パラドックスとは何でしょうか。ウィキペディアなどでは意外に
難しい解説が出ていますが、「パラドックス」をわかりやすく説
明すると、次のようになります。
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「パラドックス」は、英語の「paradox」 のことで、「逆説」
「ジレンマ」「背反」「矛盾」などを意味する言葉です。世間一
般的には正しいと認識されているものごとに対し「反対の主張、
反対である状況や事態、また反対の概念」、つまり「定説にさか
らうもの」を指す言葉でもあります。
細かく言えば「矛盾」よりは意味の幅が広く「見かけの上で判
断する真偽が、実際の真偽と反対であること」となりますが、地
球上にはあらゆる分野で数多くの「パラドックス」が存在してい
ることに多くの人が驚くことでしょう。https://bit.ly/2UHGVX5
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MMTでは、税金の捉え方が常識とは違うのです。政府は徴税
権を持っています。政府はそれを使って税金を集め、それによる
税収で政府支出をしていると、誰でも考えています。したがって
これは上記の、「世間一般的には正しいと認識されているものご
と」に当ります。
しかし、MMTでは、4月3日(金)のEJ(EJ第5220
号)でも述べたように、「そうではない」と否定します。つまり
「税は政府支出の財源ではない」というのがその理由です。これ
は、まさにパラドックスということになります。
EJ第5220号では、駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏
の次の記述に注目しています。
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政府支出の財源が、租税や国債であるかのように偽装されて
いる。 ──井上智祥准教授
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井上氏は、サラッと表現していますが、これは大変なことを述
べています。政府支出の財源は、税収と国債であると誰でもそう
考えていますが、井上氏は、もちろんMMTの考え方として、そ
れを明確に否定しているからです。
しかし、主流派経済学では、まず租税があって、それを財源に
して政府支出を行うと考えています。これに対して、MMTでは
まず、政府支出があって、国民はそれによって得たお金で税金を
支払います。スペンディング・ファーストです。井上准教授は、
租税の目的について次のように述べています。
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租税の目的は財源の確保にあると誰しも思うでしょうし、ほと
んどの経済学者もそう考えています。ところが、MMTでは、租
税の目的が財源の確保であることを明確に否定しています。
政府は国民に対し、納税義務を課します。貨幣は納税義務を果
たすためのチケットであり、国民はこのチケットを手に入れなけ
ればなりません。それゆえに、このチケットつまり貨幣は価値を
もつのです。租税はそのためにこそあって財源ではないので、貨
幣を市中から回収してしまったら用済みです。 ──井上智洋著
『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
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「貨幣は納税義務を果たすためのチケットである」というのは
少しわかりにくいかもしれないので、ていねいに考えてみます。
国民には納税義務があります。なぜなら、国民は、その国に住
むことにより、政府(国)に対して恩があり、借りがあるという
ことになります。
お金は、いわゆる万年筆マネーとして作り出される単なる数字
に過ぎませんが、それを「現金」と交換できると誰もが信じてい
るので、価値があります。
その一方で、その現金の裏づけは、それが納税に使えるという
事実によって、裏づけられています。つまり、現金は「納税クー
ポン券」であるということです。なぜなら、その納税クーポン券
が価値を持っているのは、国家の徴税権が実体的な強制力として
存在しているからです。国家が税金を支払うことを国民に義務付
け、もし、納税しないと、「脱税」の罪で、国家権力で刑事罰を
加えることができるからです。
これについて、藤井聡京都大学大学院教授は、「お金というも
のは『負債』の記録である」といい、次のように述べています。
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1万円札は、「国家が国民に対して(税金にして)1万円分の
借りがある、という記録」として世間に流通しているのである。
だから、あなたがその1万円を資産として財布に持っているなら
それによってあなたは「国家に対する1万円分の貸しがある」状
態になれるのである。だからあなたほそれを通して、政府があな
たに課する納税義務を、1万円分帳消しにすることができるので
ある。 ──藤井聡著/晶文社
『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
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新型コロナウイルス蔓延による経済対策として、「現金給付」
が話題になっています。何か異様ことのように受け止める向きも
多いと思いますが、これこそ、スペンディング・ファーストその
ものなのです。
スペンディング・ファーストというのは、現金を初めに支出し
たのは政府であるという歴史的事実ではなく、毎年政府がそれに
よって政府支出を行っていることを指しています。税収を使って
いる訳ではないのです。しかし、表面上は、税収+国債の範囲内
を意識して、あたかもそこから支出しているように「偽装」して
いるのです。これについては、明日のEJで、もっと詳しく説明
します。 ──[消費税は廃止できるか/062]
≪画像および関連情報≫
●消費税廃止は本当に可能なのか?/3/Cargo
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前回コラムで、「需要の減少」が起こる悪循環をどう断ち
切れば良いのかという課題に対して、反緊縮派は一つに「消
費税廃止」を提案していることをお伝えした。加えて、二つ
目の有効策がこの「財政出動」になる。これは消費税廃止で
無くなった消費税収に替わる財源を得るため、また国民経済
を後押しするための政策となる。減税と財政出動、上述した
中学校の教科書通りの財政政策だ。
「財政出動すると財源が減ってしまうのではないか」と思
われる方もいるかもしれない。それも当然だろう。普通の人
は、政府が、何か税金などを貯めている金庫のようなものを
持っていて、そこからお金を支出していると考えている。し
かしその考えは誤りである。政府が支出すると、実体経済市
場に通貨が創造されるので、支出することそれすなわち財源
となることを意味する。政府が誰かに支払いをすると、新し
い通貨がこの世に「無から生まれる」のだ。
このことをMMTは「万年筆マネー」や「スペンディング
・ファースト」という概念をもって説明するが、少し複雑な
仕組みなので我慢して以下を読み進めてもらいたい。
信用創造(通貨を創造すること)には経路が2つある。一
つは、金融機関によって保有される既発国債と交換する形で
中央銀行が創造した貨幣(実体経済市場では使用不可能な準
備預金)を元手にして、金融機関が一般企業や個人に貸し出
すときに起こる。中央銀行が国債を買い入れることを「買い
オペ」と言い、国債と交換する形で貨幣を増やすことを「量
的金融緩和」と言うが、基本的には同じことを指している。
何を言っているのかわからないという方は下記の「教えて!
にちぎん」と「ニチギンマン」の説明も見てもらいたい。
https://bit.ly/3bQYWrD
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井上智洋駒澤大学准教授