2020年06月01日

●「習近平はなぜ時間稼ぎをしたのか」(EJ第5257号)

 今日からEJは新しいテーマになります。今年に入って2回目
のテーマです。ステイホームの期間中、家にこもってさまざまな
テーマを考えましたが、現在の状況において、新型コロナウイル
ス感染関連のテーマ以外は考えられないと思います。なぜなら、
このウイルスの蔓延によって、経済も、外交も、医療も、ビジネ
スも、教育も根こそぎ変わろうとしているからです。そこで、以
下のテーマで書くことにします。当分は、ニュースと平行しなが
ら書くことになります。
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   「『コロナ後』の世界はどのように変貌を遂げるか」
     ─ 米中激変で、日本はどう対応すべきか ─
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 中国で原因不明の新型肺炎が発生したのは、2019年11月
頃といわれています。それに最初に気が付いたのは、34歳の李
文亮医師(眼科医)です。「ヘンな肺炎が流行っている」──彼
はそのことをSNSに発信したところ大拡散し、李医師は1月3
日に警察に呼び出され、「デマ拡散」で、訓戒処分を受けていま
す。ということは、党中央は、李医師よりも早くウイルスの感染
拡大を知っていたことになります。
 その証拠に中国は、正体のわからない肺炎が集団発生したこと
を2019年12月31日にWHOに報告しています。明らかに
1ヶ月以上遅らせて報告したことになります。そのとき、中国当
局は、次のようにWHOに報告しています。
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  人から人に感染するという明白な証拠は見つかっていない
                      ──中国当局
─────────────────────────────
 1月22日、WHO調査団が訪中していますが、このとき調査
団は、武漢において人から人に感染したという証拠はあるものの
完全に解明するには、さらなる調査が必要との見解を示していま
す。これもWHOとしてはきわめてぬるい対応です。1月下旬に
なって、テドロス事務局長と幹部3人が北京に飛んでいます。実
は、公式の招待を受けたのは午前7時半で、その日の午後8時に
は、飛行機に乗っていたという慌ただしさです。「至急来い!」
と呼ばれたのでしょう。そして、テドロス事務局長は1月28日
に習近平国家主席と会談しています。
 このときの会談では、データと生物学的資料を共有することを
とくに協議したといわれますが、それはあくまで表向きで、テド
ロス事務局長は習主席から「パンデミック宣言」は少し伸ばして
欲しいと要請されているはずです。習主席としては、低価格で、
医療用品を輸入するための時間を稼ぎたかったからです。
 なぜなら、1月に入ってから、中国は、マスクや防護服などの
輸出を禁止する一方で、それらの医療用品の輸入を猛烈に増やし
ています。お人好しの国、日本では、多くの企業や自治体、個人
が、マスクや防護服を中国に寄贈しています。そのとき、日本人
の多くは「マスクなんてどこでも買える」と考えていたのです。
 このことは、米国の国土安全保障省(DHS)が報告書にまと
めていますが、輸出規制がバレないように、数字をごまかし、貿
易データの公表をわざと遅らせて、輸出入の増減を隠していたの
です。このせいで、1月以降、日本でもあっという間にマスクが
店から消えたのです。中国においてマスクの現地生産している米
国の「3M」なども輸出規制措置に遭っています。
 このとき、中国共産党が、どのように動いていたかについて、
ジャーナリストの長谷川幸洋氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国共産党はどれほど組織だって買い占めに動いていたのか。
 中国福建省からの移住者が多いカナダの例を挙げよう。カナダ
の有力メディア、グローバル・ニュースは4月30日、買い占め
作戦を暴露する長文の調査報道記事をネットに掲載した。以下の
ようだ。「カナダの中国領事館が1月半ば、緊急指令を出した。
「武漢で発生した新型コロナウイルスはあまりに危険で、感染力
が強い。そのために、看護師や医師たちは防護用品を使い果たし
てしまった。彼らは医療用のN95マスクや防護服(PPE)を
必要としている。大至急、買い集めて、祖国に送れ」という内容
だった。直ちに在カナダ中国人を総動員した「買い占め大作戦」
が始まった。司令塔を務めたのは、バンクーバーとトロント、モ
ントリオールの中国領事館である。彼らは本国の「中央統一戦線
工作部(UFWD)」と連携して、中国人コミュニティに「N9
5マスクと[PPEをできる限り、買い集めよ」と指示した。U
FWDは、習近平国家主席に直結している政府の組織だ。
  ──長谷川幸洋氏/月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 ちょうどこのとき、多くの日本人は、中国の武漢の感染のひど
い状況をテレビで他人事のように見ていたのです。ただ、正月気
分が残る1月18日に屋形船でのクラスターが発生したことから
日本人も少し警戒をはじめたのですが、そのときにはあらゆるド
ラックストアーからマスクが消滅していたのです。
 WHOが、新型コロナウイルスを、パンデミック(世界的大流
行)に相当すると宣言したのは、実に3月11日のことです。W
HOは、その理由を次のように述べています。
─────────────────────────────
 過去2週間で中国以外での感染者数が13倍に増え、今後、さ
らに感染者や感染が確認される国の数が増えると予想される。
                ──WHO(世界保健機構)
─────────────────────────────
 中国とWHOの共同作戦に世界が騙されたのです。とくに米国
の感染状況はひどく、5月28日現在、感染者数は170万人、
死亡者数は10万人を超えています。すべてを知っている米国の
トランプ大統領は、中国に対してかんかんに怒っています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/001]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナを告発し罰せられた医師。死後に「処分は不当
  でした」と発表、その本当のワケは?
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   原因不明の肺炎の発生に警鐘を鳴らしたつもりが、逆に処
  分の対象になり、訓戒を受けた医師。後に自ら新型コロナウ
  イルスに感染し死亡したこの医師に対し、中国政府の調査チ
  ームが「処分は不当だった」と結論を出した。だが本当の狙
  いは、単に医師の名誉回復だけではなさそうだ。
   この医師とは武漢市中心医院の眼科医だった李文亮氏(享
  年34歳)李医師は、まだ中国政府が新型コロナウイルスに
  よる肺炎の発生を公式に認めていなかった去年12月30日
  の段階で「市場で7人のSARS(重症急性呼吸器症候群)
  感染が確認された」などの情報をSNS上のグループチャッ
  トに発信した。同僚の医師たちに防疫措置を採るよう注意喚
  起するのが目的だった。感謝されてしかるべき行為。しかし
  4日後の1月3日、李医師が受けたのは賞賛ではなく、地元
  警察からの呼び出しだった。「グループチャットに流したS
  ARSの情報は正しくなかった。今後は注意します」李医師
  は警察で反省させられた上、訓戒処分を受けた。
   李医師は、1月6日に眼科で82歳の患者を診察するが、
  この患者は後に新型コロナウイルスの感染により死亡する。
  李医師自身も10日から発熱の症状が出た。それから1か月
  を待たず、2月7日、李文亮医師は新型コロナウイルスによ
  る肺炎で死亡した。まだ34歳の若さにもかかわらず。
                  https://bit.ly/2AlHPk4
  ───────────────────────────

テドロス事務総長/習近平国家主席.jpg
テドロス事務総長/習近平国家主席
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2020年06月02日

●「中国は消防士のふりをする放火犯」(EJ第5258号)

 中国がまず狙いを定めたのはイタリアです。感染の爆発に医療
品不足で悩むイタリアに対して、中国は支援物資として大量のマ
スクを送り込んだのです。この中国のイタリア支援に関するダイ
ヤモンド・オンラインの記事があります。
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 3月12日、イタリア北部のロンバルディア州の空港に、中国
の医療チームが30トンの医療物資とともに到着した。この様子
は中国のテレビでも大々的に取り上げられて、「人類共通の枠組
み」で取り組んできた外交の成果だと自画自賛した。
 すでに2月以降、イタリアでは北部を中心に新型コロナウイル
ス感染が拡大して、深刻さを増していた。時を経るごとに死者が
激増。特に人工呼吸器などの医療機器が大幅に不足し、医療崩壊
が始まっていた。
 イタリア政府はすぐにEUに医療物資支援を求めたが、3月に
なってもそれに応える国はなかった。それどころかドイツが4日
にマスクなどの輸出を禁止。フランスも3日にマスクの政府管理
を始めて国境を閉鎖。イタリアはEUへの失望を隠さなかった。
 そんなときに、救いの手を差し伸べたのが中国だったわけであ
る。ロンバルディア州政府は中国の配慮に感謝の言葉を述べた。
 EU各国が中国への警戒感を強める中、EUの主要国でありな
がら、中国の国際投資政策「一帯一路」を受け入れたイタリアは
恩人でもある。最近はそのイタリアですら中国に警戒を見せ始め
ていたが、今回の速やかな対応はイタリア世論にも微妙な影響を
与えた。              https://bit.ly/2XFUiHz
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 イタリアにはこんな話もあるのです。中国の支援に対し、ルイ
ジ・ディマイオ外相は、李軍華イタリア大使に会って、感謝を伝
えたのですが、それだけでは収まらなかったのです。全国会議員
のもとに、イタリア語版の中国の宣伝誌が郵送され、議会として
中国への「感謝表明」を迫られたといいます。
 フランスに関してこんな情報もあります。2020年4月4日
に、米国のマーク・グリーン下院議員(共和党)が、FOXニュ
ースの番組で暴露したといわれています。既出の長谷川幸洋氏の
情報です。
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 中国の習近平国家主席は、フランスのエマニュエル・マクロン
大統領との電話会談で、中国がマスクを10億枚寄贈する見返り
に、華為技術(ファーウェイ)社製の第5世代移動通信システム
(5G)をフランスに導入するよう持ちかけた。FOXニュース
         ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
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 この報道によって、中国への非難が殺到したといいます。中仏
の両政府ともに、その事実を否定したものの、誰もがファーウェ
イの真の意図を見抜いていたのです。中国にとって5G敷設は世
界のIT覇権を握るための中核ですが、マスク外交はそれを進め
るため手段でもあったのです。『選択』/2020年5月号にも
次の記事が掲載されています。
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 米ウィスコンシン州上院のロジャー・ロス議長は2月末、中国
の在シカゴ総領事館から、突然、メールを受け取った。「中国の
ウイルスとの闘いを支持し、称える決議を、州議会で採択してほ
しい」という内容だ。無視したところ、13日後にまたメール。
議長は「バカ野郎」と返事を送った。同州議会は結局、「中国の
隠蔽」を糾弾する決議を採択した。
              ──『選択』/2020年5月号
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 2月の下旬のことですが、中国の王毅外相は、イタリアのディ
マイオ外相と電話会談をし、イタリアに対して、次のように呼び
かけています。
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    イタリアと健康シルクロードをともに築きたい
                 ──王毅中国外相
─────────────────────────────
 中国はEUの一角が崩せると考えて、膨大な量の医療物資の提
供と3次にわたる医療チームを送り込んでいます。ちなみに、中
国が医療チームを送り込んだ国は、次の12ヶ国です。
─────────────────────────────
      イラン        ロシア
      イラク        カザフスタン
      イタリア       ミャンマー
      セルビア       フィリピン
      カンボジア      ベネズエラ
      パキスタン      ラオス
               ──2020年4月13日現在
─────────────────────────────
 ここまでの中国の一連の行動を見ると、中国は「消防士のふり
をする放火犯」以外の何者でもないといえます。こういう中国の
振る舞いについて、EUの外相に当るボレル外交安全保障上級代
表は、次のように警告をしています。
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 中国は、自分たちが、米国と違って責任感があり、信頼できる
パートナーであるとしているが、我々は、情報戦や「気前のいい
政治」を使って、影響力を高めようとする地政学的な要素がある
ことに注意しなければならない。     ──ボレルEU外相
─────────────────────────────
 このような中国の動きに関して、世界中が非難の目を向けつつ
あります。とくに米国との関係は、今回のコロナ禍について中国
が責任を回避するメッセージを出すに及んで、抜き差しならない
状況に陥りつつあります。中国と米国は、一触即発の状況に陥り
つつあります。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/002]

≪画像および関連情報≫
 ●イタリア支援でEUにくさびを打ち込んだ中国/マスク外交
  は中国の本領「トロイの木馬作戦」/みずほ銀行/唐鎌大輔氏
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   欧州全域が新型コロナウィルス対応に苦慮する中、その隙
  を突くような中国の鋭い外交が展開されている。中長期的に
  欧州が抱える地政学リスクを考察するうえで、大変に重要な
  意味を持つ動きと見られるので簡単に整理しておきたい。
   過去、中国はギリシャの財政的困窮につけ込んで同国の港
  を買収し、近年はこれを足がかりにしてEU(欧州連合)域
  内に複数の戦略投資を行ってきた。中国は「一帯一路」構想
  の下、欧州各国の要衝で多くの投資を展開しており、一部で
  はEUの内側からの崩壊を狙う「トロイの木馬」作戦とまで
  呼ばれている。相手の弱みを見つけるや否や、機敏に攻め込
  む外交姿勢は中国の本領である。こうした文脈で、中国から
  イタリアへの人道支援は注目される。
   感染者の爆発的拡大に対応が追いつかず、いわゆる医療崩
  壊の状態に陥っているイタリアでは、マスクを筆頭とする医
  療物資支援をEUに求めてきた。しかし、イタリア当局者か
  ら「EUのどの国も応じてくれなかった(マッサーリ駐EU
  大使)」との不満が漏れるように、混乱のさなかでEUは連
  帯感を示すには至っていない。逆にフランスやドイツが国外
  へのマスク輸出を抑止する政策を行って、これをフォンデア
  ライエン欧州委員長が「一方的な行動は良くない」といさめ
  る体たらくである。       https://bit.ly/36L3qyt
  ───────────────────────────

dhimaio/itariagaishou/oukichuugokugaishou.jpg
ディマイオ・イタリア外相/王毅中国外相
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2020年06月03日

●「コロナ禍は中国の高等戦略なのか」(EJ第5259号)

 5月29日のことです。トランプ米大統領は、対中政策を発表
しています。ポイントは2つあります。
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     1.WHO(世界保健機関)から脱退する
     2.香港への優遇措置を見直し、撤廃する
─────────────────────────────
 トランプ大統領の米国は遂にここまでやるかという感じです。
「2」については改めて述べるとして、「1」については、5月
18日に「WHOは中国に対し、新型コロナ発生源の独立調査を
公に求めなかった」とし、組織運営に関し、30日以内に本質的
な改善が見られなければ、現在暫定的に実施している「資金拠出
停止を恒久化する」と警告するとともに、WHO脱退の可能性も
示唆していたのです。
 しかし、「30日以内」として日限を切っているにもかかわら
ず、たった12日後のWHO脱退通告です。中国が香港への統制
を強める「香港国家安全法」の導入を決めたことで、まとめて対
中政策を発表したものと思われます。かなり、乱暴なことの決め
方です。WHOとしても、トランプ大統領の要請に対して、どう
対応していいかわからないでいたものと思われます。何しろ米国
は、WHOに対し、年間4億5千万ドルもの資金を拠出している
超大国です。脱退されると、WHOにとっては、その影響力にお
いても、資金的にも大問題になります。
 どうしてこのようなことになったのでしょうか。
 その背景的事実として認識しておくべきことがあります。それ
は、現在、習近平国家主席と中国共産党指導部が、数々の難問を
抱えていることです。例えば、香港での激しい抗議活動、独立を
志向する蔡英文台湾政府の再選、中国のイスラム教徒抑圧の暴露
と批判、そして、なかでも最も影響が大きいのは、米国トランプ
政権による厳しい貿易政策による中国経済のつまずきなどであり
これによる習近平主席への批判や反対意見が、共産党内で高まり
つつあることです。まさにこういうときに、新型コロナウイルス
感染拡大が起きたのです。
 こういう状況において、トランプ大統領は、CIA(中央情報
局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)に命じ
て、中国が新型コロナウイルス感染症に責任があるかどうかを知
るためのあらゆる情報を調べ上げるよう指示しています。
 こういう情報機関の政治利用に関して、元CIA高官3人が、
米国の外交専門誌『フォーリン・ポリシー』に、やや批判的なレ
ポートを共同執筆しています。
─────────────────────────────
 アメリカがパンデミックに直面している現状において、こうし
た政治化が行われていること自体が特に懸念される。情報機関に
問われている重要な質問事項――新型コロナウイルスは自然界の
ものか、それとも中国の研究室から流出したものか?中国政府は
伝染病の範囲と規模をどの程度事実を曲げて述べていたか?――
への回答は、特に中国に関して、アメリカの安全保障政策の将来
に多大な影響を与えることになるであろう。
 こうした質問に対してトランプ大統領が求めている回答は知っ
ている。われわれが分からないのは、アメリカの情報機関でキャ
リアを積んでいる分析官が、真実が分かったときに、その真実を
語ることが許されるのかだ。     https://bit.ly/2ZOZcol
─────────────────────────────
 この調査結果がどのようなものであったかについてはわからな
いが、当初、トランプ大統領と側近補佐官たちは、今回の新型コ
ロナウイルスのパンデミックの原因について、ウイルスが中国武
漢のウイルス研究所から誤って流出したものの、その事実を隠蔽
し、時間稼ぎをしたと中国政府を非難しようとしていたのです。
しかし、最近では非難の度合いを一段と高めて、中国政府が故意
にこのウイルスを世界に拡散させたという大胆な告発に動いてい
るのです。
 このシナリオは、米国の保守系のシンクタンクである「ハドソ
ン研究所」の上級副社長、ルイス・リビー氏が、4月29日に発
刊された保守系雑誌『ナショナル・レビュー』に次のように書い
ています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが主に中国国内で猛威を振るっている限り
中国経済の成長だけを妨げ、中国政府だけが汚名を被る事態を招
くこととなる。習近平中国国家主席にとっては困難が増し、悪夢
のような展開が待っていた。その間ずっと、世界経済は予想どお
り飛躍し、中国から顧客を奪い、中国が長い間求めている栄光を
横取りするかに見えた。しかし、パンデミックは中国にとって僥
倖となる可能性も持っていた。新型コロナウイルスが蔓延すれば
中国政権内部の悩みは拡散し、また一方で、新型コロナウイルス
感染症で経済が弱体化した国々は、中国製品に対する依存度を高
めざるを得なくなる。トランプ大統領の再選はもはや確実ではな
くなり、アメリカ経済の弱体化は、アメリカの国防支出に影響を
与えるに違いない。         https://bit.ly/2Atk5KQ
─────────────────────────────
 ルイス・リビー氏は恐ろしいことをいっています。中国政府は
わざと数万人の旅行者を新型コロナウイルスに感染させ、欧米各
国に送り込んで感染を拡大させたというのです。しかし、本当に
中国は、そこまでやるでしょうか。
 このルイス・リビーなる人物は、ブッシュ(子)政権のチェイ
ニー元副大統領のかつての副大統領補佐官です。イラクが大量破
壊兵器を持っており、911のテロ攻撃に関わっているというシ
ナリオを書いて、イラク戦争に導いた人物です。2007年に偽
証罪と司法妨害の有罪判決を受けていましたが、2018年4月
にトランプ大統領によって恩赦を受けています。トランプ大統領
は、本当にそういう人の調査結果を信じているのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/003]

≪画像および関連情報≫
 ●特別リポート:なぜブラジルは「コロナ感染大国」に転落
  したのか
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  [サンパウロ/リオデジャネイロ/26日/ロイター]─3
  月中旬、ブラジルは感染の足音が聞こえ始めていた新型コロ
  ナウイルスに先制攻撃を加えた。保健省はクルーズ船の運航
  停止を命じ、地方自治体に、大規模イベントの中止を要請し
  た。海外からの旅行者には1週間の自主隔離を呼びかけた。
  世界保健機構(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を
  宣言してからわずか2日後、3月13日のことだった。この
  時点でブラジルでは新型コロナウイルスによる死者は1人も
  報告されていなかった。公衆衛生当局は、先手先手を打とう
  としているように見えた。
   だが、それから24時間も経たないうちに、保健省は各地
  の自治体から「批判と提言」があったとして、自らの勧告を
  骨抜きにしてしまった。当時の状況に詳しい関係者4人によ
  ると、この変化の背景にはボルソナロ大統領の首席補佐官室
  の介入があったという。
   「軌道修正は圧力によるものだ」と、保健省の免疫・感染
  症局長だった疫学者ジュリオ・クロダ氏は語る。当時、この
  方針転換が関心を集めることはあまりなかった。しかし、こ
  の関係者4によると、ブラジル政府の危機対応の転機になっ
  た。ウイルス対応の主導権は、公衆衛生に責任を持つ保健省
  から、「カーサ・シビル」と呼ばれる大統領首席補佐官室へ
  と移っていたという。同室を率いるのは、ウォルター・スー
  ザ・ブラガ・ネット陸軍大将である。
                  https://bit.ly/2BcI9lG
  ───────────────────────────

shuukinpeikokkashuseki/toranpudaitouryou.jpg
習近平国家主席/トランプ大統領.
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2020年06月04日

●「ウイルスは武漢研究所からの流出」(EJ第5260号)

 重要なのは、中国の党中央が新型コロナウイルスの発生をどの
時点で知ったかです。今のところ2019年12月の後半という
ことになっていますが、もっと以前から知っていたという情報も
あります。WHOに対しては、「正体不明の肺炎の発生」を12
月31日に報告していることは既に述べた通りです。
 このウイルスは、「中国の生物兵器である」という情報がネッ
トなどで流布されていますが、これといった証拠もなく、いずれ
も信用できるレベルの情報とは思えない、いわゆる「陰謀論」の
類いといえます。中国が現在の時点で、新型コロナウイルスを意
図的にばら撒くメリットがないからです。
 しかし、この手の噂が消えないのには、武漢には次の2つのウ
イルスの研究所があり、そこから流出したのではないかと疑われ
ているのです。
─────────────────────────────
      1.中国科学院・武漢ウイルス研究所
      2.   武漢疾病管理予防センター
─────────────────────────────
 当初感染場所とされたのは武漢の海鮮市場です。上記の2つの
ウイルス研究所と海鮮市場との距離は、武漢ウイルス研究所から
は12キロメートル、武漢疾病管理予防センターからは、280
メートルしか離れていないのです。
 それでは、なぜ、これらのウイルス研究所からの流出説が出て
きているのでしょうか。トランプ大統領もそれなりの根拠に基づ
いてその流出説を疑っています。
 中国科学院・武漢ウイルス研究所は、国際基準で危険度が最も
高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」
に位置付けられています。しかし、この研究施設について、英科
学誌『ネイチャー』が、2017年2月に「同研究施設は検体の
管理が杜撰であり、病原体が流出する恐れがある」という記事に
おいて警告を発しています。
 また、米紙ワシントン・タイムズ(電子版)は、今年1月26
日、この施設は中国の生物兵器計画に関係し「新型コロナウイル
スが流出した可能性がある」というイスラエル軍元関係者の分析
を伝えています。中国メディアによると、インドの研究者も「人
がウイルスをつくった」という推論をネット上に投稿しているな
ど、この研究施設についてはその管理の不備を伝える情報がいく
つも出ています。
 まだあります。2018年に外交官の肩書を持つCIAの科学
専門官も何度も武漢ウイルス研究所を視察し、その管理体制の問
題点などについて警告する外交公電を送っています。この件につ
き、もとCIA長官だったポンペオ国務長官はかなり重要な情報
を握っているようです。したがって、新型コロナウイルスがこの
研究所から流出したとする疑いは相当濃厚であるといえます。
 2020年4月17日のことです。トランプ米大統領は、「ウ
イルスが武漢P4研究所から流出したという情報が広く流れてい
るが、これについてどう考えるか」という記者の質問に対して、
次のように答えています。
─────────────────────────────
 我々もその点について関心をもっている。いま大勢の人が調べ
ている。武漢の研究所からのウイルス流出説は、理にかなってい
る。中国はある種のコウモリがウイルスの発生源との立場をとっ
ているが、そのコウモリは武漢に生息していない。市内の海鮮市
場でも売られていなかった。このコウモリの生息域は、武漢から
60キロ以上も離れている。したがって、ウイルスの自然発生は
あり得ない。             ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 トランプ大統領が「コウモリ」に言及したことは、非常に意味
があります。コウモリに由来するウイルスによる感染には次の3
つがあり、今回の新型コロナウイルスにも関係があるからです。
─────────────────────────────
 1.エボラ出血熱 ・・・・・・・・・・ 1976年以降
 2.SARS(重症性呼吸器症候群)・・ 2002年以降
 3.MARS (中東呼吸器症候群)・・ 2012年以降
─────────────────────────────
 こういう米国の主張について、中国の趙立堅報道官は、次のよ
うに反論しています。
─────────────────────────────
 WHOの事務局長も、ウイルスが武漢研究所でつくられたこと
を示す証拠はないと繰り返し、発表していることも念のため、申
し上げる。また、世界の多くの著名な医学者が、研究所から流出
したという説は、科学的根拠に乏しいと考えている。
                     ──趙立堅報道官
─────────────────────────────
 もうひとつ、そのさなかに、この問題に関して中国政府によっ
て消されたという論文があります。この論文は、広東省広州市の
華南理工大学・生物科学与工程学院の肖波濤(シャオ・ボタオ)
教授と生物学に通じる研究者が執筆したとする論文です。
 この論文は、2020年2月6日に研究者向けサイトにアップ
されましたが、ほどなくして中国政府によって削除され、肖波濤
教授ら2人の行方がわからなくなってしまっています。論文だけ
でなく、研究者の口をも封じたと思われます。
 しかし、最近はウェブサイトから削除しても復元できる技術が
進んでおり、EJはその全文を入手しているす。以下はその論文
のことを伝えているレポートです。ご一読ください。
─────────────────────────────
   ◎新型ウイルスの発生源は武漢の研究所のコウモリ
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2MgW1xI
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/004]

≪画像および関連情報≫
 ●「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする
  論文が登場
  ───────────────────────────
   パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナ
  ウイルスについて、実験室で生まれた可能性も排除すべきで
  ないとする論文が発表された。アメリカのトランプ政権高官
  や情報機関は新型コロナウイルスの発生源が中国の武漢ウイ
  ルス研究所であると主張しているが、中国はそうした見方を
  陰謀論だと一蹴している。
   専門家はおしなべて中国の立場を支持しており、新型コロ
  ナウイルスは自然に(たぶん武漢の海鮮市場で)人間への感
  染力を手にしたと考えている。新型コロナウイルスが遺伝子
  操作を受けていないことを示す証拠も、そうした見方を補強
  している。
   本誌は複数の専門家に依頼し、問題の論文に目を通しても
  らった。そして得られた評価は、「この分析に使われた手法
  は有効性が証明されておらず、主張を裏付けるようなさらな
  る研究が出てくるまでは結論を急ぐべきではない」というも
  のだった。問題の論文はブリティッシュコロンビア大学やマ
  サチューセッツ工科大学、ハーバード大学の研究者の共著で
  コールドスプリングハーバー研究所が主催するウェブサイト
  「バイオアーカイブ」で発表された。査読は受けていない。
  この論文が新型コロナウイルスが何らかの実験室で生まれた
  可能性(ごく小さな可能性かもしれないが)を主張する根拠
  は、自然から生まれたものにしては「人間によく適応してい
  る」からだという。       https://bit.ly/2zPJnmw
  ───────────────────────────

趙立堅中国報道官.jpg
趙立堅中国報道官
 
posted by 平野 浩 at 08:47| Comment(1) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月05日

●「消去論文には何が書いてあったか」(EJ第5261号)

 昨日のEJの最後でお伝えした中国政府によって消された論文
は、インターネット上で削除されたコンテンツを回復させるツー
ル「ウェイバック・マシーン」で読むことができます。論文は英
語で記述されています。
─────────────────────────────
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2Y91ZGz
─────────────────────────────
 この論文について、ジャーナリストの時任兼作氏がその要約を
『WiLL』7月特大号に要約を掲載しています。EJでは、そ
の要約をさらに要約し、以下に説明つきで、掲載することにしま
す。論文は、新型コロナウイルスの発生源について、次の3つに
絞って検証しています。
─────────────────────────────
      1.      武漢海鮮市場発生説
      2.   武漢疾病管理予防センター
      3.中国科学院・武漢ウイルス研究所
─────────────────────────────
 まず、論文は、「1」の「武漢海鮮市場発生説」については、
可能性が低いとして、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが中国で伝染病を発生させた。2020年
2月6日までに564人の死者を含め、2万8千60人が感染し
たことが検査で確認されている。
 今週の(学術誌)『ネイチャー』の解説によると、患者から検
出されたゲノム配列の96%あるいは89%が中型コウモリ由来
のZC45型コロナウイルスと一致したという。(中略)
 ZC45型コロナウイルスを運ぶコウモリは、雲南省または浙
江省で発見されたが、どちらも海鮮市場から900キロ以上離れ
ている。(そもそも)コウモリは通常、洞窟や森に生息している
ものだ。だが、海鮮市場は人口1500万人の大都市である武漢
の住宅密集地区にある。コウモリが市場まで飛んでくる可能性も
非常に低い。(中略)自治体の報告と31人の住民および28人
の訪問者の証言によると、コウモリは食料源だったことはなく、
市場で取引されてもいなかったという。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 続いて論文は、発生源の可能性として、海鮮市場周辺をスクリ
ーニングした結果、海鮮市場から280メートル以内の距離にあ
る「2」の「武漢疾病管理予防センター」(WHCDC)が発生
源の可能性があるとして、次のように書いています。
─────────────────────────────
 武漢疾病管理予防センター(WHCDC)は、研究の目的で所
内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収
集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型
コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450
匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。収集の
専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
 さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが
2017年と2019年に全国的な新聞や、ウェブサイトなどで
報じられている。(中略)
 捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよ
びRNAの抽出とシーケンシンク(塩基配列の解明)のために採
取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供
給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほど
のところに存在したのである。またWHCDCは、今回の伝染病
流行の期間中、最初に感染した医者グループが勤務するユニオン
病院に隣接してもいた。確かなことは、今後の研究を待つ必要が
あるが、ウイルスが研究所の周辺に漏れ、初期の患者を汚染した
としてもおかしくない。     ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 最後に論文は、海鮮市場から約12キロ離れている「3」の中
国科学院・武漢ウイルス研究所からの発生の可能性について、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 この研究所は、中国のキクガシラコウモリが、2002年から
2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARSコ
ロナウイルス)の発生源であるとの報告を行っている。
 SARSコロナウイルスの逆遺伝学システムを用いてキメラウ
イルス(異なる遺伝子情報を同一個体内に混在させたウイルス)
を発生させるプロジェクトに参加した主任研究者は、ヒトに伝染
する可能性について報告している。憶測ではあるが、はっきりと
言えば、SARSコロナウイルスまたはその派生物が研究所から
漏れたかもしれないということだ。
 要するに、誰かが新型コロナウイルスの変異と関係していたの
である。武漢にある研究所は、自然発生的な遺伝子組み換えや中
間宿主の発生源であっただけでなく、おそらく、猛威を振るうコ
ロナウイルスの発生源でもあったのだ。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 この論文が相当信憑性のあるものであることは、中国政府が直
ちにこの論文を削除し、執筆者の2人の学者の行方が分からない
ということでわかります。ポンペオ米国務長官は、5月3日、新
型コロナウイルスの発生源が、武漢の研究所であるとする「かな
りの量の証拠」があると発言しています。
 同じ武漢に2つもウイルス研究所があるのですから、疑われて
も当然といえます。だからこそ、中国政府は、何としてもそれか
ら目をそらさせるために、武漢の海鮮市場が発生源であることを
PRしたものと思われます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/005]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、中国・武漢ウイルス研究所が発生源「かなりの
  証拠」=米ポンペオ国務長官
  ───────────────────────────
   ポンペオ米国務長官は5月3日、新型コロナウイルスにつ
  き、中国の研究所が発生源である「かなりの量の証拠」があ
  ると述べた。ただ、人為的に作り出されたものではないとの
  米情報機関の結論に異議は唱えなかった。長官は、ABCの
  番組で「このウイルスが武漢の研究所から出たことを示すか
  なりの量の証拠がある」と語った。
   また「最も優秀な専門家らはこれまでのところ、(新型ウ
  イルスが)人為的なものだと考えているようだ。現時点でそ
  れを信じない理由はない」と述べた。ただ、米情報機関の結
  論と異なることを指摘されると、「情報機関の見解を認識し
  ている。彼らが、間違っていると考える理由はない」とも述
  べた。米国家情報長官室(ODNI)は先月4月30日、新
  型コロナウイルスについて「人造でも遺伝子操作されたもの
  でもないという科学的な総意に同意する」との認識を表明し
  た。国務省は、ポンペオ長官の発言について説明を求めた取
  材に現時点で応じていない。中国共産党機関紙・人民日報傘
  下の環球時報は社説で、同長官の発言は「はったり」だとし
  長官は武漢の研究所が発生源である証拠を持っていないと指
  摘。米国に証拠を示すよう求めた。「トランプ政権は引き続
  き、異例の宣伝工作を展開するとともに、COVID−19
  (新型コロナウイルス感染症)との闘いにおける世界的な取
  り組みを妨げようとしている」と批判した。
                   https://bit.ly/3gL7O5f
  ───────────────────────────

中国科学院・武漢ウイルス研究所.jpg 
 
中国科学院・武漢ウイルス研究所



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2020年06月08日

●「19年12月10日のある出来事」(EJ第5262号)

 新型コロナウイルスの感染が始まった場所は、間違いなく武漢
です。中国政府は、米軍がウイルスを武漢に持ち込んだというあ
り得ない説を唱えていますが、感染元は武漢です。これだけは、
動かしようのない事実です。
 そして、その武漢には、2つのウイルス研究所があります。し
かもその1つは「バイオセーフティレベル4」(P4研究所)と
いう国際基準をクリアした中国唯一の研究所です。ちなみに、季
節性インフルエンザはレベル2(P2)、結核や狂犬病はレベル
3(P3)、そして、エボラ出血熱などの最もリスクの高いもの
はレベル4(P4)ということになります。人から人への感染力
の強い新型コロナウイルスもこのレベルに該当します。
 こういう状況が揃えば、今回のウイルスがそのP4研究所から
流出したのではないかと疑うことはごく自然なことです。まして
武漢P4研究所の検体の管理には問題があるという指摘が以前か
ら出ていたのです。
 この武漢P4研究所に関してこんな話があります。2019年
12月10日のことです。習近平主席が鋭意進める「一帯一路計
画」の一環である長江(揚子江)に関わる巨大プロジェクトがあ
り、昨年12月の上旬から一週間の予定で、中国内陸部の揚子江
一帯を視察する国際的専門家集団のツァーがあったのです。
 2019年12月10日、午前9時、その一行が地方の財界幹
部の案内で、武漢市内の中心部にある長江科学技術院にやってき
たのです。このツァーのスケジュールのひとつです。この同じブ
ロックのなかに「中国科学技術院P4研究所」があります。
 ツァーの一行は、中央本部棟の3階の応接室に通され、予定で
は、しかるべき科学院幹部が出迎える予定になっていたのです。
しかし、待てど暮らせどその幹部が登場しない。慌てた案内の財
界幹部は、科学技術院の職員に、しかるべき人物を連れてくるよ
うに強く求めたのです。
 そこに登場したのは、スカートとブラウスの上にジャケットを
羽織った女性で、名刺交換をしたところ、その名刺には次の記載
があったといいます。
─────────────────────────────
          長江科学技術院教授
                石正麗
─────────────────────────────
 一行はこの石正麗教授の案内で、技術院のなかをみせてもらっ
ています。しかし、技術院のなかは、ガランとしてほとんど人影
はなかったそうです。ただ、石正麗教授が「これは私のラボラト
リです」と紹介した部屋には多くの研究員がおり、何らかの実験
をしていたそうです。そのとき、自分は、SARSやMERSの
ような人類の敵になるウイルスの研究をやっているとその職務を
具体的に説明しています。
 以前にこの技術院を訪問したことのある人の話によると、技術
院の敷地内は乗用車や業者のトラックが頻繁に出入りし、技術院
のなかは、白衣の研究者が多く行き来する活気に満ちた場所だっ
たといいます。ところが、その日は技術院のなかにはほとんど人
はおらず、その後の武漢の市中案内でも、いつもなら必ず目にす
るはずの市民はほとんどいなかったというのです。
 この話は、月刊『Haneda』/2020年7月青葉号の、フリー
ジャーナリスト山口敬之氏のレポートに出ていたものです。この
日の技術院の様子は今にして考えると、重要な意味をもってくる
と思います。この日の技術院について、山口敬之氏は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 12月10日の武漢で一体何が起きていたのか。一行の1人は
こう類推する。武漢P4研究所の周辺で何らかの事故があって、
公的機関により一帯は「封鎖」もしくは「立入制限措置」が取ら
れていたのではないか。
 しかも、武漢在住の財界幹部が科学院幹部の不在に激怒したこ
とからみて、「封鎖情報」はごく一部の関係者だけに知らされ、
ほとんどの武漢市民には告知されていなかったのではないか。
 これらはあくまで類推であり、真相は闇のなかだが、ひとつだ
けはっきりしていることがある。他の全ての研究者や業者が去り
閑散とした研究施設で、ウイルス研究の専門家である石正麗のチ
ームだけが、何らかの研究を続けていたという事実だ。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 この話が本当であるとすると、昨年の10月以降、何らかの事
故によって新型コロナウイルスが研究所から流出し、一部の関係
者には技術院からの隔離措置が取られ、石正麗教授のチームだけ
が分析を行っていたのではないかといわれています。12月10
日の時点で、技術院に人影がなかったのは、それが原因と考えら
れます。
 こういう情報もあります。米国のNBCが米政府当局者の話
として、次の情報を報道しています。
─────────────────────────────
 1019年10月7日から3週間、武漢P4研究所の高セキュ
リティ区域で、携帯電話の通信が完全に途絶えていた。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 仮に10月の時点でウイルスが流出する事故があったとすれば
今年1月以降の武漢地域での感染爆発は整合性がとれます。中国
がWHOに「原因不明の肺炎の発生」を伝えたのが12月31日
であり、翌日の1月1日に海鮮市場を閉鎖していますが、それか
ら感染が急拡大するにはスピードが早過ぎるのです。ちなみに、
1月5日時点での感染者は59人、うち7人が重症、9日に初の
死者が出たことになっています。やはり、中国は意図的にヒト対
ヒト感染の情報をかなり長期間隠蔽していたことになります。こ
れは問題です。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/006]

≪画像および関連情報≫
 ●新型ウイルスの起源追跡 中国のコウモリ洞窟探る
  日経サイエンス
  ───────────────────────────
   今回の新型コロナウイルスはどこから来たのか?
   中国・武漢ウイルス研究所の石正麗(シー・ジェンリー)
  氏らは、中国南部・雲南省のキクガシラコウモリで同チーム
  が以前に発見していたコロナウイルスと新型ウイルスのゲノ
  ム配列が96%同じであることを突き止め、2月初めに学術
  誌に報告した。短期間で起源を特定できたのは、石らが長年
  にわたって動物が保有するウイルスを追跡してきたからだ。
  人間と野生動物が接触する機会が増え、アウトブレーク(集
  団感染)が起こりやすくなっている。
   野生動物が自然の保有宿主となっているウイルスが変異し
  人間に感染するケースが知られている。2002年に重症急
  性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたコロナウイルス
  もコウモリが保有宿主だった。これを特定したのが、非営利
  研究機関エコヘルス・アライアンス(本部ニューヨーク)と
  石らの国際チームだ。石はウイルス学者だが、中国各地のコ
  ウモリ洞窟を調査してきたことから、研究仲間からは親しみ
  を込めて「中国のバットウーマン」と呼ばれている。保有宿
  主を突き止めるには野生動物の血液や糞を採集し、ウイルス
  の遺伝物質(RNAやDNA)が含まれているかどうかを解
  析する。人里離れたコウモリ洞窟を踏査してこれを実行する
  のはたいへんな作業だ。石らはSARSウイルスの起源を追
  跡するなかで注目した雲南省の洞窟を徹底的に調べ、遺伝的
  に非常に多様な数百種のコウモリ媒介ウイルスを発見した。
                  https://bit.ly/3eTyn6t
  ───────────────────────────

石正麗研究員.jpg
石正麗研究員

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2020年06月09日

●「石正麗とはどのような学者なのか」(EJ第5263号)

 今回の新型コロナウイルスの中心人物とされる石正麗氏とは、
どういう人物でしょうか。
 石正麗氏は、中国の武漢の大学で生物学を学び、2000年に
フランスのモンペリエ大学でウィルス学の博士号を取得していま
す。2002〜2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)
流行後の2006年、オーストラリア連邦科学産業研究機構(C
SIRO)の管轄下のオーストラリア疾病予防センター(ACD
P)で3ヶ月間、訪問学者として「SARSとコウモリの関係」
を研究しています。そして、講演で石正麗氏は、いつも次のこと
を警告していたそうです。
─────────────────────────────
 野生動物の商取引を規制するなど、その危険性に細心の注意
 が払われないと、各種コロナウイルスがSARSと同じよう
 に猛威を振るうことになる。        ──石正麗氏
─────────────────────────────
 石生麗氏は、SARSやMARSなどのコウモリ由来のウイル
ス研究の第一人者であり、今回の新型コロナウイルスは、その遺
伝子コードが中国特有のキクガシラコウモリという小型コードに
酷似しているというのです。
 なお、MARSは「中東呼吸器症候群」といわれ、あるテレビ
局ではその感染源をラクダを正解とするクイズ問題を出していま
したが、これはコウモリからラクダに感染したもので、元はコウ
モリが正しいのです。このように、石正麗氏は、そのコウモリ由
来のコロナウイルス研究の専門家であり、武漢P4研究所にラボ
ラトリを持つウイルス学者です。したがって、今回の新型コロナ
ウイルスも武漢P4研究所から流出したのではないかと噂され、
そういう意味で石正麗氏はまさに渦中の学者であるといえます。
 4月末頃のことですが、この石正麗氏について、次のような気
になる情報がネット上を駆け巡ったのです。
─────────────────────────────
 石正麗氏は、1000件近い秘密研究文書を持ち出して、家族
と共に欧州に逃亡し、フランスの米国大使館に亡命を申請した。
─────────────────────────────
 ありそうな話ですが、当のフランス米国大使館からのメッセー
ジもなく、これはどうやら本当の話ではないようです。この亡命
説について、中国共産党機関紙・人民日報系「環境時報」は、石
正麗氏が「微信/ウィーチャット」上で、友人に向けて書いたと
する次の文章を掲載し、この情報を否定しています。
─────────────────────────────
 私(石正麗)と私の家族はみな元気です。いかに多くの困難が
あろうと『叛逃(国に背いて亡命すること)』のデマにあるよう
な状況にはなりえない。我々は何も間違ったことはしていない。
我々の心の中には、科学に対する揺るぎない信念がある。
                  https://bit.ly/3h1hZTC ─────────────────────────────
 しかし、現在、石正麗氏は行方不明です。「環境時報」が伝え
た上記の石正麗氏のコメントの報道は、本人が友人に対して発信
したコメントを紹介しているだけで、彼女が中国の国民に対して
話している言葉ではないのです。亡命がウソであるならば、中国
政府は本人をテレビに出して、堂々と否定させるべきです。
 まして石正麗氏によると、今回の新型コロナウイルスは、彼女
のチームが、2013年に雲南省で採取したサンプルと96%一
致しているそうであり、世界中のウイルス学者が石正麗氏の意見
を求めています。もし、中国政府が石正麗氏の口を封じているの
であるとすると、それこそ完全な情報隠蔽です。
 英語圏5ヶ国(米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュー
ジーランド)による最強の諜報ネットワークである「ファイブ・
アイズ」が、目下石正麗氏の行方に関して調査をしているという
情報があります。中国はWHOと組んで、明らかに事実を隠蔽し
ている疑いがあるからです。
 ことの経緯から考えて、トランプ米政権がいっているように、
今回の新型コロナウイルスは、武漢P4研究所から間違って流出
したものと考えられます。しかも、それは早ければ、10月後半
か、遅くても11月には起こっていたのではないかと考えられる
のです。もし、中国がWHOに報告した12月31日であるとす
ると、その後の武漢での感染拡大のスピートがあまりにも早過ぎ
るからです。
 実際に武漢P4研究所では、今回のウイルスと96%一致する
ウイルスが存在しており、それが何らかの事故で流出してしまっ
たと考えられます。そうすると、その責任者は、石正麗氏という
ことになります。そのカギを握る石正麗氏の行方は、現在のとこ
ろわかっていないのです。
 頻繁に中国に滞在し、中国各地方の人口動態や社会状況に詳し
い米国人学者のスティーブン・モシャー氏は、今回のウイルス流
出について、ニューヨークの有力新聞「ニューヨーク・ポスト」
2020年2月21日に次の記事を書いています。
─────────────────────────────
 人民解放軍の高度ウイルス使用の生物戦争の最高権威で細菌学
者の陳薇少将が1月に武漢へ派遣された。陳少将は軍内部でこれ
までSARS(重症急性呼吸器症候群)やエボラ熱、炭素病はじ
め、コロナウイルスの研究をしており、武漢の生物安全実験室と
の関係が深い。中国当局は武漢の海鮮物市場からコロナウイルス
が発生したという説を流しているが、当初の感染者たちはいずれ
も同市場に足を踏み入れたことがなかった。同市場で売買された
コウモリが発生源という説もあるが、この市場では当時、コウモ
リは売られていなかった。          ──古森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
       非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/007]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ“武漢研究所流出説”に複数の状況証拠/トラン
  プ政権は動かぬ証拠を示せるか?       木村太郎氏
  ───────────────────────────
   「動かぬ証拠」を示すのは、難しいとは思うが、「状況証
  拠」ならば既にいくつか明らかにされている。「武漢研究所
  の危険を警告する電報が国務省へ送られていた」(ワシント
  ン・ポスト紙電子版4月14日)
   同記事によれば、米国政府は、2018年1月以来、北京
  駐在のリック・スウィツアー参事官らの視察団を同研究所に
  派遣して実情を視察させていた。その結果、視察団は、同研
  究所の運営に問題があることを警告する報告を「取扱注意電
  報」として国務省に送っていた。
   「武漢ウイルス研究所では、コウモリから採取したコロナ
  ウイルスがヒトに感染し、SARSの時のような感染拡大を
  招く恐れがあることを発見していた」報告はこう伝え、さら
  に研究所の安全対策についてこうも述べていた。
   「同研究所の科学者たちとの交流で、同研究所にはウイル
  ス流出を防止するために必要な熟達した技術者や調査官が決
  定的に不足していることが分かった」
   この警告が中国側に伝えられたかどうかは定かではないが
  新型コロナウイルスの汚染が拡大した2020年2月16日
  中国共産党の英字紙「グローバル・タイムズ」電子版に次の
  ような記事が掲載された。「ウイルス研究所の疫学的運営の
  抜け穴を修正するためのガイドラインが発表された」
            https://www.fnn.jp/articles/-/39936
  ───────────────────────────

武漢P4研究所.jpg
武漢P4研究所.
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2020年06月10日

●「テドロス事務局長は何をやったか」(EJ第5264号)

 トランプ米大統領は、「WHO(世界保健機関)は中国寄り」
と批判し、WHO脱退を宣言しています。WHOが中国寄りとい
うことは、現職のテドロス・アダノム事務局長が中国寄りの姿勢
ということになります。WHO事務局長の権限はそれほど大きい
のです。テドロス事務局長は一体何をやったのでしょうか。
 テドロス事務局長がパンデミック宣言をしたのは、2020年
3月11日のことです。しかし、これは本当の意味のパンデミッ
ク宣言ではないという識者がいます。国際政治評論家で、翻訳家
の白川司氏です。まず、WHOのパンデミック宣言を伝える日経
電子版の記事をご覧ください。
─────────────────────────────
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月11日、世
界で感染が広がる新型コロナウイルスについて「パンデミック」
とみなせると表明した。WHOがパンデミックと認定したのは、
2009年に流行した新型インフルエンザ以来11年ぶり。中国
以外での感染ペースが加速する現状に強い懸念を示し、各国に対
策の強化を促した。         ──日経電子版記事より
─────────────────────────────
 確かにテドロス事務局長は「パンデミックとみなせる」といっ
ているだけです。実際に事務局長は、正確には次のように述べて
います。以下は、白川司氏の分析にしたがって書きます。
─────────────────────────────
 過去2週間、中国以外で、新型コロナウイルスによる肺炎の患
者数は13倍になっており、ウイルスの上陸国は3倍になってい
る。114カ国に11万8000人以上の患者がおり、4291
人が亡くなった。それゆえ、私たちはCOVID−19がパンデ
ミックにあるとみなしうると評価した。 ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 ここで、わざわざ中国を外して、それ以外の国について述べて
いることは注目に値します。白川司氏は、パンデミック宣言とみ
なしうるという部分の英語を示し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 We have therefore made the assessment that COVID-19 can
 be characterized as a pandemic.
 ここでcanが使われている点に注意すべきだろう。canは「で
きる」というのが中心の意味で、ここは「みなそうとすればみな
せる」という意味になり、「今その可能性がある」と言っている
にすぎない。つまり、「パンデミックの可能性があるだけであり
まだパンデミックではない」と解釈することも可能なのである。
 このことは、後に続く言葉からも裏づけされる。「パンデミッ
クという言葉を軽々しく使うべきではない。もし使い方が不適切
だと、過度に不安をあおったり、もう戦えないと根拠もなく諦め
たりして、不必要な病気や死につながるからだ」
                  https://bit.ly/3dIUdcS ─────────────────────────────
 テドロス事務局長は、事態をパンデミックと呼ぶには、制御不
能の状態にならないといけないと考えているようです。事務局長
はこうもいっています。「今回がコロナウイルスによって起きる
初めてのパンデミックということになるが、それは制御可能なパ
ンデミックになる」と。非常にまわりくどいいい方です。なぜ、
このようなことをいったのでしょうか。
 白川司氏は、会見でのテドロス事務局長の次の言葉に注目して
います。
─────────────────────────────
 114カ国11万8OOO人の患者のうち、90%以上が4カ
国に集中しており、そのうち中国と韓国の2カ国では罹患数が有
意に下がっている。       ──テドロスWHO事務局長
─────────────────────────────
 白川氏によると、ここでいう4カ国とは、中国、韓国、イラン
イタリアですが、この会見の行われた3月11日の時点では、中
国の感染者数が他国を圧倒的していたのです。事務局長はそのこ
とに触れず、その中国を韓国と一緒に「罹患数が有意に下がって
いる」という表現で、明らかに中国の感染者数の多さから目をそ
らさせようとしています。
 さらに会見の終りの部分では、感染の中心地はもはや中国では
なく、ヨーロッパであるとの布石を打っています。
─────────────────────────────
 いまや新型肺炎渦の中国で報告されたよりも多くの患者が、ヨ
ーロッパにおいて、日々、報告されている。
 More cases are now being reported every day than were
 reported in China at the height of its epidemic.
                  https://bit.ly/3dIUdcS ─────────────────────────────
 そのうえで、テドロス事務局長は、2日後の3月13日、「新
型コロナウイルスのパンデミックの中心はヨーロッパである」と
宣言しています。白川司氏によると、このときの「中心」という
言葉に「epicenter」 を使っていますが、これは中心というより
も「震源地」を意味するかなり強い言葉だそうです。
 このテドロス事務局長の宣言によってメディアの論調は、これ
までの中国発の新型コロナウイルスの蔓延のそれから、ヨーロッ
パ中心に変わってしまったのです。つまり、テドロス事務局長は
これによって見事に「中国外しとヨーロッパへの責任転換」を成
し遂げたことになります。これでは、WHOが中国と共闘を組ん
でいると疑われても仕方がないでしょう。
 それにしてもWHOはどうなってしまったのでしょうか。今回
は白川司氏のレポートを中心に、WHOのテドロス事務局長によ
る新型コロナウイルスのパンデミック宣言を中心にご紹介しまた
が、2020年1月〜3月11日までの間にも、いろいろ納得の
いかないことが多々あったのです。明日のEJでは、それについ
て述べます。   ──[『コロナ』後の世界の変貌/008]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の傀儡「WHOテドロス事務局長」トンデモ発言録
  忌み嫌う台湾に学べ
  ───────────────────────────
   コロナ禍は人災である。世界的な大流行を招いた戦犯は、
  WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長その人だ。数々
  のトンデモ発言を聞けば、もはや中国の傀儡で“免疫不全”
  に陥っているのは誰の目にも明らか。彼が忌み嫌う台湾にこ
  そ、対策を学ぶべきではないか。
   もはや失笑を禁じ得ないが、国連のホームページには、こ
  んな紹介文がある。〈WHOは、グローバルな保健問題につ
  いてリーダーシップを発揮し、健康に関する研究課題を作成
  し、規範や基準を設定する〉今回もテドロス事務局長がリー
  ダーとして早々に警告を発すれば、世界に危機が周知され各
  国政府は感染対策を徹底できたはずだ。さる海外通信社の東
  京特派員が解説する。「彼はWHOで初めて医師の資格を持
  たずにトップとなった人物。中国から多額の経済援助を受け
  るエチオピアで長く保健相を務め、首根っこを習近平国家主
  席に掴まれているのです」故にWHOは1月5日、「中国で
  原因不明の肺炎が見つかった」と認めながら、同月30日ま
  で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を先
  送り。ようやく発表した席でも、テドロス事務局長は災いを
  招いた国をこう庇(かば)った。〈中国は短時間で病原菌を
  特定し、即座に共有し、診断ツールの迅速な発展を導いた。
  内外に完全な透明性を約束した〉 https://bit.ly/2UBu7kH
  ───────────────────────────

テドロスWHO事務局長.jpg
テドロスWHO事務局長
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2020年06月11日

●「WHOは1月には何をしていたか」(EJ第5265号)

 WHOのテドロス事務局長は、今回のコロナ禍で、中国のため
に、何をやったのでしょうか。3月11日のパンデミック宣言ま
でに、彼が何をやったか、時系列的に検証することにします。
 報道によれば、WHOが中国武漢で発生した正体不明の感染症
の情報を得たのは、2019年12月31日のことです。中国か
ら正式に情報が伝えられたのはこの日といわれます。この時点で
は、人から人へ感染するかどうかは不明とされています。しかし
複数の情報によれば、中国ではこのウイルスが人から人へ感染す
ることは、かなり早くから、わかっていたはずです。
 1月2日、WHOは対策チームを発足させ、中国国内の専門家
と協力しつつ調査をはじめています。この時点で感染の中心地は
武漢市内にある海鮮市場ということになっています。1月10日
になって、WHO対策チームは、武漢を中心にコロナウイルスの
新型の発生を確認しますが、人から人への感染は依然不明である
とするものの、武漢市からの渡航者との接触は避けるべきである
と加盟国に提唱しています。その間、武漢での感染の拡大は、ま
さに風雲急を告げていたのです。
 1月中旬になると、日本でも感染者が発生するようになってい
ます。中国武漢からの観光客を案内して感染した都内在住の70
代のタクシーの運転手が、都内の屋形船で開かれた個人タクシー
組合支部の新年会に出席して、クラスター感染が起きたのもこの
頃のことです。
 WHOでは、1月22日の午後8時に、第1回の国際保健規則
(IHR)に基づく緊急委員会を開催しています。WHOの事務
局長は、通常この緊急委員会において、国際的に懸念される公衆
衛生上の緊急事態(PHEIC)宣言を発出し、WHO加盟各国
に対して警告し、さらなる情報提供を求めることになります。そ
のとき武漢では、爆発的に感染が拡大していたのですから、当然
のことながらWHOは、緊急事態宣言を発出するものと思われた
のです。しかし、きわめて不可解な話ですが、このときの緊急委
員会では、中国とその同盟国の反対で、テドロス事務局長による
緊急事態宣言の発出を見送っています。時期尚早であるというの
です。1月23日のことです。
 ところが中国政府は、その同じ23日に武漢市をロックダウン
しています。実は、このロックダウンは、きわめて変則的な時間
に通告され、実施されているのです。正確にいうと、1月23日
の午前2時5分に発布され、23日の午前10時から開始されて
います。通告から実施まで実に8時間もあります。この8時間の
空白は謎ですが、これについては改めて述べることにします。
 1月28日、習近平国家主席からの急な連絡で、テドロス事務
長とスタッフは、急遽北京に飛んでいます。そして、ツートップ
である習近平首席と李克強首相と面会しています。そのとき、テ
ドロス事務局長は、次のように中国政府を絶賛しています。
─────────────────────────────
 中国政府は、オープンかつ透明性のある情報開示をしている。
新記録といえる短期間で病原体を突き止め、WHOや各国のウイ
ルスの遺伝子配列情報を進んでシェアしている。
                ──WHOテドロス事務局長
─────────────────────────────
 1月30日、WHOは再度緊急委員会を開催し、新型コロナウ
イルスについて緊急事態宣言(PHEIC)を発出しています。
どう考えても、あまりにも遅い緊急事態の発出ですが、その記者
会見で、「緊急事態宣言の発出が遅れたのではないか」と問われ
テドロス事務局長は、実に珍妙な発言をし、直ちに側近に発言を
訂正されるドタバタを演じています。
─────────────────────────────
 22日の緊急委での緊急事態宣言の発出の見送りは適切であっ
たと考えている。その時点では、感染者はわずか82名で、死者
数はゼロだったからである。      ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 この発言に対し、WHO技術部門のリーダー、米国のマリア・
バン・ケーコブ医師は、「感染者82名うんぬんは中国以外での
数字であり、中国ではこの段階で7711人の感染に加え、1万
2167人の感染の疑い、1370人の入院患者に加え、170
人の死者が出ていた」と指摘し、数字の訂正を求めたのです。テ
ドロス事務局長にいわせれば、中国は感染を十分押さえ込める実
力を有しており、中国以外の国が問題なのだとハナからそう考え
ているようです。彼は、これほどの中国信者なのです。しかも、
次の言葉まで添えています。
─────────────────────────────
 緊急事態は発出しますが、そうだからといって、国際的なヒト
やモノの移動制限は推奨しない。    ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 テドロス事務局長は確信犯です。国際保健衛生分野のトップ外
交官・政治家として、「中国寄り」といわれることを十分承知し
たうえで、WHO事務局長として職務を果しています。テドロス
事務局長について、キャノングローバル戦略研究所研究員の本多
倫彬氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 状況の把握と封じ込めを求めるWHOのトップの目には、そも
そも中国寄りという姿勢を差し引いても、中国の取り組みは頼も
しく映っただろう。中国と距離の近い事務局長だからこそ、中国
からの情報を広範に入手できた可能性もある。逆に言えば、中国
を批判すればそうした情報が取れなくなるし、自らの支持母体を
失うという計算も働いたのかもしれない。いずれにしても、検査
数自体が少なく、また封じ込めも自粛という形の日本のような国
と比べたとき、中国はテドロス事務局長にとって優れたものに見
えたことだろうことは指摘できる。  https://bit.ly/3h8osfz ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/009]

≪画像および関連情報≫
 ●批判呼ぶテドロス事務局長の「中国擁護」/背景にWHOと
  中国の蜜月の仲
  ───────────────────────────
   肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり
  中国当局の初動の遅さを指摘する声が世界で高まる中、世界
  保健機関(WHO)のテドロス事務局長が中国を擁護し続け
  ている。テドロス氏が中国寄りの発言を続ける背景には、長
  年にわたる中国とWHOの「蜜月の仲」があるとされる。
   テドロス氏は2月12日、新型肺炎の治療法やワクチンに
  ついて話し合う専門家会合後の記者会見で語気を強めた。事
  の発端は、会場の記者が「WHOは、中国の対応を称賛する
  ように中国から圧力を受けたのか」とテドロス氏に批判的な
  質問をぶつけたことだ。
   質問を聞いたテドロス氏はこわばった表情で、「中国は感
  染の拡大を遅らせるために多くの良いことをしている」と説
  明。「ほとんどすべての加盟国が、中国の対応を評価してい
  る」と言い切った。
   テドロス氏はさらに、中国の習近平国家主席について「知
  識を持っており、危機に対応するリーダーシップを発揮して
  いる」と語り、称賛を繰り返した。これまで、テドロス氏は
  新型ウイルスの問題で、一貫して中国の肩を持つような発言
  を続けてきた。中国外務省によると、テドロス氏が1月28
  日に習氏と会談した際も「(中国は)時宜にかなった有力な
  措置を講じている」と対応を評価した。
                  https://bit.ly/2Ym1XLk
  ──────────────────────────

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習近平国家主席とテドロスWHO事務局長
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2020年06月12日

●「WHO事務局長は時間稼ぎに協力」(EJ第5266号)

 テドロス事務局長は、緊急事態宣言を発出した2020年1月
30日の記者会見で次のようにいっています。
─────────────────────────────
 1.WHOは新型肺炎の発生を制御する中国の能力に対して
   自信を持っている。
 2.緊急事態宣言が発出されても、中国への渡航や交易を制
   限する必要はない。
 3.だが医療体制の整備が遅れている国への感染拡大防止の
   支援は必要である。
─────────────────────────────
 このようにいくら「中国寄り」と批判されても全く怯むことな
く、手放しで中国を礼賛しています。
 これによって中国は大助かりです。これを受けて、1月31日
付の「環境時報」と、中央テレビ局CCTVのニュースは、次の
ように報道しています。これは、中国の情勢に詳しい遠藤誉氏に
よる情報提供です。
─────────────────────────────
◎WHOは何といったか
 WHOは確かに緊急事態宣言を出したものの、しかしそれは決
して中国に対して自信がないことの表れではない。それどころか
全くその逆で、テドロスは「中国が疫病の感染予防に対して行っ
ている努力とその措置は前代未聞なほど素晴らしい」とさえ言っ
ているのだ。さらにテドロスは、中国は感染予防措置に関して、
「新しいスタンダード」を世界に先んじて打ち出すことに成功し
ているとさえ言っている。
◎中央テレビ局CCTVニュース
 たしかにWHOは緊急事態宣言を出したが、しかしこれはあく
までも中国以外の国での感染拡大を防止するために出されたもの
で、WHO事務局長はむしろ中国が現在行っている予防対策とあ
らゆる措置を高く評価し、「歴史上、ここまで立派にやった例は
ない」とまで断言し、中国を絶賛している。
                  https://bit.ly/2AS8Iwo ─────────────────────────────
 テドロス事務局長は、中国のための時間稼ぎに協力していたと
いえます。2020年1月といえば、新型コロナウイルスの感染
元は中国の武漢であり、感染者数も死者数も、すべて中国が中心
だったはずです。この状況を変えるきっかけになったのは、1月
23日の武漢市のロックダウンです。これによって、感染者数は
少しずつ押さえ込まれ、死者数も減っていったのです。そして、
3月になって、感染の中心地が中国ではなく、ヨーロッパに移る
と、すかさずパンデミックを宣言し、「中国武漢発のウイルス」
という印象を弱めることに成功しています。テドロス事務局長は
この中国の時間稼ぎに最大限の協力をしたのです。
 つまり、中国は、ヨーロッパでの感染の拡大を待ち、それらの
国に大量の医療物資や医師団を派遣するなど、まさに「放火犯が
消防士」に変身したかのような活動を行い、一帯一路に賛同する
国々を中心に支援を拡大したのです。それによって「中国寄り」
の国を増やして行こうという戦略です。テドロス事務局長は、こ
ういう状況になるように中国に協力して時間を稼ぎ、そのうえで
3月11日にパンデミックを宣言したのです。
 実は中国にとって一番重要だったのは、WHOが1月22日の
緊急委員会で、緊急事態宣言(PHEIC)の発出を先送りして
いることです。これに関連するのは、1月23日午前10時から
の武漢市のロックダウンです。
 1月22日に習近平主席は、フランスのマクロン大統領やドイ
ツのメルケル首相と電話会談を行っています。そこで習近平首席
は、次のことを訴えたそうです。
─────────────────────────────
 中国は感染発生以来、予防制御の措置を周到に行い、WHOな
どにも速やかに情報を提供している。中国は、国際社会と協力し
て、対策を取る考えである。       ──習近平国家主席
─────────────────────────────
 いうまでもなく、フランスやドイツはWHOの有力国であり、
発言力が強い国です。習近平主席が、それら2つの国のトップに
直接訴えたかったのは、「どうか、今回は緊急事態宣言を出さな
いでほしい」ということです。すべてうまくテドロス事務局長が
仕切ると思うものの、念のため、それらの有力国に根回しをした
ものと思われます。
 問題は、昨日のEJで述べているように、武漢市のロックダウ
ンの「通告」と「実行」には8時間もの時間差があることです。
このことを指摘しているのも中国分析の第1人者である遠藤誉氏
です。それでは、武漢市のロックダウンはいつ通告されたかとい
うと、1月23日午前2時5分に通告されていますが、その実行
は、午前10時からです。実行までに8時間もあります。ロック
ダウンの内容は、武漢市政府のウェブサイトに表示されたもので
すが、これを見たら、あなたは、武漢市に留まりますか、それと
も脱出しますか。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルス感染による肺炎の流行を防御することを全
面的に遂行し、効果的にウイルスの伝染経路を遮断し、疫病の蔓
延を断固阻止し、人民群衆の生命安全と健康を確保するために、
ここに以下のことを通告する。
 2020年1月23日10時を以て、全市のバス、地下鉄、フ
ェリーボート、長距離旅客輸送を含む公共交通を全て、暫定的に
停止する。特殊な原因がない限り、市民は武漢を離れてはならな
い。武漢から外部に移動する飛行場や列車の駅は暫時封鎖する。
いつごろ回復するかは追って通知する。広大なる市民と旅客の理
解と協力を求める!         https://bit.ly/2AcL9P7
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/010]

≪画像および関連情報≫
 ●WHOの中国賛美「過剰」/テドロス氏、政治家の側面
  ―元法律顧問
  ───────────────────────────
   【ベルリン時事】世界保健機関(WHO)の元法律顧問、
  ジネーブ国際開発高等研究所のジャンルカ・ブルチ非常勤教
  授は4月28日、時事通信の電話インタビューに応じ、新型
  コロナウイルスをめぐるWHOの中国賛美について、「過剰
  だ」と苦言を呈した。テドロス事務局長については、前任者
  より「政治家の側面」が強く、危機対応の手法にもそれが現
  れていると分析した。主なやりとりは以下の通り。
  ―中国への配慮で対応が遅れたと批判がある。
   WHOは警察ではなく、(加盟国の)調査権限はない。通
  常はNGOなど民間情報源も使うが、情報統制されている中
  国では、難しかった。情報提供の協力確保のため、友好姿勢
  に徹したのかもしれない。とはいえ繰り返される中国賛辞に
  は驚いた。理由を臆測したくないが、少々過剰だった。
  ―テドロス氏とチャン前事務局長の違いは?
   テドロス氏はエチオピアで保健相や外相を歴任し、政治家
  の側面が強い。チャン氏は政治のバックグラウンドはなかっ
  た。過小評価されていることであるが、このため、テドロス
  氏はトランプ米大統領など、大物政治家にコンタクトを取り
  やすい。
  ―WHOと政治の関係は?
   国連機関は政治的であるのは避けられない。緊急事態宣言
  は専門家委員会の助言に基づくが、政治的意味合いも強く、
  純粋に技術的なことと捉えるのは幻想だ。対象国の国民を驚
  かせないようにする必要がある。テドロス氏が1月末の宣言
  前に中国の習近平国家主席に会ったことを批判されたが、必
  要なことだった。        https://bit.ly/2YhTglq
  ───────────────────────────

中国・武漢鉄道駅前.jpg
中国・武漢鉄道駅前
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2020年06月15日

●「8時間の空白を設けた理由は何か」(EJ第5267号号)

   2020年1月23日、午前10時、武漢市のロックダウンが
スタートしています。しかし、その通告は、それより8時間も前
の23日の午前2時5分に武漢市政府のウェブサイトに掲載され
ていたのです。中国では、政府の重要な通告はウェブサイトに掲
示されるので、中国国民は日本人と違って、政府のウェブサイト
はつねによく見ています。
 当時武漢市は、新型コロナウイルスが蔓延し、感染リスクは非
常に高く、ある程度の財力のある家庭なら、逃げ出す家庭は少な
くないと思われます。まして春節の季節です。もともと海外旅行
を計画していた家庭も多いはずです。そういうとき、明日の10
時になったら、武漢市が封鎖されるということを知ったら、多く
の人が逃げ出すのは必至です。
 この「空白の8時間」という情報をブログで知らせてくれたの
は、中国分析の第1人者といわれる遠藤誉氏です。遠藤氏は、こ
の空白の8時間について次のように述べています。
─────────────────────────────
 なぜ、武漢市はわざわざ「さあ、脱出するなら今だよ!」とい
うような通告の仕方をしたのか。伝染が拡大するのを本気で防ぎ
たいと思うのなら、こんなことはしないはずだ。
 私は1947年から48年にかけて、長春において中国共産党
軍(八路軍)による食糧封鎖を受けている。封鎖を事前に知らせ
るどころか、封鎖は気づかれないようにジワジワと迫ってきた。
気が付いたら長春市全体が鉄条網で包囲され、市民は長春市から
出られないようになっていたことを知った。長春市内にいる国民
党の一派(正規軍から差別待遇を受けていた雲南60軍)が共産
党軍側に寝返って長春は48年10月に陥落したが、その間に餓
死した中国人一般庶民は数十万に及ぶ。長春食糧封鎖という経験
と中国政府の事実隠蔽に関して生涯をかけて闘っている私にとっ
て、この「空白の8時間」は「あり得ない措置」なのである。
          ──遠藤誉氏  https://bit.ly/3cVVLyX ─────────────────────────────
 武漢市は、中国の中部、湖北省の東部にある人口1000万人
を超える大都市です。当時この都市に新型コロナウイルスが蔓延
しており、このウイルスを春節の人の大移動によって、他に感染
を拡大させないために都市全体を封鎖しようというのです。大胆
な措置ですが、人の動きを止めれば、感染を封じ込めることは可
能になるものの、経済には壊滅的なダメージを与えます。
 感染を他に拡大させないためであれば、都市のロックダウンは
遠藤氏のいう通り、間髪を入れず行う必要があります。なぜなら
通告と実施の間に8時間もの空白時間を設ければ、その間に武漢
市を逃げ出す人が多くなり、感染が中国の他の都市や、海外に拡
がってしまう恐れがあるからです。それをあえてやったのです。
 ウイルスの感染源は、ここまでの検討によれば、武漢P4研究
所であると考えられ、その流出はおそらくミスと思われます。な
ぜなら、中国にとってわざとそれをやるメリットは少ないからで
す。本来であれば、中国はその情報を世界に公開し、早く押さえ
込むベきだったのですが、想定以上に感染が拡大してしまい、隠
蔽せざるをえなくなったものと思われます。
 ロックダウンの通告と実施の間に、大幅な時間を空けたことの
真相は推測するしかないのですが、習近平政権は感染を中国だけ
ではなく、全世界に拡散させたかったのではないでしょうか。と
くに米国やヨーロッパに感染を拡大させたかったものと思われま
す。そうすることによって、中国には大きなメリットがもたらさ
れるからです。
 ここで6月3日のEJ第5259号でご紹介したハドソン研究
所の上級副社長、ルイス・リビー氏の言葉を思い出す必要があり
ます。その言葉を再現します。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが主に中国国内で猛威を振るっている限り
中国経済の成長だけを妨げ、中国政府だけが汚名を被る事態を招
くこととなる。習近平中国国家主席にとっては困難が増し、悪夢
のような展開が待っていた。その間ずっと、世界経済は予想どお
り飛躍し、中国から顧客を奪い、中国が長い間求めている栄光を
横取りするかに見えた。しかし、パンデミックは中国にとって僥
倖となる可能性も持っていた。新型コロナウイルスが蔓延すれば
中国政権内部の悩みは拡散し、また一方で、新型コロナウイルス
感染症で経済が弱体化した国々は、中国製品に対する依存度を高
めざるを得なくなる。トランプ大統領の再選はもはや確実ではな
くなり、アメリカ経済の弱体化は、アメリカの国防支出に影響を
与えるに違いない。         https://bit.ly/2Atk5KQ
─────────────────────────────
 もし、ミスによって武漢ウイルス研究所からウイルスが流出し
武漢市をはじめ、周辺地域へ感染が拡大した場合、感染が中国内
に留まっている限りにおいて、そのダメージは中国のみが負うこ
とになります。当たり前です。まして中国は、米国と経済貿易面
で深刻な経済戦争をしており、中国としては、一歩も引けない状
況にあります。これにウイルス感染拡大が加わると、中国経済は
大きなダメージを被ることは必至です。
 しかし、新型コロナウイルスの感染が全世界に拡がり、パンデ
ミックになれば、その痛みは全世界が均一に負うことになり、中
国だけが不利になることはないのです。いや、むしろ情報を握っ
ている分、中国にとって有利です。そして、放火犯であるのに消
防士の役割を演じ、中国への他国の依存度を高めることも可能で
す。そのために、空白の8時間を設けて、感染しているリクスの
高い武漢市民を世界に脱出させたのではないでしょうか。
 事態は、ルイス・リビー氏のいう通りになっています。コロナ
対策の失敗で、習近平主席にとって最大の難敵であるトランプ米
大統領の再選も難しくなりつつあります。しかし、この作戦を成
功させるにはWHOの全面協力が不可欠になります。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/011]

≪画像および関連情報≫
 ●中国はなぜコロナ大拡散から抜け出せたのか?
  ───────────────────────────
   中国がコロナから抜け出せたのは一党支配体制だからだと
  いう側面は否定しないが、しかしそれより大きいのは鍾南山
  という「体制に屈しない気骨の免疫学者」がいたからだ。ウ
  イルスの前に一党支配体制はむしろ脆弱だ。
   中国における免疫学や呼吸器学などの最高権威である鍾南
  山は1936年10月20日に江蘇省の南京市で生まれた。
  1960年に北京医学院(現在の北京大学医学部)を卒業し
  文化大革命時には下放され、文革が終わった1979年にイ
  ギリスのエディンバラ大学に。1992年から広州医学院院
  長(現在の広州医科大学学長に相当)などを務めた。
   父親は北京協和医学院とニューヨーク州立大学を卒業し、
  広東省の中山医学院の教授になり、母親も協和医科大学を卒
  業後、広東省で華南腫瘍医院を創設し副院長を務めたが、文
  化大革命で知識人として糾弾され自殺している。
   このことが大きな原因の一つになっているのだろう。鍾南
  山は「反体制」とまでは言わないにしろ、体制におもねるこ
  とがない。2002年に発生し、2003年に大流行したS
  ARS(サーズ。重症性呼吸器症候群)の時には、感染の中
  心地となった広東省で広州市呼吸器疾病研究所の所長として
  異常を察知し、SARSの脅威を隠蔽しようとする江沢民政
  権に対して異議を唱え、事態の深刻さを訴えた。結果、SA
  RSの(あれ以上の)拡大を抑えることに成功している。以
  来、民族の英雄として人民の尊敬を集めている。
                  https://bit.ly/37qnruy
  ──────────────────────────

遠藤誉氏.jpg
遠藤誉氏


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2020年06月16日

●「緊急事態宣言見送り万死に値する」(EJ第5268号)

 先日、久しぶりに書店に行ったところ、滝田洋一氏の新刊書を
見つけたので、購入しました。
─────────────────────────────
                    滝田洋一著
    『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 私は、テレビ東京の報道番組「ワールド・ビジネス・サテライ
ト/WBS」を必ず見ており、いつも滝田洋一氏のニュース解説
を聞いています。この番組の現在のメインキャスターは大江麻理
子氏ですが、私は、現在東京都知事の小池百合子氏がキャスター
をしていた頃からこの番組を視聴しており、私の重要な知識源の
ひとつになっています。
 さて、滝田洋一氏の本で、1月22日〜1月末日まで──今と
なっては、この期間は新型コロナウイルスの日本の防疫にとって
非常に重要な10日間だったのですが──そのあたりの一般には
知られざる情報が載っていましたので、そのことについて、ご紹
介したいと思います。
 もし、WHOの緊急委員会が1月22日に緊急事態(PHEI
C)宣言を出していたら、日本の感染拡大の状況は大きく変わっ
ていたと思うのです。この時点でWHOが緊急事態宣言を出せば
日本政府は少なくとも武漢からの中国人の受け入れを制限してい
たと思われるからです。なぜなら、この宣言は、国際的に懸念さ
れる公衆衛生上の緊急事態宣言を意味するからです。
 日本政府は、習近平国家主席の国賓としての招聘を決めている
ので、中国人の入国制限措置は取りにくかったことは確かです。
しかし、WHOが緊急事態宣言を出せば話は別です。なぜなら、
入国制限をする強力な理由になるからです。日本だけでなく、世
界中の親中国の国家もWHOのお墨付きがあれば、入国制限をす
る国が続出したはずです。そういう意味において、WHOが22
日に緊急事態宣言を見送ったことは万死に値します。
 もっとも、この1月20日前後の日本の状況は、新型コロナウ
イルスの感染について、中国武漢の不幸な出来事ぐらいの感覚で
しか受け止めていなかったと思います。日本国内の新型コロナ患
者が最初に見つかったのは1月16日のことだったからです。
 この人は、30代の男性で、1月3日から発熱症状があり、6
日に武漢市から日本に帰国しています。9日になると、39度の
高熱が出て、肺炎の症状が見られたことから、10日から入院し
15日は自宅療養中だったといいます。しかし、この時点では、
ヒトヒト感染が起きるかどうかも不明だったのです。その重要な
情報を中国もWHOも隠蔽していたフシがあります。したがって
多くの日本人は、「武漢なんか行くから、そういう病気にかかる
んだ」ぐらいの感覚でほとんど警戒していなかったと思います。
滝田洋一氏は、著書で、この頃の印象について、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 奇妙なことに、中国からの情報の時計は止まっていた。41人
の患者が確認され、61歳の男性1人が死亡、6人が重症──武
漢市の当局が感染の拡大を隠蔽していたためだが、日本で患者が
見つかったのに、なぜ現地で患者が増えないのだろう、ともっと
疑問を抱くべきだった。足元の出来事に目を奪われ、全体観を持
てなかったのは、記者としての反省点である。 ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 22日にWHOの緊急委員会が、PHEICを見送ったことに
ついて、仏紙「ルモンド」は、中国は、中国の友好国に圧力をか
けて、PHEIC発出に反対したと書いています。明らかに中国
は、この時点ではこのウイルスの感染を世界的に拡大させたかっ
たことは確かです。
 滝田洋一氏は、WHOの緊急会合に関連して、ウェブサイトに
掲載された写真のことを書いています。添付ファイルをご覧くだ
さい。その時点で掲げられていたのは、上の写真です。一見発生
地の中国のように見えますが、よく見ると日本の成田空港です。
NTTの電話が映っているからです。こんなところまでWHOは
中国に気を遣っているのです。滝田氏は、この件についてウェブ
で発信しているので、WHOも気が付いたのでしょう。その後、
下の写真に差し替えられています。下の写真の国籍は明確ではあ
りませんが、中国ではないと思います。テドロス事務局長は、そ
んなところまで中国に配慮しているのです。
 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の小森義久氏は、1月の最
後の10日間がどれほど日本にとって重要であったかについて、
自著で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 この1月の最後の10日ほどは、日本としても感染者を武漢か
ら自国内には入れないための防止策をとるには、もっとも効果の
ある期間でもあったのだ。だが安倍政権は、中国から日本へのウ
イルスの流入を止めるためには、なにもしなかった。
 他方、1月下旬の段階では他の多くの諸国がすでに中国からの
自国への入国を禁止、あるいは制限していた。北朝鮮、ロシア、
オーストラリア、フィリピン、香港、タイ、台湾、モンゴルなど
多数の国や地域が中国滞在歴のある外国人の入国、入城を全面停
止するようになった。明らかに危険な感染症の広がりを防ぐため
の医療上の必要、人道的な見地からの措置だった。その措置には
中国人を排斥するなどという民族差別的な意図などは皆無だった
ことは明白である。入国禁止の対象となったのは中国籍の人間と
いうことではなく、あくまで中国領内に最近まで滞在していた外
国人とされていたのだ。           ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/012]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナウィルス対応から見る世界保健機関(WHO)
  の危機対応体制の課題
  ───────────────────────────
   新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、国際協調が、全
  世界を巻き込む国家の危機においていかに脆いものであるか
  を白日の下に明らかにした。現代社会は、ヒト、モノ、カネ
  そして情報が国境を越えて流通するのを量的、質的、そして
  時間的に促進するグローバリゼーションによって、築かれて
  きた。しかし、今回の感染症危機は、まさにこのグローバリ
  ゼーションから復讐を受けているようだ。中国の武漢で最初
  の症例が報告されてから、世界中の死者が20万人を超える
  というグローバルな危機的状況に陥るまでわずか5か月しか
  かかっていない。そして、グローバル化したサプライチェー
  ンは、各国の危機管理にも大きな影響を及ぼした。世界各国
  がほぼ同時多発的に危機的状況へと陥いる中、感染症対応の
  ための医療機器や防護服、マスクをめぐり一部の国家間では
  中世さながらの争奪戦が起きる始末であった。
                  https://bit.ly/2zu0tGr
  ───────────────────────────
  ●添付ファイルの出典/https://bit.ly/3hmLQ94

WHOのウェブサイトの写真.jpg
WHOのウェブサイトの写真
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2020年06月17日

●「感染拡大の原因について解明する」(EJ第5269号)

 新型コロナウイルスが武漢市から感染が拡大したことは、間違
いのない事実です。しかし、中国政府は、何も証拠を示さずに、
それを公然と否定しています。中国は自分たちにとって不利なこ
とは認めない国です。ところで、武漢とは、どういう都市なので
しょうか。武漢には行ったことがないので、北京に駐在していた
こともある古森義久氏の文章をお借りして、ご紹介することにし
ます。無駄のない非常に適切な紹介であると思います。
─────────────────────────────
 武漢の人口は2019年の時点で千百万人ほどだった。中国の
主要都市のなかでは重慶の二千八百万人、上海の二千四百万人、
北京の千八百万人などにくらべても、それほどは劣らない住民の
多い都市なのだ。中国全体の各都市では人口に関して武漢は十数
位となる。ちなみに東京都の人口は千三百九十万人ほどである。
武漢より三百万人ほどしか多くない。武漢市を中心とする湖北省
の人口は五千九百万人ほど、日本の総人口のおよそ半分である。
 一方、面積でみると、湖北省が日本全体の半分ぐらい、武漢市
だけの面積はちょうど北海道に匹敵する。つまり、武漢は、北海
道ほどの広さの地域に、東京都並みの人口が住んでいるというこ
となのだ。やはり中国は面積も人口も巨大なのである。
                      ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 もうひとつ頭に入れておくべきことがあります。それは、20
20年の中国の春節の期間です。それは、1月24日から30日
までです。もし、WHOが1月22日の緊急委員会で、緊急事態
宣言を出していれば、世界各国は中国からの旅行者を入国拒否す
るはずなので、新型コロナウイルスの世界拡散を相当防止できた
はずです。しかし、WHOは中国からの強い要請を受けて、この
時点での緊急事態宣言を見送っています。
 これを中国側から見ると、春節で、中国から海外へ旅行に出よ
うとしている膨大な旅行者を足止めをするのではなく、黙ってそ
のまま送り出しています。とくに武漢市からの海外旅行者につい
ては、感染者も相当含まれると思われるのに、この時点ではどこ
の国も、空港などで厳しい防御対策をとっていないので、感染は
世界中に拡がってしまうことになります。中国政府は、それを承
知のうえで、WHOに働きかけて、緊急事態宣言の発出を見送っ
たのです。とくに国際機関であるWHOとしては、絶対にやって
はいけないことです。
 1月23日の中国政府による武漢市封鎖は、通告から実施まで
8時間以上の時間があり、その間に、大勢の人が武漢市から脱出
してしまったことについて、古森義久氏は、産経新聞での同僚で
中国の事情に詳しい戸板記者の報告として情報を把握しており、
次のように伝えています。
─────────────────────────────
 その武漢全域の閉鎖という情報が事前にもれて、広がった。閉
鎖が実際に実行される1月23日午前10時の数10時間前に、
その情報が市民側に伝わってしまったのだ。
 矢板記者の報告によると、その結果、23日の未明から早朝に
かけて多数の武漢市民が市外へと脱出する動きが起きた。無数の
老若男女が鉄道の駅、空港、高速道路などに殺到し、大混乱が起
きた。矢板記者の知人の共産党幹部も家族とともに23日未明に
自動車で武漢を抜け出して、隣接する江西省の親戚の家に逃げた
という。その幹部はその後、インターネットで逃亡の様子を自慢
げに公開していたが、各地で「逃亡武漢人」への批判が高まると
あわててそれを削除してしまった。
 武漢市が周辺の地域から隔離され、市内にいる人間はだれひと
り他の地域に行けないとなれば、しかもその隔離の期限がどれほ
ど長くなるかもわからないとなれば、逃げ出したいと思う人たち
が多数いても、ふしぎはないだろう。
                ──小森義久著の前掲書より
─────────────────────────────
 古森義久氏によると、遠藤誉氏が指摘した武漢市封鎖の通告と
実施の約8時間の時間差に気がついて、武漢市から脱出した市民
は、約500万人以上としています。これは、後になって、武漢
市長が、記者会見で明らかにしています。実に500万人以上の
武漢市民が、武漢から逃げ出したのです。
 振り返ってみると、昨年の12月1日から今年の1月20日ま
での約50日間、新型コロナウイルスについて、中国政府として
は、一切公式な国際的対応をしていないのです。これでは、事実
を隠蔽していたと批判されても、仕方がないといえます。習近平
国家主席にとっては、どうしても春節が始まるまでは、本当のこ
とはいえないと考えていたものと思われます。しかし、テドロス
事務局長は、それがわかっていたはずです。
─────────────────────────────
 最近の中国の風潮では、この旧正月の休みに海外を旅する人た
ちも何十万、何百万という単位となっていた。武漢の市民たちの
間でも当然、同じ傾向があった。だから結果として、コロナウイ
ルス感染の確率の高い武漢の人たちが隔離の直前にどっと洪水の
ように流出していったのである。いまからみれば、この人たちこ
そが、新型コロナウイルスをグローバルに感染させた最大の容疑
者集団だった。武漢市内でそれまで激しい勢いで広がっていたウ
イルス、それに対してなんの防疫措置もとられなかった異様な環
境、その環境のなかで暮らしていた五百万の人々・・。感染の中
国全土から他の諸国への爆発的な広がりは、ごく自然な成り行き
となったのである。この武漢脱出の感染の疑いの濃い人たちがそ
の後、日本や韓国や、あるいはヨーロッパの諸国にまで避難して
いったことが明らかとなった。  ──小森義久著の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/013]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢の新型コロナウイルス情報を「隠蔽」したのは誰か(渡
  辺真理子・学習院大学経済学部教授)
  ───────────────────────────
   4月に入ってから米トランプ政権が、中国が新型コロナウ
  イルスの発生を隠蔽したと追及を強めている。これは機密情
  報なども絡む可能性があり、真相はなかなかわからない。し
  かし、公開された情報から、官僚機構がこの新型感染症発生
  の情報をどう扱ったのか、ある程度見えてくる。
   中国の中央集権は塊問題」という課題を抱えている。ここ
  で、「条」は貫徹する、「塊」はブロックするという意味で
  あるが、中央政府による垂直的なコントロールと地方政府の
  裁量のせめぎあいを示す言葉として定着している。この問題
  は、中国のあらゆる政策に出没する。そもそも、ケ小平がス
  タートした改革開放も条塊問題の調整だった。中央のコント
  ロールよりも、地方政府の裁量を高めてインセンティブを生
  み、地方間の競争を通じて、経済発展を達成した。そのため
  に、本来は議会である人民代表大会の管轄である徴税権が、
  長らく地方政府に「授権」されてきた。
   地方政府による保護主義で市場のゆがみが発生したが、経
  済発展に貢献した。しかし、習近平政権は、徴税権を地方政
  府から人民代表大会に戻す決定をしている。実際、地方が収
  集する情報をなかなか把握できない中央政府がじれて独自の
  情報収集体制を構築することはままある。国内総生産(GD
  P)の集計を行う国家統計局はその形をとっている。
                  https://bit.ly/2UN1nFk
  ───────────────────────────

古森義久産経新聞ワシントン駐在客員特派員.jpg
古森義久産経新聞ワシントン駐在客員特派員
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2020年06月18日

●「なぜ米国がテドロスに怒ったのか」(EJ第5270号)

1月22日、WHOは、緊急委員会を開いたものの、中国に配
慮して緊急事態宣言(PHEIC)を見送っています。テドロス
事務局長のこの判断が、新型コロナウイルスが世界に拡散し、3
月11日のパンデミックにいたるのです。
 そのとき、米国ではこの新型コロナウイルスの感染に関しては
まったく無風の状態だったのです。米国のワシントン州で、新型
コロナウイルスの感染者が確認されたのは、WHOの緊急委員会
の前日の21日のことですから、きっと米国民は、その感染者は
武漢からの帰国者だろうぐらいの感覚だったと考えられます。
 2020年1月30日、WHOは緊急事態宣言を発出していま
すが、1月28日に、急遽習近平主席に呼び出されて、テドロス
事務局長は、中国に飛んでいます。おそらくそこで、習主席とは
1月30日の緊急事態宣言について打ち合わせがなされたものと
思われます。したがって、1月30日の緊急事態宣言のさいの彼
の中国への配慮は、次のように異常なものであったのです。
─────────────────────────────
 中国側は、前例のない疫病の拡大に対して、前例のない対応を
している。オープンかつ透明性のある情報開示をしているし、新
記録と言えるほどの短期間で病原体を突き止め、WHOや各国に
ウイルスの遺伝子配列情報を進んでシェアしている。宣言の理由
は、中国で発生したからではなく、他の国々で発生していること
だ。緊急事態宣言をしたからといって、中国との取引や旅行を取
りやめる理由はない。    ──テドロス事務局長の発言から
─────────────────────────────
 テドロス事務局長の発言を分析すると、中国での感染者が減り
はじめる2月中旬までは、楽観論をいい続けて、中国での感染者
が下火になったことが周知された後になると、一転して、悲愴な
表情で「世界全体でパンデミックを封じ込めなければならない」
といいはじめています。テドロス事務局長は、パンデミック宣言
に向けて、次のように述べています。
─────────────────────────────
    We have a simple message to all countries−
    test, test, test.
 私たちがすべての国に伝えるべき唯一のことは、検査あるのみ
ということだ。すべての国が、罹患の疑いのある患者を検査でき
るようにしなければならない。目隠しされたままで、このパンデ
ミックは戦えない。          ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 1月30日のWHOの緊急事態宣言によって、日本は、武漢市
のある中国・湖北省滞在の外国人の入国を拒否すると、安倍首相
は表明しています。実施は2月1日からです。
 1月31日、米国は、国務省が中国全土への渡航禁止を決め、
中国訪問者の入国拒否を発表しています。アレックス・アザー保
健福祉長官は「公衆衛生に関する緊急事態」を宣言し、過去14
日以内に中国を訪れた米国人に対し、帰国後14日間の隔離を義
務づけています。つまり、中国への人の出と、中国からの人の入
りの両方を禁じたのです。この措置に関し、中国は不満を訴えた
ほどです。これらの措置は非常に素早く行われ、トランプ大統領
は、2月10日のニューハンプシャーでの集会で、次のように、
楽観的なメッセージを送っています。
─────────────────────────────
 4月に暖かくなったら、コロナウイルスの影響はなくなるだろ
う。すべてはうまくいくだろう。    ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 2月中旬までは、米国は何もかも好調だったのです。2月12
日の米国株式市場で、ダウ工業株30週平均は、2万9551ド
ルを付け、史上最高値を記録しています。3万ドルまであと一歩
のところにきていたのです。
 しかし、2月25日、この株高はCDC(アメリカ疾病予防管
理センター)のナンシー・メッソニエ博士が、「コロナウイルス
が米国全土に拡散している可能性がある」との警告を出すに及ん
で、変調をもたらすことになります。
 この米国の株価に関連して、WBS解説キャスターの滝田洋一
氏は、自著のなかで、ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教
授の2月26日の「マーケットは依然慢心」という警告を紹介し
ています。ルービニ教授は「ドクター・ドゥーム(破滅)博士」
の異名がある少し異色の経済学者です。
 ヌリエル・ルービニ教授によると、相場下落があっても、マー
ケットは慢心をしているとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
@まず感染(エピデミック)は中国国内に限定され、グローバル
 な大流行(パンデミック)にはならない。
A次に感染は1〜3月期末までにピークを迎え、中国経済や世界
 経済に大きな打撃をもたらさない。
Bそして景気はいったん落ち込んでもX字型に回復し、4〜6月
 期以降は力強い成長軌道に乗る。
Cさらに金融・財政政策の担当者は、市場と経済を支えるために
 早期に強力な政策を講じるであろう。    ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 ヌリエル・ルービニ教授は、これら4つは、いずれも誤りであ
るといっています。実際に@は、パンデミックになっているし、
Aについては、3月になっても収まっていないし、中国経済や世
界経済に大ダメージを与えています。BのV字回復など、ナンセ
ンスそのものです。
 しかし、Cについては、幸いなことに、ルービニ博士は見通し
を誤っています。各国の中央銀行は、疾風怒涛の早わざをみせて
いるからです。いずれにしても、2月26日という早い時点での
ルービニ教授の的確な見通しは見事なものであるといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/014]

≪画像および関連情報≫
 ●ヌリエル・ルービニ教授「新型コロナにより10年間の景気
  低迷が訪れる」
  ───────────────────────────
   ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授が、新型コロ
  ナウイルスのために世界が10年間の景気低迷を経験するだ
  ろうと予測した。新興経済国は回復が先進国よりも早いだろ
  うが、米中の葛藤により困難に直面するだろうと明らかにし
  た。英国BBCとのインタビューで5月22日(現地時間)
  彼は「世界的な金融危機の間に、生産量が急減するまで約3
  年かかった」とし、「しかし、今回は3年はもちろん、3か
  月もかからなかった。3週間ですべてが自由落下した」と語
  った。彼は今年の経済が良くなるといっても「貧死状態」が
  続いて「U字型」や「L字型」の経済回復を示すことになる
  と予想した。U字型回復とは、成長の勢いが落ちて底を打ち
  その状態で、相当期間停滞すれば回復するというモデルであ
  る。L字型は、U字型よりもっと悪い状態で経済成長が急落
  し、低成長または無成長が長期間続く状況をいう。ヌリエル
  ・ルービニ教授は、このL字型の状況を「大大恐慌」と呼ん
  できた。ヌリエル・ルービニ教授は、ウイルスと闘うために
  めに世界各国が大規模な封鎖政策を行ってきた結果、多くの
  雇用が無くなり、消費者もいなくなったと説明した。ただ、
  し、アジアの新興国は、他の先進国より成長率が高くなると
  伝えた。しかし、米中の葛藤により、両国の間で選択を余儀
  なくされ、困難な状況に置かれるだろうと予測した。
                  https://bit.ly/30NVQ5m
  ───────────────────────────

ヌリエル・ルービニ教授.jpg
 ヌリエル・ルービニ教授.
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2020年06月19日

●「習近平政権の評判は最悪のレベル」(EJ第5271号)

最近になって、普通のドラックストアで不織布マスクが買える
ようになっています。アベノマスクもやっと届きました。今やマ
スクは、出掛けるさいの必需品であり、国内でも新種のマスクが
続々と登場しつつあります。
 このマスクビジネスに早くから手をつけたのは中国です。中国
は、ウイルスの発生を知ると、世界各国からマスクを買い占め、
世界的な品不足の状態にしておいて、ウイルスの感染で苦しむ国
に対して、大量のマスクや医療品をプレゼントするマスク外交を
展開しています。イメージの悪化を解消するためです。
 その中国が、現在、各国からのマスクの返品で、困り果ててい
ます。毎日のようにマスクが返品され、空港には返品の山が築か
れているからです。中国製のマスクは、国際的な医療基準を満た
しておらず、使いものにならないからです。
 そのため、マスク用の原料の不織布「メルトブローン」の価格
が暴落し、中国のマスク製造会社は、次々と操業停止に追い込ま
れています。メルトブローンの価格は、一時1トン45万元(約
765万円)まで価格が高騰したものの、今では2000元(約
3万4000円)と、実に225分の1にまで落ち込んでしまっ
ています。なぜ、そんなに下落したのでしょうか。これについて
「NEWSポストセブン」のレポートです。
─────────────────────────────
 中国製マスクが国際的な医療基準を満たしていないことを最初
に明らかにしたのはオランダだった。オランダ保健省は3月28
日、中国から届いた130万枚のマスクについて「フィルターに
欠陥があり、顔にもフィットできない『粗悪品』」と断定し、中
国に送り返した。
 これをきっかけに、他の国々も次々と中国製マスクは不良品だ
として、市場に出回らないように処分するなどしている。オース
トラリア政府は4月初旬、約80万枚を税関で押収。フィンラン
ド政府も4月8日、中国から200万枚のマスクは「すべて不良
品」と認定。EUは「中国製マスクは濾過率が不足しており、感
染のリスクが高まる可能性もあり、使用しないように」と警告。
カナダ政府も4月下旬、100万枚を送り返した。
 極めつけは米食品医薬品局(FTA)で、5月7日、企業60
社以上に対して、米国市場に向け高性能マスク「N95」を輸出
する許可を取り消したのだ。これらの影響をもろに受けたのがマ
スク製造関連の中国企業だ。各国政府によるあまりに厳しい対応
に、中国政府が指導に乗り出し、ほとんどの企業が操業停止処分
を受けることになった。       https://bit.ly/2YGKBJo
─────────────────────────────
 このように、国際社会で中国の評判は低下しています。マスク
外交は、中国のイメージ低下を防ぐための政策で、本来なら世界
各国から感謝されるべき行為なのですが、マスクの大多数が不良
品であることによって、評判は最悪になっています。
 WHOのパンデミック宣言後の3月16日、トランプ大統領は
ホワイトハウスでの記者会見で、次のような発言をしています。
─────────────────────────────
 とにかくこの事態はだれの罪でもないのだから・・・、いや、
もっとも「ウイルス発生の起源」についてまでさかのぼれば、話
は別かもしれないが・・・。       ──トランプ大統領
─────────────────────────────
 産経新聞ワシントン駐在客員特派員である古森義久氏は、この
時期、ワシントンにいて、現在の米国の状況をつぶさに知る立場
にありますが、トランプ大統領のこの「ウイルスの起源」という
発言について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 「ウイルスの起源」というのはいうまでもなく中国であり、中
国政府の隠蔽工作のことである。いまは「だれの罪」でもない、
とはいうが、「起源」に戻れば、別の話だというのである。その
「起源」には「罪」があるという示唆である。本音を率直に、と
きには率直すぎる表現で語るトランプ大統領にしては、抑制され
た言葉だった。アメリカ合衆国の命運がかかるとさえいえる国家
非常事態だからこそ、大統領としては、いまはだれかの罪を問う
ているときではない、という自制からだろう。だがそれでも「ウ
イルスの起源」という言葉がつい出てしまったのだ。
                      ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 現在、トランプ政権の高官──ペンス副大統領、ポンペオ国務
長官、オブライエン国家安全保障担当大統領補佐官らに共通して
いることは、次の事実です。
─────────────────────────────
 このパンデミックは人災である。中国政府の新型コロナウイル
ス感染の拡大への対応は、カバーアップ(隠蔽)だった。そのた
めに国際社会は、適切な対応をするうえで、2ヶ月間もの遅れを
とることとなった。そのすべての責任は中国にある。
                ──小森義久著の前掲書より
─────────────────────────────
 トランプ政権は、共和党保守派ですが、そのトランプ政権と他
の政策においては、ほとんどすべて主張を異にする民主党リベラ
ル派でも、今回の新型コロナウイルスの感染の情報を隠し続けた
中国政府に対しては激しく批判しています。この件に関しては、
米国は一体なのです。
 したがって、仮に大統領選挙でトランプ氏が敗北し、民主党の
バイデン政権になっても、中国に対する批判は何ら変わることは
ないといえます。つまり、今や米国国内での政治的立場の違いに
かかわらず、「中国政府を批判する」というコンセンサスは形成
されているのです。これは、習近平政権にとって深刻な事態であ
るといえます。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/015]

≪画像および関連情報≫
 ●米国務長官「中国、悪辣な独裁政権」・・・習主席にも
  真っ向から批判
  ───────────────────────────
   マイク・ポンペオ米国務長官は、5月20日、中国政府を
  「悪辣な独裁政権」と呼び、圧力のレベルを上げた。ポンペ
  オ長官は習近平中国国家主席の世界保健機構(WHO)の演
  説を批判し、中国が懸念している香港と台湾問題も取り上げ
  て論じた。米国が中国を非難する過程で習主席を直接取り上
  げたことはかなり異例なことである。
   ロイター通信によると、ポンペオ長官は「新型コロナウイ
  ルス感染症に集中するあまり、中国が1949年以降、悪辣
  な独裁政権により統治されてきたという基本的な事実を見逃
  してはならない」という発言で記者会見を始めた。ポンペオ
  長官は「我々は中国が自由主義国家に対して理念的にも政治
  的にも、どれほど敵対的であるのかをかなり過小評価してき
  た。全世界がこの事実に気づき始めている」と指摘した。ま
  た「(中国の)共産党は生きているウイルスのサンプルを破
  壊し、新型コロナの発源地に対する独立的な調査を求めてい
  るオーストラリアに対して経済的報復で脅している。全く正
  しくない」と批判した。
   香港については「香港で何が起こっているのか注視してい
  る」とし「今週、親民主派議員たちが親中派議員たちによる
  不正行為を止めさせようとして攻撃を受けた。このような行
  動は香港が中国本土から高度の自治権を維持しているという
  評価を一層難しくしている」と指摘した。台湾については、
  「台湾の民主主義が世界のモデルとして上昇している。台湾
  は外部の強い圧力にもかかわらず、国民に発言権と選択権を
  与える知恵を発揮した」とほめたたえた。
                  https://bit.ly/2BjqMzW
  ───────────────────────────

オブライエン大統領補佐官.jpg
 
オブライエン大統領補佐官
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2020年06月22日

●「コロナ禍で中国を見る目の大変化」(EJ第5272号)

 現在、米国内で起きている習近平政権非難は、相当広範なもの
になっています。それは、中国寄りといわれる民主党リベラル派
からも、今回の新型コロナウイルス感染の情報を隠蔽し続けた中
国政府へ厳しい批判がぶつけられいることでわかります。
 それを裏付けるのは、2020年1月29日付の「ニューヨー
クタイムズ」紙に載った次のタイトルのコラム記事です。
─────────────────────────────
 コロナウイルスが広がり、全世界が中国の独裁体制への代償
 を払う。          ──2020年1月29日付
                 ニューヨークタイムズ紙
─────────────────────────────
 この記事を書いたのは、ニューヨーク・タイムズのベテラン記
者で、外交コラムニストのニコライ・クリストフ氏です。中国駐
在員を長く務め、中国に関する著作も多く、全米でも中国の専門
家として知られています。東京支局長だった時期もありますが、
日本に対してはあまり好感は持っていないようです。
 2013年12月26日、安倍首相が靖國神社に参拝したこと
に関しても、また、慰安婦のことに関しても、日本を非難する記
事ばかり書いている人です。奥さんが中国人ということも影響し
ているかもしれません。
 それほどの中国派のジャーナリストが、新型コロナウイルスに
関して中国を批判しているのです。これについて、産経新聞ワシ
ントン駐在客員特派員の古森義久氏は、上記のニコライ・クリス
トフ氏の記事の要点について、自著とウェブサイトで次のように
まとめています。
─────────────────────────────
◎中国政府がWHO(世界保健機関)に自国内の新型コロナウイ
 ルスの拡散を正式に通告したのは2019年12月31日だっ
 た。だが、中国内部ではこの情報は隠され、中国政府は対外的
 に感染が武漢市内だけに抑えられたという虚偽の報告をしてい
 た。その間、中国内ではこのウイルスは外国人にしかかからな
 い「愛国ウイルス」だなどという根拠のない噂が広がった。
◎中国政府は2020年1月23日に武漢市の「封鎖」を公式に
 宣言した。武漢市長は「ウイルスについて語ることは1月下旬
 まで許されなかった」と述べた。だが、それまでに武漢市内か
 らは、感染者を含む合計500万人の市民がすでに中国各地、
 世界各地へと移動してしまっていた。
◎感染者の最初の発見から公表までの2ヶ月ほどの期間は、感染
 自体が中央政府の指示で秘密にされた。そのため、各医療施設
 での検査、予防、治療などに必要な医薬品、器具、医療要員な
 どが致命的に不足する結果となった。(中略)
◎今回の情報隠蔽の理由の1つは、習近平主席が近年、公共に必
 要な情報の開示に役立つジャーナリズム、ソーシャルメディア
 非政府団体(NGO)、法律家集団などを体系的に抑圧し、そ
 の情報開示の機能を奪ってしまったことにある。これらの組織
 は以前から抑圧されていたが、習近平政権下ではその度合いが
 一段とひどくなった。           ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
                  https://bit.ly/3dfNhmD ─────────────────────────────
 中国政府は、2019年11月ないし、12月はじめにウイル
スの発生を確認すると、その情報を国内に封じ込め、関連情報を
発信する者を強権で取り締まっています。情報が国外に出ること
を恐れたのです。
 「自分の周囲では原因不明の病気にかかった者が増えている」
とか、「華南海鮮市場には近づくな」というような相当控えめの
情報を発信しただけでも、共産党組織に摘発され、警察に出頭さ
せられたうえで、「虚偽の噂の拡散」の間違いを認める文書に署
名させられるなど、訓戒を受けています。そのため、武漢市民は
病気のことを発信すると、犯罪者になるという噂が広がっていた
といいます。それでいて、武漢市当局は、新型コロナの感染拡大
に対して、医療面の措置を全くとっていないのです。
 中国政府が自国内のウイルスの拡散を正式に通告したのは、昨
年の12月31日のことです。そこから、1月23日の武漢市封
鎖までは、習近平主席とWHOのテドロス事務局長の二人三脚で
情報を隠蔽し続けてきています。推測ですが、早い段階からテド
ロス事務局長は、かなりの情報を掴んでいたものと思われます。
この1ヶ月以上にわたる隠蔽によって、中国からは、春節を利用
し、世界中に感染を広げる十分な数の感染者を世界に送り出すと
いう犯罪的行為を行ったことになります。
 もともとトランプ政権は、中国の人権問題に関して、あまり口
うるさくいう政権ではないのです。しかし、最近の米国には、中
国を政治、軍事、経済、人権などの幅広い領域にわたって批判す
る風潮があります。それが、今回の新型コロナの拡散で、習近平
政権のとった非人道的措置に関して、相当厳しい対応措置をとら
ざるを得なくなっています。
 コロナウイルスの災禍が米国に伝わり、感染が拡大すると、中
国政府の国際規範無視の言動が原因で、人権弾圧を批判する報告
書が続々と出されるようになっています。その主要な報告書には
次の3つがあります。
─────────────────────────────
 1.「2019年度年次報告書/中国に関する議会・政府委
   員会」/2020年1月上旬公表
 2.「北京政府のグローバルなメガホン」/フリーダムハウ
   ス/2020年1月15日
 3.人権擁護の国際組織「人権ウオッチ」による報告書(中
   国での人権弾圧)/2020年1月中旬公表
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/016]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏、新型コロナで中国威嚇 「関係を遮断も」
  ───────────────────────────
  【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は5月14日放映
  のFOXビジネステレビのインタビューで新型コロナウイル
  スへの中国の対応について「とても失望している」と重ねて
  不満を示した。同時に「私たちは多くの措置をとることがで
  きる。中国との関係を遮断することもできる」と表明した。
   トランプ氏は「もし関係を途絶えさせたら、5000億ド
  ル(約54兆円)を節約できる」とも述べた。2国間貿易の
  全面停止も念頭に強力な報復措置に動く姿勢を示したが、米
  大統領が断交とも受け取れる強い表現で中国を威嚇するのは
  異例だ。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とは「良
  好な関係にあるが、今は彼と話したくない」と語った。トラ
  ンプ氏の一連の発言には、大統領選を控えて米国での感染拡
  大について批判の矛先を中国に向けるため対中強硬をアピー
  ルする狙いがある。
   ニューヨーク証券取引所に上場している中国企業への監視
  を強める必要性にも言及した。米規制当局は、中国政府に阻
  まれ、米国に上場する中国企業の監査記録を審査できていな
  い。不正会計を防ぐ上で大きな障壁となっていた。米国側が
  監視強化や基準の厳格適用を進めれば、中国企業が米国での
  上場を取りやめ、ロンドンや香港の取引所に移るとの見方も
  示した。トランプ政権は年金基金にも圧力をかけた。連邦職
  員向けに確定拠出年金を運営する連邦退職貯蓄投資理事会は
  13日、中国株への投資を延期すると発表した。米国の年金
  マネーが中国企業の成長を支えるのを阻む狙いだ。
               https://s.nikkei.com/2USZtTV
  ───────────────────────────

ニコライ・クリストフ記者.jpg
ニコライ・クリストフ記者
 
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2020年06月23日

●「『チャイメリカ』は終了している」(EJ第5273号)

 コロナ禍によって米中の対立が深刻化しつつあります。米国と
中国は、既に冷戦に突入しており、2019年1月が「第1次冷
戦」、今年の1月が「第2次冷戦」と呼ぶ学者もいます。コロナ
禍によって明らかにフェーズ(局面)が変化したからです。何が
起きているのかというと、米中の経済のデカップリング(切り離
し)が進みはじめているといえます。
 ニーアル・ファーガソン氏という英国の歴史学者がいます。米
フーバー研究所シニア・フェローを務めていますが、2020年
6月19日付の日本経済新聞に、ファーガソン氏のインタビュー
記事が掲載されています。今日はこれについて考えます。
 「チャイメリカ」という言葉があります。2007年に、ファ
ーガソン氏が、米中の経済的な相互依存関係のことをそう呼んだ
のです。チャイメリカは、ギリシャ神話のキメラをイメージして
ネーミングしたものです。キメラとは、ライオンの頭とヤギの胴
体、蛇の尻尾を持つ怪物です。
 2008年のリーマンショック以後の10年間は、チャイメリ
カによって、米中の経済関係は表面上はうまくいっているように
見えたのですが、トランプ氏が大統領選挙で勝利したとき、チャ
イメリカは死を迎えたとファーガソン氏はいいます。トランプ氏
は、中国が米国の製造業を破壊し、技術を盗んでいると訴えた唯
一の大統領候補だったからです。
 今回のコロナ禍によって、経済危機は地政学的にどのような影
響を及ぼすかという質問に対して、ファーガソン氏は次のように
答えています。
─────────────────────────────
 米国や中国、欧州連合(EU)といった超大国は機能不全をさ
らけ出し、死者数が拡大した。感染症の大流行のような危機下で
は、(大国ほど損害が拡大する)「規模の不経済」が如実に表れ
る。私がイタリア国民だったら、危機に団結して対応できないE
Uに幻滅したはずだ。EUが解体に向かうとはみていないが、統
合が深化することもない。うまく対処しているのは台湾や韓国、
イスラエル、アイスランドといった比較的小さな国・地域だ。感
染症のみならず、あらゆる危機に対して、政府の防衛意識が高い
からだ。           ──ニーアル・ファーガソン氏
               https://s.nikkei.com/2YUqp6H ─────────────────────────────
 これに加えて、新型コロナウイルスの感染の防疫ということに
なると、中国のような権威主義にして監視社会の国家の方が、民
主主義国家より有利ではないかと質問すると、ファーガソン氏は
次のように答えています。
─────────────────────────────
 全くそうは思いません。このパンデミックは、一党独裁国家が
初期の不手際を隠そうとした失敗で広がったものです。台湾や韓
国は民主主義です。米国や英国のようにうまく対処できなかった
国もありますが、ドイツのように対処した国もあります。これは
パンデミックには権威主義が必要だといった単純な話ではありま
せん。      ──2020年6月19日付の日本経済新聞
◎監視社会国家の方が有利かの質問に対して・・・
 過去の世界大戦で見られたように、自由主義社会でも非常時は
個人の自由が制限される。だが、国家主導の監視社会がテクノロ
ジーを使ってウイルス検査や接触関係の追跡を実施するのは明ら
かに危険だ。個人の自由とは両立しない。台湾の取り組みは注目
に値する。全地球測位システム(GPS)による監視の対象を海
外から戻ってきた人に限定した。監視社会までいかずに、感染拡
大の阻止に成功している。個人情報は自分で管理し、特別な場合
に限って一部を国家に委ねる。ハイテク企業にも渡さない。21
世紀社会において重要なことだ。https://s.nikkei.com/2YUqp6H
─────────────────────────────
 問題は、2008年のリーマンショックのときの金融危機とど
う違うかについて聞いたときのファーガソン氏の次の言葉です。
コロナ後の経済再生については、改めてEJでもしっかり考える
必要があると思います。
─────────────────────────────
 金融危機と同じように考えがちですが、分類を間違えていると
思います。これはパンデミックの結果、経済的なロックダウンに
よって、起きたことです。景気刺激策という呼び方は誤りです。
ロックダウン経済を刺激することはできません。失業者や休業し
た企業の救済措置を続けても、多くの企業が破綻し、飲食店が閉
じるでしょう。危機後に消費者の意欲がどの程度戻るのかを見極
める必要がありますが、金融市場は、一部のIT企業以外の株価
を正しく評価していないと私は考えます。
         ──2020年6月19日付の日本経済新聞
─────────────────────────────
 米国大統領選の結果はどうなるか。8日に発表されたCNNテ
レビの調査は「バイデン氏に投票する」と答えた人が55%に上
り、トランプ氏の41%を14ポイント上回っています。ロイタ
ー通信の調査でもバイデン氏は47%で、トランプ氏を10ポイ
ントリードしています。失業率が深刻なので、トランプ氏にとっ
て頭の痛い問題です。しかも、コロナの第2波が来ると、満足に
集会を重ねることができないトランプ氏にとってきわめて不利で
す。中国はそこに期待をかけているかもしれませんが、ファーガ
ソン氏は次のようにいっています。
─────────────────────────────
 バイデン氏が勝利しても中国に対する政策の方向は変わらない
と思います。この問題では超党派の合意があるからです。議会は
中国に強硬ですし、世論も急激に変化しています。第2次冷戦は
定着したと考えるべきです。唯一の問題はこれが「熱戦」になる
かどうかです。  ──2020年6月19日付の日本経済新聞
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/017]

≪画像および関連情報≫
 ●世界的歴史学者が読み解く「新型コロナが明らかにした
  米中“新冷戦”の利点」
  ───────────────────────────
   スコットランド出身の歴史学者でスタンフォード大学フー
  ヴァー研究所上級研究員のニーアル・ファーガソン。200
  4年に「タイム」誌の「世界でもっとも影響力のある100
  人」に選ばれた、いま世界が、最も注目する知識人のひとり
  だ。「文明:西洋が覇権をとれた6つの真因」(勁草書房)
  で中国の台頭と西洋の没落を論じたファーガソンは、新型コ
  ロナウイルス感染症(COVID−19)が米中間の「新た
  な冷戦」を改めて明らかにしたと分析する。仏誌「ル・ポワ
  ン」がおこなったインタビューをお届けする。
  ──現在のコロナ危機は国際秩序にどのような影響をもたら
  すでしょうか。あなたの質問に答えるために、まず「国際秩
  序」とは何かについて考えてみましょう。1年前、私は英紙
  「タイムズ」の日曜版「サンデー・タイムズ」の討論シリー
  ズの最初に、「新たな冷戦」について書きました。そのなか
  で私は、新たな冷戦はすでに始まっており、中国人たちとは
  逆に、私たちはまだそのことを知らない、という考えを主張
  しました。今回のパンデミックの影響を理解するための最良
  の方法は、感染拡大によって新たな現実が明らかになるとい
  う視点です。中国と米国の関係は、コロナ危機の最初から悪
  化の一途を辿りました。そのうえ、中国にこの危機の責任が
  あるとしても、中国はパンデミックを最も上手くコントロー
  ルしている国の1つであり、対照的に米国はパンデミックの
  管理が最悪な国家のうちの1つとなっています。
                  https://bit.ly/2zMrd5c
  ───────────────────────────

ニーアル・ファーガソン.jpg
ニーアル・ファーガソン
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2020年06月24日

●「日本政府は初動を誤っていないか」(EJ第5274号)

 新型コロナウイルスの感染に対する日本政府の対応について考
えてみます。6月20日現在の世界の主要各国の感染者数と死者
数は、次のようになっています。
─────────────────────────────
              2020年6月20日現在
            感染者数       死者数
  アメリカ  2231325人   119109人
  ブラジル  1032913人    48954人
   ロシア   569063人     7841人
  イギリス   301815人    42461人
  イタリア   238415人    34561人
  フランス   195953人    29619人
   ドイツ   188586人     8854人
   カナダ   100629人     8346人
  中国本土    83352人     4634人
   日 本    18528人      968人
                 https://tmsnrt.rs/37QB86y ─────────────────────────────
 これをみると、日本は感染者数で世界第50位、20日現在、
死者数は1000人以下です。これは、中国との付き合いが深い
日本としては、世界各国に比べると、非常に低い数値であり、数
値から見る限り、日本政府は新型コロナウイルスの感染拡大を押
さえ込んだといえます。
 しかし、日本政府が感染防止のためにやったことを分析すると
いくつもの大きな手抜かりがあり、正しく対応していれば、被害
をもっと小さくできたはずです。もともと日本人は、衛生意識が
強い国民であり、政府の対応が遅れても、この程度の被害に今の
ところ止めているのです。これは大変なことです。
 日本政府の感染拡大に対する対応の遅れは、日本での最初の感
染者の何人かを見ればよくわかります。
─────────────────────────────
  1.1月16日 中国人男性 神奈川県在住 神奈川県
  2.1月24日 中国人男性  武漢市在住   東京
  3.1月25日 中国人女性  武漢市在住   東京
  4.1月26日 中国人男性  武漢市在住  愛知県
  5.1月28日 中国人男性  武漢市在住  愛知県
  6.1月28日 日本人男性  奈良県在住  奈良県
  7.1月28日 中国人女性  武漢市在住  北海道
  8.1月29日 日本人女性  大阪府在住  大阪府
─────────────────────────────
 日本での最初の感染者の発見は1月16日、神奈川県に在住す
る30代の中国人の男性であり、武漢に里帰りし、日本に帰って
きて、感染が判明したのです。武漢の実家の父親も新型コロナウ
イルスに感染しており、彼はその濃厚接触者であるといえます。
感染経路は明確です。
 日本での感染者の2人目は、1月24日に東京都内の病院で確
認された武漢市在住の40代の男性で、武漢から香港経由で日本
に19日に入国し、症状が出たので、東京の病院で治療を受けて
感染が判明したのです。
 第3人目から第5人目までもすべて武漢在住の中国人の日本へ
の観光者です。第3人目は、1月25日に東京の病院でコロナと
診断された30代の中国人女性であり、武漢からは21日に日本
に入国しています。
 第4人目と第5人目は、ともに武漢在住の中国人の男性で、1
月26日と1月28日に、愛知県の病院と医療施設で、コロナの
感染が確認されています。
 日本での第1人目から第5人目の感染者は、すべて武漢在住の
中国人で、直前に感染地の武漢から日本に入国しているのです。
しかも、第4人目と第5人目は、1月22日に日本に入国してい
ます。第1人目から第5人目までは、「武漢→日本」のルートで
入ってきており、日本政府はこのルートを1日も早く閉じる必要
があったはずです。しかし、日本政府は何もせず、中国からの観
光客をフリーパスで受け入れていたのです。もっとも、空港で水
際対策とか称して、検温チェックぐらいはしていたはずですが、
それ以外は何もせず、入国を許していたわけです。
 日本政府として、そんなことはわかっていたと思いますが、習
近平主席の国賓での来日(予定は4月)があって、この時点での
武漢からの入国拒否の決断はできなかったのではないかと思われ
ます。しかし、国民の生命と財産を守るのが政府の仕事であるな
らば、この不決断は政府に重大な責任があります。
 それに1月22日といえば、WHOが中国の習近平主席の要請
を受け入れて、緊急事態宣言を見送った日です。もし、このとき
WHOが緊急事態宣言を発出し、日本がこれを理由にして、直ち
に中国からの、とくに武漢からの旅行者の入国拒否を行っていれ
ば、やはり感染者は大幅に減っていたはずです。そういう意味に
おいて、WHOの対応は厳しく批判されるべきですし、テドロス
事務局長は責任をとって辞任すべきです。
 第6人目の感染者は、奈良県在住の60代の日本人男性ですが
彼は観光バスの運転手であり、武漢からの中国人観光客グループ
を乗せたバスの運転を担当し、長時間を観光客とともに車内で過
ごしていたことからの感染と思われます。これは、このウイルス
がヒトからヒトに移ることの証明になります。
 第7人目は、武漢市在住の40代の中国人女性で、北海道を観
光旅行中に感染が判明しています。第8人目は大阪府在住の日本
人女性であり、武漢市からの団体旅行客を案内するバスガイドを
務め、感染しています。バスの運転手と同じ2次感染者です。
 中国政府は、23日に武漢市を封鎖しているのに、日本政府は
依然として、中国からの旅行客へ門戸を開いて、やすやすと受け
入れていたのです。これは、政府の大失策であるといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/018]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の新型コロナウイルス対策が評価されない理由
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス感染症(COVID−19)時代にお
  ける「英雄」的な場所と、「悪者」的な場所が明らかになり
  つつある。前者には香港、韓国、台湾が含まれる。後者は特
  に中国だ。北京はウイルスを制圧したかもしれないが、それ
  は明らかに独裁主義的なやり方であった。否、制圧できたの
  だろうか?そのデータには大きな疑問が残る。
   日本はこれらの両極の間の不安定なところに位置づけられ
  る。成熟し、安定した民主主義国家であり、隣国の韓国より
  も新型コロナウイルス感染症による死亡率が低い。人口が2
  倍以上で、国民は世界で最高齢であるにもかかわらずだ。日
  本のこの人口統計学的特徴は、パンデミックに対する同国の
  独特の脆弱(ぜいじゃく)さをもたらしている。
   しかし日本は、主要メディアやソーシャルメディアで正当
  な評価も敬意も得られていない。多くの議論において、日本
  は無視されるか中国と並列に扱われている。新型コロナウイ
  ルスへの対応に関して外交上の批判すら受けている。
   なぜだろうか?まさか、検査なし?
   日本に対する主な疑念は、検査を広範囲に行わないことで
  意図的に統計上の新規感染者数を抑えてきたのではないか、
  というものだ。これは疑惑というより単なる事実に近い。日
  本の方針は当初から、せきが出て不安な全国民を病院に向か
  わせて待合室をいっぱいにするような事態を避けるというも
  のであった。認めようと認めまいと、正当な戦略ではある。
                  https://bit.ly/2zQjR0H
  ───────────────────────────

春節における中国人観光客/銀座.jpg
春節における中国人観光客/銀座
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2020年06月25日

●「フリーパスの中国からの入国規制(EJ第5275号)

 ひとつ謎があります。中国政府は、1月23日に武漢市を閉鎖
しています。それに加えて、24日には、中国国内での団体旅行
を禁じ、さらに3日後の27日には、中国から海外ヘの団体旅行
を禁じています。
 このことを踏まえて、次の日の28日から日本政府は、武漢市
にいる日本人を対象に、緊急避難のための政府特別チャーター機
を飛ばしています。日本政府は、この第1便を含めて2月17日
まで、計5便のチャーター機を飛ばし、日本人やその家族の中国
人も含めて826人を日本に受け入れています。そのうちの13
人が新型コロナウイルスの感染者と認定されています。
 つまり、その時点で日本政府は、武漢にいることは感染のリス
クが高く、感染した場合、十分な医療を受けられる保障もないの
で、中国政府と交渉して、826人を日本に戻したのです。それ
だけのことをやっておきながら、1月23日から月末まで、日本
は門戸を開いて中国人を受け入れています。これは、大きな謎と
いえます。不思議なことに、メディアも、中国人の入国を規制す
べきであるとの主張をあまりしていないのです。
 普通の国であれば、中国政府が武漢を封鎖した23日の時点か
少し遅れても中国が海外への団体旅行を禁じた27日の時点で、
中国人の入国を制限するはずです。中国政府自身が海外旅行を禁
じているのですから、やるのは当然のことです。実際に、北朝鮮
ロシア、オーストラリア、フィリピン、香港、タイ、台湾、モン
ゴルなど、多数の国や地域が、中国滞在歴のある外国人の入国を
全面停止しています。それなのに、日本はなぜフリーパスで中国
人を受け入れていたのでしょうか。
 注目すべきは、香港と台湾です。いずれも感染地の中国に隣接
し、普段は中国本土と人間の交流が大量にあります。まして香港
は、行政権限こそ異なるものの、中国の一部であり、中国との人
の往来はきわめて盛んです。
 その香港は、1月28日には、中国からの団体、個人いずれも
原則として、すべての人間の入境を止めています。台湾でも、1
月中旬から、中国の湖北省に滞在した人の来訪を止め、2月に入
ると、中国本土の住民の流入をすべて止めています。その結果、
香港と台湾の感染者は非常に少ないのです。もし、日本も23日
の中国政府の武漢封鎖の時点で入国を制限していれば、感染者は
もっと少なかったと思われます。
 この間の事情について、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の
古森義久氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本は、他の多くの国や地域がすでにとっていた厳しい水際で
のウイルス侵入防止措置の波には、あえて乗り遅れたといえる。
「あえて」というのは、この爆発的な感染症の広がりを日本では
官民ともにその公表の当初から熟知していたからだ。そのうえ日
本国内での実際の感染者発生がみな「武漢→日本」という直線的
な経路で起きていたことも、周知の事実だったからだ。
 他の多くの諸国が中国滞在者の入国を拒否した段階でも、そし
て、中国滞在者の入国こそが日本での感染拡大の主要因であるこ
とが明確になっ段階でも、日本は中国からの入国は無制限のまま
だったのである。
 日本政府は2月冒頭にやっと「最近まで武漢のある湖北省内に
滞在していた外国人」を入国拒否の対象とした。2月12日から
は、湖北省に加えて隣接の浙江省の滞在者も入国拒否の対象に含
めた。だがその時点では、中国の他の地域から日本にくる人たち
への規制はなにもなかった。ウイルス感染症はすでに中国全域に
広がっていたのに、だった。
 だがその部分的な「拒否」も空港での入国希望者の自己申告に
頼る場合が多く、現実はザル規制だった。私はその時期に成田空
港から帰国、入国した複数の知人たちに入国管理の実態を尋ねて
みた。すると、「湖北省、浙江省での滞在」という規制要件も入
国者が口頭でイエスか、ノーかを申告するだけだったという。そ
れでは規制がないことに等しいではないか。  ──古森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 驚くべきことです。古森氏によると、「湖北省/浙江省での滞
在歴のある人」の入国を拒否するといっても、入国のさい、入国
審査の係員がそのことを口頭で質問し、「ノー」といえば、入国
できてしまうのです。これではザル規制であり、日本政府は本気
で感染者の入国を阻止する気はなかったということになります。
1月下旬だけで、中国から日本へ34万人は入国しており、その
うちのかなりの人数が北海道に向い、北海道での感染拡大を引き
起こしています。今や北海道は、中国人の最大の人気のスポット
になっているからです。
 米国はどうだったでしょうか。トランプ政権は、日本と同様に
1月中はまったく規制せず、中国からの入国を受け入れていたの
です。そこに少し油断があったといえます。1月末に中国からの
外国人の入国をすべて禁止するというきわめて厳しい措置をとっ
ていますが、このときはすでに遅く、多くの中国からの外国人が
米国に入国してしまっていたのです。
 これらの人々が2月〜3月にかけて、ニューヨーク市などで、
大感染を引き起こすことになります。米国をはじめとする西欧の
諸国は、マスクを付ける習慣はなく、一度感染してしまうと、と
めどもなく感染が拡大してしまうのです。
 4月になって、ワシントンポスト紙の報道でわかったことです
が、1月〜2月にかけて、トランプ大統領は、情報機関から新型
コロナウイルスについて繰り返し警告を受けていましたが、トラ
ンプ大統領は、新型コロナウイルスがパンデミック化する可能性
を軽視する発言を繰り返していたことがわかったのです。そこに
大きな油断があったといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/019]

≪画像および関連情報≫
 ●対策早ければ死者半分 米大推計、トランプ氏反発
  ―─新型コロナ
  ───────────────────────────
   【ワシントン時事】米国で「社会的距離」などの対策が、
  1週間早く講じられていれば、死者は半分以下に抑えられて
  いた。米コロンビア大の研究チームが新型コロナウイルスに
  関する研究報告で推計を公表した。対応の遅れが感染拡大を
  もたらしたと解釈できる内容で、トランプ大統領は反発して
  いる。
   同大チームは「米国内の感染拡大が本格化した2月から対
  策が始まった3月中旬まで」と、「対策開始から5月上旬ま
  で」の感染拡大ペースを郡単位で調べた。とりわけ都市部で
  「社会的距離などの対策によって、ウイルス拡散が大幅に減
  少した」と結論付けた。
   その上で、5月3日時点で約6万5000人だった死者数
  について、対策開始が1週間早ければ、55%少ない約2万
  9000人にとどまり、感染者数も62%少なかったと試算
  した。2週間早い3月初めに対策を講じていれば、死者は約
  6分の1の1万1000人余りだったと推計している。
   トランプ政権は当初、新型コロナの影響を楽観していた。
  景気に悪影響を及ぼす経済活動規制などの措置に後ろ向きで
  野党民主党から「対策が後手に回った」と批判されている。
   5月20日に公開されたコロンビア大の推計を聞いたトラ
  ンプ氏は21日、記者団に「私は誰が考えるよりも早く、反
  対を押し切って(感染が最初に拡大した)中国からの入国禁
  止を決めた」と反論。「コロンビア大は非常にリベラルだ」
  と述べ、政治的な意図があると訴えた。ベトナム戦争をはる
  かに上回る米国人が死亡する事態を前にして、神経質になっ
  ている。            https://bit.ly/3dkuaaT
  ───────────────────────────

空港での検疫体制は万全だったか.jpg
空港での検疫体制は万全だったか
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2020年06月26日

●「なぜ、日本は中国に配慮するのか」(EJ第5276号)

 新型コロナウイルスの日本の感染症対策については賛否の意見
が分かれています。しかし、日本側の中国に対する過分な気遣い
があったとする記事を2月20日付のワシントン・ポスト紙は報
道しています。
─────────────────────────────
 “Critics said Abe appeared keener to avoid offending
  China ahead of a visit by President Xi Jinping
 planned for April than tackling the problem head on.”
 「安倍は目の前にある差し迫った問題に取り組むよりも、4月
に計画されている習近平の訪日を前にして、ともかく中国を不愉
快にさせてはならないと必死なのである」と多くの評論家が言っ
ている。 ──2020年2月20日付、ワシントン・ポスト紙
                  https://bit.ly/312LsH9 ─────────────────────────────
 2月に入って日本は、「湖北省に滞在歴のある」中国人の入国
は制限したものの、2月12日までは、中国のそれ以外の地域か
らの観光客などは受け入れています。そして2月13日からは、
湖北省にプラスして浙江省の滞在歴のある中国人の受け入れも制
限していますが、それ以外の地域からは、フリーパスで入国でき
たので、きわめて緩やかな規制といえます。
 このような甘過ぎる日本の対応に対して米国は、1月31日に
「自国民以外の中国全域からの入国者は全員拒否」を宣言してお
り、大きな違いがあります。遠藤誉氏によると、これに対して、
当の中国政府は米国の対応を「非常に非友好的である」として強
く非難する一方、日本のそれを「非常に友好的な国」として、絶
賛の嵐を送っているといいます。
 これだけではないのです。どう考えても、中国へのゴマ刷り的
行為としか思えないことを安倍政権はやっています。遠藤誉氏の
ブログから2月20日付の記事を引用します。
─────────────────────────────
 2月7日、自民党の二階幹事長が公明党の斎藤幹事長と共に東
京にある中国大使館を訪れ、中国に新型肺炎への対応に関して、
(経費的などの)支援を申し出ただけでなく、中国が新型肺炎と
実によく闘っていると、WHOのテドロス事務局長並みに習近平
を褒めそやした。
 そのため、中国の中央テレビ局CCTVでは、連日このニュー
スをくり返し報道した。とくに二階幹事長が孔鉉佑・駐日中国特
命全権大使に「隣国であるだけに、隣の家で何か起こったのと同
じことだ」と言ったその場面をクローズアップしていた。
 二階氏の中国絶賛という一連の流れの中で、中国政府は、2月
15日、王毅外相に、ドイツのミュンヘンで開催された第56回
ミュンヘン安全保障会議において、茂木外相と会談させ、習近平
の国賓としての4月来日に関して、「これまで通り実行する」意
思確認を行わせている。       https://bit.ly/2V81fRf
─────────────────────────────
 この二階幹事長の中国へのゴマ刷りは、WHOのテドロス事務
局長のそれとまったく同じです。日本がこんなことをしておいて
テドロス事務局長を批判できません。このようなニュースは、日
本のメディアは報道しないのです。安倍政権は、なぜそこまで中
国に低姿勢なのでしょうか。
 1月23日のことです。23日といえば、中国政府が武漢市を
封鎖した日です。その日に安倍首相は、在中国日本大使館のウェ
ブサイトに次のメッセージを寄せています。WBSの滝田洋一氏
の本に出ています。もちろん現在では、この安倍首相のメッセー
ジは削除されています。コロナ禍がなければ安倍首相がこのよう
なメッセージを出すことはわかりますが、よりによって武漢封鎖
の日に掲載していることは大いに疑問があります。
─────────────────────────────
 春節に際して、そしてまた、オリンピック・パラリンピック等
の機会を通じて、更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽し
みにしています。その際、ぜひ東京以外の場所にも足を運び、そ
の土地ならではの日本らしさを感じて頂ければ幸いです。
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 安倍首相が中国に気を遣う理由は3つあると思います。1つは
中国からの観光客が日本のインバウンド市場において最大の消費
者だということです。2つは、4月には習近平国家主席が国賓と
して来日することが予定されていたこと。そして、3つは7月に
は東京オリンピックを控えていたことです。こういう日本にとっ
て大切な時期に、コロナ禍が起きたのです。日本にとって不幸と
しかいいようがありませんが、安倍首相にとって中国への配慮が
頭をよぎったとしても不思議ではありません。
 台湾の「今周刊」のブログによると、なぜ、日本が中国に気を
遣うのかについて、次のように書いています。
─────────────────────────────
 日本政府観光局(JNTO)によると、中国からの訪日観光客
数は、2015年に韓国と台湾を抜いて、1位に躍り出た。その
後、中国人観光客数は増加の一途をたどり、2019年には、延
べ959万人が日本を訪れたという。これは訪日外国人観光客の
30%を占めており、2位の韓国18%、3位の台湾15%を大
きく引き離している。
 中国からの訪日客は、数の多さだけでなく、消費力もすさまじ
い。中国人観光客の日本における旅行消費額は、2018年に、
1・5兆円にのぼった。これは全体の34%を占める数字だ。言
い方を変えると、2014年に安倍首相が打ち出した「観光立国
政策」に、中国が大きな貢献をしたということだ。そんな上客を
軽くあしらうことなどできるだろうか。https://bit.ly/3dtaimc
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/020]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ感染拡大でも、日本が「中国人」を受け入れ
  続ける理由
  ───────────────────────────
   いよいよ日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大が本格
  的に始まった。というよりも、2月4日にタイ保健省が、1
  月下旬に日本を旅行したタイ人夫婦が感染したと報告をした
  ことからも、単に我々が認識していなかっただけで、ずいぶ
  ん前から国内では感染拡大が始まっていた可能性が高い。
   つまり、3700人を「軟禁」したダイヤモンド・プリン
  セスの前で、マスコミが「速報です!また新たな感染者が確
  認されました」なんてお祭り騒ぎをしていたときには既に、
  日本のいたるところで「スーパー・スプレッダー」(一度に
  多人数を感染させる患者)が徘徊(はいかい)し、満員電車
  であなたの隣でゲホゲホやっていたかもしれないのだ。
   なんて話を聞くと、「すべては安倍政権のずさんな危機管
  理が悪い!責任をとって総辞職せよ!」といきり立つ方も多
  いかもしれない。
   ご存じのように、454人(17日時点)という「史上最
  悪の船内感染」となったダイヤモンド・プリンセスの対応を
  アメリカなどが批判している。ニューヨーク・タイムズは、
  「公衆の衛生に関わる危機について『こうしてはいけない』
  と教科書に載る見本だ」など笑いものにしているのだ。
   中世からペストなどの「伝染病」と長く戦い、クルーズ文
  化の発祥でもある欧米では、「汚染された船内」に乗客を閉
  じ込めるのは二次、三次感染を引き起こす「悪手」という位
  置付けで、隔離するにしても、ちゃんと生活ができて、当局
  側もしっかりと監視下における施設を用意するのが常だ。
                  https://bit.ly/2ClcLlx
  ───────────────────────────

安倍首相の国会答弁.jpg
安倍首相の国会答弁
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2020年06月29日

●「世界で最も危険な場所それは日本」(EJ第2577号)

 中国への過分の配慮があるのではないかという疑いが持たれて
いる日本の新型コロナウイルスへの防疫体制にとって不幸だった
のは、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で起きた
集団感染です。ダイヤモンド・プリンセス号は、約11万6千ト
ンの大型旅客船であり、船籍は英国、航行会社は米国企業だった
のです。なお、この船は日本で建造されています。つまり、日本
生まれなのです。
 ダイヤモンド・プリンセス号は、1月20日に横浜港を出港し
鹿児島、香港、ベトナム、台湾、沖縄の各地に寄港して、2月3
日に横浜に帰港しています。船内では、航行中の1月25日に、
80代の旅客の男性が香港で下船した後、新型コロナウイルスの
感染が発覚したことがわかり、日本政府当局は、ダイヤモンド・
プリンセス号を横浜港に隔離して、船内の乗客乗員のウイルス検
査を実施したところ、次々と感染者が発見されたのです。
 横浜港に停泊した時点では、乗客・乗員は次の通りです。
─────────────────────────────
 ◎乗船者全員 ・・・ 3711人
     乗客 ・・・ 2666人(日本人:1281人)
     乗員 ・・・ 1045人
 ◎陽性判定者 ・・・  705人 (陽性率18・9%)
     死者 ・・・    6人 (致死率0・85%)
─────────────────────────────
 2月の中旬までは、新型コロナウイルスの感染拡大といえば、
中国の湖北省、なかでも武漢が中心でしたが、ダイヤモンドプリ
ンセス号のニュースが世界に広がると、感染拡大の話題の中心は
日本に移っています。メディアはまるで日本国内で感染が広がっ
ているように報道したのです。これについて、古森義久氏は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 この感染者の急増は、当初は日本国内での感染者として扱われ
全世界から注視されることとなった。同船の乗客たちは船内に閉
じこめられた形となり、その隔離のなかで感染者の数が連日、急
速に増えていくという状態となった。
 こうした窮状は日本側のコロナウイルスの検査実施能力が人数
的にまだ限られていたことや、船内の防疫措置が完全ではなかっ
たことが原因とされた。結果として世界各国のメディアがこの状
況「閉じ込められた船内での恐怖のコロナウイルスの感染拡大」
として報道した。 ──古森義久著/『新型コロナウイルスが世
界を滅ぼす/非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 この時期、米国は新型コロナウイルスの感染が広がっておらず
米国としては、世界最高といわれるCDC(米国疾病管理予防セ
ンター)があって、ウイルスの感染など問題ではないというスタ
ンスだったので、米国のメディアは、日本の対応をコンテンパン
に批判したのです。この時期のニューヨーク・タイムス紙とワシ
ントンポスト紙は、次のように日本を批判しています。
─────────────────────────────
◎2020年2月11日付、ニューヨーク・タイムズ紙
 日本政府は、公衆衛生危機の際にけっして行ってはならない対
応をしており、教科書に載るやってはならない見本である。
◎2020年2月13日付、ワシントンポスト紙
 日本政府は、乗客の検査と下船のために、なぜもっと迅速な対
応が取れなかったのか。乗船している乗客乗員は、感染の危険に
さらされ続ける。
◎2020年2月19日付、ニューヨーク・タイムズ紙
 日本の対応が感染症に関する専門知識を必ずしも持ち合わせて
いない公務員によって行われていることが問題である。日本には
疾病管理を専門に扱う政府機関がない。https://bit.ly/3eyilzp
─────────────────────────────
 米国において、新型コロナウイルスの感染者が見つかったのは
1月21日のことです。しかし、このときの感染の主戦場は武漢
だったので、誰も気にとめている様子はなかったのです。それで
いてWHOが1月30日に緊急事態宣言(PHEIC)を発出す
ると、米国務省は同日、中国全土への渡航禁止令を出し、31日
には中国訪問者の入国拒否発表しています。アレックス・アザー
保健福祉長官は「公衆衛生に関する緊急事態」を宣言。過去14
日以内に中国を訪れた外国人に対し、入国を禁止する措置をとり
また、過去14日以内に湖北省を訪れた米国人に対しても、14
日間は、自宅などで待機することを命令しています。初動はきわ
めてパーフェクトだったのです。
 その頃のトランプ大統領が何を考えていたか、トランプ氏のツ
イートをご紹介することにします。
─────────────────────────────
◎1月22日:中国から来たのは1人で、我々はその人を管理下
 に置いている。まったく問題ない。
◎2月 2日:中国から来るのをほぼ抑え込んだ。
◎2月10日:4月までには、理論上、少し暖かくなれば、奇跡
 的に消え去るようだ。それが本当だと願っている。ただ、我々
 の国はよくやっている。習(近平)国家主席と話をしたが、中
 国はものすごい努力をしている。きっと、すべてうまく行くと
 思っている。
◎2月11日:この国では、基本的に12人しか感染者がいない
 し、そのほとんどは回復していて、完全に回復した人もいる。
 だから実際にはさらに少ない。
◎2月24日:新型コロナウイルスはアメリカではほぼ掌握され
 ている。すべての人および関係各国と連絡を取っている。CD
 CとWHOは精一杯、非常に賢明な取り組みを続けている。
                  https://bbc.in/2CBVGUB ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/021]

≪画像および関連情報≫
 ●日本批判、次は自国へ/「対岸の火事」終わる―新型肺炎・
  クルーズ船隔離
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイ
  ヤモンド・プリンセス」から下船が始まった。壮大な「隔離
  の実験」(英紙ガーディアン)と報じられた2週間が終わり
  下船した日本人以外の乗客乗員は順次帰国。海外各紙が「対
  岸の火事」として載せた日本への批判は、次は自国に突き付
  けられている。
   英紙サンは2月18日、ダイヤモンド・プリンセスを「疫
  病船」と見出しに掲げ「隔離計画にしくじって、中国本土以
  外で最大の感染拡大を引き起こした」と日本の対応を非難し
  た。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも17日、船内
  で感染が拡大した点を問題視し「2週間も船内に大勢を押し
  込めた日本政府の方針に、日本国外の専門家からは疑問の声
  が上がっている」と指摘した。
   米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソ
  ニー・ファウチ所長は、17日の米紙USAトゥデーに対し
  「隔離は失敗した」と断言。「船の中でどんどん感染した。
  船内で隔離が甘かったからだ」と批判した。
   英紙ガーディアンも18日、ダイヤモンド・プリンセスを
  「感染で煮え立っている鍋だ」と語る専門家の言葉を紹介。
  ブルームバーグ通信は19日、日本が「世界で最も危険な場
  所の一つになりつつある」と伝えた。
                  https://bit.ly/2A2iVpX
  ───────────────────────────

横浜港のダイヤモンドプリンセス号.jpg
横浜港のダイヤモンドプリンセス号
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2020年06月30日

●「米国ではコロナはどう感染したか」(EJ第5278号)

 米国が中国への人の出と、中国からの人の入りの双方を禁じる
──これは中国との人の往来の遮断ですが、一見すると、実に手
際良い処置に見えます。トランプ大統領としては「どうだ、これ
でもう大丈夫だ」という気分だったのでしょう。
 しかし、トランプ大統領のこの決断は、今になって考えると、
いささか遅すぎたのです。それは、この措置が、WHOの緊急事
態宣言(PHEIC)に基づいて行われているからです。WHO
のこの措置は、本来であれば、遅くとも1月22日に発出される
べきだったのですが、中国の習近平主席の要請で、テドロス事務
局長が根回しし、30日までに延期させたからです。
 ときあたかも中国の春節の時期(1月24日〜30日)であり
中国の大量の旅行団が米国内に入ってしまっています。テドロス
事務局長は、「WHOとしては、国際的な貿易と渡航の制限を求
めない」といい、中国に助け舟を出しています。このことを後で
知って、トランプ大統領は「WHOは中国寄りであり、われわれ
はWHOとの関係を絶つ」と宣言するにいたるのです。WHOに
騙されたことを知ったからです。
 それでも2月の中旬まで米国は順調だったのです。2月12日
の米国株式市場で、ニューヨークダウ工業株30週平均は、2万
9551ドルを付け、史上最高値を記録しています。3万ドルの
達成は目前だったのです。
 しかし、2月24日になると、状況は一変します。イタリアで
大規模な感染が伝えられると、ダウ平均は突然1000ドル以上
下落したのです。そして、2月25日、CDCのナンシー・メッ
ソニエ博士が次の警告を発しています。
─────────────────────────────
  コロナウイルスが米国全土に拡散している可能性がある
          ──CDCナンシー・メッソニエ博士
─────────────────────────────
 このメッソニエ博士の発言を受け、米国株は連日急落します。
2月25日、CDCは「国内で感染が広がるのは時間の問題であ
る」と発表。この発言を受けて、ダウは2月12日の最高値から
3月23日まで大幅ダウンし、その下落幅は1万959ドル、下
落率にすると37%の暴落です。リーマンショック時のそれは、
54・4%の暴落だったので、まさにリーマンショック時に次ぐ
大幅な株の下落率ということになります。
 2月26日のことですが、サンフランシスコ市が新型コロナウ
イルスで非常事態を宣言しています。ところがその時点でサンフ
ランシスコ市内で感染者は1人も確認されていなかったのです。
サンフランシスコは、中国との人の往来が多く、感染が拡大する
予感があったようです。ちょうどその頃の日本経済新聞の記事は
カルフォルニア州における非常事態宣言について、次のように書
いています。
─────────────────────────────
【シリコンバレー奥平和行】中国系の住民が多い米カリフォルニ
ア州で、地方政府が非常事態宣言を出して新型コロナウイルスの
感染拡大に備える動きが広がってきた。シリコンバレーの大半を
含むサンタクララ郡などに続き、サンフランシスコ市も2月25
日に発令した。郡や市は危機管理センターの機能拡充といった対
策を加速する。
 サンフランシスコ市は米国で最大の中華街を抱えるなど中国と
の関わりが深い。感染者はまだ見つかっていないが、市幹部は、
「中国本土との往来が多く、発症のリスクが高まっている」と指
摘する。非常事態を宣言することで、発症や感染拡大に備える。
               https://s.nikkei.com/3eBQEFS ─────────────────────────────
 2月に関しては、米国は一部の州では、感染が確認されていな
いにもかかわらず、非常事態宣言を出すなど、警戒していた州も
ありましたが、3月に入って感染が爆発したニューヨークでさえ
も、2月中は危機感にほど遠いものがあったのです。滝田洋一氏
の本に、その頃のニューヨーク在住者からのメールが次のように
紹介されています。
─────────────────────────────
 NYは(いまのところ)、感染者はゼロ!のグリーンゾーンで
す。なんか、ゾンビ映画のセーフゾーンの要塞のなかにいる気分
です。皆マスクをしないで、まったく普段通りの生活です。オペ
ラもカーネギーホールもいつもどおり。むしろ咳をする人が外出
を控えているのか、観客マナーは向上したかも。
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 2月29日のことです。米国の最初のコロナ感染者がワシント
ン州で亡くなっています。この人は、1月21日に感染が発覚し
ており、隔離されていたのです。これによって、ワシントン州は
州としてはじめて非常事態宣言を出しています。
 そして3月に入ると様相は一変します。とくにニューヨーク州
では、日に日に感染が拡大し、3月29日には1日の感染者数は
7千人を超えたのです。どのように拡がって行ったのか、米環境
・社会問題研究家/田中めぐみ氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 ニューヨーク州では、3月1日にイランへの渡航歴がある人の
感染が最初に市内で確認され、3日には2例目となる経路不明の
感染者1名を郊外で確認。その後、その人物と接触のあった人の
間で感染が広まり、翌4日に11人、5日に22人、6日に44
人と倍増し、17日には1000人を超え、29日には1日の感
染者数が約7千人、死者数は200人以上となっています。
             ──社会問題研究家/田中めぐみ氏
                  https://bit.ly/2Vnqf6X ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/022]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、ニューヨークの被害はなぜ大きいのか−当局者
  ら要因指摘
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス感染症(COVID19)によるニュ
  ーヨーク市の死者数は今週の時点で少なくとも2万1000
  人に上った。この数はロサンゼルス郡の10倍で、イタリア
  で最も被害の大きいロンバルディア州の1万6000人をも
  上回る。英国の人口はニューヨーク市の8倍だが、死者の数
  は3万7500人前後だ。
   明るい兆しも見え始めている。ニューヨーク市のデブラシ
  オ市長は5月26日の記者会見で、新型コロナの感染拡大は
  減速しつつあり、6月半ばまでに経済活動再開に着手できる
  方向にあると語った。
   だが、重要な問いが依然残る。ニューヨークの被害がこれ
  ほど広がったのは、何が原因なのか。ブルームバーグでは新
  型コロナ対策に関与した当事者の過去の発言を振り返った上
  で、専門家や米疾病対策センター(CDC)、市長にこの問
  いをぶつけたところ、ニューヨークの爆発的な感染拡大を招
  いた大きな要因として以下の点が指摘された。
   米国は中国の感染者数が少なくとも1万4000人に上っ
  ていた2月2日、中国からの入国をほぼ禁止した。だが、欧
  州からの入国は3月13日まで禁止されることはなかった。
  その間に、イタリアの感染者は2人から1万5000人余り
  へと急増していた。       https://bit.ly/3eC44Sl
  ───────────────────────────

ニューヨークの市街.jpg
ニューヨークの市街.
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