であるかよくわかります。テレビチャンネルはCGTNに
なっていますが、これは、中国中央電視台の中国グローバルテレ
ビジョンネットワーク(中国環球電視網)で、外国向けに提供す
る動画であることを示しています。
─────────────────────────────
  ◎武漢ウイルス研究所の王延軼所長へ独占取材=CGTN
                 https://bit.ly/2PYtyOX
                  収録時間/7分27秒
─────────────────────────────
 台湾の毒性学および生物兵器・化学兵器の専門家、アンソニー
・トゥー氏の本に、とても気になる情報が載っています。
─────────────────────────────
 2020年の2月に、華南理工大学で生物学を教えている肖波
濤教授が、研究者向けのSNS「リサーチ・ゲート」に発表した
論文「新型コロナウイルスで考えられる発生源」が、英文で発表
されたが、それがすぐに中国政府によって発表を取り消された。
 このペーパーでは、漏れた場所を明確に「武漢市疾病予防管理
センター」であると指摘している。 ──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 まず、肖波濤教授とはどういう人物でしょうか。
 肖波濤教授は、中国の理系トップクラスの国立大学である広東
省広州市の華南理工大学の教授で、生理学、生物物理や医薬生物
学、生物データ学、生化・分子生物学、微生物学の専門家です。
2017年まで武漢市の華中科技大学物理学院生物物理所の教授
と副所長を務めていたので、武漢市の地理に詳しい人です。
 この肖波濤教授の主張によると、新型コロナウイルスの発生場
所は、「武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)」であると
特定していますが、この施設ははじめて聞く名前です。
 ここまで、武漢市には、武昌区と江夏区に2つのウイルス研究
所があるとしてきましたが、もうひとつ「武漢市疾病予防管理セ
ンター」(以下、WHCDC)というものが出てきたのです。こ
のWHCDCは、どこにあって、これまで何をしてきたところで
しょうか。この論文内容のまとめについて、河添恵子氏の本から
引用します。
─────────────────────────────
 コウモリが市場に飛ぶ可能性は非常に低い。自治体の報告と、
31人の居住者と28人のビジターの報告と証言によれば、コウ
モリは市民の食糧源では決してなく、市場で売り買いされていな
い。他に何か考えられる感染経路はあるだろうか?我々(肖教授
ら)は海鮮市場周辺で、コウモリのコロナウイルスの研究をして
いる2つの研究所を特定した。市場から280メートル以内に、
武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)がある。
 WHCDCは、研究目的で動物を確保し、病原体収集と識別を
専門にしていた。WHCDCは、過去2年以内にコウモリを湖北
省から155匹、浙江省から450匹調達している。WHCDC
は医師らのグループが最初に感染した協和医院に隣接している。
 第2の研究所は、海鮮市場から約12キロメートル離れた中国
科学院武漢病毒(ウイルス)研究所(武昌区)がある。この研究
所は、中国の馬蹄コウモリが重度のSARS(重症急性呼吸器症
候群)の大流行を2002年から2003年に引き起こしたこと
を報告している(中略)。直接の推測は、SARS・COVまた
はその誘導体が実験室から漏れる可能性がある。
 要約すると、誰かが2019─nCOVコロナウイルスの進化
と絡み合っていた。天然組換え及び中間宿主の起源に加えて、キ
ラーコロナウイルスはおそらく武漢の研究室から発生した。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 論文全文を見ていないので、理解できない部分もありますが、
この論文が指摘する感染源は、武昌区のウイルス研究所でも新し
いラボの江夏区のウィルス研究所でもなく、海鮮市場から280
メートルも離れていない武漢市疾病予防管理センター(WHCD
C)であるということになります。
 それにしても武漢市には、新型コロナウイルスの発生源になり
うる研究施設が3つもあることになります。問題は、その3つの
研究施設の位置関係です。肖波濤教授は、論文できわめて重大な
ことを指摘したことになります。中国政府は、慌てて消去しまし
たが、いったんアップロードしたものは、誰かが所有しているも
のです。3つの研究施設の位置関係については、明日のEJで検
証します。    ──[『コロナ』後の世界の変貌/056]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナウイルス発生源を巡るミステリー
             ──斎藤 直樹 山梨県立大学教授
  ───────────────────────────
   現在、新型コロナウイルが世界各地で猛威を振っているが
  新型コロナウイルスの発生源はミステリーに包まれたままで
  ある。本稿は同ウイルスの発生源を巡るミステリーの解明の
  鍵となりうる研究報告を概説すると共に、発生源を巡る米中
  間の激しい対立について焦点を当てる。そもそも新型コロナ
  ウイルスの感染により肺炎を発症した患者が出た地域は中国
  湖北省に位置する武漢市であり、その時期は2019年12
  月であったことは周知のとおりである。当初、41人の感染
  者が肺炎を発症したとされるが、その中で27人が同市の華
  南海鮮市場との関係を疑われた。これを受け、同海鮮市場に
  おいて585に及ぶサンプルが採集されたが、そのうち33
  のサンプルから新型コロナウイルスが検出されたという。こ
  れにより、新型コロナウイルスは2003年に流行したSA
  RS(重症急性呼吸器症候群)の原因となったSARSコロ
  ナウイルスと極めて類似していることが明らかになった。と
  ころが、謎が残った。と言うのは、新型コロナウイルスを運
  んだのではないかと疑われたキクガシラコウモリが同海鮮市
  場で売買された事実はなかったからである。キクガシラコウ
  モリの生息地は、浙江省や雲南省であり、同海鮮市場から、
  900キロ・メートル以上離れている。コウモリが市場に飛
  んできた可能性は考え難かった。 https://bit.ly/3g56WXL
  ───────────────────────────

王延秩所長へのCGTNのインタビュー.jpg
王延秩所長へのCGTNのインタビュー

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2020年08月21日

●「コロナ発生源はWHCDCである」(EJ第5313号)

 昨日のEJでご紹介した中国政府によって消された論文──肖
波濤教授による「新型コロナウイルスで考えられる発生源」につ
いて、河添恵子氏と評論家の宮崎正弘氏の対談の動画をご紹介し
ます。ともに中国に詳しい2人の対談ですが、昨日のEJでご紹
介したことをさらに詳しく話しています。動画の収録時間は14
分11秒。視聴すると、詳しい事実を知ることができます。
─────────────────────────────
      ◎周政権が画策するコロナの脱中国化
          河添恵子氏/宮崎正弘/対談
            https://bit.ly/3iME6gz
            収録時間/14分11秒
─────────────────────────────
 情報を整理しておきます。肖波濤教授による論文──正確には
もう1人執筆者がいますが、この論文が訴えているのは、新型コ
ロナウイルスが何らかのミスによって外部に流出し、公表されて
いるよりも、はるかに多い感染者が発生し、それによる膨大な死
者が出ているということです。中国政府の公表する数字には多く
のウソがあり、額面通り受け取ることは困難です。
 問題は、ウイルスの発生源がこれまでEJが想定していたとこ
ろとは違うことです。これまで湖北省の武漢には、次の2つのウ
イルス研究所があるとして説明してきています。
─────────────────────────────
   1.中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所/武昌区
                 1958年7月に成立
   2.中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所/江夏区
                 2017年2月に成立
─────────────────────────────
 これら2つの研究所のうち「2」は、バイオ・セーフティ・レ
ベル4の実験室を有する「新しいラボ」であり、ここがウイルス
の発生源ではないかといわれてきたのです。しかし、肖波濤教授
が感染源として指摘しているのは、上記「1」と、もうこひとつ
別の場所だというのです。それが「3」です。
─────────────────────────────
   3.武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)
─────────────────────────────
 添付ファイルに地図を付けています。3つの研究施設のある周
辺の地図です。地図の真ん中を貫いて流れる川は長江です。一番
最初の感染場所として中国政府がアナウンスしたのは、華南海鮮
卸売市場です。海鮮市場は長江の向こう側にあります。
 いわゆる武漢病毒(ウイルス)研究所といわれている「1」と
「2」の研究所は、長江の手前にあります。武昌区と江夏区のウ
イルス研究所です。このうち、新しいラボといわれている江夏区
の研究所は、華南海鮮卸売市場からは、長江を挟んで、約30キ
ロ以上離れています。東京を中心に30キロというと、柏市や所
沢市や町田市ということになり、相当の距離があります。
 しかし、「3」の武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)
は、華南海鮮卸売市場はすぐ近くにあります。そして、このWH
CDCの周辺には、次の3つの医療機関があるのです。
─────────────────────────────
          1.武漢市中心病院
          2. 湖北航天医院
          3.   協和病院
─────────────────────────────
 武漢での感染の初期、これらの医院や病院で感染が広がり、医
療崩壊が起きていたのです。この間の事情について、河添恵子氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 このリポートで実のところ、私が最も注目したのは、「武漢市
疾痛予防管理センター」が、医者らのグループが最初に感染した
協和医院に隣接している」という部分だった。
 協和医院は、2020年1月中旬以降、医療関係者が「1人の
肺炎患者を治療したところ14人の医療従事者が同時感染した」
「我々の多くが、感染しているはずだが、検査すらしてもらえな
い。我々は隔離ではなく、軟禁状態にある」などと、SNSで発
信した、早々から医療崩壊が起きWいることが、推測される病院
だった。CNNが報じた、2月に武漢肺炎で亡くなった李文亮眼
科医らの勤務先、武漢市中心医院も協和病院と近かった。もう一
つ、これら2つの病院とも比較的近いエリアにある湖北航天医院
の医師も、SNSを通じて早々から事情を訴えていた。(中略)
 旧ソ連のスヴェルドロフスクの例のように、研究所から何らか
の不具合で「空気中に漏れた」のであれば、「新しいラボ」では
なく、長江を隔てた対岸の武昌区にある中国科学院武漢ウイルス
研究所でもなく、肖教授の論文が存在を教えてくれた「動物を確
保し、病原体収集と識別を専門にしていた、武漢市疾病予防セン
ター」(WHCDC)かもしれない、と推測し直した。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 この肖波濤教授のレポートに、中国当局はおそらく肝を冷やし
たものと思われます。ズバリ核心を衝いているからです。そのせ
いか、4月13日に、中国政府は、新型コロナウイルスに関する
学術論文は、今後出版前に、全てが政府当局の審査対象になるこ
とを通達しています。つまり、政府当局の承認がないと、出版で
きないようになったのです。その通達が上海の復旦大学のウェブ
サイトに出ていたのをCNNが発見し、大学に問い合わせたこと
から、数時間後にその記述はサイトから削除されています。都合
の悪いことは何でも隠すという中国の悪しき姿勢です。ますます
肖教授の指摘が正しいことを裏付けています。未確認情報ですが
肖波濤教授は現在行方不明になっています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/057]

≪画像および関連情報≫
 ●失踪した中国人研究者の「消されたコロナ論文」衝撃の全訳
  を公開する
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの「出所」について、議論が渦巻いて
  いる。「中国の生物兵器だ」などとする説がネット上ではま
  ことしやかに流れる一方、中国政府は「米軍が中国へ持ち込
  んだのだ」と主張。さらに、そうした「新型コロナウイルス
  は人為的に生まれた」という論調を「陰謀説だ」として否定
  する向きもあり、世界中で感染が本格的に拡大する中、錯綜
  している状況だ。
   こうした最中、日本ではほとんど伝えられていないが、中
  国の研究者が書いた「消された論文」が海外メディアなどで
  話題となっている。そこには、中国に存在する「2つの研究
  所」が発生源として明記されていた――。
   この衝撃的な論文を発表したのは、広東省広州市にある華
  南理工大学・生物科学与工程学院肖波濤(シャオ・ボタオ)
  教授ら、生物学に通じる研究者。2020年2月6日、新型
  コロナウイルスの発生源について研究者向けサイト」に投稿
  したのである。
   この論文はその後、ほどなくして削除された。そして、肖
  教授らも消息を絶ってしまった。中国政府の情報操作や工作
  活動に通じる外事関係者が語る。「論文には、遺伝子レベル
  で新しいウイルスが開発されていたことを示唆する記述など
  があった。中国政府にとっては、とうてい看過できないもの
  だ。場合によっては、国民の暴動などにつながりかねないし
  国際的な非難も相当なものになるとみたからだ。論文の削除
  には中国政府がかかわっている可能性もある。肖教授らも、
  身柄を拘束されたとみられている」https://bit.ly/2DUS3KJ
  ───────────────────────────

武漢市の3つのウイルス研究所.jpg
武漢市の3つのウイルス研究所

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2020年08月24日

●「トランプはバイデンに勝てるのか」(EJ第5314号)

 米民主党全国大会は、オンラインで、8月18日から20日ま
で行なわれ、20日にはバイデン氏が、大統領候補指名受託演説
を行っています。その演説は、現政権を「闇」、自身を「光」に
たとえた次のような演説だったのです。
─────────────────────────────
 現在の米国大統領は、あまりにも長く米国を暗闇で覆い、多く
の怒りと恐怖と分断を生み出した。連帯すれば、暗闇を克服する
ことができる。現在の大統領は、この国を守るという最も基本的
な義務を果し損ねた。光は闇よりも強い。後世、米国の闇の終わ
りが、今夜ここから始まったと言えることを願う。
                  ──ジョー・バイデン氏
           2020年8月22日付、朝日新聞より
─────────────────────────────
 トランプかバイデンか──トランプ大統領は、確かに問題の多
い大統領であることは確かですが、日本にとっては、けっして悪
い大統領ではないのです。
 日本は、頭の痛い外交問題として、北朝鮮との拉致問題、中国
との尖閣諸島の領有権を巡る問題を抱えています。この両方の難
問について、オバマ政権のときはどうだったでしょうか。
 オバマ政権は、北朝鮮の問題に関しては「戦略的忍耐」と称し
て、北朝鮮に対しては放置を決め込んでいます。北朝鮮の首脳が
どれほど米国との交渉を望んでも、一切関与しない姿勢です。米
国の民主党政権は、一貫してそういう姿勢です。
 尖閣問題に関しては、日米安全保障問題の範囲内とは認めたも
のの、中国に対して甘い政策を取る民主党政権では、実際にコト
が起きたとき、本当に対処してくれるのか、きわめて疑問です。
そもそも中国をここまで増長させたのは、米国の民主党政権に責
任があります。民主党のクリントン政権のときに、中国のWTО
加盟を推奨したからです。
 しかし、トランプ政権では、どうでしょうか。
 確かに、ブッシュ大統領もオバマ大統領も、拉致被害者家族と
は会ってくれています。しかし、トランプ大統領は2017年に
米国で1回、2018年の国賓として来日時に、東京・元赤坂の
迎賓館で再度会っています。面会後の記者会見で、家族らは「ト
ランプ氏から勇気をもらった」と感謝の思いを語っています。
 それだけではないのです。会って励ますのは、誰でもできます
が、トランプ大統領は、金正恩委員長と2回も会談を行い、拉致
問題について金委員長に、直接言及してくれています。ここまで
やってくれた米国の大統領はトランプ氏だけです。
 それでは、尖閣諸島の問題ではどうでしょうか。
 トランプ政権は、何よりも中国に対して、きわめて厳しい対応
をとっています。普通なら、戦争になってもおかしくないほどの
厳しさです。貿易に関しても、技術窃盗に関しても、新型コロナ
ウイルス蔓延の責任に関しても、香港問題に関しても、南シナ海
の問題に関しても、厳しい態度をとっています。これは、尖閣問
題を抱える日本にとって心強い限りです。
 米国は尖閣諸島について、これまでそれが日米安保条約の範囲
内であることは認めています。しかし、連日のごとく尖閣諸島の
領海近くに侵入を繰り返す中国の公船の執拗な行為に関しては何
もいっていませんでした。しかし、7月21日に、エスパー米国
防長官は、次のように中国を名指しして非難しています。
─────────────────────────────
 中国は、東シナ海と南シナ海で攻撃的な行動を続けている。日
本の施政下にある尖閣諸島周辺海域で、侵入の回数と時間を増や
している。             ──エスパー米国防長官
             2020年7月22日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 これは、米国としては大変な踏み込みです。単に「東シナ海で
の攻撃的な行動」というだけでなく、「日本の施政下にある尖閣
諸島周辺海域で」と明確に尖閣諸島を名指しして、その侵入行為
を批判しているからです。
 日本にとって、米国の民主党政権は相性がよくないのです。こ
の点について、人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資ア
ナリストの大原浩氏は、次のように警告しています。
─────────────────────────────
 もちろん、香港、ウイグル、チベットなどの人権法案は、ほぼ
全会一致で可決されていることを考えれば、特に人権問題につい
ては民主党も厳しく中国共産党に接しているのは事実だ。しかし
米国民主党が「反日・媚中」であるのは歴史的伝統である。最も
象徴的なのが、民主党のクリントン大統領が1998年、日本に
立ち寄ることなく9日間にわたって中国に滞在したため、「ジャ
パン・パッシング」と非難された「事件」である。
 第二次世界大戦中に日系人を強制収容所に送ったのも民主党の
ルーズベルト大統領だ。同じ敵国だったドイツ系、イタリア系の
扱いと比べたら、明らかに有色人種の日本人を狙いうちにした人
種差別だ。戦後、88年にレーガン大統領、92年に、ブッシュ
(父)大統領が謝罪と賠償を行ったが、どちらも共和党だ。日本
人が決して忘れるべきではないのは、民主党のトルーマン大統領
が日本に原爆を投下させたことである。長崎と広島に違ったタイ
プの爆弾を落としたのは、効果を測定する「人体実験」と言われ
ても仕方がない。          https://bit.ly/34niVxJ
─────────────────────────────
 副大統領候補には、カマラ・ハリス上院議員が指名されました
が、そうなると、バイデン政権が誕生すると、スーザン・ライス
氏が国務長官になる可能性が出てきます。このスーザン・ライス
なる人物は、「中国に優しく、日本に厳しい」人物であり、かつ
て日本政府はその対応に苦慮した相手です。ということになると
日本としては、トランプ大統領にがんばってもらうしかないこと
になります。その可能性はどのくらいあるのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/058]

≪画像および関連情報≫
 ●バイデンは本当にトランプに勝てるのか?
  ───────────────────────────
   今回のテーマは、「民主党副大統領候補の長所と短所」で
  す。米国人男性の平均寿命は78・54歳(2017年)で
  す。民主党大統領候補を確実にしたジョー・バイデン前副大
  統領は、すでに77歳と7カ月です。大統領就任時は、78
  歳になっています。仮に大統領に就任しても、バイデン氏は
  1期で終わる可能性が高いといえます。ということは、バイ
  デン氏の副大統領候補は24年米大統領選挙の本命になる公
  算があります。そこで、本稿では民主党副大統領候補の長所
  と短所に焦点を当てます。
   16年米大統領選挙において、民主党の大統領候補ヒラリ
  ー・クリントン元国務長官は、南部バージニア州のティム・
  ケイン上院議員を副大統領候補に選びました。激戦州である
  バージニア州が勝敗の鍵を分けると判断したからでしょう。
  この読みは外れました。勝敗を左右したのは、中西部ミシガ
  ン州、ウィスコンシン州及び東部ペンシルべニア州でした。
  クリントン氏は、激戦州を基準に副大統領候補を選択したの
  です。一方、ドナルド・トランプ大統領は、中西部インディ
  アナ州マイク・ペンス知事(当時)を副大統領候補にしまし
  た。その主たる理由は、キリスト教福音派の票の獲得です。
  信仰心が薄いとみられているトランプ大統領は、福音派のペ
  ンス氏を指名して、自分の弱点を補いました。
                  https://bit.ly/32dXSei
  ───────────────────────────

バイデン氏とトランプ氏.jpg
バイデン氏とトランプ氏
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2020年08月25日

●/「トランプ氏勝利の予測も十分ある」(EJ第5315号)

 バイデン候補有利といわれる米国大統領選ですが、これに異を
唱える人が出てきています。国際エコノミストの今井澂氏は、次
のように、トランプ氏の再選を予測しています。
─────────────────────────────
 1.一般的な世論調査では、バイデン候補がトランプ大統領
   を6ポイント程度リードしているが、「投票する」と答
   えた有権者への調査では、逆に3〜5ポイント、トラン
   プ候補が優勢である。
 2.選挙資金の潤沢さ(トランプ氏2億5000万ドル、バ
   イデン氏6000万ドル)。選挙戦では、高額なTVス
   ポット広告ができ、もし攻撃されたら、直ちに反撃でき
   る。この差は大きい。
 3.中国叩き。米国民の67%は習近平体制に反感を持って
   おり、トランプ政権の反中政策は人気。一部の共和党の
   有名人はトランプ氏反対の表明をしているものの93%
   はトランプ氏の支持。     https://bit.ly/3hr3qbC
─────────────────────────────
 今回の大統領選のキーワードは「対中国政策」であるというの
です。トランプ大統領の中国叩きは、議会が支持していますが、
民主党政権になると、トランプ政権のようにはいかないことは目
に見えています。民主党は親中国です。
 したがって、トランプ陣営にとって、中国攻撃は、民主党を叩
くことにつながるのです。その責任は、8年間のオバマ政権の親
中国政策にあるといえるからです。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、バイデン氏の
息子が、中国との間に持つ利権などについて、トランプ陣営は目
下調査しており、また、民主党幹部の中に、中国に利権を持つ人
物が複数浮上してきているといわれます。まだ、時間があるので
何が起きるか予断を許さないといえます。
 2020年4月22日に発表された米国人が対象の直近のピュ
ーリサーチの世論調査によると、中国に対する米国人の好感度は
大きく下っています。
─────────────────────────────
 ◎あなたは中国が好きですか、嫌いですか?
  嫌いです ・・・・・・・ 66%(前回44%)
  好きです ・・・・・・・ 26%
 ◎あなたは習近平が正しい方向の政治をしていると思いますか
  正しいとは思わない ・・ 71%(前回50%)
  正しいと思う ・・・・・ 22%
                ──宮崎正弘著/ハート出版
『WHAT NEXT/コロナ以後全予測/次に何が起こるか』
─────────────────────────────
 この調査は、2020年3月3日から29日にわたって行なわ
れたものですが、6月30日の香港国家安全維持法成立の後でこ
の調査をやれば、「中国が嫌いです」は90%以上に達していた
と思われます。米国の民主党は、この対中国政策に甘いし、それ
が大統領選の結果を大きく左右すると思われます。
 新型コロナウイルスの感染への国としての対応は、国のトップ
リーダーの資質を問うものですが、ウイルスの発生情報について
は、疑惑がたくさんあります。疑われるのは、ウイルスの発生源
に関する中国政府の情報隠蔽です。EJのリサーチによると、武
漢には、ウイルスを扱う研究所が3つもあるのです。そのような
研究所がなぜそんなにたくさん必要なのでしょうか。
 2020年2月28日のことです。ある著名な中国人がツイッ
ターで、次のような世論調査を行っています。
─────────────────────────────
  ◎新型コロナウイルスは、次のいずれだと思うか。
   @天然ウイルス/ 自然に感染 ・・・ 12%
   A天然ウイルス/  過失漏れ ・・・ 13%
   B人工ウイルス/  過失漏れ ・・・ 51%
   C人工ウイルス/悪意ある拡散 ・・・ 24%
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 この「ある著名な中国人」を河添恵子氏は、崔永元氏であると
特定しています。元中国中央電視台(CCTV)の有名なニュー
スキャスターであるというのです。中国のなかにあっても、こう
いう気鋭の人物はいるようです。
 それにしても、中国人自身が、新型コロナウイルスは、人工ウ
イルスであり、それが過失により、外部に漏洩したと考えている
人が51%もいるのは驚きです。これに対するコメントとして、
河添恵子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ニュースキャスターの世論調査で、私が迷わず選ぶのは、Bの
「人工ウイルス/過失漏れ」だが、実のところ脳裏では、Bから
始まり、Cの「人工ウイルス/悪意ある拡散」をして、パンデミ
ックへ向かったのではないかと考えた。あるいはCから始めたの
ではないかと。     ──河添恵子著/WACの前掲書より
─────────────────────────────
 「過失漏れ」は、肖波濤教授が論文で指摘した武漢の第3のウ
イルス研究所である「武漢市疾病予防管理センター」において起
こり、武漢市中心医院、湖北航天医院、協和病院に原因不明の肺
炎の患者が溢れ、感染が拡大したものと考えられます。これらの
医療施設のすぐ近くに華南海鮮卸売市場があります。
 この「過失漏れ」は、2019年のおそらく秋頃に起きたもの
と考えられます。そこで中国政府は、「武漢市疾病予防管理セン
ター」の存在を隠し、華南海鮮卸売市場を発生源としたものと考
えられます。このように考えると、すべて辻褄が合うのです。そ
して、中国は「悪意の拡散」をした可能性も考えられます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/059]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ支持率急上昇のなぜ/古森義久氏/3月25日
  ───────────────────────────
   アメリカのトランプ大統領の支持率が急上昇した。しかも
  同大統領のコロナウイルス感染の防止対策方法への支持60
  %という意外なほど高い水準を示し、これまで同大統領の防
  止策を批判してきた民主党側を当惑させている。
   アメリカのウイルス感染防止はまだ顕著な効果をあげてい
  ないのだが、ここへきてなぜトランプ支持が増えたのだろう
  か。3月24日のアメリカのメディアはいっせいに世論調査
  大手機関のギャロップ社が公表した最新の大統領支持に関す
  る調査結果を報道した。3月22日までの1週間の全米調査
  ではトランプ大統領への支持率が49%と、ギャロップ社が
  これまで3年余り実施してきた同大統領に関する世論調査で
  は最高レベルの数字を示した。3月前半の同じ調査では44
  %だったから、わずか2週間で、5ポイントの急上昇となっ
  た。同調査結果によると、トランプ大統領への支持率は共和
  党支持層では92%(前回は91%)、無党派層では43%
  (前回は35%)、民主党支持層では、13%(同7%)と
  なった。これらの数字は中間層と民主党支持層でのトランプ
  支持が顕著に増えたことを示した。アメリカのメディアがさ
  らに大きなニュースとして報じたのは、同じギャロップ社の
  調査でトランプ大統領のコロナウイルス対策への支持率が、
  60%という高水準を記録した点だった。
                  https://bit.ly/2YtXnM6
  ───────────────────────────

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コロナに関するブリーフィング風景
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2020年08月26日

●「コロナの感染を予言した米国小説」(EJ第5316号)

 新型コロナウイルスは「人工ウイルス」であり、過失により拡
散されたものである──元中国中央電視台の著名キャスター、崔
永元氏のツイッターによる中国人へのリサーチで、51%の中国
人がそう認めています。問題なのは、「人工ウイルス/悪意ある
拡散」と考えている人が、24%もいることです。
 河添恵子氏は、ウイルスは過失によって拡散したが、その後中
国政府が「悪意ある拡散」をし、パンデミックを引き起こしたと
推理しています。確かにこの考え方が、EJがここまで調べたこ
とと、奇妙に一致するのです。
 ところで、1981年に出版された次のスリラー小説が話題に
なっていることをご存知ですか。
─────────────────────────────
                ディーン・R・クーンツ著
     『闇の眼』(The Eyes of Darkness)/光文社文庫
─────────────────────────────
 この小説は1990年に光文社から再版され、内容の一部が変
更されています。さらに、今年の5月15日になって、復刊され
ています。なぜ、話題になっているのかというと、この小説には
「武漢─400(Wuhan-400)」 というウイルスが登場するから
です。光文社が5月15日に復刊したのはそれが理由です。今回
の「武漢ウイルス」とそっくりだからです。
 この小説について記述しているサイトでは、「武漢─400」
について、次のように書かれています。
─────────────────────────────
 『闇の眼』では、「武漢─400」人造ウイルスは、中国共産
党政府が反対者を絶滅させる用途に開発されたものとして表現さ
れている。ワクチンも治療薬もない、無数の政治犯の体で試験さ
れた「完璧な武器」と設定された。人がそのウイルスに接触する
と、僅か4時間で伝染性宿主になってしまう。
 武漢肺炎が中国で全面的に広まってからは、武漢ウイルス研究
所の研究用サンプルが漏洩したため、大流行になったと世論に疑
われている。このため、武漢市に位置する中国科学院武漢国家生
物安全実験室(すなわち、武漢BSL−4実験室、略称「P4実
験室」)が社会から注目を浴びている。
 この実験室は北京当局の秘密生物兵器計画と関係しているとい
う。該当ウイルスはAIDSのたんぱく質成分が人工により挿入
されたことを、あるインドの科学者により発見された。この発見
により、武漢肺炎が生物兵器であることを証明できるかのように
思われたが、論文が発表して僅か数日間で撤回された。
                  https://bit.ly/2CSPfgx
─────────────────────────────
 この小説について、河添恵子氏は興味ある事実を指摘していま
す。1981年のこの本の初版での舞台設定は、「ソ連・ゴーリ
キー研究所」だったのですが、1996年の改定版から、「中国
・武漢研究所」に変わっていることです。当時こういうことをや
りそうな国は中国しかないと考えたので、そういう設定にしたと
考えられます。
 これは、小説ですが、新型コロナウイルスが人工ウイルスであ
り、それが中国のウイルス研究所から過失で漏洩したとして、そ
の後中国政府が情報を隠蔽し、それが原因で全世界に感染が拡大
したとなると、全世界から中国政府に対して、とんでもない額の
賠償を請求する動きが相次ぐと思われます。
 実際にそういう動きは、既に起きています。米マイアミのパー
マン法律グループは、3月13日、「中国と湖北省、武漢市及び
複数の中国政府機関が、新型コロナウイルス発生の初期段階の処
理を誤った」とし、人身傷害や不当な死亡、財産の損害、その他
の損害を受けた人々に、数10億ドルの損害賠償を支払うように
求める連邦集団訴訟を起こしています。
 今後こういう動きが世界的に波及する可能性があり、中国政府
は、その動きを潰すためのプロパガンダを早速始めています。ま
ず、国家衛生健康委員会ハイレベル専門家グループの鐘南山グル
ープ長は、2月27日に次のようにアナウンスしています。鍾南
山氏は中国の感染症の権威です。米国への責任転換工作です。
─────────────────────────────
 肺炎の感染が始まったのは中国だが、発生源は必ずしも中国と
 は限らない。            ──鐘南山グループ長
─────────────────────────────
 中国政府は、こういう発言をSNSで拡散するのです。そのと
き、中国では使用を禁止しているツイッターを使うのです。ター
ゲットは中国以外の国ですから、その方が多くの人が見ることに
なるからです。
 3月12日に、中国外務省の趙立堅報道官が次のツイートを配
信しています。このツイートは、米国政府、議会内で次々にシェ
アされ、大きな波紋が広がったのです。
─────────────────────────────
 このウイルスはアメリカ軍が武漢に持ち込んだものかもしれな
い。透明性を!アメリカはわれわれに説明する必要がある!
                     ──趙立堅報道官
─────────────────────────────
 趙立堅報道官は「戦狼報道官」という異名で知られます。その
名の由来は、中国の大ヒット映画「戦狼」です。中国軍特殊部隊
の精鋭隊員がアメリカ人たちと戦う内容で中国版ランボーともい
われています。趙報道官のツイッター上での愛国的でアメリカに
攻撃的な発言が「我が中国を侵害する者は必ず討伐する」という
映画のメッセージと重なって見えるらしいのです。
 それにしてもこの報道官、いかにも憎々しげに各国記者の受け
応えをするので有名です。あまりテレビでニュースなど見ない人
でも、この報道官の顔は見たことがあると思います。しかし、世
界はプロパガンダなどには、騙されることはありません。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/060]

≪画像および関連情報≫
 ●【緊急復刊!】中国・武漢から恐怖のウイルスが――
  ───────────────────────────
  「現在のコロナウイルスの発生を予言していた小説がある」
  と、しばらく前からネット上で話題になっていたのが本書。
  中国・武漢の研究所から殺人ウイルスが持ち出されるという
  衝撃的な内容で、それがアメリカのベストセラー作家、ディ
  ーン・クーンツの『闇の眼』だった。
   原著は1981年に刊行され、日本では‘90年に光文社
  文庫で刊行されたが、その際には、ウイルスはソ連からアメ
  リカに持ち出されたことになっていた。しかし‘96年に、
  著者自身が内容を改訂し、“中国・武漢から持ち出されたウ
  イルス”という設定に変更された。今回の復刊にあたっては
  その改訂された原書をもとに、翻訳を全面的に修正した。
  【あらすじ】
   ティナ・エヴァンズはラスベガスの舞台プロデューサー。
  一年前に、ボーイスカウトのバス旅行に参加した一人息子の
  ダニーを、雪のシエラ山中での事故で亡くしていた。その死
  をいまだに信じられずにいたティナだったが、大きなショー
  を手掛け、その開演がまもなくというときに、身辺で次々と
  不可解な出来事が起きる。子供部屋が荒らされ、そこにあっ
  た黒板に「シンデハイナイ」とのなぐり書きが。さらに、オ
  フィスでのコンピューターの画面には「ココカラダシテ」の
  文字が浮かび上がった。ダニーは、生きているのか?弁護士
  のエリオットに相談し、ダニーの墓を掘り起こそうとした矢
  先に、二人は何者かに襲われる。ラスベガスから、シエラ山
  中へ向かう二人の前に、恐るべき陰謀が待ちかまえていた。
                  https://bit.ly/34q0dVY
  ───────────────────────────

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趙立堅報道官(中国)
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2020年08月27日

●「ツイッターを情報戦に生かす中国」(EJ第5317号)

 周知のように中国国内では、ツイッターやフェイスブックは利
用できないようになっています。中国政府が使用することを認め
ていないからです。「金盾=グレート・ファイアウォール」と呼
ばれる中国のネット検閲システムで、ツイッターやフェイスブッ
クへのアクセスを遮断していて、接続はVPNなどを使用するし
かないのです。
 「金盾=グレートファイアーウォール」というのは、中国にお
けるネット検閲システムのことです。現在、中国ではこのように
インターネットの検閲システムが存在しており、国民に対して中
国共産党や政府にとって、都合の悪い情報を閲覧できないように
なっているのです。「金盾(きんじゅん)」というのは、グレー
トウォールすなわち、「万里の長城」をもじって、「グレート・
ファイアウォール(防火長城)」と呼ばれているのです。
 それにもかかわらず、中国政府は、2019年からツイッター
で自国の立場を海外に英語で宣伝する工作に本格的に乗り出した
のです。これは、ツイッターの国際社会への影響力と発信力に利
用価値を見い出し、有効な情報戦の武器になると判断したからで
す。そして何よりも、トランプ大統領がツイッターを頻繁に使っ
ていることも関係があります。
 ここに新型コロナウイルスに関する米国の国務省のオータガス
報道官と、中国外務省の華春瑩報道官とのツイッターのやり取り
があります。女性報道官同士の応酬です。
─────────────────────────────
◎華春瑩報道官の投稿
  中国は、1月3日以降、コロナウイルスについて、アメリカ
 に最新の状況を伝えてきた。今になって連絡が遅いと中国を責
 めるの?
◎オータガス報道官の投稿
  1月3日までに、中国政府はコロナウイルスの検体の破壊を
 命じ、武漢の医師たちの口を封じ、ネット上の検閲を終わらせ
 たからね。時間と行動を国際社会が調査しなければならない。
◎華春瑩報道官の投稿
  あなた知らないかもしれないけど、武漢の保健当局は、12
 月31日に通知文を出したのよ。時間をとって状況を理解して
 から、つぶやいてください。    https://bit.ly/3gl1sIB
─────────────────────────────
 新聞やテレビを見ているだけでは知る由もありませんが、ツイ
ッターでこういうやり取りが行われているのです。例えば、趙立
堅報道官が中国にとって都合の良い内容のツイートを発信したと
します。そうすると、各国の中国大使館がそれをリツィートし、
世界各地に中国のメッセージを拡散するのです。
 趙立堅報道官のフォロワーは56万人、華春瑩報道官のそれは
34万人です。それを各国の大使館やその関係者がリツィートす
るので、その影響力はバカにできません。中国の外交官や国営メ
ディアを情報戦の「表の兵士」とするならば、情報拡散専門の分
子のような「裏の兵士」も存在するのです。表の兵士と裏の兵士
が力を合わせると、ウソの情報も何回も流すことによって、本当
の情報に見えてしまうものです。
 中国版ツイッターである「微信/ウエイシン」で検索すると、
次のようなツイートを見ることがあります。産経新聞、台北支局
長矢板明夫氏の情報です。
─────────────────────────────
◎ソ連のレニングラードで、ある医師が自分の勤務する病院の劣
 悪な医療環境に対する不満を知人に漏らしたため、厳重注意を
 受けた。
◎自国の医療物資が足りないのに、ソ連は多くの外国に支援をし
 ている。
─────────────────────────────
 一見すると、何のことか意味不明です。旧ソ連で起きた昔話に
ついて書いているようにみえますが、これは、現在中国で起きて
いることを書いています。この場合、ソ連は「中国」、レニング
ラードは「上海」の隠語なのです。
 しかし、こうした隠語を使っての「微信」のツィート交換も今
年の3月から困難になると思われます。矢板明夫産経新聞台北支
局は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 以前からネット規制が厳しい中国で、今年3月1日から、史上
最も厳しいインターネットの書き込み規制「ネット情報コンテン
ツ環境管理規定」が施行され、経済や社会の秩序を乱す情報の徹
底的な取り締まりが始まっている。「ネットコンテンツの制作者
は国益を損なつてはならない」との規定を盛り込み、中国政府や
共産党の功績を否定する内容をはじめ、重大な自然災害や事故に
関する「正しくない情報」や「ふさわしくない評論」を全面的に
禁止した。違反者には、罰金や最大15日間の拘束のほか、重大
な結果をもたらした場合は起訴もあり得る。新規定は、武漢発の
新型コロナウイルスを意識して作られたといわれている。
      ──矢板明夫著/「中国発表の数字は全部嘘だ!」
               『Haneda』/2020年6月号
─────────────────────────────
 もし、この「ネット情報コンテンツ環境管理規定」に違反する
と、「微信」の個人アカウントが閉鎖され、使えなくなってしま
うのです。現在、「微信」の利用者は10億人を超えており、中
国人の生活の一部になっています。したがって、これが利用でき
なくなると、仕事や人間関係などに重要な影響が出てしまうので
本当のことを普通に発信できなくなっているのです。
 中国がこれほど厳しく情報を規制しているとすると、コロナ関
連の数字──感染者数、死亡者数などは、果して本当の数字なの
でしょうか。上記の矢板支局長のレポートを基にして、コロナ関
連数字を検証してみたいと思います。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/061]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の発表は信用できる?新型ウイルスの「死者はゼロ」
  ───────────────────────────
   中国は4月7日、新型コロナウイルスによる死者が、過去
  24時間で初めてゼロになったと発表した。しかしこの集計
  と、それをまとめる中国当局は、どこまで信用できるのだろ
  うか。BBCのロビン・ブラント記者が解説する。
   中国当局はここ数カ月間、毎日午前3時に国内の新型ウイ
  ルス感染に関する最新状況を発表している。7日の発表では
  感染者8万1740人、死者3331人とした。
   中国の新型ウイルス対策については、世界保健機関(WH
  O)が称賛している。その一方で、同国の発表には疑いの目
  も向けられている。イギリスのマイケル・ゴーヴ内閣府担当
  閣外相は先週、「中国の発表の一部は、新型ウイルスの規模
  や性質、感染力について明確ではなかった」とBBCに述べ
  た。アメリカのドナルド・トランプ大統領も先週、中国の死
  者数と感染者数について、「やや少なめではないか」と評し
  た。アメリカでは議員らも、中国は流行の規模について過小
  報告しているとしばらく前から批判している。
   中国の発表に対する疑念の背景には同国のデータの扱いに
  関する歴史と透明性の欠如がある。中国が発表する統計は評
  判が悪い。国の成長の指標となる経済関連の数値は特にそう
  だ。中国の国内総生産(GDP)の四半期ごとのデータは、
  現実を正確に反映したものではなく大まかな方向を示すもの
  と受け止められている。     https://bbc.in/2YvxJX9
  ───────────────────────────

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中国と米国の女性報道官 
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2020年08月28日

●「中国のコロナ関連数値は正しいか」(EJ第5318号)

 現在、世界に新型コロナウイルスの感染者はどのくらいいるで
しょうか。6月16日現在の数字は次の通りです。集計は何種類
かありますが、これは、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計を基
にしたデータです。
─────────────────────────────
                感染者       死者
  1位:  米国 211万4026人 11万6127人
  2位:ブラジル  88万8271人  4万3959人
  3位: ロシア  54万4725人    7274人
  4位: インド  34万3091人    9900人
  5位:  英国  29万8315人  4万1821人
  6位:スペイン  24万4109人  2万7136人
  7位:イタリア  23万7290人  3万4371人
  8位: イラン  18万9876人    8950人
  9位: ドイツ  18万8213人    8814人
 10位: トルコ  17万9831人    4825人
 11位:フランス  15万7372人  2万9436人
 12位: カナダ  10万0763人    8228人
 13位:  中国   8万3221人    4634人
       日本   1万7639人     938人
      ──米ジョンズ・ホプキンス大学の集計に基づく
─────────────────────────────
 ここで注目すべきは中国の数字です。中国は新型コロナウイル
スの感染発祥国てす。それにしては少な過ぎると思いませんか。
中国の感染者が8万人を超えたのは、3月2日のことです。それ
から3ヶ月以上経過した6月16日の数字が8万3221人とい
うのは、信じられないほど少ない数字です。中国全土で1日平均
30人前後の感染者しか出なかった計算になるからです。そんな
に少ないはずはないのです。
 中国という国は、共産党を守るためなら数字の誤魔化しぐらい
平気で行なう国です。中国当局の発表する数字を時系列で分析す
ると、習近平国家主席が新型コロナウイルス関連の防疫に関して
講話を行うと、新規感染者が劇的に減ったりするのです。そのた
め、中国では次のようなことがいわれています。
─────────────────────────────
 コロナウイルスはみんな共産党に入党しているのではないか。
総書記のいうことを素直に聞いている。
      ──矢板明夫著/「中国発表の数字は全部嘘だ!」
               『Haneda』/2020年6月号
─────────────────────────────
 産経新聞台北支局長の矢板明夫氏によると、武漢の死者数は過
少評価されているのではないかとして、その証拠について次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 たとえば、武漢市では、3月23日から4月4日まで、遺族へ
の遺骨の引き渡しが行われたが、この間、市内のこの間、市内の
計8つの葬儀場は毎日、約4千人分の遺骨を処理した、と中国メ
ディアが伝えている。
 単純計算で期間中、合計5万2千人分の遺骨が遺族に返された
ことになるが、実際に返された遺骨はそのごく一部に過ぎない。
武漢市が封鎖されている2ヶ月半の間、各地域の葬儀場から遺体
を処理する応援チームが数多く武漢に派遣されており、彼らが処
理した分は含まれていないのだ。一家全員が亡くなり、遺骨の引
き取り手がないケースも多いという。
 4月8日の封鎖解除後に武漢市に入った中国人記者の試算によ
れば、閉鎖当時、約900万人が残った武漢市で、2・5ヶ月で
ウイルス以外の自然死亡者数は約1万人強、返された遺骨が5万
2千人分なら、少なくとも約4万人が武漢ウイルスで死亡した計
算になるという。武漢市だけで、中国当局が発表した3千300
人あまり10倍をはるかに超えている。
               ──矢板明夫著の前掲論文より
─────────────────────────────
 矢板明夫台北支局長は、中国国内における携帯電話の解約数に
注目しています。新型コロナウイルスが、中国で猛威を振るった
2020年1月と2月に、中国大手携帯電話会社3社で1450
万件が解約されているといいます。2ヶ月の解約数としては、異
常に多い数字です。このなかには新型コロナウイルスで亡くなっ
た人の数も少なからず入っているのではないかというのです。
 中国に限らず共産主義政権は、国家にとってマイナスな情報は
隠蔽するのが常識になっています。こんな話があります。200
3年にSARSが発生したときの話です。このときは胡錦濤政権
がスタートしたばかりのときのことで、共産党内で改革派の勢力
が強くなり、国際社会における中国の評価をとくに気にしていた
時代だったのです。
 WHOもきちんと機能しており、SARS蔓延直後に北京に調
査団を派遣し、北京市内で軍が直営するいくつかの病院の調査に
入っています。しかし、病院側はWHOの調査団が病院に到着す
る前に、SARSの患者を隠すため、患者を救急車に乗せて、市
内を走り回っていたというのです。しかし、このことが後で外国
メディアにバレて、胡錦濤首席の面子が丸つぶれになるというこ
とがあったのです。胡錦濤首席は、激怒し、北京市長と衛生相を
更迭したといいます。
 今回もWHOの調査団が派遣されたのか、されていないのか、
今になってもはっきりしませんが、ウイルスが発生した中国が主
張する華南海鮮卸売市場は、閉鎖、解体され、WHOは現場を見
ていないはずです。それなのにテドロス事務局長は、中国の処置
を絶賛し、結果としてパンデミックを引き起こしてしまったので
すから、その責任は重大です。このように、中国が発表するデー
タは、信用するに値しないのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/062]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国のウソ」を葬るため、日本はコロナに絶対に負けられ
  ない理由
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を巡って、中国政
  府が自らの正当性を誇示するために欧米の対応の甘さについ
  て批判を強めている。世界中が新型肺炎対策に追われて弱っ
  ているときに、「中国=権威主義が正しい」としつこく言わ
  れ続けたら、それを信じる人が増えてしまうかもしれない。
  そこで注目すべきは、中国のような強権的手法を用いずに、
  コロナの感染者・死亡者数を抑え込んでいる日本だろう。欧
  米が崩れつつある今、日本は自由民主主義陣営の最後のとり
  でとなっているのかもしれない。(立命館大学政策科学部教
  授/上久保誠人)
   中国国家衛生健康委員会は3月19日、武漢市・湖北省を
  含めて18日に中国国内で発生した新規感染例が「ゼロ」だ
  ったと発表した。新型肺炎は、中国・湖北省武漢市で発生し
  て拡散。19日時点での中国国内の累計感染者数は8万09
  28人。死亡者は3245人に達していた(『新型コロナウ
  イルス、現在の感染者・死者数(19日午後8時時点)』/
  AFP)。だが、国内での新型肺炎の拡散は終息したと、事
  実上宣言したのだ。一方、新型肺炎は欧州や米国に猛烈な勢
  いで拡散している。NHKがまとめた「感染者多い国や地域
  (23日午前2時)新型コロナウイルス」によると、イタリ
  アでは、感染者が5万9138人、死者が中国を上回る54
  76人に達し、致死率が9%超と完全な「医療崩壊」を起こ
  した。             https://bit.ly/2QpRQS9
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新型コロナウイルスは共産党に入党?.jpg
新型コロナウイルスは共産党に入党?
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月31日

●「新型コロナはやっかいなウイルス」(EJ第5319号)

 「安倍首相/突然の辞意表明」──安倍内閣はコロナ禍によっ
て崩壊したようなものということができます。なぜなら、安倍首
相の持病である潰瘍性大腸炎という難病にとって最大の敵は過度
のストレスです。総理大臣という仕事自体がストレスのかかる仕
事であり、それにコロナ禍が加わったことにより持病が悪化した
と考えられるからです。
 実際安倍内閣のコロナ対応はさんざんであったことは確かであ
るといえます。低収入世帯への30万円給付から全世帯10万円
給付への変更、アベノマスクの不人気、緊急事態宣言発出の遅れ
など、感染者数、死者数などはけっして国際的に見て悪くはない
のに、国民の安倍内閣への評価は低迷したのです。
 それに加えて、桜を見る会の私物化、森友問題、河井克行前法
相、妻の案里参院議員による大型買収問題、官邸が特定の検察官
の人事権を握る検察庁法改正案をめぐるトラブルなど、頭の痛い
ことが続発していたのです。その結果、全体としては、物凄いス
トレスがそれに加わったものと考えられます。
 実際この新型コロナウイルスは、実にやっかいなウイルスであ
ると思います。特徴を上げてみます。
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     1.感染しても無症状の人間のほうが多い
     2.無症状の感染者からも他人へ感染する
     3.多くの臓器にも侵入することができる
     4.自然変異の速度が早く正体が掴めない
     5.集団免疫ができず、再感染の可能性大
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 このように新型コロナウイルスは、掴まえどころのないウイル
スであり、生物兵器として理想的な特性を持っています。台湾の
医師で評論家の林建良氏は、このウイルスについて次のように論
評しています。同氏は、1987年に日本交流協会奨学生として
来日し、94年、東京大学大学院医系研究科博士課程を修了して
います。2007年に林一洋医師記念賞を受賞するなど、数々の
賞を受賞していますし、メールマガジン「台湾の声」編集長を務
めています。なお、文中の閣麗夢氏は、香港大学公共衛生学院の
ウイルスの専門家で、香港から米国に亡命した人物です。
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 事ほど左様に、このウイルスは生物兵器として「都合がよすぎ
る」のです。武漢コロナウイルスの遺伝子配列の4ヶ所がエイズ
ウイルスと同じになることは自然に起こる現象とは考えにくく、
人工である可能性が高い。閣麗夢も、今年7月29日にスティー
ブ・バノンのテレビ番組「WAR ROOM」に出演し、「武漢
コロナウイルスは、人民解放軍の実験室で保管されている舟山蝙
蝠から採取したコロナウイルスを加工して作ったものだ」と証言
しています。       ──『月刊Haneda』/10月秋桜号
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 林建良氏は、「どう考えても、武漢コロナウイルスは習近平に
都合が良すぎる」というのです。だから、人工ウイルスであると
いいます。そして、中国政府は数々のきわめて肝心なことを隠し
ています。だから、米国は怒っているのです。
 何を隠しているのかというと、「第一号患者は誰か」を特定し
ていないことです。第一号患者を特定し、感染ルートを追跡する
ことは、ウイルスの発生源の特定にもつながるので、疫学調査の
基本です。中国の場合、特定できていないのではなく、特定はし
たが公表していないのです。日本では武漢に滞在していた神奈川
県在住の30代の男性が第1号患者とわかっています。
 新型コロナウイルスには謎が多過ぎるのです。蝙蝠から人に感
染したといいますが、これまでの研究によると、蝙蝠から人間に
直接感染した事例はゼロです。鳥や豚のインフルエンザは人に感
染しますが、それは鳥や豚が人間とよく接触している家畜である
からです。しかし、蝙蝠はそれとは違い、人間に感染するには、
中間宿主が必要ですが、それがわかっていないのです。
 仮に感染するとしても、11月〜12月は蝙蝠は冬眠中であり
感染のしようがないのです。しかも、その蝙蝠の生息地は雲南省
であり、武漢から1000キロも離れているので、物理的に感染
しようがないといえます。
 それに中国政府はもっとも肝心なことを隠蔽しています。20
19年の時点では、中国政府は「人から人への感染は確認されて
いない」といっていたのですが、それは情報を隠蔽したことが明
らかになったのです。これについて、林建良氏は次のように述べ
ています。
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 1月20日になって中国政府の専門家チームのトップが「人か
ら人に感染していることは間違いない」と発表しましたが、人か
ら人への感染への可能性は、2019年11月17日の段階です
でに判明していたことが、2020年3月13日の英字紙サウス
チャイナ・モーニング・ポストで明らかになりました。
 バイオセーフティレベル3(P3)の実験施設を持つ、上海の
復旦大学附属上海公共衛生臨床センターの張永振教授の研究チー
ムが、武漢コロナウイルスに感染した海鮮市場の従業員を調べて
いました。1月5日に、ウイルスのゲノム配列の解読に成功し、
同日に中国国家衛生健康委員会に報告しています。
 この時点で「SARSに類似する未知のウイルスで、呼吸器経
由で、伝播する可能性が高い」と人から人への感染のこ可能性を
指摘し、感染拡大の防止措置を講ずるよう提言していたのです。
             ──『月刊Haneda』/10月秋桜号
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 人の命がかかっている重要な情報です。なぜ、中国はそういう
情報を隠蔽するのでしょうか。しかし、どうしてこのウイルスは
人に感染するようになったのでしょうか。蝙蝠から人には直接感
染しないはずだからです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/063]

≪画像および関連情報≫
 ●「コウモリ」はなぜ「ウイルスの貯水池」なのか
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   新型コロナウイルス(SARS−CoV−2)感染症(C
  OVID−19、以下、新型コロナ感染症)が世界中で猛威
  をふるっているが、このウイルスはSARS(重症急性呼吸
  器症候群)と同じ人獣共通感染症だ。こうしたウイルスの自
  然宿主(最初にウイルスにかかった生物)はコウモリとされ
  ているが、なぜコウモリ起源のウイルスがこんなに多いのだ
  ろうか。
   人獣共通感染症はヒトの感染症の60%以上を占める。世
  界で毎年約10億人が病気になり、数百万人が死ぬ病気だ。
  人獣共通感染症では、野生生物を自然宿主にしていた病原体
  (ウイルス)が、家畜などの脊椎動物や昆虫などの無脊椎動
  物を経由し、あるいは直接にヒトへ感染して広がっていく。
  ウシから天然痘や結核、ブタやアヒルからインフルエンザ、
  ヒツジやヤギから炭疽症、ネズミ(齧歯類)からペスト、主
  にイヌ(ネコやコウモリなども)から狂犬病といった人獣共
  通感染症があるが、サル免疫不全ウイルス(SIV)が変異
  してヒトに感染してヒト免疫不全ウイルスになったようにヒ
  トと野生生物の接触によって感染が広がることも多い。
   自然宿主にはコウモリが多く、コウモリの次は霊長類、齧
  歯類の順になるようだ。また、世界で新たな人獣共通感染症
  が発生するリスクの高い地域としては、コウモリはアジアの
  一部と中南米で多く、霊長類は中米、アフリカ、東南アジア
  に集中し、齧歯類は北米、南米、中央アフリカの一部と予測
  されている。          https://bit.ly/31AYlYG
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蝙蝠は直接人には感染しない.jpg
蝙蝠は直接人には感染しない.
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