2020年07月03日

●「無症状の感染者が感染を拡大する」(EJ第5281号)

 昨日のEJでご紹介した台湾疾病コントロールセンターのデー
タについて改めて考えてみることにします。テレビなどのメディ
アがどこも取り上げないからです。なお、この情報は、名古屋大
学名誉教授、小島勢二氏から伝えられたものです。
 PCR検査を受けて、新型コロナウイルスが陽性と診断された
人が100人います。この陽性の感染者100人の、濃厚接触者
2671人についての追跡調査です。そのうちの2次感染者は、
22人(0・8%)。感染歴のデータを再現します。
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            症状が出る前 ・・ 10人
         発症日から3日以内 ・・  9人
    発症日から4日目ないし5日目 ・・  3人
         5日目以降の感染者 ・・  なし
    ―――――――――――――――――――――
                      22人
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 まず、2次感染者22人では、軽症患者よりも重症患者に接触
した人の方が、感染リスクが高かったことが確認されています。
重症患者を診るのは、医療感染者ということになりますが、濃厚
接触者2671人のうち、697人は医療関係者です。
 これに対して、濃厚接触者2671人のうち、無症状の患者に
接触した人は91人いましたが、そのなかから、2次感染をした
人はいなかったといいます。
 問題は感染歴です。2次感染した22人のうち、約半数の10
人は症状が出る前の感染歴があり、9人は症状が出てから3日以
内、3人は発症日から4日目ないし5日目であり、5日以降につ
いては、感染者はゼロです。
 ここでわからないのは、無症状感染者の場合、どういう状況に
なったら、他の人に感染させるのかということです。他の人に感
染させられるかどうかは、ウイルスの量に関係があるようです。
 名古屋大学名誉教授、小島勢二氏は次のように述べています。
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 ウイルスが感染した時に症状がでるには、一定以上のウイルス
量が必要である。新型コロナウイルスについても、海外からリア
ルタイムPCR法でウイルスの量を測定した研究が数多く報告さ
れている。
 これらの研究によると、症状の発症前後が最も多量のウイルス
が検出され、感染から1週間を境に、ウイルス量は急速に減少す
る。台湾からの報告と合わせると、新型コロナウイルスが他人に
感染するには一定のウイルス量が必要で、発症から1週間経てば
この値を下回ると想像される。    https://bit.ly/2Zhu5Qm
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 つまり、こういうことです。新型コロナウイルスに感染しても
ウイルスの量が少ないと、症状も出ないし、他の人に感染もさせ
ないのです。それでは、そのウイルスの量はどのように計測する
のでしょうか。PCR検査でウイルス量は計れるのでしょうか。
 現在、一般的に「PCR検査」と呼ばれている検査法は、正確
には「PCR法」といい、目に見えないウイルスの遺伝子を特殊
な装置を使い、目的の遺伝子を増加させることによって、見えれ
ば陽性、見えなければ陰性と判定するものであり、ウイルスの量
を計測する検査法ではありません。
 ウイルスの量を計測するには、PCR法を発展させた「定量検
査」というものがあり、「リアルタイムPCR」と呼ばれていま
す。この検査では、PCRの1サイクルで目的のウイルスのDN
Aは2倍になるので、これを繰り返すことによって、DNAがあ
る量に達すると、増やしたDNAがその量に達するのに何サイク
ル回したかがわかれば、最初に存在するDNAの量を推定できる
のです。この方法であれば、ウイルスの量を測定できます。
 話が難しくなってきたので論点を整理します。人による違いや
年齢による違いは当然ありますが、新型コロナウイルスに感染し
ても、ウイルスの量がある一定の量に達するまではいっさい症状
は出ず、そのまま無症状のまま治ってしまう人もいます。
 こうした無症状感染者の体内のウイルス量がある一定の量に達
すると、咳や発熱の症状が出てきます。そういう症状が出る前の
数日の間は、体内のウイルス量が増えて、他の人に感染可能にな
ります。台湾のデータによる2次感染者22人のうち、10人は
無症状感染者から感染しています。症状が出ていないので本人は
無自覚のまま10人に感染させています。このケースを「A」と
します。
 続いて、感染者に症状が出てから、5日目まではウイルスの量
も増大し、非常に感染させやすくなります。このケースを「B」
とします。重傷者のウイルス量はもちろん多いです。
 このケースBについては、本人に咳や発熱の症状があるので、
常識的には本人も用心するし、第3者も警戒するので、感染には
抑止がかかります。それでも12人が感染しているのです。しか
し、症状が出てから5日以上経つと、ウイルスの量は減少するの
で、それ以後は、感染者が1人も出ていないのです。
 新型コロナウイルスについて、診断時から時間を負うごとに分
離培養を行ったドイツからの報告によると、診断直後は高い確率
でウイルスを分離できたものの、日を経るごとにウイルスの量が
減少し、発症から8日目以降は、検査した全員において分離する
ことができなかったのです。
 この情報が正しいとすると、新型コロナウイルスに感染しない
ためには、ケースA、すなわち、無症状であるが、実はウイルス
に感染している人をいかにして発見するかにかかっていることに
なります。もちろん本人も無症状であるので、感染していること
はわかっていないので、発見はとても困難を極めます。
 本人すら自覚しない無症状の感染者を把握するには、国民の全
員の検査以外に方法はありません。そのためには検査方法の改革
が必要です。   ──[『コロナ』後の世界の変貌/025]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ感染症:WHOはなぜ「無症状の感染者は感染さ
  せにくい」と発言したのか
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   新型コロナウイルス(COVID−19、以下、新型コロ
  ナ感染症)の感染メカニズムが少しずつわかってきたが、症
  状が軽かったり、無症状だったりする感染者から感染するか
  どうかで議論に混乱が生じている。これまでに出た論文から
  この問題の真偽について考える(この記事は2020/06
  11時点の情報に基づいて書いています)
   WHO(世界保健機関)が6月8日のメディア・ブリーフ
  ィングで、「無症状の人が他の人へ感染せるのはとても珍し
  い」と述べた。するとこの発言に対し、世界中の専門家から
  異議が唱えられた。WHOは対応に追われたが、この発言は
  新型コロナ感染症の感染拡大対策を根底からくつがえすかも
  しれないからだ。
   我々が発熱や、長引く咳、倦怠感といった症状を起こして
  いなくても、外出を自粛してテレワークをし、いわゆる「3
  密」を避けたり、ソーシャル・ディスタンシングをとり、手
  指衛生やマスクの装着に神経質になっているのはもしかした
  ら自分が感染してウイルスをもっているかもしれなかったり
  同じような人に接触する危険性があるからに他ならない。ま
  た、医療現場でも無症状(不顕性)感染者が患者さんとして
  来院することに注意し、医療関係者も自らがそうであるリス
  クを恐れながらウイルスに対峙してきた。6月8日のWHO
  の発言は、こうしたことを否定する危険性がある。では、無
  症状の感染者からは感染するのだろうか。
                  https://bit.ly/38c0trO
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PCR検査風景.jpg
PCR検査風景

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする