2020年05月19日

●「注目すべき小田垣SIQRモデル」(EJ第5248号)

 「新型コロナ時代の新しい生活様式」──これについては実は
多くの批判があります。商店の場合、入店時の手の消毒、体温検
査はよいとしても、とくに食事などを提供するレストランなどの
飲食店では、要請される次の3つのことを本当に守ると、店は経
営的に成り立たなくなるはずです。
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          @対面で座らない
          Aお喋りをしない
          B社会的距離厳守
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 人々が飲食店を利用する場合、ただ単に1人でその店で飲食を
するだけではなく、商談をしたり、何人かとお喋りをしたり、話
し合いをしたり、打ち合わせをするために使うことが多々あるの
です。しかし、「新しい生活様式」では、そういうことは一切で
きなくなり、当然そのためのお客は減るし、もし、店で本当に社
会的距離を守ると、小さいスペースの店ではテーブルが多く置け
なくなり、必然的に飲食のコストが高くなり、小さいスペースの
お店は経営的にやっていけなくなります。
 それでは、どうすればよいのでしょうか。論理的には解決策は
あります。そもそも人と会うのを禁止するのは、相手が感染者か
もしれないからです。しかも、厄介なことに、誰も自分が感染者
であることはわからないのです。新型コロナウイルスは感染して
いても、何の症状も出ない人が多数おり、そういう人が街を歩き
回って、多くの人に感染させているものと考えられます。
 こういう場合、感染を防ぐ方法がひとつだけあります。それは
人と会うのを避ければよいのです。日本の場合、このところ感染
者数が減ってきていますが、政府の緊急事態宣言によって、人々
が外出を自粛し、人に会うのを減らしているからです。しかし、
このまま何の方策も講ぜず、外出自粛を解除し、また、人と会う
ようになれば、問題は何も解決していないので、また感染者が増
えることになります。
 このことに関連する「SIRモデル」というものがあります。
1927年にスペインかぜの流行を解析するために、英国で開発
された数式です。「SIR」は次のことを意味しています。
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     S ・・ 感受性保持者(Susceptible)
     I ・・ 感染者     (Infected)
     R ・・ 免疫保持者  (Recovered)
                  https://bit.ly/2y9BMi1 ─────────────────────────────
 数式などは難しくなるので、省略しますが、「SIR」につい
て説明します。「S」の「感受性保持者」とは、まだ感染してい
ない人のことです。「I」は「感染者」です。発見して、隔離す
る必要があります。「R」は一度かかって治った人です。したが
って、「I」を発見して隔離すれば、「S」と「R」は普通の生
活をすることができます。スペインかぜの場合、新型コロナウイ
ルスと違って、感染すると、短期間に急速な肺炎が進み、皮膚や
粘膜が暗青色になるチアノーゼの症状を引き起こすケースが多く
無症状の感染者いなかったと考えられます。
 しかし、1927年と今とでは医療のレベルに大きな差があり
世界中で5億人が感染したといわれます。この数は当時の世界人
口の4分の1程度に相当するといわれ、最大で5000万人が亡
くなったといわれています。
 さて、この「SIRモデル」を改良した人がいます。九州大学
名誉教授(社会物理学)の小田垣孝氏です。小田垣教授は、今回
の新型コロナウイルスについて、次の論文を発表しています。
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    科学教育総合研究所/小田垣 孝九州大学名誉教授
      「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察」
                https://bit.ly/2LBzb3C
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 「SIRモデル」を新型コロナウイルス感染症に応用する場合
の最大の問題点は、感染者を他人にウイルスを感染させる存在と
して一律に扱っている点です。新型コロナウイルスの場合、無症
状や軽症のため、PCR検査を受けないで通常の生活を送る感染
者がいることです。
 そこで、小田垣孝教授は、感染者を「市中感染者」と「隔離感
染者」に分けて、「SIRモデル」を「SIQRモデル」として
次のように改良したのです。
─────────────────────────────
     S ・・感受性保持者(Susceptible)
     I ・・市中感染者(Infected at large)
     Q ・・隔離感染者(Quarantined)
     R ・・免疫保持者(Recovered)
─────────────────────────────
 問題は「市中感染者」をいかにして発見し、隔離するかにかか
っています。そのためにはPCR検査の数をいかにして増やすか
です。つまり、市中感染者(I)をPCR検査数を増やすことに
よって発見し、隔離すれば、人との接触機会の削減幅を大きく増
やすことができます。
 この「SIQRモデル」で、新規感染者数が10分の1になる
までの日数を計算すると、次のようななります。
─────────────────────────────
     @検査数が現状だと、接触8割削減で23日
     A検査数が今の2倍で接触5割削減で14日
     B検査数が今の4倍で接触削減なしで 8日
─────────────────────────────
 問題はPCR検査の数です。この達成には多くのネックがあり
それらをどのように解決するかがカギです。この問題については
続いて考えます。   ──[消費税は廃止できるか/089]

≪画像および関連情報≫
 ●5億人感染のスペイン風邪は「絶好の教科書」
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   今次コロナ禍では緊急事態宣言が1都6府県に発令され、
  いよいよ欧米に準じる感染の爆発的拡大が喫緊の問題となっ
  てきた。焦眉の関心事は「このコロナ禍はいつ終わるのか」
  ということである。
   当初、「夏になれば自然に終わるのでは」という楽観論が
  あったが、低緯度地帯(マレーシア・ブラジル・インドネシ
  ア等)でも感染者が激増している現状、気温と感染拡大の相
  関は「あまりなさそう」であるというのが正直なところか。
  感染症の専門家も、今次コロナ禍がいつ終わるのか、誰しも
  が断定できる状況ではない。
   しかし私たちは、過去に目を転じて、過ぎ去った厄災の軌
  跡から現在にその教訓を汲み取ることはできる。ちょうど、
  100年前に全世界的に流行し、世界人口の約3分の1にあ
  たる5億人が感染。そのうち2000万から4500万人の
  命を奪った「スペイン風邪」のパンデミックは、私たちに様
  々な知見を与えてくれる絶好の「教科書」となり得よう。
   1918年〜1920年にかけてパンデミックを引き起こ
  したスペイン風邪は、元来その発症地点がアメリカ・カンザ
  ス州の米陸軍兵営であったが、当時第1次大戦中で戦時報道
  管制の枠外だった中立国のスペインから情報が世界に発信さ
  れたことにより「スペイン風邪/スパニッシュ・インフルエ
  ンザ」と名付けられ、おおむね1918年9月末から10月
  初頭にかけて船舶を通じ日本に上陸した。
                  https://bit.ly/3fWQda7
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小田垣孝九州大学名誉教授.jpg
小田垣孝九州大学名誉教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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