2020年05月18日

●「安倍政権の政策には主体性がない」(EJ第5247号)

 今やあらゆるテレビ番組が、連日連夜新型コロナウイルスの感
染問題をメインに報道しています。まして政府による緊急事態宣
言の発出による外出自粛がかかっているので、どうしてもテレビ
の番組を見ることになります。私の場合、EJの情報収集もある
ので、毎日かなり真剣に見ています。
 その結果、わかることがあります。それは「政府に主体性がな
い」ということです。安部首相は、本当に困難なことに直面する
と、他人に丸投げする悪いクセがあります。今回の問題が起きた
とき、これは厚労省マターであるとして、厚生労働大臣の加藤勝
信氏に全面的にまかせ、自分は一歩引いています。
 そして、2月14日に、「新型コロナウイルス感染症専門家会
議(以下、専門家会議)」を立ち上げ、座長に脇田隆宇国立感染
症研究所所長、副座長に尾身茂独立行政法人地域医療機能推進機
構理事長を任命しています。しかし、事実上副座長の尾身茂氏が
実務を担当し、専門家会議を仕切ることになります。
 尾身茂氏は元厚生官僚であり、前職は、WHOの西太平洋地域
事務局感染症対策部部長を務めていた人物です。もとはといえば
官僚ですから、安倍首相としては使いやすかったのではないかと
思われます。
 ここまではいいのです。だが、専門家会議は、新型コロナウイ
ルス感染症の対策について、医学的見地からアドバイスするため
の組織です。しかし、安倍首相が今回のコロナ禍に対して何かを
するときは、必ず「専門家の意見をよく聞いて」と発言していま
す。何か起きたときの責任回避にも聞えます。しかも、専門家会
議には経済の専門家が1人も入っていないのです。
 2月28日に、北海道の鈴木直道知事が、3週間の「緊急事態
宣言」を出し、とくに週末の外出を控えるよう呼びかけると、安
倍首相は内心動揺します。欧米各国が都市のロックダウンに踏み
切っているからです。
 そして北海道が感染者の押さえ込みに成功すると、専門家会議
がオーバーシュートを起こさないために「外出を8割削減すると
約1ヶ月で感染の拡大を抑え込むことができる」と提案すると、
安部首相は、国としての緊急事態宣言について、検討をはじめま
す。本来であれば、このときに専門家会議に経済の専門家を加え
緊急事態宣言を出したさいの経済の状況はどうなるか、それを少
しでも軽減するための休業補償などを措置を含む経済対策をどう
するかについて慎重に検討すべきだったのですが、それをやって
いない。それどころか、何を勘違いしたのか休業補償などをやっ
ている国はないなどと事実と違う発言をして、4月7日に5月の
連休明けまでの国としての緊急事態宣言を発出するにいたるので
す。そして、これも大方が予想していたように、緊急事態宣言は
さらに5月31日まで、延長されたのです。
 これによる経済へのダメージについて、第一生命経済研究所首
席エコノミストの永濱利廣氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 失業者は、5月6日の期限までに、36万8000人におよぶ
と試算していましたが、7日から31日までの延長で、33万1
OOO人が加わり、69万9000人になる計算です。GDPベ
ースの経済損失は、延長前で7・2兆円、延長で6・5兆円が加
わり、13・7兆円。GDPを年間2・5%押し下げます。倒産
に関しては、正確には試算していませんが、リーマンショックの
とき、通常より年間1400件以上増えたので、今回も1000
件以上は増える可能性があります。 ──永濱利廣エコノミスト
       ──「週刊新潮」/5月21日夏端月増大号より
─────────────────────────────
 この緊急事態宣言の延長に対し、大阪府の吉村洋文知事から政
府には出口戦略がないと批判されると、一転して緊急事態宣言の
対象から39県を解除すると5月14日に宣言し、実行に移して
います。このように、安倍政権の対応は、そのすべてが後付けで
す。政府に主体性がないのです。そのため、むしろ知事の政治力
に国民の期待が集まっています。
 まさに国家的危機です。そうでなくとも安倍政権は、首相の政
治信条である「憲法改正」に関連して、何回も「国難」とか「国
家危機」を口にし、解散もしてきましたが、今こそ本当の危機に
襲われているのです。しかし、案に相違してその対応はいずれも
遅く、ほとんどが後付けです。未曾有の国難に対して、右往左往
しているように見えます。
 それからもうひとつ、政府はこの緊急事態宣言解除の一種の条
件のようなものとして、「新しい生活様式」なるものが提唱され
ましたが、これに関して強い反発が出ています。政府に主体性が
まるでなく、あまりにも感染症学の専門家の意見がそのままモロ
に出ているからです。これに関して、既出の永濱利廣氏と、精神
科医の和田秀樹氏は、次のように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
◎永濱利廣氏(経済エコノミスト)
 政府は今回、「新しい生活様式」を提唱しましたが、これを正
直に守って行動した場合、最低3年、経済が戻らない可能性があ
る。通販ばかりになったら、実店舗がある店はどうにもならない
し、飲食も対面はよくないとなれば、飲食店への客の出入りは半
減します。
◎和田秀樹氏(精神科医)
 いまの状況を見ると、感染症学者は、経済や、自粛を強いられ
ている人のメンタルのことを、こんなにも考えてくれないのか、
と思う。ここまで専門バカなのかと呆れてしまいます。
       ──「週刊新潮」/5月21日夏端月増大号より
─────────────────────────────
 専門家会議は、医学的見地からアドバイスするための組織に過
ぎないのですが、安倍政権は、それをそのままストレートに国民
に伝えているだけです。政府の主体性が、まるで感じられないの
です。        ──[消費税は廃止できるか/088]

≪画像および関連情報≫
 ●飲食店、「新生活様式」に怒り爆発 自粛に加えて「食事は
  横並び」に我慢の限界「店がつぶれる」
  ───────────────────────────
   安倍晋三首相は4日、新型コロナウイルスの感染拡大を受
  け、6日が期限だった「緊急事態宣言」に関して全都道府県
  を対象としたまま今月31日まで期間延長すると表明した。
  宣言解除の目安となる目標値は口にせず、国民にとっては出
  口が見えない状況。東京都、大阪府など13の「特定警戒都
  道府県」以外の34県を念頭に置いた「新しい生活様式」も
  発表され「横並びで食事」という驚きの指針が示された。
   政府が打ち出した「新しい生活様式」を受け、飲食店関係
  者からは怒りの声や疑問の声が上がった。特に問題視された
  のは、食事に関する「対面ではなく横並びで座ろう」「大皿
  は避けて」「おしゃべりは控えめに」の各項目だった。
   山口県にある大規模な割烹(かっぽう)料理店の経営者は
  「横並びの形式に従う店なんかないでしょう。50人の団体
  にどうやって食事してもらうんですか?お通夜でもおしゃべ
  りはするでしょう?」と怒り爆発。福島県の居酒屋の店長は
  「自粛させられて、さらに横並びでは店がつぶれる。だった
  ら一晩中営業させてもらわないと割に合わない」と納得いか
  ない様子だった。「新しい生活様式」は、現段階では13の
  「特定警戒都道府県」以外の34県に県内の外出や小規模イ
  ベントの開催を認めることに伴う要請。いずれ特定警戒都道
  府県にも波及していくとみられるが、都内にある中華料理店
  の従業員は、「10人掛けの円卓を5人ずつ2卓に分けるし
  かない。中華の大皿をやめるんですか?」と戸惑いを隠せな
  い。              https://bit.ly/2ZacE5D
  ───────────────────────────

永濱利廣氏.jpg
永濱利廣氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary