2020年06月30日

●「米国ではコロナはどう感染したか」(EJ第5278号)

 米国が中国への人の出と、中国からの人の入りの双方を禁じる
──これは中国との人の往来の遮断ですが、一見すると、実に手
際良い処置に見えます。トランプ大統領としては「どうだ、これ
でもう大丈夫だ」という気分だったのでしょう。
 しかし、トランプ大統領のこの決断は、今になって考えると、
いささか遅すぎたのです。それは、この措置が、WHOの緊急事
態宣言(PHEIC)に基づいて行われているからです。WHO
のこの措置は、本来であれば、遅くとも1月22日に発出される
べきだったのですが、中国の習近平主席の要請で、テドロス事務
局長が根回しし、30日までに延期させたからです。
 ときあたかも中国の春節の時期(1月24日〜30日)であり
中国の大量の旅行団が米国内に入ってしまっています。テドロス
事務局長は、「WHOとしては、国際的な貿易と渡航の制限を求
めない」といい、中国に助け舟を出しています。このことを後で
知って、トランプ大統領は「WHOは中国寄りであり、われわれ
はWHOとの関係を絶つ」と宣言するにいたるのです。WHOに
騙されたことを知ったからです。
 それでも2月の中旬まで米国は順調だったのです。2月12日
の米国株式市場で、ニューヨークダウ工業株30週平均は、2万
9551ドルを付け、史上最高値を記録しています。3万ドルの
達成は目前だったのです。
 しかし、2月24日になると、状況は一変します。イタリアで
大規模な感染が伝えられると、ダウ平均は突然1000ドル以上
下落したのです。そして、2月25日、CDCのナンシー・メッ
ソニエ博士が次の警告を発しています。
─────────────────────────────
  コロナウイルスが米国全土に拡散している可能性がある
          ──CDCナンシー・メッソニエ博士
─────────────────────────────
 このメッソニエ博士の発言を受け、米国株は連日急落します。
2月25日、CDCは「国内で感染が広がるのは時間の問題であ
る」と発表。この発言を受けて、ダウは2月12日の最高値から
3月23日まで大幅ダウンし、その下落幅は1万959ドル、下
落率にすると37%の暴落です。リーマンショック時のそれは、
54・4%の暴落だったので、まさにリーマンショック時に次ぐ
大幅な株の下落率ということになります。
 2月26日のことですが、サンフランシスコ市が新型コロナウ
イルスで非常事態を宣言しています。ところがその時点でサンフ
ランシスコ市内で感染者は1人も確認されていなかったのです。
サンフランシスコは、中国との人の往来が多く、感染が拡大する
予感があったようです。ちょうどその頃の日本経済新聞の記事は
カルフォルニア州における非常事態宣言について、次のように書
いています。
─────────────────────────────
【シリコンバレー奥平和行】中国系の住民が多い米カリフォルニ
ア州で、地方政府が非常事態宣言を出して新型コロナウイルスの
感染拡大に備える動きが広がってきた。シリコンバレーの大半を
含むサンタクララ郡などに続き、サンフランシスコ市も2月25
日に発令した。郡や市は危機管理センターの機能拡充といった対
策を加速する。
 サンフランシスコ市は米国で最大の中華街を抱えるなど中国と
の関わりが深い。感染者はまだ見つかっていないが、市幹部は、
「中国本土との往来が多く、発症のリスクが高まっている」と指
摘する。非常事態を宣言することで、発症や感染拡大に備える。
               https://s.nikkei.com/3eBQEFS ─────────────────────────────
 2月に関しては、米国は一部の州では、感染が確認されていな
いにもかかわらず、非常事態宣言を出すなど、警戒していた州も
ありましたが、3月に入って感染が爆発したニューヨークでさえ
も、2月中は危機感にほど遠いものがあったのです。滝田洋一氏
の本に、その頃のニューヨーク在住者からのメールが次のように
紹介されています。
─────────────────────────────
 NYは(いまのところ)、感染者はゼロ!のグリーンゾーンで
す。なんか、ゾンビ映画のセーフゾーンの要塞のなかにいる気分
です。皆マスクをしないで、まったく普段通りの生活です。オペ
ラもカーネギーホールもいつもどおり。むしろ咳をする人が外出
を控えているのか、観客マナーは向上したかも。
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 2月29日のことです。米国の最初のコロナ感染者がワシント
ン州で亡くなっています。この人は、1月21日に感染が発覚し
ており、隔離されていたのです。これによって、ワシントン州は
州としてはじめて非常事態宣言を出しています。
 そして3月に入ると様相は一変します。とくにニューヨーク州
では、日に日に感染が拡大し、3月29日には1日の感染者数は
7千人を超えたのです。どのように拡がって行ったのか、米環境
・社会問題研究家/田中めぐみ氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 ニューヨーク州では、3月1日にイランへの渡航歴がある人の
感染が最初に市内で確認され、3日には2例目となる経路不明の
感染者1名を郊外で確認。その後、その人物と接触のあった人の
間で感染が広まり、翌4日に11人、5日に22人、6日に44
人と倍増し、17日には1000人を超え、29日には1日の感
染者数が約7千人、死者数は200人以上となっています。
             ──社会問題研究家/田中めぐみ氏
                  https://bit.ly/2Vnqf6X ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/022]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、ニューヨークの被害はなぜ大きいのか−当局者
  ら要因指摘
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス感染症(COVID19)によるニュ
  ーヨーク市の死者数は今週の時点で少なくとも2万1000
  人に上った。この数はロサンゼルス郡の10倍で、イタリア
  で最も被害の大きいロンバルディア州の1万6000人をも
  上回る。英国の人口はニューヨーク市の8倍だが、死者の数
  は3万7500人前後だ。
   明るい兆しも見え始めている。ニューヨーク市のデブラシ
  オ市長は5月26日の記者会見で、新型コロナの感染拡大は
  減速しつつあり、6月半ばまでに経済活動再開に着手できる
  方向にあると語った。
   だが、重要な問いが依然残る。ニューヨークの被害がこれ
  ほど広がったのは、何が原因なのか。ブルームバーグでは新
  型コロナ対策に関与した当事者の過去の発言を振り返った上
  で、専門家や米疾病対策センター(CDC)、市長にこの問
  いをぶつけたところ、ニューヨークの爆発的な感染拡大を招
  いた大きな要因として以下の点が指摘された。
   米国は中国の感染者数が少なくとも1万4000人に上っ
  ていた2月2日、中国からの入国をほぼ禁止した。だが、欧
  州からの入国は3月13日まで禁止されることはなかった。
  その間に、イタリアの感染者は2人から1万5000人余り
  へと急増していた。       https://bit.ly/3eC44Sl
  ───────────────────────────

ニューヨークの市街.jpg
ニューヨークの市街.
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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