2020年06月05日

●「消去論文には何が書いてあったか」(EJ第5261号)

 昨日のEJの最後でお伝えした中国政府によって消された論文
は、インターネット上で削除されたコンテンツを回復させるツー
ル「ウェイバック・マシーン」で読むことができます。論文は英
語で記述されています。
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    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2Y91ZGz
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 この論文について、ジャーナリストの時任兼作氏がその要約を
『WiLL』7月特大号に要約を掲載しています。EJでは、そ
の要約をさらに要約し、以下に説明つきで、掲載することにしま
す。論文は、新型コロナウイルスの発生源について、次の3つに
絞って検証しています。
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      1.      武漢海鮮市場発生説
      2.   武漢疾病管理予防センター
      3.中国科学院・武漢ウイルス研究所
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 まず、論文は、「1」の「武漢海鮮市場発生説」については、
可能性が低いとして、次のように否定しています。
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 新型コロナウイルスが中国で伝染病を発生させた。2020年
2月6日までに564人の死者を含め、2万8千60人が感染し
たことが検査で確認されている。
 今週の(学術誌)『ネイチャー』の解説によると、患者から検
出されたゲノム配列の96%あるいは89%が中型コウモリ由来
のZC45型コロナウイルスと一致したという。(中略)
 ZC45型コロナウイルスを運ぶコウモリは、雲南省または浙
江省で発見されたが、どちらも海鮮市場から900キロ以上離れ
ている。(そもそも)コウモリは通常、洞窟や森に生息している
ものだ。だが、海鮮市場は人口1500万人の大都市である武漢
の住宅密集地区にある。コウモリが市場まで飛んでくる可能性も
非常に低い。(中略)自治体の報告と31人の住民および28人
の訪問者の証言によると、コウモリは食料源だったことはなく、
市場で取引されてもいなかったという。
                ──『WiLL』7月特大号
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 続いて論文は、発生源の可能性として、海鮮市場周辺をスクリ
ーニングした結果、海鮮市場から280メートル以内の距離にあ
る「2」の「武漢疾病管理予防センター」(WHCDC)が発生
源の可能性があるとして、次のように書いています。
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 武漢疾病管理予防センター(WHCDC)は、研究の目的で所
内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収
集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型
コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450
匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。収集の
専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
 さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが
2017年と2019年に全国的な新聞や、ウェブサイトなどで
報じられている。(中略)
 捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよ
びRNAの抽出とシーケンシンク(塩基配列の解明)のために採
取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供
給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほど
のところに存在したのである。またWHCDCは、今回の伝染病
流行の期間中、最初に感染した医者グループが勤務するユニオン
病院に隣接してもいた。確かなことは、今後の研究を待つ必要が
あるが、ウイルスが研究所の周辺に漏れ、初期の患者を汚染した
としてもおかしくない。     ──『WiLL』7月特大号
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 最後に論文は、海鮮市場から約12キロ離れている「3」の中
国科学院・武漢ウイルス研究所からの発生の可能性について、次
のように述べています。
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 この研究所は、中国のキクガシラコウモリが、2002年から
2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARSコ
ロナウイルス)の発生源であるとの報告を行っている。
 SARSコロナウイルスの逆遺伝学システムを用いてキメラウ
イルス(異なる遺伝子情報を同一個体内に混在させたウイルス)
を発生させるプロジェクトに参加した主任研究者は、ヒトに伝染
する可能性について報告している。憶測ではあるが、はっきりと
言えば、SARSコロナウイルスまたはその派生物が研究所から
漏れたかもしれないということだ。
 要するに、誰かが新型コロナウイルスの変異と関係していたの
である。武漢にある研究所は、自然発生的な遺伝子組み換えや中
間宿主の発生源であっただけでなく、おそらく、猛威を振るうコ
ロナウイルスの発生源でもあったのだ。
                ──『WiLL』7月特大号
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 この論文が相当信憑性のあるものであることは、中国政府が直
ちにこの論文を削除し、執筆者の2人の学者の行方が分からない
ということでわかります。ポンペオ米国務長官は、5月3日、新
型コロナウイルスの発生源が、武漢の研究所であるとする「かな
りの量の証拠」があると発言しています。
 同じ武漢に2つもウイルス研究所があるのですから、疑われて
も当然といえます。だからこそ、中国政府は、何としてもそれか
ら目をそらさせるために、武漢の海鮮市場が発生源であることを
PRしたものと思われます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/005]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、中国・武漢ウイルス研究所が発生源「かなりの
  証拠」=米ポンペオ国務長官
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   ポンペオ米国務長官は5月3日、新型コロナウイルスにつ
  き、中国の研究所が発生源である「かなりの量の証拠」があ
  ると述べた。ただ、人為的に作り出されたものではないとの
  米情報機関の結論に異議は唱えなかった。長官は、ABCの
  番組で「このウイルスが武漢の研究所から出たことを示すか
  なりの量の証拠がある」と語った。
   また「最も優秀な専門家らはこれまでのところ、(新型ウ
  イルスが)人為的なものだと考えているようだ。現時点でそ
  れを信じない理由はない」と述べた。ただ、米情報機関の結
  論と異なることを指摘されると、「情報機関の見解を認識し
  ている。彼らが、間違っていると考える理由はない」とも述
  べた。米国家情報長官室(ODNI)は先月4月30日、新
  型コロナウイルスについて「人造でも遺伝子操作されたもの
  でもないという科学的な総意に同意する」との認識を表明し
  た。国務省は、ポンペオ長官の発言について説明を求めた取
  材に現時点で応じていない。中国共産党機関紙・人民日報傘
  下の環球時報は社説で、同長官の発言は「はったり」だとし
  長官は武漢の研究所が発生源である証拠を持っていないと指
  摘。米国に証拠を示すよう求めた。「トランプ政権は引き続
  き、異例の宣伝工作を展開するとともに、COVID−19
  (新型コロナウイルス感染症)との闘いにおける世界的な取
  り組みを妨げようとしている」と批判した。
                   https://bit.ly/3gL7O5f
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中国科学院・武漢ウイルス研究所.jpg 
 
中国科学院・武漢ウイルス研究所



posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする