2020年03月31日

●「バラマキのためらいの正体は何か」(EJ第5217号)

 2020年3月28日付、日本経済新聞の1面のトップに次の
記事が出ています。
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【現金給付所得減世帯に/経済対策50兆円超GDPの1割】
 政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策
で、5月にも所得が大幅に減少した世帯に現金を給付する検討に
入った。条件が当てはまる1世帯に20万円〜30万円程度とす
る案がある。売り上げの急減が予想される飲食業や観光業は割引
券や商品券を発行して支える。経済対策の事業規模は名目国内総
生産(GDP)の1割にあたる56兆円超をめざす。
       ──2020年3月28日付、日本経済新聞朝刊
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 同じことを米国のトランプ政権は、もっとシンプルに、もっと
素早くやろうとしています。新型コロナウイルス対策として2兆
ドル(約220兆円)規模の経済刺激策を既にを与野党で既に合
意しており、4月に実施することを決めています。とくに、大人
1人当り最大1200ドル(約13万円)の現金給付は、4月中
に配付するとしています。こういう現金給付は何よりもスピード
が勝負です。
 それにしても、日本は、なぜ、現金給付に1ヶ月もの時間を要
するのでしょうか。それは「所得が大幅に減少した世帯」という
条件をつけているからです。しかし、そういう条件に当てはまる
世帯を、どのような基準で選ぶのでしょうか。仮にどのように公
平に選んだとしても、絶対に不公平になるし、時間もかかるので
す。しかも一律10万円の現金給付というニュースが拡がると、
政府は慌ててメディアに「一律ではない」と否定させています。
期待されては困るという考え方でしょう。
 そもそも今回の新型コロナウイルスの蔓延で、何も被害を受け
ていない人など一人もいません。マスク不足や、トイレットペー
パーやティッシュの不足、移動や行動の制限、集会の禁止、会食
の禁止、ただ見るだけの花見まで禁止と、禁止のオンパレードで
す。国民はうっとうしい毎日を過ごしているのです。ところが安
倍首相の奥方は、この時期にレストランの庭とはいえ、花見を楽
しんでいるではありませんか。こんなことは許されることではあ
りません。国民は怒っています。しかも、そのことを野党議員が
国会で質問すると、首相は「それではレストランに行ってはいけ
ないのか」と反論し、しまいには「そんな大声でツバキを飛ばす
な」と逆ギレする始末。なぜ「このような時期に不適切だった。
妻に代ってお詫びする」と潔く謝罪できないのでしょうか。
 このさいは、野党の要求しているように、条件なしの一律10
万円を4月早々に配付すべきです。国会議員にも配ることになり
ますが、条件に当てはまる世帯を探している時間なんかない。こ
んな問題で、時間をかけるのは愚かなことです。この案なら誰か
らも批判はこないと思います。
 新型コロナウイルス蔓延による今回の緊急経済対策は、いわゆ
る「バラマキ」と呼ばれます。なかでも、国民に一律に現金を配
るなどは「バラマキ」の典型です。そのため、緊急経済対策とい
う大義名分があっても、実施側としては何となく躊躇するもので
す。これはどこからくるものでしょうか。
 かつて民主党が天下を取ったとき、公約の子育て支援の「子ど
も手当」を実施に移そうとしたとき、財務省は一切協力せず、財
源がなくて、実現しなかったことがあります。そのとき、野党に
なった自民党は「子ども手当」を「バラマキ」と呼んだのです。
相手の民主党が政権運営に慣れないことを逆手にとって、財務省
を抱き込んで、「子ども手当」の阻止したのです。それでいて、
自民党は政権を奪還すると、幼児教育費の無償化を含む「子ども
手当」をもっと拡大したものを消費増税を財源として実施に移し
ています。「子ども手当」の提案は正しかったのです。
 ところで、「バラマキ」といえば、ケインズ経済学に基づく不
況対策として行われる公共事業も「バラマキ」であり、財政赤字
が膨らむ原因になるからと、避けるべきとの風潮があります。赤
字国債を発行するなど政権党としては、それが必要であっても何
となく実施を躊躇うのです。今回のような未曾有の新型コロナウ
イルス禍でもない限り、赤字国債を発行してやれないのです。そ
れは一体どこから来るのでしょうか。
 それは、3月27日のEJ第5215号で取り上げた米国の財
政学者、ジェームズ・M・ブキャナンの財政思想から来るもので
あり、日本の財務省系の財政学者のほとんどは、この財政思想に
染まっています。ブキャナンは財政均衡主義の元祖です。
 ジェームズ・ブキャナンとして検索すると、同名の米国第15
代大統領の名前が出てきますが別人です。財政学者として検索し
ないと出てこないのです。ジェームズ・M・ブキャナンについて
真壁昭夫教授は次のように紹介しています。
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 1986年にノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ジェ
ームズ・ブキヤナンは、財政の規律に強くこだわった経済学者で
した。彼は、民主主義の下で財政支出は増加し続けるため、均衡
財政(財政の歳出と歳入のバランスをとる)の考えに基づき、税
収の範囲内で予算を組む必要があると主張しました。この考えは
景気が悪化した際に、政府(官僚)は必要に応じて財政支出を拡
大させ、経済成長率を高める能力を持つというケインズの考えと
異なります。ブキャナンの考え方に基づくと、財政黒字の黒字を
実現する(財政赤字をなくす)ためには、国民の負担が欠かせま
せん。例えば、増税や歳出のカットが考えられます。いずれも、
わたしたちが避けたいと思う政策です。増税はわたしたちが自由
に使うことのできるお金を減少させます。   ──真壁昭夫著
   『MMT(現代貨幣理論)の教科書/日本は借金し放題?
       暴論か正論かを見極める』/ビジネス教育出版社
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           ──[消費税は廃止できるか/058]

≪画像および関連情報≫
 ●逆噴射の財政政策/経済コラムマガジン
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   ブキャナン経済学の真髄は「民主主義的意思決定過程の中
  では、景気が過熱しているときでも、人々が好まない緊縮的
  政策をとることができない」という主張である。つまり民主
  国家では、どうしても財政支出が増え続け、どんどんインフ
  レが進行するメカニズムを持っているというのである。これ
  はまさに一種のケインズ政策批判である。ブキャナンはこの
  分析を政治学者であるワグナーとの共同研究で行っている。
  そしてこのような考えは「ブキャナン・ワグナーの定理」と
  呼ばれている。この定理は84年両者の共著「赤字財政の政
  治経済学」の中で展開されている。
   しかしこの種の定理が、今日の日本でも有効なのかどうか
  が大問題である。これを考えるにはまず当時の米国経済を簡
  単に見ておく必要がある。第二次世界大戦時から、米国の財
  政は危機管理下に入った。膨大な戦費の負担と社会主義国の
  ソ連の登場に対抗するための大幅な福祉予算の増額があった
  からである。歳出を大幅に増やしたが、これを税収ではとて
  も賄えない。米国の連銀は42年から51年まで青空天井で
  政府の財務省証券を購入した。10年物の財務省証券の利回
  りが2・5%以上に上昇しないように、連銀は証券を買い続
  けたのである。         https://bit.ly/2wLe4I1
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立憲民主党杉尾議員/昭恵夫人のお花見追及
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする