フジ」の自身のコラム「経営者の目線」で、「新しい生活様式」
について、次のように論評しています。
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政府の専門家会議が示した「新しい生活様式」を見て、愕然と
した。この様式に直接該当する業界は、廃業や倒産ラッシュの危
機に直面する。カラオケ、飲食店、スポーツジム、冠婚葬祭など
業界そのものが立ち行かなくなる。もちろん、感染症の専門家を
責めるつもりはない。彼らも経済の専門家の意見を求めている。
この新しい生活様式の食事の項目では、「大皿は避けて、料理は
個々に」「対面でなく、横並びで座ろう」「料理に集中、おしゃ
べりは控えめに」「お酌、グラスやお猪口の回し飲みは避けて」
などの表現が並ぶ。これは居酒屋そのものの否定だ。経済的な救
済策も示さないでこの様式を発表しても、結局は「生きていくた
め営業する」中小の経営者も出てくるわけで、中途半端なものに
なってしまう。──「経営者の目線/新しい生活様式で倒産が増
える」/渡辺美樹氏/2020年5月19日発行「夕刊フジ」
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「新しい生活様式」はどう考えても無理があります。したがっ
て、これを新型コロナウイルスを封じ込めるまでのあくまで暫定
的な対策として捉え、1日も早くウイルスの感染をストップさせ
ることに国として全力を尽くす必要があります。
新型コロナウイルスの感染に関する重要な情報が台湾からもた
らされています。今日は、この情報について検証することにしま
す。その前提的知識として、PCR検査について知る必要があり
ます。そもそもPCR検査の「PCR」とは何を意味しているの
でしょうか。
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PCR=Polymerase Chain Reaction
ポリメラーゼ連鎖反応
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「ポリメラーゼ」というのは、私たちの細胞の中で遺伝子(D
NAあるいはRNA)が増幅するときに働く酵素の名前です。こ
のように、PCRの説明をしようとすると、遺伝子の難しい話に
なってしまうので、以下、ごく大ざっぱに説明します。
PCR検査は、厳密にいうと、次の2つがあり、2つを総合し
てPCR検査と呼んでいます。
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@定性検査
A定量検査
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第1は「定性検査」の説明です。
ウイルスの遺伝子はとても小さくて目に見えないので、特殊な
装置を使って、目的の遺伝子を増加させるのです。その結果、目
で確認できた場合は「陽性」、確認できなければ「陰性」と判断
します。これが「定性検査」であり、正式には「PCR法」と呼
ばれています。
第2は、「定量検査」の説明です。
PCRの1サイクルで、目的の遺伝子は2倍になりますが、増
やした遺伝子がある量に達するのに、PCRを何サイクル回した
かが分かれば、最初に存在する遺伝子の量を推定することができ
ます。これが「定量検査」ですが、正式には「リアルタイムPC
R法」といいます。
さて、日本では、新型コロナウイルスの感染者は、すべて病院
に入院・隔離(症状がない人はホテル)されますが、退院が許さ
れるには、PCR検査で2回続けて「陰性」と判定される必要が
あります。また、感染者の濃厚接触者も、原則2週間の待機が求
められ、これが常識になっています。
しかし、難治性血液疾患などを専門とする小島勢二名古屋大学
名誉教授は、最近の知見では、この2回続けて「陰性」の判定は
必要がないのではないかという意見を述べています。その最近の
知見とは、台湾からもたらされた研究報告です。その要点をご紹
介します。
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台湾で新型コロナウイルス感染の確定診断がついた100人に
濃厚接触した2761人について、濃厚接触者が最初に患者に接
触した時期と、感染の有無との関係について調べた。患者のうち
9人は無症状であった。濃厚接触者の内訳は、家族が219人、
病院関係者が697人、その他が1755人である。2761人
の濃厚接触者のうち、二次感染したのは22人(0・7%)、で
あった。軽症患者よりも重症患者に接触した人の方が、感染する
リスクが高かった。無症状の患者に接触した91人のうち、二次
感染をおこした人はいなかった。
二次感染した22人のうち、10人は患者に症状が出る前の接
触歴があり、9人は症状が出た日から3日以内、3人は4日目あ
るいは5日目だった。すなわち、発熱やせきなどの症状が表れて
から6日目以降に接触しても、感染することはなかったのだ。無
症状の患者に接触した人についても、PCR検査が陽性となった
日から数えて6日目以降になると感染者はいなかった。二次感染
者の半数には患者に症状が出る前に接触歴があったが、この時期
に患者との接触を避けるのは不可能であろう。
https://bit.ly/2LI0JEv ─────────────────────────────
これは、新型コロナウイルス陽性の判定の出た100人につい
ての分析です。注目すべきは、その濃厚接触者2761人のうち
実際に感染したのは22人ですが、そのうち10人(45%)は
患者が症状の出る前に接触歴があったという点です。つまり、無
症状のときの接触による感染が非常に多い点です。詳しい分析に
ついては、来週のEJで行うことにします。
──[消費税は廃止できるか/092]
≪画像および関連情報≫
●PCR検査の現状と課題 「検査可能」なぜ増えない?
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東京・世田谷区で、単身赴任の50代の会社員の男性が新
型コロナウイルスに感染して、死亡したことがわかった。男
性は保健所に電話しようとしたが、つながらずその後、死亡
した。PCR検査の結果が出たのは亡くなったあとだった。
PCR検査をめぐっては、コロナ対策推進室の職員が感染し
所管する西村康稔経済再生担当相が、念のためPCR検査を
受けたことが、ネットでやり玉に挙げられる騒ぎも起きてい
る。これについて、西村康稔経済再生担当相は「危機管理の
観点から医師と相談し、自費でPCR検査を受けました」と
話した。
PCR検査を受けられる人と受けられない人について、別
所氏はどう考えているのか。別所哲也氏「市民のレベルで考
えると、PCR検査を受けたいのに受けられない。保健所も
一生懸命やってくださっているでしょうけど、パンクしてい
る。こういう気持ちから考えたら、なぜ優先されるのかと感
情的になってしまうことはわかります。ただ、危機管理とい
うところで、ある程度の立場の方々がPCR検査を必要とす
るのであれば、法律を決めるなり、ルールを決めておく。自
費であればいいということではなく、これはむしろ公費でも
いいと思います。公費であっても危機管理の観点から許され
る人は誰で、そしてどのような手続きを踏めばいいのかとい
うことを、堂々と情報公開されるような仕組みが必要だと思
います」 https://www.fnn.jp/articles/-/37505
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小島勢二名古屋大学名誉教授