2020年04月22日

●「休業補償の意義を理解しない政府」(EJ第5233号)

 安倍政権の新型コロナウイルス対策がドタバタしているように
見えます。その典型例をひとつご紹介します。4月16日のEJ
第5229号で指摘したように、緊急事態宣言に合わせて「休業
補償」を出して欲しいという小池知事をはじめとする多くの首長
の要望に対して、安倍首相も担当の西村経済再生担当相も、次の
ようにいっていたのです。
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◎安倍首相
  休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく、わが国
 の支援は世界で最も手厚い。
◎西村経済再生相
  事業者に対する損失補填とか、休業補償の枠組みは、諸外国
 我々もすべて当たりましたけども、そういう仕組みを取ってい
 るところは見当たりません。
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 4月11日のことです。西村経済再生担当相は、7都府県知事
とテレビ電話を通じて会談しています。これに関して、共同通信
は、次の記事を18時過ぎにネットで配信しています。これは、
昨日のEJでご紹介しましたが、再現します。
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 西村康稔経済再生担当相は11日、新型コロナウイルスに備え
る改正特別措置法(新型コロナ特措法)の緊急事態宣言の対象と
なっている7都府県の知事らとテレビ電話で会談した。7都府県
は、休業要請に応じた事業者らに国が補償するよう求めたが西村
氏は「世界のどの国も休業補償していない」と述べ、応じない考
えを改めて示した。全国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事も11日
7都府県とは別に西村氏とテレビ会談し、休業補償を「国の責任
で支援の在り方を工夫してほしい」と要望。休業補償に対する国
と自治体の温度差が改めて浮き彫りになった。
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 ところが、その同じ11日22時26分に、この記事は次のよ
うに書き替えられているのです。
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 西村康稔経済再生担当相は11日、新型コロナウイルス特措法
に基づく緊急事態宣言の対象となっている7都府県の知事らとテ
レビ電話で会談した。西村氏は会談後に記者会見し、国が自治体
向けに創設する1兆円の臨時交付金の使途について、東京都が休
業要請に応じた事業者に支払う協力金のような活用ができるか、
「これから考えたい」と述べ、選択肢として検討する姿勢を示し
た。一層の外出自粛の呼び掛けも求めた。7都府県は休業要請に
応じた事業者らに国が補償するよう求めたが、西村氏は国による
休業損失の穴埋めは重ねて否定した。 https://bit.ly/2VLHRJ6
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 なぜ、記事は変わったのでしょうか。しかも、正反対の論調に
なっているのです。なぜ、共同通信は差し替えに応じたのでしょ
うか。メディアとしてあってはならないことです。
 実は、最初の共同通信の記事が配信されると、SNS上で、非
難の渦が巻き起こったのです。「ドイツやフランスではやってい
るではないか」というわけで、そういう例を上げた反論が殺到し
たのです。
 官邸はSNS上の情報もウオッチングしているので、これはま
ずいと思ったのでしょう。そして、22時26分に記事が差し替
えられたのです。この記事からは、「世界のどの国も休業補償し
ていない」という部分が消え、「国が自治体向けに創設する1兆
円の臨時交付金の使途について、東京都が休業要請に応じた事業
者に支払う協力金のような活用ができるか、考えたい」が挿入さ
れています。明らかに官邸は、共同通信に圧力をかけて、記事の
差し替えを強要したものと思われます。
 安倍首相には「なぜ、国が休業補償しなければならないか」と
いうことがわかっていないようです。コロナ禍による緊急事態宣
言によって、サービス業を中心とする多くの企業が休業に追い込
まれ、その大半が倒産することは火を見るよりも明らかです。そ
のなかには、もともと赤字続きで、いずれ倒産という企業もある
でしょうが、コロナ禍さえなければ、ちゃんとやっていける企業
もたくさんあるのです。それらの企業は、コロナ禍が収まったと
き、経済をV字回復させる原動力であり、そのためにはいくらお
金がかかっても、可能な限り休業補償をし、生き残らせることが
何よりも大事なのです。そのことが、安倍首相にも、西村大臣に
もぜんぜんわかっていません。体裁とか面子とか、そんなくだら
ないことばかり気にしています。
 外務省のウェブサイトの緊急経済対策関係の予算の項目に次の
記載があります。
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◎我が国の状況や取組に関する情報発信の拡充【24億円】
 感染症を巡るネガティブな対日認識を払拭するため,外務本省
 及び在外公館において,SNS等インターネットを通じ,我が
 国の状況や取組に係る情報発信を拡充。
                  https://bit.ly/3boScBs
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 この24億円は何のための予算かというと、日本のコロナ対策
を批判する世界のメディアをウォッチングし、非難封じをするた
めの予算なのです。つまり、外務省は、日本政府への批判を封じ
込めるために、貴重なコロナ経済対策費の中から24億円もの血
税を注ぎ込むことを決定し、外務省はそれをウェブサイトで堂々
と発表しているのです。
 ワシントンポストのネット版は、これに対して「日本政府が対
外イメージアップのために24億円!パンデミックとの戦いの最
中」と報道しています。しかし、このことを日本のメディアは報
道しようとしません。この国はどうなってしまっているのでしょ
うか。        ──[消費税は廃止できるか/074]

≪画像および関連情報≫
 ●「ワシントンポスト」が徹底批判!一方、広報予算で甘い汁
  の国内マスコミは沈黙
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   「ワシントンポスト」の記事はクルーズ船「ダイヤモンド
  ・プリンセス」号における日本の感染症対応の失敗、その後
  の安倍政権の後手後手対応を真っ向から批判し、安倍首相を
  「思いやりのない無関心なリーダー」と辛辣に断じる一方、
  外務省のネガティブな対日認識を払拭24億円計上」につい
  て、こう批判した。「日本のこの動き、しかもパンデミック
  の真っ只中に、緊急経済救済策の一環としていることは、不
  適切だとして多くの批判を引き起こしている」
   また、外務省に取材して「現在2021年に開催される予
  定のオリンピックとパラリンピックへの準備段階での日本の
  プロモーションが含まれており、ビデオや広告が含まれるだ
  ろう」という大鷹正人報道官のメールを紹介。在日アメリカ
  人の有識者の辛辣なコメントを掲載している。
   テンプル大学ジャパンキャンパスのアジア研究学科ディレ
  クターのジェフ・キングストンは「外務省が、海外からの批
  判という疫病を封じ込めるために納税者のお金を浪費すると
  いう事実は、政府がコロナ感染をパンデミックよりもPR危
  機として扱ってきたということを示している」と皮肉たっぷ
  りに語っている。        https://bit.ly/2xM64XV
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西村経済再生担当相.jpg
西村経済再生担当相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする