2020年07月07日

●「米CDCはなぜ機能しなかったか」(EJ第5304号)

 米国CDC(疾病予防管理センター)といえば、「BSL4」
の実験室を持つ感染症に対する世界一の知見を有する研究センタ
ーとして有名ですが、新型コロナウイルス感染拡大という肝心か
なめなときに、世界のリーダーシップをとる活躍をしていないと
思います。昨日のEJに続き、なぜ、機能不全になったのかにつ
いての話を続けます。
 2020年8月6日付の新聞は、次の注目すべき記事を報道し
ています。
─────────────────────────────
◎米厚生長官が台湾訪問へ/断交後最高位/対中強硬姿勢の一環
 ・米厚生省は4日、アザール厚生長官が近く台湾を訪問すると
  発表した。米閣僚の台湾訪問は6年ぶりで、同省によると、
  1979年の台湾断交以来、最高位の閣僚の訪問になるとい
  う。台湾の外交部(外務省)によると、蔡英文総統との会談
  も予定されている。 ──2020年8月6日付、朝日新聞
◎米厚生長官、台湾訪問へ 総統と会談、関係強化
 ・【台北=中村裕】台湾の外交部(外務省)は5日、米国のア
  ザー厚生長官が近く台湾を訪問し、蔡英文総統と会談すると
  発表した。今後、数日以内に訪問するとし、歓迎の意を示し
  た。米国は1979年に台湾と断交して以降、最高位の高官
  の訪問としている。──2020年8月6日付日本経済新聞
─────────────────────────────
 日本の厚生労働大臣に当る米国の大臣は「保健福祉長官」。現
職はアレックス・アザー氏が務めています。しかし、このアザー
保健福祉長官の姿が久しくニュースから消えていたのです。それ
が、8月6日になって、アザー長官が突然台湾を訪問するという
ニュースが報道されたのです。これはこれで米中の対立がさらに
一段と激しくなるニュースですが、EJでは、今回は、それはさ
ておき、アレックス・アザー長官に注目します。
 現在、トランプ大統領の下で、タスクフォースを率いるのは、
マイク・ペンス副大統領。メディア担当は、ジェローム・アダム
ス公衆衛生局長であって、アザー保健福祉長官は公式会見には姿
を見せていない。米メディアは「トランプ大統領の怒りを買って
外された」と報道しましたが、これに対して、トランプ大統領は
ツイッターで、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 それは、フェイクニュースだ。彼は、大変立派な仕事をして
 いる。          ──ドナルド・トランプ大統領
─────────────────────────────
 情報によると、このアザー長官は、正義感で大統領に楯突くタ
イプの人物ではないのです。何とか大統領のお気に入りになりた
いと思っている。大統領に嫌われることを心から恐れている人物
の1人。日本にもそういう官僚はたくさんいます。
 そのため長官就任後は、CDCのロバート・レッドフィールド
所長や、「メディケア・メディケイド・サービシズセンター」の
シーマ・パーマ所長らと激しく衝突したといいます。素人の大統
領が要求する無理難題を押し通そうとしたからです。
 しかし、CDCは検査キットで大ミスを犯し、アザー長官は、
トランプ大統領に一喝を食っています。そしてトランプ大統領は
「暖かくなれば病原体は奇跡のように消えてなくなる」という独
自の主張をゴリ押しし、その主張に異を唱え、対策強化を主張す
るCDC幹部を片っ端から、罷免したのです。
 アザー長官は、1月末に、全米向けに「緊急事態宣言」を発出
していますが、これによって、検査キット、ワクチン審査の認可
のハードルが一緒に跳ね上がったのです。米保健行政の官僚主義
がそうさせたのです。それ以来、アザー長官は公式の場から姿を
消してしまったのです。保健福祉長官が先頭に立って、最も活躍
しなければならないときにそうなったのです。
 トランプ大統領の最大の失敗は、ルイジアナ州ニューオーリン
ズでの「マルディグラ(肥沃な火曜日)」と呼ばれる謝肉祭を2
月下旬に強行したことです。マルティグラは、全世界から数十万
人の規模の観光客の集まる「3密」の権化のようなイベントであ
り、当然世界最大級のクラスターが発生し、人口500万人未満
のニューオーリンズで、死者は1000人を超えたのです。
 このように、世界最高の医療産業・学界を擁する米国が、世界
最悪の新型コロナウイルス感染国になる──あってはならない話
です。それは、トランプ大統領が、自己の再選のため、無責任な
行動をしたことが原因であるといえます。
 トランプ政権になってから、コロナが起きる前から、保健・衛
生行政全般のトップに、いかがわしい人物が続々と起用されてい
ます。これに関する『選択』の記事をください。
─────────────────────────────
 2017年初頭のことだ。元凶は、保健福祉長官に起用された
トム・プライス元下院議員だ。医師出身で、下院では予算委員会
の委員長を務めるほどの大物にのしあがった。彼は、米下院で出
世する過程で、悪癖を身につけた。医療関係法案を提出し、成立
のめどが立った直後に、関連企業の株を買うというインサイダー
取引である。これを何度も繰り返した。
 医療業界にとっては最も操りやすいタイプだ。新政権誕生時に
保健福祉長官候補になった。上院の指名投票では、民主党から激
しい反発を招き、僅差でやっと就任。ところが、長官就任後は出
張に政府専用機をたびたび使って問題化した。最後は大統領自身
の怒りを買い事実上解任された。このプライス氏がCDC局長候
補に引っ張ってきたのが、地元ジョージア州のブレンダ・フィッ
ツ・ジェラルド氏である。彼女も医師だが、本職は「アンチエイ
ジング・クリニック」経営。その後、州政界に入って、「医療行
政のプロ」を看板に保健行政のトップにまで出世した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/048]

≪画像および関連情報≫
 ●世界最強の感染症対策機関を持つ米国が世界最大の感染国に
  なった理由
  ───────────────────────────
   世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスだが、1
  つ気になることがある。それは米疾病管理予防センター(C
  DC)という「世界最強の感染症対策機関」を持つ米国が、
  世界最大の感染国になっていることだ。
   4月20日現在、世界の感染者数は238万人を超え、う
  ち米国は74万人(死者4万人)以上で世界全体の3分の1
  近くを占めている。なぜこんなことになっているのかと言え
  ば、その責任の大半はトランプ大統領の失策と無能さにある
  と言っても過言ではない。
   今年1月末、中国の武漢で感染が拡大していた頃、ホワイ
  トハウスには新型コロナについて警鐘を鳴らす報告書が情報
  機関などから上っていた。ところがトランプ大統領はそれを
  軽視し、「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」
  などと、記者団に話していた。
   その結果、初動対応が大幅に遅れ、感染者が十分に把握で
  きず、感染経路の追跡や感染者の隔離などを徹底できずに、
  感染を拡大させてしまったのである。感染拡大のもう1つの
  主要因はウイルス検査の遅れだが、これもトランプ大統領の
  失策と無関係ではない。トランプ政権は世界保健機関(WH
  O)が各国に提供した検査キットを使用せず、米疾病管理予
  防センター(CDC)が独自に開発した検査キットを使うこ
  とを決定した。         https://bit.ly/2DH149K
  ───────────────────────────

アレックス・アザー米保健福祉長官.jpg
アレックス・アザー米保健福祉長官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

●「コロナウイルスの感染者増大傾向」(EJ第5283号)

 東京都を中心に、神奈川、埼玉、千葉で、新型コロナウイルス
の感染者が再び増加傾向にあります。7月3日の東京都の感染者
は124人ですが、年代別の感染者は次の通りです。
─────────────────────────────
          感染者          感染者
   10代     4人   40代     9人
   20代    60人   50代     6人
   30代    37人   60代     4人
              70代以上     4人
   ───────────────────────
                   合計 124人
             ──2020年7月4日/朝日新聞
─────────────────────────────
 これによると、10代〜30代を合わせると101人になり、
全体の78%を占めています。この現象をどのように判断すべき
でしょうか。ここまで検証してきたことをベースに考えると、次
のようにいえると思います。
 若い人の場合、たとえコロナに感染しても、発症する人は少な
く、そのまま治ってしまうケースが多いのです。発症するかどう
かを決めるのは、体内のウイルスの量によって左右されます。ウ
イルスの量がある一定の量に達すると、咳や発熱などの症状が出
てくるので、この状態のときにPCR検査を受けると、陽性と判
定される可能性が高いのです。
 問題は、どういう状況のときに他の人に移す感染力を持つかで
す。発症のおよそ3日ほど前から、このウイルスは感染力を持つ
といわれます。その約3日間は、本人に自覚はなく、その人と接
触した人にウイルスを感染させる可能性があります。そのことは
他人はもちろんのこと、本人もわからないのです。
 こんなケースも考えられます。ウイルスに感染して、咳や発熱
などの症状が出ても、PCR検査を受けなかったり、検査を希望
しても、受けられなかった場合──このケースはいまでもあると
いわれる──若い人の場合、治ってしまうケースも多いのです。
しかし、このケースでは、発症の出る前後から発症後1週間程度
は、他の人に感染させてしまう可能性が高いのでが、実際問題と
してこの状態の若者を発見することはきわめて困難です。誰が感
染者かわからないので、お互いにマスクをして、社会的距離をと
る以外方法はないと思います。日本人は、他国に比べると、マス
クに関しては、ほぼ徹底されているので、これによる感染者の抑
制効果は相当効いていると思います。
 124人の感染経路を調べると、次のようになっています。
─────────────────────────────
              ◎感染経路
         夜の街    58人
         会食     18人
         職場      6人
         施設      5人
         家庭      2人
        その他      9人
         不明     26人
        ───────────
               124人
             ──2020年7月4日/朝日新聞
─────────────────────────────
 感染経路を見ると、「夜の街」と「会食」を合わせると、6割
を占めています。いずれも、マスクが使えず、どうしても「密」
になりやすい環境です。こういう環境に、感染力を持つ人が1人
でも入り込むと、感染が拡大してしまいます。いくら入店時に体
温チェックをしたり、手の消毒をしたりしても、感染を防ぐこと
は困難です。
 そこで、東京都の小池知事は、政府の緊急事態宣言に合わせて
4月に東京としての緊急事態措置を発令し、都民には徹底した外
出自粛、事業者には、休業要請、営業時間短縮、施設使用、イベ
ントの使用制限などを実施したのです。こういう都の要請に応じ
た事業者には、都から一定の協力金が支払われています。
 つまり、東京都は、店舗側には休業要請を出して店を閉めさせ
都民には、外出自粛を呼び掛けるという両方に制限をかけたので
す。それでも強制ではないので、店を開く事業者もあるし、そう
いう店に出向く都民はいるとはいうものの、人の流れを止めたこ
とで、1日の感染者数をなんとか1桁台に押さえ込むことに一応
成功しています。
 しかし、外出自粛を解き、休業要請を元に戻せば、感染者は再
び増大することは確実です。このEJの原稿は4日に執筆してい
ますが、感染者数は明らかに増加傾向にあります。再び緊急事態
措置を発令し、人の流れを止めることは、大規模なオーバーシュ
ートでも起こらない限り、できないと思います。このようにこの
コロナ禍はなかなか厄介であり、かなり長引く恐れがあります。
 ここで知っておくべきことがあります。毎日、東京都が夕方頃
に発表している感染者数は、東京都が各保健所から聞き取り、集
計したものに過ぎず、正確な数字ではないのです。そのため、そ
の後、随時、更新・修正されています。東京都は別に各保健所か
ら提出された発生届と確定日別に整理したものを「確定日付けに
よる陽性者数」としてウェブサイトに公開しています。
 つまり、保健所は、ある日に陽性として確定した人の数を都に
報告していますが、その人は検査を受けた日には感染していたの
ですから、その日を「確定日」としているわけです。これによる
と、毎日の報告数よりも、確定日の陽性者数の方が多い傾向が目
立っています。例えば、6月9日の発表数は12人ですが、確定
日別陽性者数は25人と倍増しているのです。ほとんどは確定日
の方が多いといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/027]

≪画像および関連情報≫
 ●PCR検査増やせ大合唱の謎
  ───────────────────────────
  ・相変わらずテレビでは「PCR検査増やせ」報道が多い。
  ・「国民全員にPCR検査を」と主張する専門家もワイド
   ショーに出演。
  ・100万人当り感染者率と死亡率が断トツに低い日本は、
   成功例ではないのか。
   前記事で「PCR検査増やせ派」がメディアを中心に勢力
  を増し続けている現状を指摘した。その後、自分が現役時代
  に関わっていたBSフジLIVE「プライムニュース」に、
  本庶佑京都大学大学院特別教授がゲストとして出演した回、
  (2020年4月22日放送)で「PCR検査を増やせ」と
  の趣旨の発言をしたとことを同番組の記事で知って驚いた。
  タイトルは、「PCR検査の数断然足りない」・・・ノーベ
  ル賞本庶佑教授が語るコロナ対策「検査は大学研究室でもで
  きる」だ。本庶氏の主張は明確で、医療現場の感染拡大を防
  がねばならない、ということだ。その上で、「私が一番心配
  していること。戦争でいうと一つの小隊がころっとやられる
  状況。             https://bit.ly/2Z20FXD
  ───────────────────────────

東京都の新規感染者数/7月4日.jpg
 
東京都の新規感染者数/7月4日
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary