2020年05月21日

●「抗体検査では一体何がわかるのか」(EJ第5250号)

 新型コロナ時代の「新しい生活様式」──政府の専門家会議に
よる提言です。新型コロナウイルスと共存する戦略といっている
が、このような生活を人々はいつまで耐えられるでしょうか。
 どこに行くにも暑苦しいマスクをして、どの商店も、飛沫感染
を防ぐため、店員と客との間には、透明のビニールシートが張ら
れています。
 要するに、誰がウイルスの感染者かわからないので、人と人と
の接触を極力避け、買い物も極力最小必要限度のものに絞るとい
うことになってしまいます。「新しい生活様式」は、飲食店には
最も不向きであり、当然お客は大幅に減少するので、経営が成り
立つわけがありません。こういうことをしていると、経済的には
大きなダメージになります。
 基本的には、「新しい生活様式」は、100年以上前のスペイ
ンかぜのときと同じ、閉じこもり戦略と同じであり、新型コロナ
ウイルスに対する人類の敗北を意味します。いかにも疫学や医学
的見地に立ったうえでの提言であるといえます。これを守り続け
ると、経済は壊滅状態に陥ることは必至です。
 しかし、今週になって、新型コロナウイルスに関する新しい情
報が続々と出てきています。そのなかには、今回のコロナ禍を解
決できるかもしれない、将来に希望が持てる情報もあります。ひ
とつずつ見て行くことにします。
 「抗体検査」というものがあります。「抗体」とは、自分とは
違った異物、ウイルスや細菌などが体内に入り込んだとき、その
たんぱく質に対して反応し、体から追い出すためにできる対抗物
質のことで、これがあるかどうかを調べる検査が「抗体検査」で
す。この検査は「検査キット」が既にできていて、検体として血
液を使い、約15分で結果が判明します。
 この抗体検査を厚労省と東大などの研究チームが既に実施して
おり、その結果が出ているので、以下に示します。
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                  検査対象   陽性率
          厚生労働省:東京500人  0・6%
                東北500人  0・4%
 東大など研究チーム:糖尿病等受診者500人  0・6%
     ──5/19日「羽鳥慎一モーニングショー」より
─────────────────────────────
 この抗体検査を受診した各500人は、少なくとも新型コロナ
ウイルス感染症にかかっていると自覚していない人々です。しか
し、そのなかにも無症状の感染者がいるのです。
 もし、この「0・6%」が正しいとすると、東京都の人口であ
る977万人の0・6%、5万5620人が新型コロナに感染し
ていると推定できることになります。5月18日現在の東京の感
染者数は5065人ですから、その10倍以上の発見されていな
い市中感染者がいると想定できます。このように、抗体検査は、
感染症の全体像を把握し、これによって、公衆衛生上の対策を講
ずることができます。しかし、まったく感染していなくても「陽
性」と出ることもあり、抗体検査のキットの精度については、ま
だ検証されておらず、その精度は検査キットによって玉石混交の
状態であるといわれます。
 この抗体検査にはもうひとつメリットがあります。それは、次
の2つ抗体が検出できることです。
─────────────────────────────
       @IgM抗体/感染の初期に検出
       AIgG抗体/一定期間後に検出
─────────────────────────────
 「IgM抗体」というのは、感染してすぐ現れる抗体です。続
いて1週間前後に「IgG抗体」が現れ、急に上昇します。これ
については、添付ファイルを見てください。したがって、抗体検
査をして「陽性」の場合、検出した抗体の種類によって、感染の
時期が特定できるメリットがあります。
 新型コロナウイルスは、多くの症例において潜伏期が数日〜2
週間程度と比較的長く、症状が出現してから約5〜7日経過した
後に、症状が急速に悪化し、重篤な肺炎にいたるとされているの
で、抗体検査の結果、「IgM抗体」が発見できれば、感染初期
の患者であると判断できます。もちろん、抗体検査で陽性と判定
された場合、改めてPCR検査をして、真の感染者かどうかを判
定することになります。
 新型コロナウイルス感染症に関して、もうひとつ重要な情報が
あります。5月19日の「サンケイビズ」は、次の最新情報を伝
えています。韓国からの最新情報です。
─────────────────────────────
 【ソウル=桜井紀雄】韓国の防疫当局は18日、新型コロナウ
イルスの感染症が完治しながら、再陽性と判定された人について
他の人に感染させる恐れはないとの分析結果を明らかにした。韓
国では再陽性判定が400人を超えるなど、再陽性事例が相次ぎ
完治後も再検査や2週間の自主隔離を求めてきたが、19日から
は完治すれば、すぐに仕事などの日常生活に戻れるよう指針を改
める。再陽性は日本を含め別の国でも発生しており、他の国の対
応策にも影響を与える可能性がある。
 韓国では、15日現在、完治して隔離が解除された9821人
の4・5%に当たる447人が完治後に再陽性判定を受けた。防
疫当局が再陽性者285人と接触した790人を調査した結果、
再陽性後の接触に伴う感染は確認されなかった。
         ──2020年5月18日付、サンケイビズ
                  https://bit.ly/3bLJPzf ─────────────────────────────
 衝撃的な情報です。しかし、役に立つ情報です。もし、これが
正しいとなると、新型コロナウイルス感染症が完治した人は、他
の人に感染させる心配はないので、普通の生活に戻れることにな
るからです。     ──[消費税は廃止できるか/091]

≪画像および関連情報≫
 ●外出禁止を解除する前に「抗体検査」をすべき理由
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染者のうち、かなりの割合が非常
  に軽症か無症状であることがはっきりしてきた。感染を広げ
  うるこうした「見えない感染者」が、感染者数の実態を把握
  するうえでも、パンデミックの対策を講じるうえでも混乱の
  もととなっている。
   これまでのところ、無症状感染者の見積もりには大きなば
  らつきがある。4月12日、米国立アレルギー感染症研究所
  のアンソニー・ファウチ所長は、無症状感染者の割合は50
  %にのぼる可能性があると示唆した。これは、米国疾病対策
  センター(CDC)による以前の見積もりの約2倍の数字で
  ある。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員・
  乗客では18%という低い数字が報告され、武漢からチャー
  ター機で日本に帰国した感染者の29%が無症状だったとの
  報告もある。中国当局は4月から無症状感染者の追跡を開始
  しており、現時点でその割合を60%と報告している。数字
  に大きな差があるのは「集団と研究デザインと研究のタイミ
  ングの違いにより大きな差が出ることを反映している」と、
  世界保健機関(WHO)の感染症対策チームを率いた経験を
  もつ香港大学の福田敬二氏は説明する。幸い、無症状感染の
  履歴を検出できる検査がある。血清中の抗体と呼ばれるタン
  パク質を調べる「抗体検査」だ。これなら本人が気づいてい
  なくても、回復から長い時間が経ってからでも、感染してい
  たかどうかを調べられる。    https://nkbp.jp/3cKwp81
  ───────────────────────────
  ●グラフの出典/https://bit.ly/2LHTPz4

ウイルス感染による血清抗体.jpg
 
ウイルス感染による血清抗体
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする