2020年06月08日

●「19年12月10日のある出来事」(EJ第5262号)

 新型コロナウイルスの感染が始まった場所は、間違いなく武漢
です。中国政府は、米軍がウイルスを武漢に持ち込んだというあ
り得ない説を唱えていますが、感染元は武漢です。これだけは、
動かしようのない事実です。
 そして、その武漢には、2つのウイルス研究所があります。し
かもその1つは「バイオセーフティレベル4」(P4研究所)と
いう国際基準をクリアした中国唯一の研究所です。ちなみに、季
節性インフルエンザはレベル2(P2)、結核や狂犬病はレベル
3(P3)、そして、エボラ出血熱などの最もリスクの高いもの
はレベル4(P4)ということになります。人から人への感染力
の強い新型コロナウイルスもこのレベルに該当します。
 こういう状況が揃えば、今回のウイルスがそのP4研究所から
流出したのではないかと疑うことはごく自然なことです。まして
武漢P4研究所の検体の管理には問題があるという指摘が以前か
ら出ていたのです。
 この武漢P4研究所に関してこんな話があります。2019年
12月10日のことです。習近平主席が鋭意進める「一帯一路計
画」の一環である長江(揚子江)に関わる巨大プロジェクトがあ
り、昨年12月の上旬から一週間の予定で、中国内陸部の揚子江
一帯を視察する国際的専門家集団のツァーがあったのです。
 2019年12月10日、午前9時、その一行が地方の財界幹
部の案内で、武漢市内の中心部にある長江科学技術院にやってき
たのです。このツァーのスケジュールのひとつです。この同じブ
ロックのなかに「中国科学技術院P4研究所」があります。
 ツァーの一行は、中央本部棟の3階の応接室に通され、予定で
は、しかるべき科学院幹部が出迎える予定になっていたのです。
しかし、待てど暮らせどその幹部が登場しない。慌てた案内の財
界幹部は、科学技術院の職員に、しかるべき人物を連れてくるよ
うに強く求めたのです。
 そこに登場したのは、スカートとブラウスの上にジャケットを
羽織った女性で、名刺交換をしたところ、その名刺には次の記載
があったといいます。
─────────────────────────────
          長江科学技術院教授
                石正麗
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 一行はこの石正麗教授の案内で、技術院のなかをみせてもらっ
ています。しかし、技術院のなかは、ガランとしてほとんど人影
はなかったそうです。ただ、石正麗教授が「これは私のラボラト
リです」と紹介した部屋には多くの研究員がおり、何らかの実験
をしていたそうです。そのとき、自分は、SARSやMERSの
ような人類の敵になるウイルスの研究をやっているとその職務を
具体的に説明しています。
 以前にこの技術院を訪問したことのある人の話によると、技術
院の敷地内は乗用車や業者のトラックが頻繁に出入りし、技術院
のなかは、白衣の研究者が多く行き来する活気に満ちた場所だっ
たといいます。ところが、その日は技術院のなかにはほとんど人
はおらず、その後の武漢の市中案内でも、いつもなら必ず目にす
るはずの市民はほとんどいなかったというのです。
 この話は、月刊『Haneda』/2020年7月青葉号の、フリー
ジャーナリスト山口敬之氏のレポートに出ていたものです。この
日の技術院の様子は今にして考えると、重要な意味をもってくる
と思います。この日の技術院について、山口敬之氏は、次のよう
に述べています。
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 12月10日の武漢で一体何が起きていたのか。一行の1人は
こう類推する。武漢P4研究所の周辺で何らかの事故があって、
公的機関により一帯は「封鎖」もしくは「立入制限措置」が取ら
れていたのではないか。
 しかも、武漢在住の財界幹部が科学院幹部の不在に激怒したこ
とからみて、「封鎖情報」はごく一部の関係者だけに知らされ、
ほとんどの武漢市民には告知されていなかったのではないか。
 これらはあくまで類推であり、真相は闇のなかだが、ひとつだ
けはっきりしていることがある。他の全ての研究者や業者が去り
閑散とした研究施設で、ウイルス研究の専門家である石正麗のチ
ームだけが、何らかの研究を続けていたという事実だ。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 この話が本当であるとすると、昨年の10月以降、何らかの事
故によって新型コロナウイルスが研究所から流出し、一部の関係
者には技術院からの隔離措置が取られ、石正麗教授のチームだけ
が分析を行っていたのではないかといわれています。12月10
日の時点で、技術院に人影がなかったのは、それが原因と考えら
れます。
 こういう情報もあります。米国のNBCが米政府当局者の話
として、次の情報を報道しています。
─────────────────────────────
 1019年10月7日から3週間、武漢P4研究所の高セキュ
リティ区域で、携帯電話の通信が完全に途絶えていた。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 仮に10月の時点でウイルスが流出する事故があったとすれば
今年1月以降の武漢地域での感染爆発は整合性がとれます。中国
がWHOに「原因不明の肺炎の発生」を伝えたのが12月31日
であり、翌日の1月1日に海鮮市場を閉鎖していますが、それか
ら感染が急拡大するにはスピードが早過ぎるのです。ちなみに、
1月5日時点での感染者は59人、うち7人が重症、9日に初の
死者が出たことになっています。やはり、中国は意図的にヒト対
ヒト感染の情報をかなり長期間隠蔽していたことになります。こ
れは問題です。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/006]

≪画像および関連情報≫
 ●新型ウイルスの起源追跡 中国のコウモリ洞窟探る
  日経サイエンス
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   今回の新型コロナウイルスはどこから来たのか?
   中国・武漢ウイルス研究所の石正麗(シー・ジェンリー)
  氏らは、中国南部・雲南省のキクガシラコウモリで同チーム
  が以前に発見していたコロナウイルスと新型ウイルスのゲノ
  ム配列が96%同じであることを突き止め、2月初めに学術
  誌に報告した。短期間で起源を特定できたのは、石らが長年
  にわたって動物が保有するウイルスを追跡してきたからだ。
  人間と野生動物が接触する機会が増え、アウトブレーク(集
  団感染)が起こりやすくなっている。
   野生動物が自然の保有宿主となっているウイルスが変異し
  人間に感染するケースが知られている。2002年に重症急
  性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたコロナウイルス
  もコウモリが保有宿主だった。これを特定したのが、非営利
  研究機関エコヘルス・アライアンス(本部ニューヨーク)と
  石らの国際チームだ。石はウイルス学者だが、中国各地のコ
  ウモリ洞窟を調査してきたことから、研究仲間からは親しみ
  を込めて「中国のバットウーマン」と呼ばれている。保有宿
  主を突き止めるには野生動物の血液や糞を採集し、ウイルス
  の遺伝物質(RNAやDNA)が含まれているかどうかを解
  析する。人里離れたコウモリ洞窟を踏査してこれを実行する
  のはたいへんな作業だ。石らはSARSウイルスの起源を追
  跡するなかで注目した雲南省の洞窟を徹底的に調べ、遺伝的
  に非常に多様な数百種のコウモリ媒介ウイルスを発見した。
                  https://bit.ly/3eTyn6t
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石正麗研究員.jpg
石正麗研究員

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする