ることになります。しかし、終了になると思っている国民はほと
んどいないのではないかと思います。最低でも5月中はこの状態
が続くことになりそうです。
問題は、何をもって終了するのかがはっきりしないことです。
国民としては、このままずるずると、6月も7月もということに
なると、日本経済にとっても、国民としても、とても耐えられな
いと思います。したがって、政府は国民に対して「〜が〜になれ
ば解除する」という客観的な数字を示す必要があります。ところ
が、政府はそういう数値を一切示していません。
米国の場合、1人の感染者が何人の人に感染を広げるかを示す
「再生産数」という数値の推移を注視し、その数値が「1」を切
ると、感染は収束に向かうと判断できるとし、そういう情報を国
民に開示しています。
最近、ニューヨーク州のクオモ知事は、今から3週間前は、全
米50州と首都ワシントンの全てで「1」を上回っていたが、最
近では36の地域において「1」を下回っており、それらの地域
での経済の再開を考えている段階であると、国民に説明していま
す。これなら、国民は、たとえ再生産数が何だかわからなくても
納得すると思います。大変わかりやすいからです。
もう少し具体的にいうと、こうなります。ニューヨーク州では
感染のピークだった3月17日頃には再生産数は「4」を超えて
いましたが、3月22日に州全域の外出制限を始めてからは、段
階的に下がり、現在は「0・4」程度になっています。経済活動
の制限や、学校の閉鎖が再生産数を下げていることは確かであり
再生産数を再び上げることなく、経済を再開させるにはどうする
かについて考えているというのです。日本の場合と違って、とて
もわかりやすいです。
日本でも専門家会議が、再生産数の推移を見ているのですが、
そもそも専門家会議は、再生産数がどのようなものか一般には説
明をせず、現在その数値がどうなっているのかについて情報を開
示していません。テレビでは、毎日、新型コロナウイルスの問題
を取り上げていますが、私の知る限り、再生産数の説明は聞いた
ことはありませんし、現在、東京の数値が、どのくらいかについ
てもまったく説明がありません。
ただ、それでいながら、厚労省は、特定の知事に対しては、と
きどき再生産数などの数字を示して、何かをやらせようとするの
です。具体的にいうと、大阪の吉村知事に対して、特別な数字を
示して、兵庫県との往来を、禁止させようとしたことがあるので
す。吉村知事は、その数字をあえてオープンにしたうえで、兵庫
県との往来を禁止する声明を出しています。吉村知事は3月19
日のツィートで次のように書いています。
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吉村洋文(大阪府知事)厚労省から国の専門家意見として、大阪
府、兵庫県に提出された提案内容は、オープンにしなければ府民
県民に知らされなかった情報。府と兵庫県の実行再生産数、3月
27日までに患者586人(重篤者39人)、4月3日までに33
74人(重篤者227人)の試算、往来自粛要請、重要な情報を隠
して進めることはできない。
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とにかく厚労省は秘密主義なのです。「再生産数」について、
日本経済新聞は次のように解説しています。添付ファイルも参照
してください。
─────────────────────────────
あるウイルスを1人の感染者が何人に感染させるかを示す値。
1人が2人に感染させる場合、再生産数は2となる。このペース
で感染が拡大し、さらに10回続くと感染者は2000人以上に
膨らむ。対策によって再生産数が1を切れば、流行が収まりつつ
あることを示す。1以上が続けば流行が勢いを増す。新型コロナ
ウイルスの感染対策で各国政府が国民らに自宅待機を求めている
ロックダウン(都市封鎖)の解除や緩和を探るうえで、重要な指
標である。 ──日本経済新聞
https://s.nikkei.com/3aRuYTr ─────────────────────────────
再生産数だけでなく、次のような興味深い話があります。専門
家会議の副座長を務める尾木茂氏が、ノーベル賞受賞学者の山中
伸弥氏との対談で次のように話しているのです。
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なぜ今回のコロナの新型肺炎で、「クラスター」という言葉を
使っているかというと、こういうことです。
ここに感染した人が5人いたとします。このウイルスは不思議
なことに5人全員感染したんだけれど、そのうち4人は、濃厚接
触の方がいても感染させないんです。人に感染させるのは、5人
のうちの1人だけ。これがインフルエンザの場合は、5人が感染
すると、それぞれが1人とか2人いかないくらいの人に感染させ
るんですけど、今回のコロナは、5人のうち4人は、自分は感染
しても、近くにいる人にうつさない。ただ、そのうちの1人が、
例えば飲み会とか、ライブハウスなど、私どもが挙げた3つの条
件、腕が届く距離に長くいたり、複数の人がいるところ、換気の
悪い密閉空間に行くと、そこでいわゆる集団感染、つまり、クラ
スター感染が起きます。そして、またそこで感染した5人のうち
の1人が次にまたどこかに行って集団感染を起こす――こういう
クラスター(集団)を介して、感染が広がるという特徴がありま
す。 https://bit.ly/2zGTlWZ
─────────────────────────────
尾身先生もよくテレビには出演されていますが、なぜ、こうい
う話をしていただけないのでしょうか。単に「クラスター」であ
るとか「オーバーシュート」という言葉だけでなく、このように
話してもらえると、国民もわかりやすいと思います。
──[消費税は廃止できるか/080]
≪画像および関連情報≫
●コロナ再生産数、更新止まった日本 足らぬ集合知
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新型コロナウイルス対策で今最も大切なキーワードが「再
生産数」だ。1人の感染者が何人にうつすかを示す数値で、
感染の拡大が続くのか収束するのかを知る物差しとなる。だ
が、4月1日以降は示されておらず、その根拠となる数式や
考え方なども公開が遅い。専門人材の不足という日本の感染
症対策が抱える大きな課題が浮かぶ。政府の専門家会議は1
日、東京都が1・7など国内の「実効再生産数」を明らかに
した。都市部を中心に感染が広がっており、医療崩壊が起き
かねないと警鐘を鳴らした。この数値について「今後の変動
を注視していく必要がある」と指摘したが、新たな数値は公
表されていない。
再生産数には「基本」と「実効」がある。基本は流行初期
の数値で、ウイルスの感染力を示す。新型コロナの場合、世
界保健機関(WHO)の推定で1・4〜2・5で、季節性イ
ンフルエンザよりやや高いとされる。実効は、パンデミック
(感染症の世界的流行)後に各国がとった対策の巧拙を知る
バロメーターになる。1を下回り続ければ、新たな感染者数
が減少に転じたことを示す。外出制限や一斉休校などの解除
を判断する材料にもなる。香港大学は2月以降、香港での数
値を日々公開している。 https://s.nikkei.com/2yXc2Fo
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再生産数は流行の目安となる