2020年04月03日

●「明示的財政ファイナンスとは何か」(EJ第5220号)

 MMTについて書いているあるサイトによると、MMTは現代
貨幣理論などというような大袈裟な理論ではなく、見たままの、
当たり前のことをいっているだけではないかと主張しています。
 リンゴが木から地面に落ちるのを見て、「リンゴが落ちた」と
いい、地球は平らで端の部分は瀧になっているというのに対して
地球を一周したが、そんな瀧なんてなかったという事実をいって
いるだけというのです。
 錯覚している人が多いのです。例を上げると、多くの人は、民
間銀行は預金というかたちで資金を集め、銀行はその預金をベー
スにして企業や個人に貸し出しをすると考えています。そんなこ
とは、常識じゃないかというわけです。
 これについて、井上智洋駒澤大学准教授は、次のように述べて
います。
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 主流派経済学者は、まず家計が民間銀行に預金し、その預金を
基に企業に貸し出しを行うと考えがちです。これを「又貸し説」
と言います。その後企業は、賃金や配当といった形で家計にお金
を供給します。しかし、この順番だとそもそも家計は最初に預金
すべきお金をどこから得たのか謎が残ります。
 それに対し、MMTはまず貸し出しの際の預金通貨の創造があ
り、そのお金を企業は投資や賃金の支払いに使います。賃金を得
た家計はそのお金の一部を預金します。要するに、MMTが主張
しているのは、又貸し説は間違いであって、万年筆マネー論が正
しいということです。貸し出しの際に預金通貨が創造されるとい
うことは、貸し出しを行う度に、世の中に出回るお金「マネース
トック」(現金十預金)が増えていくことを意味します。
                      ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
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 最初に、家計が預金するのではないのです。銀行が貸し出しの
さいに預金通貨という万年筆マネーを創造し、そのお金を企業は
投資や賃金の支払いに使うので、そうして得たお金を家計は、そ
の一部を銀行に預金するのです。預金が先にあって、そこからお
金を貸すのではないのです。これをMMTでは「スペンディング
・ファースト」といっています。
 「約50兆円しか税収がないのに、毎年100兆円を超える予
算を使っている。これじゃ借金が累積して日本は破綻する」とい
われますが、MMTでは「税は政府支出の財源ではない」という
のです。「何をバカなことを!」というなかれ、よく考えてみる
と、そもそも歳入(税収)を歳出(政府支出)に使うのは、不可
能なのです。
 これについて、経済評論家の三橋貴明氏は、なぜ不可能なのか
について、次のように説明しています。
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 確定申告は、例えば2019年であれば「2019年1月1日
から12月31日」までの課税期間の収入・支出、控除等を税務
署に申告し、納付すべき税額を確定する。確定申告の時期は「2
020年2月16日から3月15日までの1ヶ月間」である。繰
り返すが、2019年の経済的な行為について、我々は翌20年
2月及び3月に申告しているのだ。つまりは、2020年3月以
降、確定申告後の税金支払いまで、政府は最終的な税収を得られ
ないことになる。
 ところが、政府は2020年の予算については普通に執行して
いる。おカネを支出しているのだ。政府は税収や国債発行(民間
金融機関からの借入)なしでも、予算を支出できる。というより
も実際にしている。支出が先、つまりは、スペンディング・ファ
ーストである。           https://bit.ly/3dU52tc
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 具体的に、どのようにして政府支出をするのかというと、それ
はきわめて簡単なのです。財務省が「財務省証券」を発行し、そ
れを日銀に持ち込み、その金額を日銀の政府当座預金口座に電子
的に記入してもらうだけです。政府は、このようにして、徴税や
国債発行なしでも、ごく簡単にお金を発行できるのです。
 これは、これは、政府の一時的な借金のように見えますが、日
銀は政府の子会社であり、事実上政府がお金を発行しているのと
同じなのです。これは、「明示的財政ファイナンス(OMF)」
と呼ばれています。OMFは、次の言葉の略です。
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      ◎明示的財政ファイナンス(OMF)
           Overt Monetary Financing
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 この明示的財政ファイナンスについて、井上智洋准教授は、次
のように解説しています。
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 (明示的)財政ファイナンスというのは、政府が貨幣発行を財
源に支出を行うことです。これは、実際に行われていることで、
MMTの文脈では、中央銀行がキーストロークによって作り出し
たお金を、政府が支出に充てることを意味します。
 ただし、実際には政府支出の財源が租税や国債であるかのよう
に偽装されています。支出と同額の税金を徴収したり国債を発行
したりすることによって、あたかも財政ファイナンスを行ってい
ないかのような装飾が施されているというわけです。OMFは、
その装飾をはぎとって、あからさまに、財政ファイナンスを実施
しようということです。     ──井上智洋著の前掲書より
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 この説明で印象的なのは、「政府支出の財源が租税や国債であ
るかのよう偽装されている」という部分です。つまり、これは、
表向きは政府支出は税収や国債であるように国民には思わせる必
要があるということを意味しています。
           ──[消費税は廃止できるか/061]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ今、現代財政理論なのか/鷲尾香一氏
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   2019年初めから、現代貨幣理論(MMT)という新た
  な経済理論がメディアなどの盛んに取り上げられた。MMT
  の最大の特徴は、「財政赤字に問題はなく、政府が財政再建
  を行わなくとも、財政が破たんすることはない」という考え
  方で、その成功例として、政府債務がGDP(国内総生産)
  の240%にも達しながらインフレにも陥らず、財政破たん
  もしていない「日本」が取り上げられているためだ。
   国内では数年前から「政府総債務残高が家計純金融資産残
  高を上回なければ、国債消化に困難が生じることはなく、財
  政危機が起きることはない」という考え方「現代財政理論」
  が、一部の学者やエコノミストのあいだで唱えられている。
  MMTでは財政について、不況期には、政府が借金をしても
  (財政赤字でも)、政府支出を増加させることで資金が民間
  に回り、景気が回復すると考える。
   不況時の財政黒字は、民間に資金が回っていないことを意
  味し、不況時に財政支出を行わないと、不況は一段と深刻化
  するという考え方だ。そして、「政府債務がどれだけ膨らん
  で、財政赤字となろうとも、財政再建を行わなくとも、債務
  不履行に陥ることはない」と理論付けている。
                  https://bit.ly/39vNW1m
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経済評論家/三橋貴明氏.jpg
経済評論家/三橋貴明氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする