主張をしています。中国政府は、この主張をどのように受け止め
たのでしょうか。
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日本政府は、国民1人1人に対して10万円を支給する。米国
政府も、1200ドルから2000ドルの現金を支給する。これ
に倣って中国政府は国民全員に千元(15万円)を支給せよ。
──宮崎正弘著
『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
/コロナ以後全予測』/ハート出版
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宮崎正弘氏によると、中国という国は、莫大な軍拡予算を確保
しても、国民の生活を守るという意識は希薄であるといいます。
今回のコロナ災禍で、中国国民の生活は本当のところ、どうなっ
ているのでしょうか。宮崎正弘氏の本に基づいて考えてみます。
日本各地でよく見かける中国の旅行団、個人旅行者は、そのほ
とんどが、中国の中産階級の都市部生活者です。相当羽ぶりがよ
さそうにみえますが、その実体はどうなのでしょうか。
4月22日の中国人民銀行(中央銀行)の発表によると、全土
の都市部生活者、およそ3万世帯の財務内容は、全世帯の56・
5%が住宅ローンなどの借金を抱えていることが明らかになって
います。宮崎正弘氏は、彼らの生活に関して、次のように紹介し
ています。
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背伸びしてマイカーを持ち、子供にピアノを買い、スマホは新
型を追いかけ、通信費の支払いにも事欠くと、贅沢品を忌避する
のではなく食事を削るのだ。この統計はコロナ以前のことであり
それ以後は想像を絶する惨状だろう。げんにコロナの元凶となっ
た湖北省ではGDPはマイナス40パーセントを示している。調
査結果に戻ると、家庭の借財の59・1パーセントが不動産で、
全家庭の20・4パーセントしか金融資産をもっていないことが
分かった。中間層といわれる中国の都会人の大半が、実は安定収
入を欠き、小口の現金にも事欠き、ほかの財産となるようなもの
がない。このような家庭が都会生活者の中産階級の実態だった。
可処分所得は平均11691元(18万円)で、それも全世帯の
3・9パーセントしかないという。(中略)
借金でマンションを買い、マイカーを買い、ツァーで日本やイ
タリアに観光旅行に行くのも借金。さぁ支払いになると、ローン
残高の巨額に震えて、生活不安に怯える。それが中国の中産階級
の実像だった。これから中国人の海外旅行もマイカーも、ピアノ
も「突然死」を迎える。日本のインバウンド業界の期待する中国
人ツァーの再来は考えにくい。 ──宮崎正弘著の前掲書より
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今回のコロナ災禍による景気後退に対して、中国政府は、一応
家賃延長、支払い猶予、償還時期の延長などの政策を表明し、中
小企業の支払い補助に1・8兆元(27兆円)、物価安定に38
億元(570億円)、失業保険対策にも予算をつけると表明して
いますが、とくにそれ以上の措置を取る予定はないようです。
それに加えて、米国で7月14日にトランプ大統領が署名して
成立した「香港自治法案」があります。中国の「香港国家安全維
持法」の制定や香港での抗議デモ弾圧に関与した政府当局者につ
いて、資産凍結や米国への入国制限といった制裁を科すという内
容ですが、どのくらい影響があるかは、この法律をどのように運
用するかにかかっています。
問題は、そういう当局者と「かなり大きな取引」がある金融機
関も制裁の対象になります。その金融機関が米国銀行から融資を
受けたり、ドル決済に関わったりすることを止めることもできる
のです。そうなると、香港の世界的な金融センターとしての将来
性に対する不透明感が一段と強まってきます。
つまり、この法律は、中国の大手銀行への金融制裁の道を開く
可能性があり、米国当局は、米銀との取引の禁ずる次の8つの手
法を明らかにしています。
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1.米銀による融資の禁止 4.米国内の視察凍結
2.外貨取引の禁止 5.米国からの投融資制限
3.貿易決済の禁止 6.米国からの物品輸出制限
──2020年7月16日付、日本経済新聞
7、8項目不明
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基軸通貨であるドルの封じ込めは、中国への強烈なる脅しにな
ります。そのため、制裁発動までには1年間の猶予を金融機関に
与えることになっています。これに対して中国政府は、次のよう
な反対の声明を発表しています。
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香港と中国内政に対する乱暴な干渉であり、中国政府は断固反
対する。国安法に反対する米国の試みは、永遠に実現不可能であ
り、もし米国が押し通すなら中国は必ずやり返す。──中国政府
──2020年16日付、朝日新聞より
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中国としては、「米国がどのような手を打とうとも、中国は香
港への統治強化を緩めない」といっていますが、この強硬姿勢で
ことを進めると、米国が主導する「中国封じ」が国際社会に広が
り、中国が孤立してしまうこともあります。
そのため、中国は、アジアを中心に切り崩しを図っています。
国連人権理事会は、6月、英国の呼びかけで、国安法への懸念を
示す共同声明に27ヶ国が賛成しましたが、アジアから加わって
のは日本だけだったのです。韓国もこの声明には加わってはいま
せん。しかし、米国は自国第一で動いており、追従する国は以前
よりは少なくなっています。
──[『コロナ』後の世界の変貌/035]
≪画像および関連情報≫
●なぜ「香港国家安全法」を各国が支持するのか?メディアが
報じない思惑
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新型コロナウイルスの感染拡大に世界が頭を悩ませるなか
中国と周辺諸国との間で緊張が高まっている。東シナ海では
尖閣諸島を巡って日中の間で緊張が走り、南シナ海では中国
の内海化政策が進んでいる。また、新型コロナウイルスの発
生源や香港国家安全維持法を巡って、中国と米国、オースト
ラリアなど欧米諸国との間ではこれまで以上に関係が冷え込
んでいる。さらに中国とインドの国境付近でも衝突が発生し
45年ぶりに死者が出る事態となり、両国の緊張も高まって
いる。そのような中、6月30日、スイス・ジュネーブで第
44回国連人権理事会が開催された。同会合では、香港国家
安全維持法に対する審議が行われ、反対する国と賛成する国
で意見が分かれた。
反対する国は、日本を始め、オーストラリア、カナダ、フ
ランス、ドイツ、スウェーデン、スイス、イギリスなどの、
27か国で、欧米諸国が圧倒的多数となった。ちなみに、米
国はトランプ政権になってから国連人権理事会から脱退して
いる。賛成する国は、中国を始め、カンボジア、キューバ、
エジプト、イラン、イラク、パキスタン、北朝鮮などの53
か国だった。同法を巡って、日本の多くのメディアは自由や
民主主義が奪われる香港への悲観的な見方、米国や英国の懸
念的なコメントを流すしかしておらず、これについて大々的
に報じていない。 https://bit.ly/3ftIXSu
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「香港自治法案」を発表するトランプ大統領