2020年03月23日

●「財政出動が足りないアベノミクス」(EJ第5211号)

 3月17日のEJ第5208号で取り上げたMMTが主流派経
済学と異なる3つの論点を再現します。
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       1.   財政的な予算制約はない
       2.   金融政策は有効ではない
       3.雇用保障プログラムを導入せよ
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 「1」について若干補足します。自民党の安倍政権が2013
年からはじめた、いわゆるアベノミクスで、世の中に流通するお
金の量や、それによる名目GDPがどうなったかについて、デー
タを整理してみます。まず、マネタリーベースの変化です。
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     ◎マネタリーベースの変化
      2013年3月 ・・・ 135兆円
      2018年4月 ・・・ 492兆円
                   3.64倍
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 マネタリーベースとは、市中に出回る現金と預金準備(民間金
融機関が日銀に設けている日銀当座預金にストックされているお
金)の合計です。マネタリーベースは、日銀が直接コントロール
できるお金です。日銀は金融機関が保有する国債などの資産を買
い取り、当座預金口座にその対価を入金します。日銀は異次元金
融緩和政策をとっており、この金額が増えているのは当然です。
 これに対してマネーストックとは、金融機関から経済全体に供
給されているお金の総量です。つまり、現金と預金の合計が、マ
ネーストックです。この量が増えると、景気が良くなります。
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     ◎マネーストックの変化
      2013年3月 ・・・ 844兆円
      2018年4月 ・・ 1003兆円
                   1.19倍
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 市中に流通する現金、すなわち、マネーストックを増やすには
民間銀行がマネタリーベースを企業や政府に積極的に貸し出せば
よいのです。そして、その増えたお金によって、財やサービスの
購入が行われると、それに応じて名目GDPが増えます。
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     ◎名目GDPの変化
      2013年 ・・・ 503兆円
      2018年 ・・・ 556兆円
                 1.11倍
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 このように数字を並べてみると、日銀は異次元金融緩和を継続
し、マネーストックを3・64倍と、大幅に増やしているものの
マネーストックの増加率は今ひとつです。これは、民間(企業・
個人)がもっと借り入れを増やし、マネーストックを増加させな
いと、景気を良くすることはできないのです。
 つまり、金融政策には限界があり、金融政策と財政政策を一緒
にやる必要があります。安倍政権は金融政策に頼り過ぎており、
そのためマネーストックの伸びは今一つとなっています。
 それにしても、政府は、デフレにもかかわらず、なぜ財政出動
をためらうのでしょうか。いまは、増税をやっているときではな
いのです。安倍政権がアベノミクスにおいて財政出動をしたのは
最初の一年間だけであり、その後2回にわたり、消費税の税率を
5%引き上げています。超緊縮政策です。安倍首相は、自分が何
をしているかわかっていないようです。日銀の異次元緩和と合わ
せてせっかく調子よくスタートできたのに、2回の増税でその成
果を潰し、ふって湧いた新型コロナウイルスの蔓延で日経平均株
価は下落し、安倍政権発足時の水準に戻りつつあります。
 新型コロナウイルスの蔓延で、多くの国は鎖国状態になり、人
の動きが制限され、経済がパニックに陥りつつあります。こうい
うときは、一刻も早く現金を支給する必要があります。
 このとき、トランプ米政権は素早く1兆ドル(約107兆円)
規模の経済対策を打ち出していますが、これは正解です。この金
額は米国にとって過去最大の大きさです。ちなみに、リーマンシ
ョック時の米国の経済対策は次の通りです
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      ◎2008年金融危機/ブッシュ政権
                7000億ドル
      ◎2009年金融危機/ オバマ政権
                7800億ドル
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 安倍政権でも、所得制限なしに、国民一人1万円とか2万円と
かの現金給付を考えているようであるが、この程度の金額では、
まったく意味をなさないのです。スケールが小さすぎるといって
よいでしょう。
 現在のこのような事態を受けて、3月13日、経済学の教科書
でも有名な米国の経済学者、グレゴリー・マンキュー・ハーバー
ド大学教授は、ブログで次の提言をしています。マンキュー教授
は共和党寄りの経済学者です。
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 手始めにすべての米国人に1000ドル(約11万円)の小
 切手を可能な限り早急に送るべきだ。 ──マンキュー教授
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 トランプ大統領は、マンキュー教授からの提言を受けて、2週
間以内に、国民1人当り、1000ドル以上の支給を含む最大1
兆2000億ドル規模の経済対策を打ち出すとアナウンスしてい
ます。トランプ大統領としては、この時点で経済が失速すると、
大統領選挙に影響してくるので必死です。
           ──[消費税は廃止できるか/052]

≪画像および関連情報≫
 ●米、新型コロナで1兆ドルの経済対策 現金給付盛る
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   【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権は17日、新型
  コロナウイルスによる経済不安を抑えるため、総額1兆ドル
  (約107兆円)の景気刺激策の検討に入った。ムニューシ
  ン財務長官は「極めて大きな経済対策となる。米国民に小切
  手を直接送る施策を検討している」と述べ、現金給付を盛り
  込む考えを明らかにした。ボーイングなど米航空関連企業へ
  の支援策などと合わせ、17日中に詳細を固めたい考えだ。
   ムニューシン財務長官は17日、与野党の議会指導部と相
  次いで会談し、大型の景気刺激策の詰めの協議に入った。同
  長官は「1兆ドルの経済対策を提案した。極めて大きな景気
  刺激策となる」と記者団に述べた。トランプ大統領は労使が
  負担する給与税の免除を提案。新型コロナで売上高が急減す
  る航空会社や宿泊業などの資金支援も盛り込む。
   今回の経済対策が1兆ドル規模となれば、連邦政府の年間
  歳出(4・7兆ドル)の2割を超える異例の大型景気対策と
  なり、2008年のリーマン・ショック直後の緊急対策を上
  回る規模となる。08年時は銀行への公的資金注入や自動車
  メーカーへの資金支援などを目的に、ブッシュ政権(当時)
  が7000億ドルの緊急予算を用意。翌09年にオバマ政権
  がインフラ投資や失業保険の拡充などを目的に、7800億
  ドル規模の景気対策を成立させた経緯がある。
               https://s.nikkei.com/2U1vxVA
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マンキューハーバード大学教授.jpg
マンキューハーバード大学教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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