2020年06月04日

●「ウイルスは武漢研究所からの流出」(EJ第5260号)

 重要なのは、中国の党中央が新型コロナウイルスの発生をどの
時点で知ったかです。今のところ2019年12月の後半という
ことになっていますが、もっと以前から知っていたという情報も
あります。WHOに対しては、「正体不明の肺炎の発生」を12
月31日に報告していることは既に述べた通りです。
 このウイルスは、「中国の生物兵器である」という情報がネッ
トなどで流布されていますが、これといった証拠もなく、いずれ
も信用できるレベルの情報とは思えない、いわゆる「陰謀論」の
類いといえます。中国が現在の時点で、新型コロナウイルスを意
図的にばら撒くメリットがないからです。
 しかし、この手の噂が消えないのには、武漢には次の2つのウ
イルスの研究所があり、そこから流出したのではないかと疑われ
ているのです。
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      1.中国科学院・武漢ウイルス研究所
      2.   武漢疾病管理予防センター
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 当初感染場所とされたのは武漢の海鮮市場です。上記の2つの
ウイルス研究所と海鮮市場との距離は、武漢ウイルス研究所から
は12キロメートル、武漢疾病管理予防センターからは、280
メートルしか離れていないのです。
 それでは、なぜ、これらのウイルス研究所からの流出説が出て
きているのでしょうか。トランプ大統領もそれなりの根拠に基づ
いてその流出説を疑っています。
 中国科学院・武漢ウイルス研究所は、国際基準で危険度が最も
高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」
に位置付けられています。しかし、この研究施設について、英科
学誌『ネイチャー』が、2017年2月に「同研究施設は検体の
管理が杜撰であり、病原体が流出する恐れがある」という記事に
おいて警告を発しています。
 また、米紙ワシントン・タイムズ(電子版)は、今年1月26
日、この施設は中国の生物兵器計画に関係し「新型コロナウイル
スが流出した可能性がある」というイスラエル軍元関係者の分析
を伝えています。中国メディアによると、インドの研究者も「人
がウイルスをつくった」という推論をネット上に投稿しているな
ど、この研究施設についてはその管理の不備を伝える情報がいく
つも出ています。
 まだあります。2018年に外交官の肩書を持つCIAの科学
専門官も何度も武漢ウイルス研究所を視察し、その管理体制の問
題点などについて警告する外交公電を送っています。この件につ
き、もとCIA長官だったポンペオ国務長官はかなり重要な情報
を握っているようです。したがって、新型コロナウイルスがこの
研究所から流出したとする疑いは相当濃厚であるといえます。
 2020年4月17日のことです。トランプ米大統領は、「ウ
イルスが武漢P4研究所から流出したという情報が広く流れてい
るが、これについてどう考えるか」という記者の質問に対して、
次のように答えています。
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 我々もその点について関心をもっている。いま大勢の人が調べ
ている。武漢の研究所からのウイルス流出説は、理にかなってい
る。中国はある種のコウモリがウイルスの発生源との立場をとっ
ているが、そのコウモリは武漢に生息していない。市内の海鮮市
場でも売られていなかった。このコウモリの生息域は、武漢から
60キロ以上も離れている。したがって、ウイルスの自然発生は
あり得ない。             ──トランプ米大統領
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 トランプ大統領が「コウモリ」に言及したことは、非常に意味
があります。コウモリに由来するウイルスによる感染には次の3
つがあり、今回の新型コロナウイルスにも関係があるからです。
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 1.エボラ出血熱 ・・・・・・・・・・ 1976年以降
 2.SARS(重症性呼吸器症候群)・・ 2002年以降
 3.MARS (中東呼吸器症候群)・・ 2012年以降
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 こういう米国の主張について、中国の趙立堅報道官は、次のよ
うに反論しています。
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 WHOの事務局長も、ウイルスが武漢研究所でつくられたこと
を示す証拠はないと繰り返し、発表していることも念のため、申
し上げる。また、世界の多くの著名な医学者が、研究所から流出
したという説は、科学的根拠に乏しいと考えている。
                     ──趙立堅報道官
─────────────────────────────
 もうひとつ、そのさなかに、この問題に関して中国政府によっ
て消されたという論文があります。この論文は、広東省広州市の
華南理工大学・生物科学与工程学院の肖波濤(シャオ・ボタオ)
教授と生物学に通じる研究者が執筆したとする論文です。
 この論文は、2020年2月6日に研究者向けサイトにアップ
されましたが、ほどなくして中国政府によって削除され、肖波濤
教授ら2人の行方がわからなくなってしまっています。論文だけ
でなく、研究者の口をも封じたと思われます。
 しかし、最近はウェブサイトから削除しても復元できる技術が
進んでおり、EJはその全文を入手しているす。以下はその論文
のことを伝えているレポートです。ご一読ください。
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   ◎新型ウイルスの発生源は武漢の研究所のコウモリ
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2MgW1xI
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/004]

≪画像および関連情報≫
 ●「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする
  論文が登場
  ───────────────────────────
   パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナ
  ウイルスについて、実験室で生まれた可能性も排除すべきで
  ないとする論文が発表された。アメリカのトランプ政権高官
  や情報機関は新型コロナウイルスの発生源が中国の武漢ウイ
  ルス研究所であると主張しているが、中国はそうした見方を
  陰謀論だと一蹴している。
   専門家はおしなべて中国の立場を支持しており、新型コロ
  ナウイルスは自然に(たぶん武漢の海鮮市場で)人間への感
  染力を手にしたと考えている。新型コロナウイルスが遺伝子
  操作を受けていないことを示す証拠も、そうした見方を補強
  している。
   本誌は複数の専門家に依頼し、問題の論文に目を通しても
  らった。そして得られた評価は、「この分析に使われた手法
  は有効性が証明されておらず、主張を裏付けるようなさらな
  る研究が出てくるまでは結論を急ぐべきではない」というも
  のだった。問題の論文はブリティッシュコロンビア大学やマ
  サチューセッツ工科大学、ハーバード大学の研究者の共著で
  コールドスプリングハーバー研究所が主催するウェブサイト
  「バイオアーカイブ」で発表された。査読は受けていない。
  この論文が新型コロナウイルスが何らかの実験室で生まれた
  可能性(ごく小さな可能性かもしれないが)を主張する根拠
  は、自然から生まれたものにしては「人間によく適応してい
  る」からだという。       https://bit.ly/2zPJnmw
  ───────────────────────────

趙立堅中国報道官.jpg
趙立堅中国報道官
 
posted by 平野 浩 at 08:47| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする