2020年06月11日

●「WHOは1月には何をしていたか」(EJ第5265号)

 WHOのテドロス事務局長は、今回のコロナ禍で、中国のため
に、何をやったのでしょうか。3月11日のパンデミック宣言ま
でに、彼が何をやったか、時系列的に検証することにします。
 報道によれば、WHOが中国武漢で発生した正体不明の感染症
の情報を得たのは、2019年12月31日のことです。中国か
ら正式に情報が伝えられたのはこの日といわれます。この時点で
は、人から人へ感染するかどうかは不明とされています。しかし
複数の情報によれば、中国ではこのウイルスが人から人へ感染す
ることは、かなり早くから、わかっていたはずです。
 1月2日、WHOは対策チームを発足させ、中国国内の専門家
と協力しつつ調査をはじめています。この時点で感染の中心地は
武漢市内にある海鮮市場ということになっています。1月10日
になって、WHO対策チームは、武漢を中心にコロナウイルスの
新型の発生を確認しますが、人から人への感染は依然不明である
とするものの、武漢市からの渡航者との接触は避けるべきである
と加盟国に提唱しています。その間、武漢での感染の拡大は、ま
さに風雲急を告げていたのです。
 1月中旬になると、日本でも感染者が発生するようになってい
ます。中国武漢からの観光客を案内して感染した都内在住の70
代のタクシーの運転手が、都内の屋形船で開かれた個人タクシー
組合支部の新年会に出席して、クラスター感染が起きたのもこの
頃のことです。
 WHOでは、1月22日の午後8時に、第1回の国際保健規則
(IHR)に基づく緊急委員会を開催しています。WHOの事務
局長は、通常この緊急委員会において、国際的に懸念される公衆
衛生上の緊急事態(PHEIC)宣言を発出し、WHO加盟各国
に対して警告し、さらなる情報提供を求めることになります。そ
のとき武漢では、爆発的に感染が拡大していたのですから、当然
のことながらWHOは、緊急事態宣言を発出するものと思われた
のです。しかし、きわめて不可解な話ですが、このときの緊急委
員会では、中国とその同盟国の反対で、テドロス事務局長による
緊急事態宣言の発出を見送っています。時期尚早であるというの
です。1月23日のことです。
 ところが中国政府は、その同じ23日に武漢市をロックダウン
しています。実は、このロックダウンは、きわめて変則的な時間
に通告され、実施されているのです。正確にいうと、1月23日
の午前2時5分に発布され、23日の午前10時から開始されて
います。通告から実施まで実に8時間もあります。この8時間の
空白は謎ですが、これについては改めて述べることにします。
 1月28日、習近平国家主席からの急な連絡で、テドロス事務
長とスタッフは、急遽北京に飛んでいます。そして、ツートップ
である習近平首席と李克強首相と面会しています。そのとき、テ
ドロス事務局長は、次のように中国政府を絶賛しています。
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 中国政府は、オープンかつ透明性のある情報開示をしている。
新記録といえる短期間で病原体を突き止め、WHOや各国のウイ
ルスの遺伝子配列情報を進んでシェアしている。
                ──WHOテドロス事務局長
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 1月30日、WHOは再度緊急委員会を開催し、新型コロナウ
イルスについて緊急事態宣言(PHEIC)を発出しています。
どう考えても、あまりにも遅い緊急事態の発出ですが、その記者
会見で、「緊急事態宣言の発出が遅れたのではないか」と問われ
テドロス事務局長は、実に珍妙な発言をし、直ちに側近に発言を
訂正されるドタバタを演じています。
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 22日の緊急委での緊急事態宣言の発出の見送りは適切であっ
たと考えている。その時点では、感染者はわずか82名で、死者
数はゼロだったからである。      ──テドロス事務局長
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 この発言に対し、WHO技術部門のリーダー、米国のマリア・
バン・ケーコブ医師は、「感染者82名うんぬんは中国以外での
数字であり、中国ではこの段階で7711人の感染に加え、1万
2167人の感染の疑い、1370人の入院患者に加え、170
人の死者が出ていた」と指摘し、数字の訂正を求めたのです。テ
ドロス事務局長にいわせれば、中国は感染を十分押さえ込める実
力を有しており、中国以外の国が問題なのだとハナからそう考え
ているようです。彼は、これほどの中国信者なのです。しかも、
次の言葉まで添えています。
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 緊急事態は発出しますが、そうだからといって、国際的なヒト
やモノの移動制限は推奨しない。    ──テドロス事務局長
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 テドロス事務局長は確信犯です。国際保健衛生分野のトップ外
交官・政治家として、「中国寄り」といわれることを十分承知し
たうえで、WHO事務局長として職務を果しています。テドロス
事務局長について、キャノングローバル戦略研究所研究員の本多
倫彬氏は、次のように述べています。
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 状況の把握と封じ込めを求めるWHOのトップの目には、そも
そも中国寄りという姿勢を差し引いても、中国の取り組みは頼も
しく映っただろう。中国と距離の近い事務局長だからこそ、中国
からの情報を広範に入手できた可能性もある。逆に言えば、中国
を批判すればそうした情報が取れなくなるし、自らの支持母体を
失うという計算も働いたのかもしれない。いずれにしても、検査
数自体が少なく、また封じ込めも自粛という形の日本のような国
と比べたとき、中国はテドロス事務局長にとって優れたものに見
えたことだろうことは指摘できる。  https://bit.ly/3h8osfz ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/009]

≪画像および関連情報≫
 ●批判呼ぶテドロス事務局長の「中国擁護」/背景にWHOと
  中国の蜜月の仲
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   肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり
  中国当局の初動の遅さを指摘する声が世界で高まる中、世界
  保健機関(WHO)のテドロス事務局長が中国を擁護し続け
  ている。テドロス氏が中国寄りの発言を続ける背景には、長
  年にわたる中国とWHOの「蜜月の仲」があるとされる。
   テドロス氏は2月12日、新型肺炎の治療法やワクチンに
  ついて話し合う専門家会合後の記者会見で語気を強めた。事
  の発端は、会場の記者が「WHOは、中国の対応を称賛する
  ように中国から圧力を受けたのか」とテドロス氏に批判的な
  質問をぶつけたことだ。
   質問を聞いたテドロス氏はこわばった表情で、「中国は感
  染の拡大を遅らせるために多くの良いことをしている」と説
  明。「ほとんどすべての加盟国が、中国の対応を評価してい
  る」と言い切った。
   テドロス氏はさらに、中国の習近平国家主席について「知
  識を持っており、危機に対応するリーダーシップを発揮して
  いる」と語り、称賛を繰り返した。これまで、テドロス氏は
  新型ウイルスの問題で、一貫して中国の肩を持つような発言
  を続けてきた。中国外務省によると、テドロス氏が1月28
  日に習氏と会談した際も「(中国は)時宜にかなった有力な
  措置を講じている」と対応を評価した。
                  https://bit.ly/2Ym1XLk
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習近平国家主席とテドロスWHO事務局長.jpg
習近平国家主席とテドロスWHO事務局長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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