2020年07月28日

●「米政府による中国総領事館の閉鎖」()


7月21日、米国政府は驚くべき行動を起こしています。突然
ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を通告し、当総領事館の3日
以内の閉鎖と職員の撤収を求めたのです。22日、この件に関し
ポンペオ国務長官は次のように述べています。この情報は、新聞
記事よりも詳細な情報の一部です。全文を読みたいときはURL
をクリックすれば読むことができます。
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 中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそうした
政策を継続してはならない。戻ってはならない。自由世界はこの
新たな圧政に勝利しなくてはならない。
 米国や他の自由主義諸国の政策は中国の後退する経済をよみが
えらせたが、中国政府はそれを助けた国際社会の手にかみついた
だけだった。中国に特別な経済待遇を与えたが、中国共産党は西
側諸国の企業を受け入れる対価として人権侵害に口をつぐむよう
強要しただけだった。
 中国は貴重な知的財産や貿易機密を盗んだ。米国からサプライ
チェーンを吸い取り、奴隷労働の要素を加えた。世界の主要航路
は国際通商にとって安全でなくなった。
 今日の中国は国内でより独裁主義的となり、海外ではより攻撃
的に自由への敵意をむき出しにしている。トランプ大統領は言っ
てきた。「もうたくさんだ」と。https://s.nikkei.com/3jA36Zx
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 米国政府がここまでやるのは、よくよくのことです。なぜ、南
部テキサス州ヒューストンなのかについて、スティウェル国務次
官補(東アジア太平洋担当)は、米南部にはハイテク、宇宙など
の重要産業があり、そのため、中国軍による知的財産窃盗の「震
源地」になっていたといっています。スティウェル氏は、中国の
窃盗行為がここ半年間で急増しているのは、新型コロナウイルス
のワクチン開発競争も関係していると述べています。
 この突然の中国総領事館の閉鎖に対して、中国政府は猛反発し
ており、中国の米国の在外公館の閉鎖を検討しているものと思わ
れます。米国の在外公館は中国内に7か所あり、なかでも千数百
人のスタッフがいる香港総領事館の縮小や閉鎖を検討していると
いう情報もあります。
 当然中国政府としては、米国による一方的な中国総領事館の閉
鎖に対しては、相応の報復措置をとってくるものと思われ、米中
関係はさらに悪化することは確実です。加えて中国は、米国のみ
ならず、英国との関係も悪化しつつあるのです。
 このところボリス・ジョンソン首相率いる英国政府が中国政府
によるウイグル族への人権侵害を激しく批判しはじめています。
ウイグル族の人権侵害に関しては、トランプ米大統領が先月「ウ
イグル人権法案」に署名し、成立させていますが、英国もこれと
歩調を合わせています。
 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起
こしながら、香港の「一国二制度」を奪い、軍事的覇権を強める
中国の習近平政権に対し、米英両国が「人権」というカードで米
英両国が足並みを揃えて対峙するかたちをとっています。これは
中国にとって大変な脅威です。
 それだけではないのです。香港市民が持つ「英国海外市民(B
NO)旅券」に関しても、中国政府は「有効性を認めない」とい
う声明を出しています。「英国海外市民(BNO)旅券」という
のは、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民の持つ旅券
のことですが、英国政府は、この旅券の保有者に関し、7月22
日に次の声明を出しています。
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 BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、2021年1月か
ら特別ビザを発行する。この特別ビザで英国に5年間住むと、英
国の永住権が与えられ、その1年後に市民権も得られる。
                    ──英国政府の発表
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 英国政府は、中国の新型コロナウイルスの初期対応に不信感を
高めており、それに加えて、香港の旧宗主国として、中国の「国
家安全維持法」の施行に香港の基本的人権が侵害されるとの懸念
から、BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、救済策を打ち
出したものと思われます。
 なお、英国は既に香港政府と結んだ犯罪人の引き渡し条約の停
止を表明し、香港住民の英国への移住の促進や、次世代通信規格
「5G」分野での中国のファーウェイの排除などを打ち出すなど
反中政策を相次ぎ打ち出しているのです。
 こうした米国や英国の対応について、中国事情に詳しい石平氏
は、次のように述べています。
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 人権や民主主義の本家である英国の果敢な対応は、歴史的な一
歩だ。高く評価する。次は、フランスやドイツなど欧州の他の先
進国の姿勢が問われる。これまで尻込みしていた国が反発して報
復に出れば、かえって国際社会から見放されるだろう。
      ──石平氏/2020年7月21日発行/夕刊フジ
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 ヒューストンの中国総領事館は、米国政府から閉鎖を通告され
ると、すぐ機密文書を燃やして処分したようです。それも相当大
量の文書を処分したようで、消防隊まで出動しています。火事と
間違えるほどですから、大変な量を処分したことになります。と
ころで、なぜ、焼却という方法を選んだのでしょうか。
 デジタルデータの消去は、相当注意しても、復元される可能性
が高いし、データ通信はもっとリスクがあります。結局、焼却し
てしまうのが、一番安全な方法と思われます。したがって、大量
の書類を焼却したということは、見られては困る文書がたくさん
あった証拠ともいえます。このように、中国への包囲網は拡大し
つつあります。これに対して、中国はどう対応しようとしている
のでしょうか。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/040]

≪画像および関連情報≫
 ●米の中国総領事館閉鎖/スパイ活動のほか「米への敵対
  行為」が原因か
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   米国務省のオルタガス報道官は7月22日、米政府がテキ
  サス州ヒューストンの中国総領事館に対して、72時間以内
  に閉鎖するよう通告したと発表した。報道官は声明で「米国
  の知的財産と米国民の個人情報を守るため」「中国による主
  権の侵害や米国民への脅迫を容認しない」と強調した。中国
  総領事館の閉鎖は、1979年に米国が中国共産党政権と国
  交を樹立して以来、初めてのことだ。
   デイビッド・スティルウェル国務次官補はニューヨーク・
  タイムズ紙に対して、在ヒューストン中国総領事館の蔡偉総
  領事と中国人外交官2人を、ヒューストン空港で現行犯逮捕
  したと語った。総領事らは、偽の身分証明書を使って、中国
  人訪問客を中国国際航空(エアチャイナ)の中国行きチャー
  ター機に乗せようとしたという。
   スティルウェル国務次官補は、在ヒューストン中国総領事
  館は、中国軍のスパイ活動の拠点だと指摘した。中国軍が中
  国人留学生を米大学に送りこみ、情報を窃盗している。さら
  に、同氏は、過去6カ月、中国当局による米科学分野の研究
  での窃盗が加速化していると述べ、中共ウイルス(新型コロ
  ナウイルス)のワクチン開発と関連していると考えている。
  中国総領事館はこれまでにも、エアチャイナを利用して、米
  国にいる諜報員の中国逃亡を手伝ったことがある。
                  https://bit.ly/2WOH9w2
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中国総領事館閉鎖を告げるポンペオ国務長官.jpg

中国総領事館閉鎖を告げるポンペオ国務長官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする