2020年02月10日

●「マレーシアの消費税廃止の影響度」(EJ第5184号)

 マレーシアでの「GST」と「SST」再導入の経緯を簡単に
振り返ります。GSTはいわゆる消費税であり、SSTは一部の
贅沢品にかかる物品税であると考えてよいと思います。しかし、
マレーシアでは売上税と呼ばれています。
 なお、私が今回のマレーシアの記述の参照にしているのは、次
の論文です。以下、内容をEJ風にまとめます。
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   熊谷聡アジア経済研究所開発研究センターグループ長著
       『消費税を廃止した国、マレーシア』は本当か
                   IDE―JETRO
                 https://bit.ly/2GXWHFB
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 マレーシアは当初消費にかかる税金としては、SSTが導入さ
れていたのですが、2015年4月1日からSSTが廃止され、
GSTが導入されたのです。しかし、その導入のタイミングが問
題だったといえます。ナジブ政権の時代です。
 近年マレーシアでは、生活費が上昇しており、政治的にも大き
な問題になっていました。とくに2014年の夏以降は、米ドル
に対するリンギ安の影響で、輸入物価が高騰し、生活費は上がる
一方だったのです。そういう時期にSSTに代って、GSTが導
入されので、国民の不満が高まっていたのです。
 ちなみに、SSTの税率は、財とサービスによって異なります
が、財に対しては10%が基本で一部品目は5%、生活必需品の
5443品目は非課税です。サービスに関しては、ホテルの宿泊
料や外食などを中心に6%の税率です。
 これに対してGSTの税率は6%で、食品などの545品目に
ついては非課税になっています。これでわかるように、日本では
食料品などには軽減税率を適用していると鬼の首を取ったように
いいますが、8%もの高い税率をかけています。とくに食料品に
対して8%が軽減税率の国は日本だけです。多くの国で食料品は
0%です。しかもインボイスを導入せずに消費税を導入している
ので、きわめて不公平な税制になっています。
 さて、2018年5月の総選挙に、なぜ、92歳のマハティー
ル元首相が出馬したかですが、これには複雑な事情があるようで
す。この事情に踏み込むと、それだけでEJの1テーマになって
しまうので、これについては省略します。興味がある方には、次
の論文を参照ください。
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                   美樹慶樹著
  「マレーシア「初の政権交代」の複雑すぎる事情」
             https://bit.ly/2GZcaFi
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 基本的には、ナジブ首相の巨額の汚職問題によって、政治が混
乱していたからだと思われます。しかし、GSTによる不満も相
当大きくなっていたことは確かです。そのため、マハティール氏
は、選挙に勝つと、GSTの廃止については、速やかに実施して
います。選挙からわずか2日後の5月16日に、財務省は「6月
1日から当面の間、消費税率を0%にする」と発表しています。
ここに消費税を実施していた国が一定期間とはいえ、消費税を0
%にするというきわめて珍しいケースが実現したのです。
 れいわ新撰組の山本代表はこれに目をつけたのです。彼は次の
衆院選の公約として「消費税廃止」を取り上げることに決めてお
り、これほど絶好な事例はありえないからです。そのため、自ら
マレーシアに調査に赴いたのです。
 消費税0%の期間は6月1日〜8月31日までの3ヶ月であっ
たものの、民間消費を刺激する効果が顕著に表れています。1月
23日の「羽鳥慎一モーニングショー」の「そもそも総研」にお
いて、藤井聡教授が提示したフリップの数字によると、次のよう
に劇的な消費増加率を示しています。確かに9月のSSTの再導
入によって、消費増加率は少し下がったものの、それでも消費は
大きく上昇しています。
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   ◎消費税廃止&売上高再導入後の消費増加率の推移
    ★GSTの時期
     2018年 1〜 3月 ・・ 6・6%
    ★GSTの廃止
     2018年 4〜 6月 ・・ 7・9%
     2018年 7〜 9月 ・・ 9・0%
    ★SST再導入
     2018年10〜12月 ・・ 8・4%
     2019年 1〜 3月 ・・ 7・6%
     2019年 4〜 6月 ・・ 7・8%
  ──2020年1月23日、「羽鳥愼一モーニングショー」
              『そもそも総研』のフリップより
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 添付ファイルのグラフは、マレーシアの自動車の販売台数を月
次で示したものです。自動車は税制改正の影響を受け易いもので
すが、これについてはSST再導入後も伸びています。これにつ
いて、熊谷聡氏は次のように述べています。
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 税制変更の影響を受けやすい自動車の販売台数を月次で示した
ものである。自動車に対する消費税率が0%となった3ヶ月間に
ついては、6月が28%増、7月が41%増、8月が23%増と
いずれも前年同月の販売台数を大幅に上回った。SSTが再導入
された9月以降も自動車の販売台数は落ち込んでいないが、これ
は、マレーシア国内で組み立てられた自動車を中心に、SST再
導入後にわずかながら価格が下がったためである。
           ──熊谷聡氏 https://bit.ly/2vYZ6h1 ─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/025]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア/消費税を実質廃止       全国商工新聞
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  ◎元静岡大学教授税理士 湖東 京至さんに聞く
   消費税(GST・商品サービス税)の是非が最大の争点に
  なったマレーシアの国政選挙(5月9日投票)で、消費税廃
  止を掲げたマハティール元首相が率いる野党連合が勝利し、
  歴史的な政権交代が行われました。マハティール新政権は公
  約どおり、6月1日から消費税の税率を6%から0%にしま
  した。マレーシアでどんな選挙がたたかわれたのか、日本で
  消費税を廃止させることは可能か。湖東京至・元静岡大学教
  授(税理士)に聞きました。
  ──どんな選挙がたたかわれたのですか。
   野党を率いたマハティール氏はかつて22年間、マレーシ
  アで最も長く首相を務めた人物です。92歳で首相に返り咲
  けば、世界で最も高齢の首相となります。解散時の議席数は
  与党連合・国民戦線が130議席、野党連合・希望連盟が、
  72議席でした。選挙結果は与党・国民戦線が79議席、野
  党・希望連盟が過半数を超える121議席を獲得しました。
  与党連合が51議席減らしたのに対し、野党連合は47議席
  増やしました。予測では、与党連合がやや優勢と見られてい
  ましたが、終盤になってマハティール氏の個人的人気と消費
  税廃止を公約の中心に据えた野党連合が逆転勝利しました。
                  https://bit.ly/3bjmLJa
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mare-shianotukibetuzidoushahanbaidaisuu.jpg
マレーシアの月別自動車販売台数

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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