2020年05月07日

●「消費減税をやらざるを得なくなる」(EJ第5240号)

 最初からあまり期待していませんでしたが、新型コロナウイル
スの感染拡大を阻止するための政府による緊急事態宣言に基づく
外出自粛規制は、5月末まで継続されることになりました。これ
について、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、
その状況を次のように指摘し、実質GDPの押し下げはさらに拡
大すると予測しています。
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 息をとめて潜ったとき、最初の30秒と後半の30秒では当然
苦しさが違う。経済へのストレスも、これまでの1ヶ月とその先
の1ヶ月では大きく異なる。──第一生命経済研究所の熊野英生
     首席エコノミスト/2020年5月5日付、朝日新聞
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 4〜6月期のGDP成長率はどうなるでしょうか。
 ゴールドマンサックスの証券エコノミストは、日本の4〜6月
期の実質GDP成長率が、前期比年率マイナス25%と、データ
をさかのぼれる1995年以降で最大の落ち込みとなるとの予測
を示しています。
 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、4〜6
月期のGDP成長率は、前期比年率マイナス33・0%と予想し
ています。これは、リーマン・ショック後の2009年1〜3月
期に記録したマイナス17・8%を大幅な上回っています。
 当然消費は大幅に冷え込みますし、企業としては手元の現金を
確保するため、設備投資を控えるので、経済活動は幅広く停滞す
ることになります。
 このような事態に、トランプ米政権は、早速大型の減税を検討
しています。米国には、労使双方が負担する「給与税」というも
のがあります。給与税は、年に1・2兆ドル(約128兆円)の
税収のある基幹税ですが、トランプ大統領は、この給与税の全面
免除を議会に働きかけています。
 米経済は、4〜6月期の実質成長率が前期比12%減、年率に
換算すると、40%のマイナスになります。これについて、日本
経済新聞は次のように書いています。
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 トランプ氏が減免対象に揚げた給与税は、全歳入の3分の1を
占める基幹税だ。社会保障費の財源として労使がそろって給与の
6・2%分を納税する仕組みで、全面免除すれば企業と労働者の
双方の負担減となる。法人税の引き下げなどを盛り込んだ17年
末の「トランプ減税」は、年間の減税規模は1500億ドルだっ
た。給与税を全額免除すれば年1兆ドル規模の巨額減税となる。
       ──2020年5月5日付、日本経済新聞/朝刊
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 いろいろな意味において、米国はやることにスピード感があり
既に2度目になる大型減税を検討しています。しかし、安倍首相
の辞書には「減税」というキーワードはカケラもないようです。
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策として、今後
消費税を減税する可能性はあるのかと問われた麻生副総理兼財務
大臣は、次のように答えています。
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 昨年、消費税率を引き上げたが、全世代型の社会保障に大きく
転換しないと、少子高齢化というこれからの日本の社会では、な
かなか対応できないのははっきりしている。今の段階で消費税を
引き下げることは考えていない。       ──麻生財務相
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 本当は、もしコロナ禍がなくても、2019年10月の消費増
税のダメージによって、2020年の4〜6月期のGDP成長率
(5月18日1次速報値発表予定)が、大幅なマイナス成長にな
ることは確実だったのです。2019年10〜12月期のGDP
成長率は年率で「マイナス7・1%」であったので、2期連続の
マイナス成長に陥ることによって、嫌でも消費減税の議論が巻き
起こったと考えます。
 しかし、コロナ禍によって、財務省としては何もかもコロナ禍
のせいにできるので、好都合であったといえます。加えて、コロ
ナ禍によって、野党は街頭演説ができなくなり、その存在感がき
わめて希薄になっています。
 しかし、財務省の大いなる誤算は、自民党内において、消費減
税の要求が強くなっていることです。既に財務省が根回しして、
国民一律10万円給付を、収入が半減した特定世帯への30万円
給付にすり替えたものを閣議決定終了後に覆されており、ここに
きて財務省の旗色はきわめて悪くなりつつあります。
 しかも、自民党内にもMMT理論を支持する議員もおり、その
勢いは強くなりつつあります。その中心人物の一人である自民党
の西田昌司議員は次のように述べています。
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 昨年10月に消費税率が10%に引き上げられる以前から消費
増税に反対してきた。残念ながら予定通り税率が引き上げられた
結果、2019年10〜12月期の国内総生産(GDP、季節調
整値)改定値が年率換算で7・1%減ということになった。
 そこにこのコロナ禍だ。おそらく年率換算で10%以上のGD
Pの低下になる。この状況では消費税は当分の間は凍結し、税率
をゼロにすべきだ。MMT(現代貨幣論)ならばそれが可能だ。
 消費税の10%をなくせば28兆円の減税になる。事実上給料
を10%増やすのと同じ効果があり、即効性がある。8%や5%
に下げるのではなく一気に0%にすることで大きなインパクトを
与えることができる。        https://bit.ly/2L1TPtq
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 結論からいえば、消費減税は、今後大きなテーマになるはずで
す。野党だけでなく、自民党内からも減税圧力は強くなり、次の
衆院選の大きなテーマになることは確実です。そのとき、MMT
は、そうした議論のなかで、大いに説得力を持ってくることにな
るはずです。     ──[消費税は廃止できるか/081]

≪画像および関連情報≫
 ●コロナ・ショック 日本経済V字回復の鍵は「消費税ゼロ」
  しかない
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   新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「コロナショック」
  その経済損失は、自動車を中心に対米輸出は60%減少、不
  況はあらゆる産業分野に広がって倒産件数は1万5646件
  (2008年)にのぼったリーマン・ショック時を超えると
  までいわれている。政権中枢から消費税引き下げ論が出るな
  か、安倍晋三・首相のかつての経済ブレーンは「引き下げで
  はなくゼロにすべき」と提言する。
   安倍首相は「経済をV字回復させなければならない」と緊
  急経済対策の取りまとめを指示したが、すでに表明された公
  共料金の支払い猶予に加え、検討されているのは5万円以上
  の現金給付、ポイント還元の拡大、中小企業の納税猶予など
  のメニューだ。
   そうした対策より、与野党から要求が高まっているのが、
  「消費税減税」だ。日本維新の会の柴田巧・参院議員は「消
  費税率8%に減税」を提案し、国民民主党や共産党などの野
  党は「5%」を主張、自民党でも若手議員が参加する「日本
  の未来を考える勉強会」が消費税減税を含む30兆円の景気
  対策の提言書を政府と自民党執行部に提出した。実は官邸も
  経済危機回避の切り札として消費税減税を検討しはじめた。
  安倍首相は3月13日に自民党税制調査会長の甘利明氏を官
  邸に呼んで協議し、その動きに呼応するように安倍側近の世
  耕弘成・参院幹事長が「(消費税)減税も選択肢の一つだ」
  とぶち上げた。         https://bit.ly/2Ldqigt
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減税のカベ/安倍首相と麻生財務相.jpg
減税のカベ/安倍首相と麻生財務相


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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